感情タグBEST3
Posted by ブクログ
スゴい。今この小説を読めたことに、とても幸福を感じている。
最初まとまっていなかったものが、まさに水が収まる所に流れ着くような幸福感。
想うほどうまくいかない家族それぞれの考えに寄り添いながら、あたたかな筆致がそれを包み込む。
話が進むごとに少しずつ自分の中に溜まっていたものが、5章の運動会辺りのクダリで崩壊してしまい(自分の子どもともリンクして)、その先ずっと文字が滲んで涙を我慢しながら読むのに大変だった。
自分がこの年でこの作品に出会えたことに、運命的なものを感じてしまう程、ほんとに素晴らしい作品だった。
Posted by ブクログ
男なのに、裁縫が好き。
女なのに、可愛いものが嫌い。
母親なのに、子どもに巾着の一つも作らない。
いい歳なのに、水着を着てプールに入るなんて。
そんな"なのに"が人を苦しめる。
そんな"なのに"から少しずつ解放されていく家族の物語。
「巾着袋を作ってくれないお母さんは僕のこと愛してないとか、
そんなこと思ったこともなかったで」
「でも74歳で始めたら、80歳の時は水泳歴6年になるやん。
何もせんかったらゼロのままやけど」
主人公の物事の見方がとても良くて、
同時に私自身も無意識に"なのに"という見方をしていたことを顧みる(猛省)
タイトルの意味がわかった瞬間、思わずため息がこぼれた。
失敗する権利。時に汚れながら、清らかに進む。
好きなものを好きでいること。
人それぞれ自由であること。
自分と違う生き方をする人を否定しないこと。
どんな人をも掬い上げてくれる優しさが
たくさん詰まっている一冊でした。
"普通"に縛られずに生きていたい。
何を好きで何が苦手か、それは人それぞれの"自由"。
Posted by ブクログ
失敗する権利はあるってなんて素敵な言葉だろう。
もちろん、手放しにして失敗させるんじゃなく、失敗したとて寄り添いながら、本人も失敗も責めずに成長に結びつけていけるような優しさがおばあちゃんから滲み出ていて、すっごく温かい気持ちになったし、自分もこうでありたいと思った。
後悔させたくないのはどの親も一緒だけど、自分の“普通“に当てはめちゃいけない。価値観が違う相手を否定しない。いろいろと考えさせられる一冊でした。
Posted by ブクログ
高校生の清澄は、男の子なのに裁縫が好きで
そのことが母親を悩ませる。
母親は公務員で、一般常識にとらわれており
そんな息子が心配でならない。
姉は昔、スカートを切られた経験があり
そのトラウマから可愛い洋服が着られない。
祖母は、夫からの「女はこうあるべき」という
決めつけからなかなか逃れられないでいる。
離婚した父親は、お金の使い方が常識から外れており
結婚生活には向かなかったが
洋服のデザイナーとしての才能と情熱がある。
(父親以外の)それぞれの立場から自分の気持ちが
語られており、それを読むことで
それぞれの気持ちがよく分かる。
親になると、子どもを心配する気持ちも分かるが
清澄の干渉されるのが嫌な立場もよく分かる。
印象に残ったのは祖母の
「失敗する権利がある」という言葉。
先回りして心配してしまうけれど
子どもにも子どもの人生というものがあり
失敗する権利もあるということ。
それに何が失敗なのかは人それぞれ。
父親の設定はともかく、登場人物の心情的には
共感できる部分も多く、心に響く言葉もあった。
最後はハッピーエンドで良かった。
Posted by ブクログ
よかったです
じんわり沁みてくる、清々しい気持ちの残る物語でした
私にとって、地元が舞台というのもあって、文章が、全部、関西弁で、入ってきました笑
Posted by ブクログ
んー素敵な本だった。
家族っていうのはなんなのか。
ジェンダーと立場の縛りを絡めながら、
寺地さんの言葉が優しく見せてくれる。
可愛い洋服が苦手な姉の水青。
裁縫、刺繍が好きな弟の清澄。
形容が難しいけれど、一生懸命な母のさつ子。
女は◯◯の価値観で過ごさざるを得なかった祖母の文枝。
父、父の仕事仲間の黒田さん。
一人ひとりの目線で物語が進む。
可愛いドレスが苦手な姉のために、「僕がドレスつくったる」と弟が言うことから物語が始まっていく。
みんな必死で、だからこそ思いが伝わらない。
おばあちゃんの気持ちもお母さんの気持ちも、
全部じゃないけど、ところどころわかるから、
きゅーっとなる。
タイトルの意味がようやくわかり、とてもよかった。伝えるとことの大切さ、言葉を差し出すことの大切さ。
そして、時に言葉以上に布や刺繍がこの本では思いを伝えてもいて。
寺地さん2冊目もよかったー。
Posted by ブクログ
「多様性」が叫ばれる現代だが、本当の意味で「その人らしさ」を尊重するとはどういうことなのだろうか?と考えさせられた。
縫い物が苦手、細かい作業が苦手な自分にとっては「雑巾1枚ですら縫ったことが無かった」と懺悔するかのようなさつ子の言葉、それに対する清澄のアンサーが印象的だった。
Posted by ブクログ
頭では理解してても心がついていかないことってあると思う。
その結果、言わなくていいことを言って相手を傷つけてしまうこともあるし、そうしてしまった事実で自分自身のもやもやが取れないこともあるよなあと。
それでもお互い思い合って、みんながなるべく自由に生きられるといいなと思いました。
今の自分にとっても刺さる、泣ける一冊でした。
Posted by ブクログ
登場人物みんなが主人公で、それぞれの視点で物語が進みます。日常の思いがけない出来事や、人から言われた何気ない一言から悩みが増えたり解決したりするのだと改めて実感しました。どれも胸が熱くなる内容でしたが、特に文枝の話が苦しくも前向きになれるような素敵な話でした。
最後にはタイトルの意味が明らかになり感動しました。
また再読したい作品です。
Posted by ブクログ
本を開き、見返しの遊び紙のきれいな水色がまず目を惹いた。読み終えたあと、『水を縫う』というタイトルがすごくいいと思った。
刺繍が好きな高校生の松岡清澄が、姉の水青(みお)のために、飾り気のないウェディングドレスを作ることになる。
男子が刺繍が好きだということに対する偏見、水青が飾り気のないウェディングドレスじゃないと嫌だという理由、母親が普通であることを求めること、祖母が夫に年齢によって否定されたことなどは世の中でありがちなことだ。しかしこれからは、清澄が刺繍が好きだということに対して、純粋にすごいなという、宮多くんみたいな人が増えていくのだろうと思う。性別や年齢で分けることないように意識を変えはじめたのが、今の時代だと思う。2人の名前に込められた意味、流れる水であってほしいというのが、その事を表しているように思えた。
Posted by ブクログ
寺地はるなさんの本は、『雨夜の星たち』に続いて2冊目です。
あらすじを見て、「いじめ関連の描写があったら嫌だな」と思っていたのですが、いじめに触れるシーン(「いじめられたらどうすんの」というようなセリフ)はあるものの、実際にいじめ描写があるわけではなく、ほっとしました。
主体に「ジェンダー」「家族」「役割」などを据えつつも、ストーリーはなめらか~に、ゆ~っくりと進んでいくので、昨今の小説にありがちな「重苦しくてしんどくなる展開」「めまぐるしい心理描写」のようなものはなく(とはいえ、人によってはしんどい描写はあるかも?)、個人的にはテーマの割に意外と読みやすいと感じました。
まだ二作品しか読んでいないのですが、著者は人の「言語化できないしんどさ」を的確に描写される作家さんだなと思っています。
連作短編の形をとり、頻繁に話者が変わるため、最初は混乱しますが(私はそれが苦手で短篇は敬遠しがち)、登場人物が少ないお話なので、慣れれば大丈夫でした。
登場人物それぞれが置かれた立場で悩んでいるお話で、時代背景や生育環境、触れ合った人物などに影響されて、最初は単純だったモヤモヤが次第に複雑になっていくのだろうな、と考えさせられました。
そして、この作品では、ふとしたきっかけでそのモヤモヤがほどけていく様が、朝日が昇るように自然に描かれています。
このお話では触れられていませんが、母・さつ子の立場からすれば女性で料理が苦手なことも、まあまあの生きづらさにつながることですよね……。
女性の愛=手間と愛嬌、と捉えられている風潮は、現代にも色濃く残っていると感じます。
得意なことを、得意な人がすればいい。
そんな考えの浸透する社会になったらいいなと改めて思いました。
Posted by ブクログ
語り手の視点が章ごとに変わりながら物語がゆっくり進んでいく。じわりと惹きつけられるストーリーで、後味がとてもよい。
途中まさか黒田さん視点になるとは思わなかった笑
最後はキヨ君視点に戻ってよかった。
そして水青ちゃん、おめでとう!
Posted by ブクログ
「男の子だから」「女の子だから」と、がんじがらめになり、好きな事を堂々と言えない。令和でもその思想は根強く、女だから家事が出来なくては。男だから出世しなくては。とつい自分でも考えたしまう所を改めたい。
Posted by ブクログ
家族は不思議だ。
間違いなく繋がっているのに、それぞれが分かり合えなさを抱えている。人の関係において、血のつながりこそが最も強いものとは思わないけれど、間違いなくDNAにしか成し得ないような、外見以外の共有部分がある。また、夫婦には血のつながりはないけれど、時折DNAを超える。もちろん形の上で、誰よりも遠い存在になってしまうこともあるけれど。
姉の結婚式のドレスを弟が縫うことを軸に展開される家族の物語。家族や、友人や、好きなことや、苦手なことや、身の回りには関係が満ちていて、関係は変化をしながら流れていく。
そして、更新されていく関係は、一方通行でもない。
日々を大切に過ごしていく中で、関係を捉えたいと思う。
Posted by ブクログ
ジェンダーや、多様な価値観が世の中の常識になっていく中で、そこと向き合う主人公たちの葛藤が共感性高くすらすらと読み続けてしまった。
誰もきっと悪くない、その時代の常識で育っている以上、今の価値観が理解できないこともそりゃある。
でも、「誰しも失敗する権利がある。」。
響いたー。
Posted by ブクログ
水を縫うってそういうことかー!!!って読み終わって一番最初に思った。
清澄の刺繍が好きだということにわたしは特に違和感を覚えなかったのだれけど、それはたくさん本を読んで色々な人の考えかたを知れたり、もしくは先人が価値観を変えようと働きかけてくれたおかげなのかなと思ったりした。
どのパートも好きなんだけれど、1番好きなのはおばあちゃんのパート。
旦那さんに知らず知らずのうちに抑圧されていたけれど、ほんとうはやりたいことがあって、それが出来た時にはハイタッチしたいぐらい、自分の事のように嬉しかった。
いちばん夢中で読んだのはお姉ちゃんのパートかな?女らしいと呼ばれるものや、かわいいとされるものが嫌いで避け続けていたのは何故なのか?が分かった時、その呪いが緩く解けた時、こちらも自分の事のように嬉しくなった
Posted by ブクログ
「大人は泣かないと思っていた」を読み終えた後、こちらも読んでみたが、どちらもTVドラマになりそうな、優しさや温かさを感じた。
特別な事件も恋愛も笑いも感涙も無いけど、ジワジワと湧き上がる共歓の想いに、心地よい読後感を味わえる作品。
ありがとうございます。
Posted by ブクログ
人が人を想うとは、こういうことなんだろうな、が詰まっていた。皆どこか不器用で、イラっとすることもありそれがまたリアル。でもなぜか憎めない。
爽やかな読後感だった。
Posted by ブクログ
寺地はるな先生の本、これで2冊目読本。
今まで、こんなに素敵な本を書く先生がいたなんて気づかない自分が信じられないくらい。とにかく読みやすい。
話は、ある一家の話。結婚目前に姉のウェディングドレス作りから話が展開される。
それぞれの登場人物が主人公として、短編ストーリーとなる。過去や、性別や周りの偏見にこだわり過ぎる一家。それをどう捉えるか本人次第とまとめている。
最後は、このストーリーの題名と子供たちの名前の由来が関係して納得。
また、寺地はるな先生の本読みたい!
Posted by ブクログ
家族ものって感動系に話を持っていきがちなんだけど、この本はそんなことなかった。
ちぐはぐな家族の凸凹がうまくハマっていく物語だった。
最後にタイトルの意味が回収されて、何だかスッキリした。
寺地はるな先生の本って、個人個人のちぐはぐなところがうまく絡まっていく人間関係を表現するのが本当に上手な気がする。人の心理描写に共感できる。
Posted by ブクログ
初めて読む作家さんの小説でした。
章ごとに家族一人一人が主人公となり、語り手となり、人に言われた事、人の振りを見て感じた事、もろもろの感想が綴られていて、そんな他人の一言をずっと根に持つなんて面倒くさい人たちだなぁと(少しだけ)思った。
けど、その言葉をどのように感じるかって人それぞれであり(私はあまり気にしないタイプである)そのため、すごく感じ入ってしまう人も居ることを心得ておくことはすごく大切なのだ。
だから、この本は若い中高生あたりが読むべき本だと思う。
ただ若い連中が面白いと思うかどうかは別だが。(なんだか教科書臭く感じるかもしれない。自分が若いころだったら、たぶんそう思っただろう)
という事で、初めて読む作家さんでしたが、なかなか良かったので別の本も読んでみたいなと思いました。
Posted by ブクログ
2020年の高校司書イチオシ本。
主人公は高校生の男の子だけど、彼を取り巻く人たち視点の章が折り重なって完成している物語。
主人公のおばあちゃんが、主人公のお母さんに言うこのセリフが、最近子供を産んで親になったばかりの私には、かなり響きました。
『明日、降水確率が五十パーセントとするで。あんたはキヨが心配やから、傘を持っていきなさいって言う。そこから先は、あの子の問題。無視して雨に濡れて、風邪ひいてもそれは、あの子の人生。今後風邪をひかないためにどうしたらいいか考えるかもしれんし、もしかしたら雨に濡れるのも、けっこう気持ちええかもよ。あんたの言うとおり傘持っていっても晴れる可能性もあるし。あの子には失敗する権利がある。雨に濡れる自由がある。』
失敗を親が先に取り除いたら、その子が本来経験するはずだったことも一緒に取り除くことになるなぁと。
おばあちゃんの言葉も、お母さんの心情も、お父さんの行動も、友達の態度も、お父さんの友人の優しさも、さまざまな視点で描かれるこの物語の誰かには共感できるはず。
Posted by ブクログ
家族ひとりずつに焦点をあてていて、
それぞれが抱える思いや悩みを
上手に表現している。
でも話がまとまらないのかと思うけど
ちゃんと最後の章ではまとまる。
すーごく心がほっとする❁⃘
昔からある偏見や違和感、
今でもまだ残っているし悩んでいる人もいる。
頭の硬い人にも読んでもらいたいっ!!
Posted by ブクログ
終始温かい話。
姉の結婚式のドレスを発端として、各章でそれぞれが周囲の固定観念から脱却していく。
その中でも清澄の成長は目を見張るものがある。
理解すること、受け入れることの大切がよくわかる話ではないでしょうか。
自分にとっての善は他人にとっても善とは限らない、そう思うようにしようとなる一冊でした。
「川のほとりに立つ者は」を先に読んで、正直あまりはまらなかったので、今回もどうかなと思った読んでしまいましたが、とても素敵な話でした。
Posted by ブクログ
母さつ子は、つい子供を否定してしまう。
それは、自分の母に「こうしてほしかった」の裏返し。でも、それをやられるって子供からしたらしんどいものでもある。
親からやることをすぐ否定されていた経験者からすると、「失敗する権利」を諭す祖母の言葉に救われる思いがしたし、息子が祖母に懐くのもわかる気がする。こういう大人が側にいてくれるのはありがたい。あの母しかいなかったら、もっとしんどかったんじゃないかなと思う(私はどうしてもこの母に幼さを感じて、しんどかった)
「あんな風にはならない」と思っているのに相手を傷つけてしまうものなんだなと、人の哀しさを思うし、その中で皆がそれぞれの未知を見つけていくのはよかったなと思った。
Posted by ブクログ
読みやすくてあっという間に読み終わってしまいました。男、女、母親、父親、家族…の固定概念にふわっと優しく疑問を投げかける一冊。自分の普段の言動をちょっと振り返るきっかけになるかも。タイトルも内容もキレイ。