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Posted by ブクログ
松岡 清澄(まつおか きよすみ)クン(高校一年生)の母 さつ子サンの口癖は「やめとき!」です。清澄クンが何かしようとすると必ず「やめとき!」と声がかかります。 そして、降水確率が50%だと「傘、持っていきなさいよ!」と言います。
何かと先回りして、清澄クンが失敗しないように声を掛けるのです。
人はみな、多かれ少なかれ経験した事(させられた事)によって、その先の行動が変わります。ろくでもない男と結婚したあげくに離婚したとか、性暴力にあったとか、理不尽な性差別を受け続けて育ったとか。。。
二度とツラい思いをしないように用心して自分の行動を制限します。そして人にも(強制めいた)助言をします。「やめとき!」と。
でも、ツラい思いをさせたのは、他者(いわば加害者)であって自分(いわば被害者)ではありません。自分はちっとも悪くありません。
けど、他者を糾弾するのではなく、自分の行動を制御することによって二度目の不幸を避けようとするのです。理不尽です!
この物語は、そういう理不尽に苦しみ闘っている人たち(家族)のお話だと言えるのかもしれません。もちろんお話の中で、気づきと解放が語られていくのですが。。。
さて、家族は、大阪府寝屋川市に住んでいます。なので登場人物たちは大阪弁で話しています。
わたしはふと思いました。これ、東京が舞台だったらお話のイメージはどうだったろう?と。
「あかん、やめとき!」は「だめよ、やめなさい!」になるのでしょうか?
ジェンダーについての考え方は同じでしょうか異なるでしょうか?
刺繍が好きな清澄クンに対する周り人の反応は同じでしょうか異なるでしょうか?
それぞれの登場人物の境遇や経験することは同じでしょうか異なるでしょうか?
さらに、お話の舞台が他の都市だったら?
みなさまは、どう思われるでしょう?
〔作品紹介・あらすじ〕(文庫版)(2023年5月)
【第 9 回河合隼雄物語賞受賞作品】
松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。
学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、かわいいものや華やかな場が苦手な姉のため、ウェディングドレスを手作りすると宣言するが――「みなも」
いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。そんな時、母が教えてくれた、子育てに大切な「失敗する権利」とは――「愛の泉」ほか全六章。
世の中の〈普通〉を踏み越えていく、清々しい家族小説。
【著者略歴】
寺地はるな(てらち・はるな)
1977 年佐賀県生まれ。大阪府在住。会社勤めと主婦業のかたわら小説を書き始め、2014 年『ビオレタ』でポプラ社新人賞を受賞しデビュー。20年咲くやこの花賞を、21年『水を縫う』で第9回河合隼雄物語賞を受賞。『大人は泣かないと思っていた』『ガラスの海を渡る舟』『タイムマシンに乗れないぼくたち』『カレーの時間』『川のほとりに立つ者は』『白ゆき紅ばら』など著書多数。
〔作品紹介・あらすじ〕(単行本)(2020年5月)
松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。
学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、かわいいものや華やかな場が苦手な姉のため、ウェディングドレスを手作りすると宣言するが――「みなも」
いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。そんな時、母が教えてくれた、子育てに大切な「失敗する権利」とは――「愛の泉」ほか全六章。
世の中の〈普通〉を踏み越えていく、清々しい家族小説。
【著者略歴】
寺地はるな(てらち・はるな)
1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。会社勤めと主婦業のかたわら小説を書き始め、2014年『ビオレタ』でポプラ社新人賞を受賞しデビュー。『大人は泣かないと思っていた』『正しい愛と理想の息子』『夜が暗いとはかぎらない』『わたしの良い子』『希望のゆくえ』など著書多数。
Posted by ブクログ
男なら、女なら、母なら、世の中には数えきれないほどの「普通」が存在する。
手芸が好きな高校一年生、松岡清澄。彼は「男の子なら普通は」と自分の好きなものを、世間から受け入れてもらえない。
かわいいものに抵抗がある姉の水青。彼女は「女の子なら普通は」と自分の怖いものを受け入れてもらえない。
この二人を見ていて、好きなものも怖いものもその人を形作る一部なんだと感じた。だから、否定されると自分ごとバツ印をつけられたような気持ちになってしまう。
シングルマザーとして子ども二人を育てる母、さつ子。彼女は「母親なら普通は」に苦しんでいる。ここの描写が私にはかなーりズシンときた。
母親=我が子に無限の愛を注げる人、となりがちだけど、子どもに心底腹が立つこともあるし、疲れてると「もう一人にしてよ」と思うこともある。
私もそう。その度に「母親なのにな」と罪悪感が顔をのぞかせる。でも、それは愛してないわけじゃない。子どもたちには幸せになってほしいし、辛い思いはなるべくしてほしくない。だから、さつ子さんの気持ちが手に取るようにわかった。
『子どもは親とは別個体で、所有物ではない』
わかってる。わかってるけど…「もし立ち直れないくらい傷ついたら」「人生が大きく狂ったら」ってところまで想像しちゃう。だから先回りしたくなる。子どもを支配したいというより、取り返しがつかないことから守りたい。
そんな私なので、祖母である文枝さんが話した「失敗する権利」「雨に濡れる自由」がグッサグサ刺さる。もう、本当に目の前でお説教されてる気分。
ただ、文枝さんもお気楽なおばあちゃんの立場からこの話をしているわけではなく、自身の経験からかなりの決意を持って「雨に濡れる自由」を尊重している。だから「親じゃないからって無責任なこと言わないで」とは言い返せないんだよな。
この辺り本当に身につまされました…
水青が仮縫いのウェディングドレスを着たシーンでは理由もわからず目頭が熱くなった。分析して言語化できないけど、「心が動かされた」瞬間だったのは間違いない。
最後、ドレスに刺繍をして、タイトルの「水を縫う」に収束するまでとても鮮やかだったな。
爽やかな、晴れ晴れした気持ちで読書を終えられました。
Posted by ブクログ
主人公とその周りの登場人物を章ごとに丁寧に描いていて、それぞれの視点から読み進めることで物語全体に深みと広がりが生まれ、読後の満足感がすごい。
テーマとしてはセンシティブなものだけど、大阪弁でのやりとりが、軽やかさや温かみを与えていて、読んでいても暗くならずに前向きな気持ちで読み進められるところもよく考えられていると思う。
世間の空気やイメージよりも自分の好きを大切にすることを最終的に選んだ清澄や水青を通して、
男らしさ、女らしさや性別による役割固定といったアンコンシャスバイアスへのアンチテーゼを暗に投げかけているところも時代にあっていてよかった。
Posted by ブクログ
たくさんの思いが込み上げました。
何かを始めるのに年齢は関係ない。
遅すぎることはないということ。
諦めるのではなく 心を閉ざすのではなく
自分を守るために声をあげ戦うことの大切さ。
失敗だけの人生って本当にあるのだろうか。
自分が失敗と決めつけた人生の中でさえも
かけがえのない人との出会いと
確かな幸せがある。
誰にでも「失敗する権利」と
「雨に濡れる権利」があるのだということを。
私らしくありたい。
そのために自分が本当に好きなもの
大切なものを求め 動きつづけたい。
血縁関係だけが家族なのではない。
そのことをあらためて強く感じさせられた。
優しさと 愛 強さがこもった物語。
それぞれの視点から
教えられることが多い本でした。
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小説・文芸
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