感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
男なのに、裁縫が好き。
女なのに、可愛いものが嫌い。
母親なのに、子どもに巾着の一つも作らない。
いい歳なのに、水着を着てプールに入るなんて。
そんな"なのに"が人を苦しめる。
そんな"なのに"から少しずつ解放されていく家族の物語。
「巾着袋を作ってくれないお母さんは僕のこと愛してないとか、
そんなこと思ったこともなかったで」
「でも74歳で始めたら、80歳の時は水泳歴6年になるやん。
何もせんかったらゼロのままやけど」
主人公の物事の見方がとても良くて、
同時に私自身も無意識に"なのに"という見方をしていたことを顧みる(猛省)
タイトルの意味がわかった瞬間、思わずため息がこぼれた。
失敗する権利。時に汚れながら、清らかに進む。
好きなものを好きでいること。
人それぞれ自由であること。
自分と違う生き方をする人を否定しないこと。
どんな人をも掬い上げてくれる優しさが
たくさん詰まっている一冊でした。
"普通"に縛られずに生きていたい。
何を好きで何が苦手か、それは人それぞれの"自由"。
Posted by ブクログ
高校生の清澄は、男の子なのに裁縫が好きで
そのことが母親を悩ませる。
母親は公務員で、一般常識にとらわれており
そんな息子が心配でならない。
姉は昔、スカートを切られた経験があり
そのトラウマから可愛い洋服が着られない。
祖母は、夫からの「女はこうあるべき」という
決めつけからなかなか逃れられないでいる。
離婚した父親は、お金の使い方が常識から外れており
結婚生活には向かなかったが
洋服のデザイナーとしての才能と情熱がある。
(父親以外の)それぞれの立場から自分の気持ちが
語られており、それを読むことで
それぞれの気持ちがよく分かる。
親になると、子どもを心配する気持ちも分かるが
清澄の干渉されるのが嫌な立場もよく分かる。
印象に残ったのは祖母の
「失敗する権利がある」という言葉。
先回りして心配してしまうけれど
子どもにも子どもの人生というものがあり
失敗する権利もあるということ。
それに何が失敗なのかは人それぞれ。
父親の設定はともかく、登場人物の心情的には
共感できる部分も多く、心に響く言葉もあった。
最後はハッピーエンドで良かった。
Posted by ブクログ
言葉の紡ぎ方が温かくて優しくて••••
ジェンダーだとかって「あぁ最近よくあるテーマね」って思うし、「あれでしょ?男らしさ女らしさで決めつけないでってやつでしょ」ってあらすじだけ読んで思ってしまったのだけど、読み進めるうちに、そういう「決めつける自分」、「偏見でみる自分」に気づかされて、恥ずかしくなるくらい。
もっともっと深い。
決めつけること、わかろうと努力しないことが悪と言われるけど、
わかってもらえるわけがないって決めつけることは果たしてどうなのか。
お話の中で子どもたちを母親目線で見た描写も多々あるのですが、これがまた痛いほどわかる。
失敗する権利。雨に濡れる自由。(p122)
突き刺さりました。
Posted by ブクログ
語り手の視点が章ごとに変わりながら物語がゆっくり進んでいく。じわりと惹きつけられるストーリーで、後味がとてもよい。
途中まさか黒田さん視点になるとは思わなかった笑
最後はキヨ君視点に戻ってよかった。
そして水青ちゃん、おめでとう!
Posted by ブクログ
水を縫うってそういうことかー!!!って読み終わって一番最初に思った。
清澄の刺繍が好きだということにわたしは特に違和感を覚えなかったのだれけど、それはたくさん本を読んで色々な人の考えかたを知れたり、もしくは先人が価値観を変えようと働きかけてくれたおかげなのかなと思ったりした。
どのパートも好きなんだけれど、1番好きなのはおばあちゃんのパート。
旦那さんに知らず知らずのうちに抑圧されていたけれど、ほんとうはやりたいことがあって、それが出来た時にはハイタッチしたいぐらい、自分の事のように嬉しかった。
いちばん夢中で読んだのはお姉ちゃんのパートかな?女らしいと呼ばれるものや、かわいいとされるものが嫌いで避け続けていたのは何故なのか?が分かった時、その呪いが緩く解けた時、こちらも自分の事のように嬉しくなった
Posted by ブクログ
松岡清澄
高校一年生。中学の時、女子力高すぎ男子と呼ばれていた。祖母に手芸を教わる。
裁縫や刺繍が好き。芯を持っているしっかり者。
高杉くるみ
清澄と小学校、中学校も一緒だった。
宮多雄大
清澄の後ろの席。
松岡さつ子
清澄の母。仕事を優先するタイプ。市役所に勤めている。針仕事を厭う。料理も億劫がる。みょうき潔癖なところがあって、掃除だけはまめにやる。
離婚後の松岡家を支える大黒柱。「やめとき」が口癖。
黒田
全が働いている株式会社黒田縫製の社長。毎月、全の給料の一部を松岡家に養育費として持ってくる。父が死に、自分が社長となったと同時にちょうど無職だった全をデザイナーとして雇い入れた。
松岡文枝
さつ子の母。清澄と水青の祖母。清澄に手芸の楽しさを教えた。
柔軟な思考の持ち主。
水青
清澄の姉。みょうに潔癖なところががある。秋には結婚し、家を出ていく。高校を卒業してすぐに学習塾に就職した。職場でも家庭でも影が薄い。
かわいいと言われること、女の子らしいものが苦手。
全
清澄が一歳の時に離婚した。デザイナーになって自分のブランドを立ち上げる、という目標を胸に和歌山の小さな町から大阪の服飾専門学校に進学。大阪市内のアパレルメーカーに営業職として採用される。現在は専門学校時代の同級生だった黒田の会社でデザイナーの真似事みたいな仕事をしている。
紺野
水青の結婚相手。文枝は善良が服を着て歩いているような人と評した。水青が勤めている学習塾のコピー機のメンテナンスをしている。
みゆき
学習塾で一番人気の講師。
竹下
市役所の生活支援課の中で一番若い。
颯斗
宮多の弟。小学一年生。
マキ
文枝の中学の同級生。
浜田
黒田縫製の従業員。ほとんどが六十台、七十代のなか、三十代で平均年齢を下げている。シングルマザー。
幸田
黒田縫製の従業員。
和子
黒田縫製の従業員。
Posted by ブクログ
母さつ子は、つい子供を否定してしまう。
それは、自分の母に「こうしてほしかった」の裏返し。でも、それをやられるって子供からしたらしんどいものでもある。
親からやることをすぐ否定されていた経験者からすると、「失敗する権利」を諭す祖母の言葉に救われる思いがしたし、息子が祖母に懐くのもわかる気がする。こういう大人が側にいてくれるのはありがたい。あの母しかいなかったら、もっとしんどかったんじゃないかなと思う(私はどうしてもこの母に幼さを感じて、しんどかった)
「あんな風にはならない」と思っているのに相手を傷つけてしまうものなんだなと、人の哀しさを思うし、その中で皆がそれぞれの未知を見つけていくのはよかったなと思った。