筑摩書房作品一覧

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  • 歪な愛の倫理 ――〈第三者〉は暴力関係にどう応じるべきか
    5.0
    DV(ドメスティック・バイオレンス)に代表される、暴力関係から逃れられないひとには、実際、何が起きているのか。問題系を前提とした〈当事者〉ではなく、特定の個人に注目した〈当人〉の語りから議論を始めたとき、〈第三者〉は、どのようにして応答することができるのか。本書は、「なぜ暴力関係から逃れられないのか」という問いへの通説的な見解に対して、再考を迫る。あるべきかたちに回収されない異なるエートスを探求する、刺激的な論考。 【目次】まえがき 親密な関係に生じる暴力を問う――〈当人〉と〈第三者〉のあいだの亀裂/第1章 なぜ暴力関係から逃れないのか【通説編】――専門家らによる見解/1 加害者から離れたがらない被害者たち/2 専門家らによる代表的な回答/第2章 なぜ暴力関係から逃れないのか【異端編】――語られる歪な愛/1 分離以外の解決策の必要性――「離れたくない」/2 〈当人〉の言葉の真正性――「私は相手のことをよく知っている」/3 依存がもたらす救済――「依存によって生きのびられる」/4 欲望される暴力や支配――「私はマゾヒストである」/第3章 分離とは異なる解決策――DVと修復的正義/1 加害者との関係性切断を拒絶する被害者/2 DVにおける修復的正義の実践「サークル・オブ・ピース」/3 DVに修復的正義を適用することへの批判/4 日本の現状と今後/第4章 暴力的な存在と社会的排除――トルーディ事件を考える/1 トルーディ事件/2 トルーディの真正性/第5章 生きのびるためのアディクション――自己治療・自傷・自殺/1 自己治療仮説/2 日本における「生きのびるためのアディクション」/3 見えなくなっていく死(者)/第6章 介入と治療からの自由/1 〈第三者〉にできること:ドラマ『ラスト・フレンズ』から考える/2 自傷他害とパターナリズム
  • 意味がわかるAI入門 ――自然言語処理をめぐる哲学の挑戦
    -
    「AIは言葉の意味を理解している」――2020年に行われた調査で、回答者の半数近くがこのように回答した。2022年に公開されたChatGPTは、当時よりいっそう自然な受け答えが可能だ。はたして現在のAIは言葉の意味を理解しているのだろうか。そもそも意味を理解するとはいかなることなのか――。AIの開発史をたどりながら、現在のAIを支える大規模言語モデルのメカニズムを解き明かし、深い霧に包まれた「意味理解」の正体に一歩ずつ迫る。哲学者によるスリリングなAI入門! 【目次】序章 哲学者、大規模言語モデルに興味を持つ/第一章 AIの歴史──心の哲学を補助線として/1 ダートマス会議にはじまる/2 第一次AIブーム──「一人で立てたよ!」/3 AIの冬(1)──「時バエは矢を好む」?/4 第二次AIブーム──「知識には力が宿っている」/5 AIの冬(2)──「あなたたち人工知能研究者はいつもそうやって噓をつく」/6 第三次AIブーム──「私たちはずっと正しかったのだ」/7 1980年代のコネクショニズム批判/8 残された疑問──ニューラルネットワークは自然言語を扱えるのか?/第二章 自然言語処理の現在──言語哲学を補助線として/1 AIは言葉の意味を理解すると思いますか?/2 意味に対する伝統的アプローチ/3 真理条件意味論に対する疑い/4 コネクショニズム化する自然言語処理/5 分布意味論の批判的検討/6 大規模言語モデルと言葉の意味理解/7 意味と意味理解についてわかったこと、まだわかっていないこと/終章 機械に心は宿るのか?
  • 日常的実践のポイエティーク
    4.3
    読むこと、歩行、言い回し、職場での隠れ作業……。それらは押しつけられた秩序を相手取って狡智をめぐらし、従いながらも「なんとかやっていく」無名の者の技芸である。好機を捉え、ブリコラージュする、弱者の戦術なのだ――。科学的・合理的な近代の知の領域から追放され、見落とされた日常的実践とはどんなものか。フーコー、ブルデューをはじめ人文社会諸科学を横断しつつ、狂人、潜在意識、迷信といった「他なるもの」として一瞬姿を現すその痕跡を、科学的に解釈するのとは別のやり方で示そうとする。近代以降の知のあり方を見直す、それ自体実践的なテクスト。
  • 地学のツボ ──地球と宇宙の不思議をさぐる
    4.2
    地震、火山など災害から身を守るには?地球や生命、宇宙の起源に迫る「私たちとは何か」?実用的知識と、本質的な問いを一挙に学ぶ。カラー口絵とともに理解のツボが一目でわかる図版資料満載。
  • 僕らが世界に出る理由
    4.1
    なにかを始めようと迷っている。一歩踏み出す勇気がない。誰かが背中を押してくれたら……。若い時から世界に飛び出した著者がいろんな疑問に答えます。夢に向かって進む人へ向けた一冊。
  • 子どもをおいて旅にでた
    3.3
    「名探偵ミルキー」シリーズで人気の児童書作家・杉山亮が妻と二人の幼児を残し出かけた若き日の旅の記録。徒歩・野宿・行き先未定・1ヶ月間。そんな風変わりな旅で何を見つけるのか。「子どもをおいて」出る旅は一見、無責任のようだが、家族の結びつきを確認する行為でもある。家族といることが好きなのに、一人にもなりたくなってしまう矛盾を抱えた全ての人に。
  • うんこ文学 ――漏らす悲しみを知っている人のための17の物語
    3.7
    うんこ。だれでもうんこをする。日々のことだから、ときには失敗もする。でも、みんなそれを隠す。うんこは下品、汚いと嫌がられる。下ネタとして笑話にするのがせいぜい。人前で漏らしたりしたら、それだけで多くを失ってしまう。それはなぜなのか? 生きるかなしみとしての排泄、漏らしたときのせつなさ、それを見事に描ききった文学作品を、自身も漏らしたことのある編者が集めた、渾身の名作選!
  • 増補 戦う姫、働く少女
    5.0
    ポップカルチャーには現代女性の働きかたが反映されている――。異性愛と家父長制を否定した『アナと雪の女王』や、アイデンティティの労働がいかなるものかを示した『魔女の宅急便』、「無賃家事労働」の問題をラブコメにおとしこんだドラマである『逃げるは恥だが役に立つ』など、数々の映画やドラマを縦横無尽、クリアに論じた文芸批評を大幅増補・改訂して文庫化。
  • 親子で育てる ことば力と思考力
    4.1
    たくさん単語を暗記してもことば力は育たない。ことばの意味を自分で考えて覚えれば、ことば力、思考力、学力もアップ。その仕組みと方法をわかりやすく伝えます。
  • 勉強ができる子は何が違うのか
    3.7
    成績の良い子は、認知能力の他に、自分をやる気にさせる力や忍耐強く物事に取り組む力や感情をコントロールする力などの、非認知能力を身につけている。さらに、自分をモニターするメタ認知能力にも長けている。実は、学力向上のコツは自分自身を客観的に認識する能力「メタ認知」にある。では、「メタ認知」はどのようにして鍛えられるのか? 勉強ができるようになるためのヒントがここに! 【目次】第一章 成績の良い子と悪い子、何が違うのか?/第二章 やる気も粘りも非認知能力しだい/第三章 自分の学習スタイルをモニターしているか?──メタ認知について/第四章 読書と学力は密接に結びついている── 読解力と認知能力について
  • ルールはそもそもなんのためにあるのか
    3.4
    フランスのアナーキスト、ピエール・ジョセフ・プルードンは言った、「法律は、金持ちにとっては蜘蛛の巣。政府にとっては漁網、人民にとってはいくら身をよじっても脱けられない罠」だと。まさに今の日本の状況そのものじゃないか! 【目次】第1章 ルールは何のために生まれたのか…さまざまな局面に則して多様なルールが作られた/第2章 ルールとして成り立つ必須条件…人は自分が損をしてでも公平さを求める/第3章 フェアプレーの精神…ルールに反してなければいいのか?/第4章 時代に応じて変わるべきルールもある…いつまで異性同士の結婚にこだわる?/第5章 復讐するは誰にあり?…世界が滅ぼうとも刑は執行されねばならない/第6章 なぜ人々は立ち止まらないのか…利己的な人々が自ずと社会秩序を作る/第7章 こんなルールは嫌だ!…中途半端なルールは混乱を生む/第8章 民主主義は公正じゃない…多数決は根拠のない偏見までも温存する
  • 情報公開が社会を変える ――調査報道記者の公文書道
    4.0
    行政が押し進める理不尽な政策。そこに共通するのは、意思決定過程が不透明で結論や負担だけを市民に押しつける点だ。真実を知り、民主主義を守るためには、私たち一人ひとりが行政を監視し、政策をチェックすることが求められる。役所の不正に立ち向かうとき、強力な武器となるのが情報公開制度だ。これまでに千件もの情報公開請求を行い、数々のスクープを伝えてきた調査報道記者が、長年の経験をもとに、そのしくみとテクニックをわかりやすく伝授する。
  • 東京タワーとテレビ草創期の物語 ――映画黄金期に現れた伝説的ドラマ
    -
    東京のシンボルとして親しまれ、数多くの映画やドラマ作品に映し出されてきた東京タワー。本書は、東京タワーが登場する現存最古のテレビドラマ『マンモスタワー』をめぐる若きテレビ産業の奮闘に迫る。この番組が放送された1958年は、映画産業が観客数の最高を記録した絶頂期である一方で、東京タワーが「史上最大の電波塔」として竣工した年でもあった。映像メディアの主役が映画からテレビへと転換していく時代において、その緊張関係を象徴する『マンモスタワー』のユニークな魅力を気鋭のメディア研究者が描き出す。
  • 食卓の世界史
    4.0
    地理的条件、調理技術、伝統、交易の盛衰――「料理」を通してみると、歴史はますます鮮やかになる。古今東西の英雄から、時には庶民の食卓まで、興味深いエピソードと歴史的なレシピで案内する。 【目次】1 ハンムラビ 古代メソポタミア野菜の「三本柱」/2 アレクサンドロス三世 食事は質素で大酒飲み/3 ネロ 絶滅危惧種最後の一本/4 楊貴妃 茘枝は幼少期の味/5 ハールーン・アッ=ラシード 食は市場にあり/6 バシレイオス一世 古代から中世へ/7 チンギス・ハン  「赤い食べ物」「白い食べ物」/8 マルコ・ポーロ 大旅行家が観察した食事情/9 コロンブス 近世の食卓へ/10 エルナン・コルテス 「コロンブス交換」の時代/11 スレイマン一世 多様な遺産を継承するオスマン帝国/12 カトリーヌ・ド・メディシス 「伝承」の真実/13 ルイ14世 洗練されたサーヴィスの確立/14 フリードリヒ二世 コーヒーではなくビールを飲め!/15 リンカーン 感謝祭とクレオール料理/16 コナン・ドイル 大英帝国のカレー/17 夏目漱石 一生にして三食を経る/18 マクドナルド兄弟 ファストフードの誕生
  • ルポ 歌舞伎町の路上売春 ――それでも「立ちんぼ」を続ける彼女たち
    3.5
    2022年の晩秋、歌舞伎町の一角で「立ちんぼ」をする若い女性が急増した。「たちんぼ」とは路上売春のことだ。風俗店で働くのとは違い、買春客に金を奪われたり、ラブホテルの密室で暴力を振るわれたりといったリスクがあるにもかかわらず、彼女たちはなぜ路上で「売る」のか。毎日新聞社会部記者が、60人以上の女性たちのほか、自分たちに貢がせようとするホストたち、彼女らを支援し続けるNPO、路上売春を取り締まる警察など、100日以上にわたって多角的に取材、その「リアル」に迫ったルポ。
  • 安楽死が合法の国で起こっていること
    3.8
    日本にも、終末期の人や重度障害者への思いやりとして安楽死を合法化しようという声がある一方、医療費削減という目的を公言してはばからない政治家やインフルエンサーがいる。「死の自己決定権」が認められるとどうなるのか。「安楽死先進国」の実状をみれば、シミュレートできる。各国で安楽死者は増加の一途、拡大していく対象者像、合法化後に緩和される手続き要件、安楽死を「日常化」していく医療現場、安楽死を「偽装」する医師、「無益」として一方的に中止される生命維持……などに加え、世界的なコロナ禍で医師と家族が抱えた葛藤や日本の実状を紹介する。
  • 「家庭」の誕生 ――理想と現実の歴史を追う
    4.0
    イエ、家族、ホーム、ファミリーなど、多くの名が生まれた理由は、その言葉を用いないと表現できない現象や思いがあったためだ。「家庭」には、リベラル、保守、それぞれの理想が託されてきたが、一方でその理想と現実には様々な乖離があった。明治から昭和、平成、現代まで、それらをめぐる錯綜した議論をときぼぐしていくことで、近現代日本の新たな一面に光をあてる。
  • 洲崎パラダイス
    3.5
    「橋を渡ったら、お終いよ。あそこは女の人生の一番おしまいなんだから」(「洲崎界隈」より)。江東区にあった赤線地帯「洲崎パラダイス」を舞台に、華やいだ淫蕩の街で生きる女たちを描いた短篇集。男に執着する娼婦あがりの女の業に迫る表題作「洲崎パラダイス」、満洲帰りで遊郭に身を落とした老女の悲しみをとらえた「洲崎の女」を含む全6篇を収録。
  • 須弥山と極楽 ――仏教の宇宙観
    5.0
    須弥山とは、高さ約56万キロメートル、天神らが暮らす想像上の高峰である。5世紀頃インドで書かれた仏教論書『倶舎論』はこの須弥山を中心とする壮大な宇宙を描き出し、仏教が宇宙をどう捉えたかを詳細に解説した。本書は、『倶舎論』を基礎に他説も参照し、仏教宇宙観を簡明に記す。人間より優るが欲望の虜である天神とはいかなる存在か。「蛆虫に骨をうがたれる」といった地獄の責苦、世界を構成する四大と極微、宇宙の消滅と生成のサイクルなど、幅広く解説。後代に現れる極楽浄土の思想をも取り上げて、人生を苦とし、輪廻と解脱の思想を根底とするこのユニークな体系の変遷をたどる。長年読み継がれてきた入門書。
  • 記録 ミッドウェー海戦
    5.0
    1942年6月のミッドウェー海戦は、日本がアメリカに大敗を喫し、太平洋戦争の転換点となった海戦である。この海戦の取材は著者の予想を越えて、約7年に及ぶ壮大なプロジェクトとなった。日米双方の戦死者を調査し、戦闘経過を史料から跡付け、敗戦原因の定説であった「運命の5分間」に異を唱えることとなったのだ。本書は、ときにミッドウェー島へ赴き、日本側3056名、アメリカ側362名の戦死者の生年、所属階級、家族構成などをあらゆる手をつくして突き止め、手紙やインタビュー等を通じて戦死者とその家族の声を拾い上げた圧巻の記録である。「彼らかく生き、かく戦えり」。全名簿と統計を付した第一級の資料。
  • 「予測」で読解に強くなる!
    3.8
    予測は、つぎに出てくる内容を絞ることで、読解を、速く楽しく正確にするものである。豊富な具体例でそのコツを体感しながら、読み上手・書き上手をめざそう。
  • おとなになるってどんなこと?
    3.9
    勉強のこと、友だちのこと、死、そして生きること…人生の根幹に関わる大切な8つのことについて、これから大人になる子どもたち、そして大人になるって難しい…と思っている人たちへ向けたメッセージ。
  • たったひとつの「真実」なんてない ――メディアは何を伝えているのか?
    3.9
    メディアはすべて、事実と嘘の境界線上にある。それをまず知ろう。ニュースや新聞は間違えないという思い込みは捨てよう。でも嘘ばかりというのは間違い。私たちに不可欠となっているメディアを正しく使う方法とは?
  • 辞書からみた日本語の歴史
    -
    「日本語の歴史」シリーズ第2弾。現代において辞書は買って使うものだが、江戸時代以前は写すことで所持し、自分で作り上げるものだった。辞書の「作り手」「使い手」の姿を通して、各時代の日本語を活写する。
  • 漢字からみた日本語の歴史
    3.7
    日本語の歴史とは、漢字の両側に、中国語と日本語とが、緊張関係を保ちつつ形成してきた歴史。万葉集の時代から明治期にかけて、日本語とその表現は多様化していった。しかし現代は?漢字という乗り物に乗って、日本語の豊かさを探る旅に出かけよう。
  • 「悪所」の民俗誌 ――色町・芝居町のトポロジー
    3.0
    「“悪”という言葉の裏側には、だれきった日常性を破壊するデモーニッシュな力が潜んでいた」(「あとがき」より)。都市の盛り場は、遊女や役者など賤視された「制外者」たちの呪力が宿る場所だった。なぜ、ひとは「悪所」に惹かれるのか。芸能を業とする人びとは、どのように暮らし、どんな芸を生み出したのか。「遊」「色」「悪」の視座から日本文化の深層をさぐる。
  • 樺太一九四五年夏 ――樺太終戦記録
    4.0
    第二次大戦における沖縄戦が「国内唯一の地上戦」と語られることがある。しかし実際にはもう一つの熾烈な地上戦があった。旧日本領南樺太へのソ連侵攻である。1945年8月9日朝、ソ連軍は突如日ソ中立条約を破棄し、日本軍の軍事施設、警察施設を攻撃する。侵攻を想像しなかった日本側には、戦車の鋼板を打ち破れる火砲は数門あるのみ。残された手段は破甲爆雷を背負って飛び込むしかなかった。満足な武器もない兵士たちはわが家の見える丘の上で死んでいき、守る者のいない市民は地獄の苦しみに突き落とされた。わずか2週間で4千人以上の戦死者を出した悲劇の記録。
  • 世界がわかる宗教社会学入門
    4.0
    宗教なんてうさんくさい。うっかりハマったら怖い。だから近づかない。多くの日本人はそう思っている。だけど、どんな国でも地域でも、宗教はすっかり日常に溶け込んでいる。文化や価値観の骨格であり、それゆえ紛争のタネにもなる。宗教を知らなければ、世界の人びとを理解することはできないのだ。この本では、世界の宗教を理解するための基礎中の基礎を紹介。「人類の叡智としての宗教」のエッセンスが詰まった、小さいながら充実の入門書。
  • 地方豪族の世界 ――古代日本をつくった30人
    4.0
    古代の地方の人びとはどのように暮らしていたのだろうか。史料の残っている豪族クラスの人物の活動に光を当てれば、彼らがいかに躍動していたかかがわかる。郡・郡司、国衙機構や在庁官人の研究により地方支配の歴史的変遷をたどり、立体的な地域史を復元してきた著者が、神話・伝承の時代から奈良時代末まで、そこから平安時代末までに活躍したそれぞれ15人の人物を選出。一般読者向け古代史書ではあまり扱われない人物30人を紹介し、地方の動向や中央との関係を通時的に描き出す。 【目次】はじめに/I 古代国家の形成と展開/1 八束水臣津野命──国引きから国造りへ/2 野見宿禰──相撲と埴輪のはじまり/3 上毛野君の祖荒田別──海外への雄飛/4 上道臣田狭──吉備氏の力/5 筑紫君磐井──中央集権化への画期/6 箭括氏麻多智──神々との交渉と開発の推進/7 笠原直使主──国造制の施行/8 朴市秦造田来津──白村江戦での奮闘/9 尾治宿禰大隅──壬申の乱を勝利に導いた力/10 他田神護──中央出仕と郡司就任/11 壬生直小家主──後宮を支えた女性官僚/12 高麗朝臣福信──天皇への近侍と地域への貢献/13 生江臣東人──東大寺領の開発/14 田中真人広虫女──郡司妻の経営手腕/15 越優婆夷──仏教信奉の利益/II 古代国家の成熟と転換/16 伊治公呰麻呂──征夷三十八年戦争のはじまり/17 入間宿禰広成──征夷事業を支えた坂東の豪族/18 槻本公老──桓武天皇即位秘話/19 大墓公阿弖流為──坂上田村麻呂とも対峙した蝦夷の英雄/20 佐伯直真魚(空海)──真言宗の将来と布教/21 壬生吉志福正──国分寺塔の再建と子息涯分の租税前納/22 春澄朝臣善縄──祖父の学業支援と最優秀成績者の足跡/23 円仁──入唐求法の辛苦と天台密教の確立/24 於保臣(磐城臣) 雄公──地域を支配する郡司氏族の力/25 武蔵武芝──平将門の乱を誘発したもう一つの武士への道/26 真髪成村──膂力の相撲人/27 安倍頼時──源頼義・義家との対決/28 阿波民部大夫成良──神戸港の礎を築いた平清盛の家人/29 伴信明──島津庄の経営と薩摩平氏との対立/30 伊福部臣資経──流人源頼朝を支援した余慶/おわりに/人名索引
  • 世界中で言葉のかけらを ――日本語教師の旅と記憶
    3.8
    「ぜんぶ英語でいいじゃない」という乱暴な意見に反論し、複言語能力の意義を訴え続けてきた日本語教師が、中国の雲南省、セルビア、フランス、ブルガリア、ハンガリー、エストニアなど、世界の各地を旅して慣れない言葉を使い、感心し、絶句し、立ち止まり、また歩き出す。あるいは日本語を教えていて、慣れない言葉を使う学生たちの日本語の魅力に気づく――そのような、言語を体験した驚きの瞬間とその記憶を読者の皆さんと共有したいという想いから綴られた、言葉をめぐる旅の記録。 【目次】まえがき/第一章 ちがう言葉でおなじ世界を夢に見る──日本語教師としての経験から/1 落ち葉を拾う/2 週末、何をしましたか?/3 いつも、はなちゃんのせい/第二章 どうかあらゆる泉に敬意を──「ぜんぶ英語でいいじゃない」への長い反論/1 君は僕の髄液/2 地図と鉛筆と紙があれば/3 色気あるカミュの声と、「せんせい、まっておれ!」/4 積みあげれば自分の背の高さになるまで/5 おばあちゃんと話したいから/6 ひとつのちから/第三章 そういえば猫さえも国がちがう──三者三様の言語教師/1 良い風が巡っていますように/2 私はワイマールに生まれました/3 ひまわり畑がすごくって/第四章 ぶらごだりや──言葉が通じない場所への旅/1 長く、安く、遠くに/2 季節はずれのサンタクロース/3 みなさまのために歌います/4 レモンをはさんだ枝で/第五章 さえぎらないで、妄想中だから──歩くこと坐ること、食べること着ること/1 行きなさい、迷うことはない/2 あの味を手に入れるために/3 へりに立つ人/4 はじめてのママ友/5 あなたに平安がありますように/6 風をさがす――二〇二〇年/注/あとがき
  • 資本主義の〈その先〉へ
    -
    1巻2,420円 (税込)
    「終わり」が語られながらも、“その先”が見えてこない資本主義。資本主義の概念を大幅に刷新し、“その先”へ行くための原理を示した決定的論考! 異なる世界の可能性。
  • すべての雑貨
    3.3
    「世界がじわじわと雑貨化している気がする。これは豊かになって物の種類が増えたから、ってだけじゃない。それまでは雑貨とみなされてなかった物が、つぎつぎと雑貨に鞍がえしているせいなのだ」 ひとりで雑貨店を営む著者は、この社会のあらゆる事物を手がかりに「雑貨とは何か」を帳場で考えた。雑貨、消費社会、店の経営、人生についての、とても面白いエッセイ。
  • 身近な植物の賢い生きかた
    4.0
    植物は身近な存在ながら、人間とは姿形も生態もまったく違う。一見頼りなげにも見える彼らの生きかたとは? 昆虫とのかけひきと飽くなき攻防、乾燥に強い植物の高性能システム、葉のつきかたに隠された数列や黄金比、早春の花の色が黄色いわけなど、不思議だが卓抜、たくましく賢い、納得の生存戦略が見えてくる。
  • 体育がきらい
    3.8
    先生はエラそうだし、ボールは怖い!★体育なんか嫌いだ!という児童生徒が増えています。なぜ、体育嫌いは生まれてしまうのでしょうか。授業、教員、部活動。問題は色々なところに潜んでいます。そんな「嫌い」を哲学で解きほぐせば、体育の本質が見えてきます。強さや速さよりも重要なこととは? 「『体育』なんて好きにならなくてもいい」のです。最も重要なことは、みなさんが多様な他者とともに、自分自身のからだで、賢く、幸せに生きていくことです。そのためにも、たとえ体育の授業や先生、運動部やスポーツが嫌いになったとしても、みなさん自身のからだだけは、どうか嫌いにならないでください。(「おわりに」より)■はじめに/第一章 「体育ぎらい」のリアル/第二章 体育の授業がきらい「規律と恥ずかしさ」/第三章 体育の先生がきらい「怖くても、ユルくても」/第四章 運動部がきらい「体育教師らしさの故郷」/第五章 スポーツがきらい「残酷で、すばらしい文化」/第六章 そもそも運動がきらい「だからこそ、からだに還る」/おわりに
  • ケアしケアされ、生きていく
    4.1
    他人に迷惑をかけていい!!★ケアは弱者のための特別な営みではない。社会の抑圧や呪縛から抜けだして、自分のありのままを大切にするような、お互いがケアしケアされるそんな社会を目指そう!★ 〈著者からひと言〉この本は、ケアから逃げてきた私が、ケアと出会い直すことによって見えてきた世界を、みなさんにも馴染みがある3つの視点から考えてきた本です。1つめは20歳の大学生の世界です。私は大学生を20年近く定点観測してきました。その上で、今の学生が「他人に迷惑をかけてはいけない憲法」に縛られて、生きづらさを抱えているように思えます。それは一体どういうことなのか、を考えてみました。2つめは6歳の子どもの世界です。私の娘は今、6歳なのですが、「迷惑をかけまくって」楽しく生きています。安心して迷惑をかけられる環境で、のびのび生きています。でも、ちゃんとしなさい、と叱り続けると、そのうち親や教師を忖度する大学生になるのではないか、と心配しています。なぜ、のびのびした子どもが、その十数年後には「他人に迷惑をかけてはいけない」と縮こまる大学生になるのか? その背景を考えるうえで、3つめの世界、「昭和98年的世界」を生きる48歳の私の世界を考えています。昭和が終わって30年以上経っても、日本社会の基本的なOSは昭和時代のままです。理不尽な労働環境でもがまんする、抑圧的環境に「どうせ」「しゃあない」と諦める。それが、女性の管理職や政治家比率が低く、イノベーションが生まれにくい「失われた30年」の背景にあると私は考えています。そして、この世界は「ケアレス」な世界です。この閉塞感をこえるためには、日本社会がケア中心の社会に変われるか、が問われています。能力主義や男性中心主義の呪縛の外にある世界です。それは、共に思い合う関係性が重視されるし、そのためには自分自身の「唯一無二性」とも出会い直す必要があります。そんなの無理だよ!と理性の悲観主義に陥らず、ではどうやったらケア中心世界は可能なのか、について、できる一つの可能性を模索したのが、本書です。中高生にも読んでもらえるよう、わかりやすい文体を目指しました。よかったら、読んでモヤモヤしてくださると、嬉しいです。 竹端寛■【目次】 第一章 ケア? 自分には関係ないよ!/一 「迷惑をかけるな憲法」/他人に迷惑をかけてはならない/都合のいい子!?/大人から学んだ「いい子」/二 しんどいと言えない/意見を表明する権利/他人の顔色をうかがう/苦しいことと苦しみ/三 自分自身を取り戻す/ゼミで涙を流す学生/ペラペラしない他者/ about-ness からwith-nessへ/四 面倒な中に豊かさがある/ケア不在を超えるために/自分の魂に迷惑をかける?/第二章 ケアって何だろう?/一 確かに面倒なのだけれど/めっちゃ可愛く、めっちゃややこしい/存在をぶつける/意見表明の主体としての子ども/一方的にケアされる存在ではない!/二 自分へのケアと他人へのケア/子どもの「開かれ」/自分の人生へのリミッター/忖度の危機/作られた悪循環/偽解決を超えるために/三 他者へのケアの前に/支援か支配か?/関係性のダンス/同調圧力に異を唱える/誰へのケア?/四 互いが気にかけあう/自分へのケア/共に思いやること/ with-ness で生活を回す/何を見ようとしてこなかったのか/第三章 ケアが奪われている世界/一 ケアのないわたし/ケアレスとはなにか/同調圧力と「空気を読む」/自己責任とわきまえ/ケアレスな社会/二 「昭和九八年」的世界/労働ファースト/最も眠れていない国/頑張れば報われる、の呪い/前時代の大成功、ゆえに/三 標準化・規格化の「大成功」の陰で/昭和の成功を支えたもの/銀行型教育システムへの囚われ/「正解」幻想/昭和的価値観の限界/四 ケアの自己責任化を超えて/「発達」の「障害」?/置き去りにしてきたケア世界/自分が学んだことはこれなのか!/「ちゃんと」のリミッターを外す/第四章 生産性至上主義の社会からケア中心の社会へ/一 生産性とケア/誰のための、何のための効率?/男性中心主義の外にある世界/能力主義の呪縛/「生産離脱者」の排除/二 責任の共有化で楽になる/依存先を増やす/関係性に基づくケア/懲罰ではなくエンパワーする責任/切り分けるのではなく、分かち合う責任/三 共に思い合う関係性/中核的感情欲求と向き合う/生き様の理解と支援/迷惑をかけるな、より大切なもの/他者の他者性に気づくこと/四 ケア中心の社会へ/己の唯一無二性とも出会い直す/魂の脱植民地化/葛藤を共に味わい社会化する/できる一つの方法論
  • ルポ 高学歴発達障害
    3.6
    「ケアレスミスが多い」「人間関係がうまくいかない」――生活や仕事上で問題を抱える「大人の発達障害」が注目を集めて久しい。実はその中に「高学歴でありながら、発達障害を抱えている人」が少なからず存在する。「エリート」のイメージと「障害」の実情の狭間で理解が得られず、周囲と自分を比べては落ち込み、アイデンティティの葛藤を抱える……。当事者、大学教員、精神科医、支援団体への取材を通じて、発達障害が取りざたされる背景にある「異質であること」「非効率的であること」に不寛容な社会の姿を浮かび上がらせる。
  • 道徳的に考えるとはどういうことか
    5.0
    その考えは正しいか正しくないか、あるいはそれをすべきか否か――。私たちは日々、様々な道徳的判断を迫られ、あるときは自然に、また別のときには悩みに悩んで結論を下す。こうした判断はしばしば、自分たちの外部にある絶対的な規準を個別の現実に当てはめるものとして思い描かれる。だが、そんなふうにすべてを一刀両断できる規準などありうるだろうか。「非主流派倫理学」の立場からプラトン、ウィトゲンシュタイン、一ノ瀬正樹、槇原敬之らの実践を取り上げることで、道徳的思考の多様で奥深い内実を浮き彫りにする哲学的探究。
  • 世界を動かした名演説
    3.8
    名演説とは時代や歴史、社会問題や政治運動を色濃く記録したサムネール(縮図)だ! 武器にもなり癒しにもなる言葉の力とは。チャーチルの第2次世界大戦の戦況を逆転させた演説から、ドイツ発史上最強の謝罪演説、ゼレンスキーの戦時下演説まで。冷戦、戦争責任、グローバルサウス、人種差別、宗教戦争、コロナ禍そしてウクライナ戦争。現代史と世界情勢の要点を、話術のコツと合わせて総覧し、歴史に残る名言を味わい尽くす。
  • 実践!クリティカル・シンキング
    3.4
    クリティカル・シンキングの目的は、与えられた推論が正しいか正しくないかを判断し、正しくないときにはどこがどのように間違っているのか見つけ出す能力を鍛えることだ。そのために自分の頭で論理的に考える「思考力」を身につけることは欠かせない。しかし、その「思考力」は生まれ持ったセンスで決まるものではない。推論の型を「構造図」としてとらえる訓練を積むことで身につく能力なのだ。新しく、実用的なクリティカル・シンキング入門。
  • 近代美学入門
    4.3
    近代美学は、17~19世紀のヨーロッパで成立しました。美学と言っても、難しく考えることはありません。「風に舞う桜の花びらに思わず足を止め、この感情はなんだろうと考えたなら、そのときはもう美学を始めている」ことになるからです。本書は、芸術、芸術家、美、崇高、ピクチャレスクといった概念の変遷をたどり、その成立過程を明らかにしていきます。
  • 霊魂の民俗学 ――日本人の霊的世界
    -
    出産・七五三・成人・結婚・葬送など日本人が経験する人生儀礼や、各地に伝わる習俗や祭りのなかには、いかなる「霊魂観」が反映されているのだろうか。本書は、ミロク信仰から都市伝説までの多様な事例とともに、霊魂という実在が「この世」と「あの世」のあいだを往還するという日本独特の世界像と、その移動にともなって不安定になる霊魂をおちつかせるためにも儀礼が必要とされたことを説く。迷信の一言では片づけられない、日本の生活文化にいまも息づくアニミズム的心性を解明した宮田民俗学の真髄。講演記録を中心に編集された、平明な語り口による一冊。
  • 古代日本の宮都を歩く
    4.0
    よく知られるように平城京・平安京以外にも、古代には数多くの宮都があった。王権の所在地であり国家統治の中枢だった王宮は、やがて「百官の府」と称され、京域に貴族官人や庶民が集住し都市文化が萌芽。それは遷都と造都を繰り返す中でもたらされた。半世紀以上にわたり、古代の宮都を訪ね歩いてきた著者が、過去の景観と現在を比較し、文献史料を再検討することによって、宮都の知られざる事実を掘り起こす。通説にとらわれずに史実を明らかにしてきた碩学による宮都案内。
  • 世界リスク社会論 ──テロ、戦争、自然破壊
    3.3
    現代社会が生み出したリスクは、われわれの世界をどう変えたのか? 国境を無効化してしまうテロリズムの遍在と、それに対抗して形成される「対テロ連合」という諸国家間の結束。環境破壊や核の脅威をもたらす一国家の決断に対する、国を超えた草の根レベルの運動の勝利。リスクはグローバル化を促進し、内外、上下、あらゆる角度から「国家」という枠組みを掘り崩して、近代社会の根本原理に見直しを迫っている。このリスクにいま、いかなる危機と可能性が秘められているのか。現代ドイツを代表する社会学者が鋭く切り込む。『危険社会』の著者によるもっともわかりやすくコンパクトな入門書。
  • 無言板アート入門
    3.6
    誰かがなにかの目的で立てたはずなのに、雨風や紫外線などの影響で文字が消えてしまった街角の看板たち。そんな“もの言わぬ看板”=「無言板(Say Nothing Board)」を、作り人知らずのストリートアートとして鑑賞する。美術評論家である著者が、まち歩きの道すがらに発見、収集した路上の芸術をカラーで約200点収録&解説。これを読めば、いつものさんぽ道がまったく新しい美術館に見えてくる!
  • 読んでいない本について堂々と語る方法
    4.0
    本は読んでいなくてもコメントできる。いや、むしろ読んでいないほうがいいくらいだ――大胆不敵なテーゼをひっさげて、フランス文壇の鬼才が放つ世界的ベストセラー。ヴァレリー、エーコ、漱石など、古今東西の名作から読書をめぐるシーンをとりあげ、知識人たちがいかに鮮やかに「読んだふり」をやってのけたかを例証。テクストの細部にひきずられて自分を見失うことなく、その書物の位置づけを大づかみに捉える力こそ、「教養」の正体なのだ。そのコツさえ押さえれば、とっさのコメントも、レポートや小論文も、もう怖くない! すべての読書家必携の快著。
  • 中世の覚醒
    5.0
    12世紀の中世ヨーロッパ、一人の哲学者の著作が再発見され、社会に類例のない衝撃を与えた。そこに記された知識体系が、西ヨーロッパの人々の思考様式を根底から変えてしまったのである。「アリストテレス革命」というべきこの出来事は、変貌する世界に道徳的秩序と知的秩序―信仰と理性の調和―を与えるべく、トマス・アクィナスをはじめ、キリスト教思想家たちを激しい論争の渦へと巻き込んでいった。彼らの知的遺産は、現代にどのような意義を持つのであろうか。政治活動の発展と文化的覚醒が進んだ時代の思想を物語性豊かに描いた名著。
  • 法の概念〔第3版〕
    4.5
    法とは何か。それは単なる命令とどう異なり、道徳や慣行といかに関わるのか。なにゆえ法は、私たちを従わせる規範としての力をもつのだろうか。こうした難問をめぐって有力に唱えられてきた主権者命令説や自然法論はいずれも十分でない。法の特質は、人々の行動を方向づける一次ルールと、何がルールかについて定める二次ルールとの組み合わせとして理解されねばならないのだ。1961年に初版が刊行された本書は、このような革新的な視点を打ち出すことで法哲学のあらたな地平を切り拓き、分野を越えて巨大な影響を及ぼした。初版への批判に応えた「後記」をも含む改訂版を、平明な新訳でおくる。
  • ロシア・アヴァンギャルド ――未完の芸術革命
    4.0
    既存の価値観に対する攻撃とともに、ロシアでは20世紀初頭に産み落とされた前衛芸術。1917年の社会主義革命に先行したその活動は、芸術革命に呼応するものとして政治革命に同調し、昂揚する民衆のエネルギーに支えられて、芸術運動を展開してゆく。これがロシア・アヴァンギャルドと呼ばれる運動である。しかしそれはやがて、スターリン体制から「形式主義」として批判され、芸術の論理によらず粛清され抹殺されてゆく。マヤコフスキー、マレーヴィチ、メイエルホリドなど、激しい時代を生きた芸術家たちの活動に光をあて、その再評価の嚆矢となった20世紀美術史の名著。
  • 発展する地域 衰退する地域 ──地域が自立するための経済学
    4.3
    大都市の気ままな流行りや、公共事業、工場誘致に頼るのはもう終わりにしよう! それぞれの地域が持つ財を利用し、住民の創意を生かした活動をしない限り、経済的発展はない! かつてのベネチアのように、必要なものを自らの手で作り、近隣地域と共生的な交易を行えば、技術は高まり、雇用も生まれ、地域は自然と活性化する。アメリカで大規模再開発により街が「死んで」いく過程を観察したジェイコブズは、街や地域が生み出すダイナミズムに注目、経済が発展・衰退する鍵を、古今東西の無数の例から探り出した。地域が自立するための処方箋を描いた先駆的名著。
  • 南北戦争を戦った日本人 ――幕末の環太平洋移民史
    -
    南北戦争の兵役記録には2名の日本生まれの兵士の名がある──サイモン・ダン、ジョン・ウィリアムズ。英語名の彼らは誰なのか? なぜアメリカにいたのか? その人物像は? 人の移動が厳しく制限されていた日本を離れ、アメリカに生きた/生きねばならなかった彼らの消息を、日米両国の資料から丹念に探査する。漂流民、密航者、あるいは幕府使節の脱落者……海を渡った日本人移民の歴史と19世紀中頃のアメリカ社会史が、アメリカ戦史上最大の死者を記録した南北戦争で交差する。 【目次】序章 日系アメリカ人二世テリー・シマとの出会い──はじめに/1 南北戦争に従軍した日本人がいた/2 アジア・太平洋系移民と日本人移民/3 南北戦争に従軍した日本人──これまでの研究と人物像/第1章 南北戦争とマイノリティ──アジア・太平洋系移民/1 南北戦争前の移民動向/2 一八六三年連邦徴兵法/3 アジア・太平洋からの移民兵士/4 中国人兵士の記録/5 中国人兵士の表象/6 マイノリティとしての立場/第2章 日本生まれの二人に近づく──アメリカでの記録から/1 サイモン・ダン/2 ジョン・ウィリアムズ/3 報奨金とブローカー/4 さらなる探索/第3章 漂流者・密航者たち/1 漂流者たち/2 漂流者ジョセフ・ヒコ/3 漂流者の実像/4 密航者たち/第4章 幕末の日本人の移動──使節団と密航者との接点/1 幕末の使節団/2 咸臨丸の概要/3 乗組員と不明者/4 乗組員の記録──センサスと死亡統計/5 万延元年の遣米使節団/6 竹内使節団と池田使節団/7 留学生/終章 旅の終わりに/あとがき
  • 北京の歴史 ――「中華世界」に選ばれた都城の歩み
    -
    1巻2,090円 (税込)
    黄河文明の辺境に位置し、江南文化とも遠く離れた長城地帯に近接する政治都市・北京。古代国家の首府でもあったこの地は、「中華世界」の拡大とともに、いかにして辺境の地から中心地へと飛躍してきたのか。古代から現代まで長きにわたるその歴史をダイナミックに描き出す。漢族と非漢族、農耕と遊牧という対立する要素が交流・融合する、坩堝としての都城が果たした役割にも注目。多民族国家中国の首都に選ばれ続けてきた波瀾万丈の歴史から、伝統中国の政治文化の本質に迫る。 【目次】はじめに/第一章 文明の辺境──燕国/1 のちに「北京」と呼ばれる地域空間/2 薊城──都市「北京」の起源/3 戦国の七雄としての燕/第二章 東北の重鎮──幽州/1 郡県と封建のゆらぎ/2 諸族融合の坩堝/3 中原諸王朝の前進基地/第三章 諸族争奪の舞台/1 早すぎた大燕皇帝の登場──安史の乱/2 燕雲十六州問題──胡・漢最大の係争地/3 政治的中心地への道──遼の「南京」/第四章 中都から大都へ/1 宋朝に格下げされた「燕山府」の混乱/2 金の海陵王と「中都」遷都──はじめての帝国首都/3 クビライの「大都」建設/第五章 華夷一統のために/1 漢族王朝の再興と北京遷都/2 北京定都と嘉靖帝の都城改造/3 近世東アジアの百万都市/第六章 拡大された中華帝国/1 明清交替/2 非漢人政権にして中国の正統王朝/3 タタール・シティとチャイニーズ・シティ/第七章 皇帝の住まなくなった紫禁城/1 紫禁城──外朝と内廷/2 拡大された中華世界の三つの中心/3 円明園炎上/終章 廃墟からの再生/1 北京最後の日/2 天安門での建国セレモニー/主要参考文献/あとがき/図版出典一覧/人名索引
  • はじめてのフェミニズム
    3.7
    女性にはどんな権利が必要? 「女の仕事」はどう生まれた? 多様で複雑なフェミニズムの論点を、多様で複雑なまま、でもわかりやすく伝えます。
  • あの頃、忌野清志郎と ──ボスと私の40年
    4.2
    忌野清志郎の元マネージャーによるリアル清志郎伝。中学生の頃、テレビで見て以来熱烈なファンになり、ついには所属事務所に入社。衣裳係、マネージャーとして音楽活動を支えた著者が、40年間見つめてきた清志郎の素顔を愛情溢れる言葉で回想する。清志郎直筆の手紙やイラストに加え、文庫化に際して清志郎亡きあとのエピソードをボーナストラックとして収録する。
  • 痛みを希望に変えるコミュニティデザイン
    -
    1巻1,870円 (税込)
    四国こどもとおとなの医療センター、遠くからでも目を引くおおらかな樹々が描かれたその病院は、いつもどこかが変わり続けている。「そこに居ること」を皆が意識できる場所づくりとは? 病院という本来、痛みが多い空間を温かい場所に変えるためには? 日本では珍しいホスピタルアートディレクターを置いた病院の挑戦と軌跡──。
  • 大還暦 ――人生に年齢の「壁」はない
    3.0
    人間は、どうやら120歳(大還暦)まで生きることができるらしい――そんな時代に長い老後をどう生きて、どう死んでいくのか。それを考える上で、「宗教」は役に立つのか。宗教学者の著者が、日本人の死に方、生き方、宗教の衰退について、そして、最期まで充実して楽しく過ごすにはどうしたらいいかを考える。秘訣は「怒らない」「超然とする」「自分にとって切実な、学ぶテーマを見つける」!
  • ランキングマップ 世界地理 ――統計を地図にしてみよう
    3.3
    自然環境は悪化している? 人口はまだ増え続けるの? ランキングと地図で世界の地理を可視化すると、これまでとは違った変化がみえてくる。トリビアな話題から深刻な問題まで、高校の地理教師が自作の地図を駆使して解説する。
  • エネルギー危機の深層 ――ロシア・ウクライナ戦争と石油ガス資源の未来
    4.3
    ロシア・ウクライナ戦争の背後で繰り広げられる、エネルギーをめぐるもう一つの戦い。企業活動や私たちの生活に深刻な打撃を与え、国際エネルギー機関が「史上初のエネルギー危機」とまで呼ぶ今日の危機的状況はなぜ引き起こされたのか。本書では、ウクライナ侵攻とそれを契機とする制裁の応酬について、エネルギーの視点から徹底的に読み解くことで、石油・天然ガスをめぐる最新地図と、その深層にある流れを明らかにしていく。近年の脱炭素潮流も踏まえつつ、エネルギー資源をめぐる世界情勢とその未来に光を当てる現代の必読書。
  • ガンディーの真実 ――非暴力思想とは何か
    4.7
    ★中島岳志氏推薦! 「今後、この本を抜きにしてガンディーを語ることはできないだろう」★ 贅沢な食事をしないこと、搾取によってつくられた服を着ないこと、性欲の虜にならないこと、異教徒とともに生きること、そして植民地支配を倒すこと――。ガンディーの「非暴力」の思想はこのすべてを含む。西洋文明が生み出すあらゆる暴力に抗う思想・実践としての非暴力思想はいかに生まれたのか。真実を直視し、真実と信じるものに極限まで忠実であろうとしたガンディーの生涯そのものから、後の世代に大きな影響を与えた思想の全貌と限界に迫る。ガンディー研究を一新する新鋭の書!
  • 古代史講義【海外交流篇】
    3.3
    邪馬台国、倭の五王の時代から平安時代の鴻臚館交易にいたるまでの時代を追って、日本列島と中国の隋・唐や高句麗・百済・新羅・加耶など半島諸国、さらに渤海といった東アジアとの多面的な海外交流の実情を解説。諸地域との間に起きた政治的事件や文化交流をテーマとした十五講で最新の研究状況を紹介しながら、時代背景としての列島古代の国際的環境の実像を明らかにする。東アジア的視野から海外交流・国際関係をとらえ直し、グローバルな歴史像を展開する新しい古代史。
  • 現代フランス哲学
    5.0
    1968年五月にパリで起こった「革命」を起点に、若者や労働者を巻き込み、時代や経験に深く根ざす思想運動として発展した現代フランス哲学。資本主義の矛盾や構造的な抑圧がさまざまに露呈する1980年代以降、それは大きな変化を遂げた。構造主義からポスト構造主義を経て、政治や宗教、労働、ジェンダー/フェミニズム、科学と技術、エコロジーをめぐる諸思想にいたるまで。フーコー、ドゥルーズ、デリダに続き、変容する社会を鋭くとらえる強靭な思想の広がりを一望する。
  • 問いを問う ――哲学入門講義
    4.0
    哲学とは、昔の人の考えや言葉を知って、理解することではない。哲学上の根本問題に自ら立ち向かうことでしか、哲学はできない。「私たちの心を超えた世界を知ることはできるか?」「他者の心を知ることはできるか?」「心と脳の関係はどのようなものか?」「死んだら無になるのか?」――本書では、この四つの問題を素材に、哲学の核心へと一気にいざなう。問いの意味そのものを問いなおすこと。相対立する議論のやり取りを、自分ひとりで視点を転換させて行うこと。深く、粘り強く、哲学的に考えるやり方を追体験できる教科書。
  • 牧野植物図鑑の謎 ――在野の天才と知られざる競争相手
    4.0
    1925年、牧野富太郎『日本植物図鑑』と同時に『大植物図鑑』を刊行した元・教師がいた。かつては牧野博士を頼り、その後の編集活動では博士の図鑑と当時の人気を二分しながらも、現在はほぼ忘れ去られた村越三千男とは一体何者だったのか? 二冊の刊行日から本国の図鑑黎明期における出版競争を見出した著者が、魅力溢れる「在野」二人の仕事と植物図鑑の歴史を探る。
  • 母は死ねない
    3.9
    「育てたい」「愛したい」それだけの願いを叶えることが、こんなにも難しい。注目連載待望の書籍化! 一人として同じではない女性たちと、己自身の切なる声――自らも母としてあがくノンフィクション作家が聴き取り、綴る。
  • 愛は時間がかかる
    3.7
    「誰かのつらさに、大きいも小さいもない」3カ月にわたる、トラウマ治療の記録を書く。『かなわない』の著者による、4年ぶりの新刊!
  • リサーチのはじめかた ――「きみの問い」を見つけ、育て、伝える方法
    3.8
    学生からビジネスパーソンまで、課題に取り組む全ての人必読! 「自分にとってほんとうに重要な問い」をどうやってみつけるか、その問いを他人と共有するために、どのように書き、研究を設計するか、自分中心の研究を楽しくおこなう方法を、演習問題を交えてやさしく講義する。これ一冊で何度でも使える、一生モノのリサーチガイド!
  • 社会学の考え方〔第2版〕
    4.0
    日常世界はどのように構成されているのか。日々変化する現代社会をどう読み解くべきか。――本書は、碩学と若手の二人の社会学者が、そのような根源的な問いに正面から挑んだ作品である。読者は、本書を通じて、社会学の基礎的な概念を学ぶとともに、現代社会学の最前線の議論を知ることができる。読者がうながされるのは、“社会学的思考”の実践である。それは、わたしたちの生の多様性と可能性について、開かれた姿勢をとることにほかならない。定評ある教科書の第2版新訳。文庫オリジナル。
  • ブルゴーニュ公国の大公たち
    -
    フィリップ・ル・アルディ(豪胆公)、ジャン・サン・プール(無怖公)、フィリップ・ル・ボン(善良公)、シャルル・ル・テメレール(突進公)。これら四人のヴァロワ朝ブルゴーニュ公こそ、中世末期、ヨーロッパ世界において広大な領土の獲得と燦然と輝く文化的達成を現出させた人々にほかならない。彼らの営為によってあらわれる公国の個性とは何か。ホイジンガの『中世の秋』に比肩すると言われる本書は、博捜と実証をもとに、大公たちの生涯と事績、そしてついに成し遂げられなかった夢を光彩陸離たる筆致で叙述する。ブルゴーニュ公国の歴史を包括的にまとめた書として今も揺るぎない地位を占める名著。
  • 小津安二郎と七人の監督
    3.0
    若くして映画の道に入り、撮影助手を経て助監督となり、24歳で監督となった小津安二郎。移動撮影やオーヴァーラップやパンをせず、ローアングルから撮ったショットを積み重ねる静的映像をどのようにして確立していったのか。憧れのルビッチ、同時代に影響し合った溝口健二や五所平之助、清水宏、成瀬巳喜男、木下惠介、加藤泰ら7人の監督との関わりを軸に小津安二郎の映画作りの極意を描きだす。
  • 科学的探究の喜び
    5.0
    私たちの周りにあるたくさんの不思議。先入観なく幼児がつぶやく質問、大人の持つ疑問。「何を知りたいか」、「いかにして答えを出すか」。どんな仕事も、ここから探究の喜びが始まる。科学者は自然界にある難問を明らかにしようと、疑う自由から生まれる想像力を武器に探究し、結果は「論文やレポート」によって知識となり、技術として社会に貢献する。生物のエネルギー産生・消費のメカニズムに、先駆的・独創的研究をしてきた生化学者が、自身の経験と知識をもとに問いの発見から解決、発表までのプロセスをつぶさに語る。文庫オリジナル。
  • 三島由紀夫 薔薇のバロキスム
    4.0
    内と外という二元論を危うくする薔薇の花弁、腹からこぼれ出る腸の美しさ――皮膚や表層にこだわり続けてきた美学者である著者は、「内部へ出る」ことにより逆説的に肯定される表面にこそ、三島独自の美意識すなわちバロキスムが賭けられていると見る。内面と外面、精神と肉体、素顔と仮面、美しい無智者と醜い智者といった対比、そして薔薇のみならず作品を豊かに彩るさまざまな植物的イメージを自在に横断しながら、それらすべてが昭和45(1970)年11月25日の壮絶な自死へと収束されていく過程を詳らかにたどる、スリリングかつ斬新な三島論。文庫書き下ろし!
  • 台所から北京が見える ――36歳から始めた私の中国語
    4.3
    36歳で著者が中国語を学び始めたとき、人は「ハダシでアルプスに登るようなものだ」「やめろ」と言った。「語学は若いうちに始めるほうがいい」かもしれない、しかし…。有言実行。学習を開始し4年、40歳で通訳になり、生涯中国語を仕事にした著者が、語学没頭の日々、効果的な学習法、人との出会い、言葉や文化の魅力を語る。語学学習者、必読の名著。新たに1章を増補。
  • 関東大震災と民衆犯罪 ――立件された一一四件の記録から
    4.0
    1923年の関東大地震。その直後から自警団による、朝鮮人、中国人らに対する襲撃事件が多発し、日本人を含む多くの犠牲者をだしたが、その実態はいまだ明らかではない。誰が誰をなぜ殺したのか? 検察が立件、起訴した600人以上の被告、約90人の日本人被害者のプロフィールを分析するなどして、民衆犯罪の全貌に迫る。事件から100年、地域に根差した庶民が起こした史上最大最悪の惨事=ヘイトクライムをとらえなおす。 【目次】はじめに/第1部 関東大震災下の国家と民衆/1 軍・官・民一体のエスノサイド/2 自警団、その組織と活動実践/3 エスノサイドの背景/第2部 刑事事件化した民衆犯罪の動向/1 朝鮮人襲撃事件にみる自警団の情動/2 日本人襲撃事件の実態と被害者像/3 自警団員裁判の実態と加害者像の再検証/第3部 沖縄出身者と自警団/1 沖縄出身者襲撃伝承とその特徴/2 関東大震災、ふたつの体験記/3 沖縄出身製紙労働者の震災経験/4 沖縄における伝承の形成と定着/巻末資料/結びに代えて/索引
  • 十字軍国家
    3.0
    十字軍と言えば、もっぱら運動としての面が注目され、十字軍士たちが各地に建設した諸国家、すなわち十字軍国家の全体像が語られることはなかった。だが、1098年のエデッサ伯国建国から、1798年のナポレオンによるマルタ島攻撃までの実に700年にもわたり十字軍国家は存続していた。ローマ教会、ビザンツ帝国、神聖ローマ皇帝、イスラーム勢力や地中海の諸商業都市、傭兵団、さらには来襲するモンゴル勢など、多種多様な勢力が複雑に絡み合う興亡の歴史を、第一人者が活写する。 【目次】序 十字軍国家とは何か/I ラテン・シリア/第1章 ラテン・シリアの誕生(1097-1099年)/第2章 ラテン・シリアの形成(1098-1118年)/第3章 ラテン・シリアの成長(1118-1146年)/第4章 ラテン・シリアの発展と分断(1146-1192年)/第5章 ラテン・シリアの回復と再分断(1192-1243年)/第6章 ラテン・シリアの混乱と滅亡(1243-1291年)/II キプロス王国/第7章 キプロス王国の形成と発展(1191-1369年)/第8章 キプロス王国の混乱と消滅(1369-1489年)/補章1 ヴェネツィア領キプロス(1489-1573年)/補章2 キリキアのアルメニア王国(1198-1375年)/III ラテン・ギリシア/第9章 ラテン帝国(1204-1261年)/第10章 フランク人支配下のモレア(1)(1204-1311年)/第11章 フランク人支配下のモレア(2)(1311-1460年)/補章3 カタルーニャ傭兵団とアッチャイオーリ家(1311-1462年)/IV 騎士修道会国家/第12章 ドイツ騎士修道会国家(1225-1561年)/第13章 ロドス期の聖ヨハネ修道会国家(1310-1523年)/第14章 マルタ期の聖ヨハネ修道会国家(1523-1798年)/あとがき/主要参考文献/十字軍国家支配者一覧
  • ワイルドサイドをほっつき歩け ――ハマータウンのおっさんたち
    4.1
    人生という長い旅路を行く大人たちへの祝福に満ちたエッセイ。EU離脱投票が原因で喧嘩になった妻への仲直りタトゥーが思わぬ意味になっていたおっさんや緊縮財政にも負けないおっさんの話など。笑って泣ける21編。第2章では世代・階級等について解説。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』と本書は同じコインの両面だと著者が記す必読書。単行本10万部突破! 解説=梯久美子 推薦文=國分功一郎
  • 悪口ってなんだろう
    4.0
    悪口はどうして悪いのか。友だち同士の軽口とはなにが違うのか。悪口を言うことはなぜ面白いのか。負の側面から人間の本質に迫る。
  • 10代の脳とうまくつきあう ――非認知能力の大事な役割
    3.5
    頭の良さだけで人生の幸福度が決まるわけではない。学力以外の能力も重要だ。目標の達成に関わる「実行機能」や、自信に関わる「自己効力感」など、10代で知っておきたい非認知能力を大解説!
  • カブトムシの謎をとく
    4.0
    ほんとに夜型? 天敵は何? 大きさはどうやって決まる? カブトムシの生態を解き明かし、仮説の立て方、調査方法なども解説。自然研究の魅力はここにある。
  • 病が分断するアメリカ ――公衆衛生と「自由」のジレンマ
    -
    コロナ禍のアメリカでは、迅速な疫学調査とワクチン開発がなされたにもかかわらず、多くの死者が出た。ワクチン接種に当初から反対が根強く、マスク着用では国が分断された。アメリカの公衆衛生が抱える深刻なジレンマ――国民の健康と自由な活動という二律背反の価値のどちらを優先するかをめぐって、どんな論争があったのか。20世紀初頭以来の公衆衛生史を繙きつつ、社会格差・地域格差・人種格差などによって分断されているアメリカの諸問題を追究する。
  • 創造性はどこからやってくるか ――天然表現の世界
    3.5
    何も閃かない、ネタ切れ、考えが浮かばない、アタマが硬い、センスに自信がない……。悩んでいてもいいアイデアは湧いてこない。それはふいに降りてくるものだ。従来の科学モデルでは説明できない想定外で不気味なものを思いつき、作り出そうとする、計算不可能な人間の創造力。それはどこからやってくるのだろうか。生命科学、哲学、文学から芸術理論までを自在に横断し、著者みずからも制作を実践することでみえてきた、想像もつかない世界の〈外部〉を召喚するための方法。
  • 報道弾圧 ――言論の自由に命を賭けた記者たち
    4.0
    世界各国で、報道活動への締め付けがあからさまになっている。政権に不利益な報道を行うメディアへの発行停止処分や閉鎖、記者の逮捕・拘束は珍しくなく、2022年中に殺害された記者らの数は、世界で67名に上った。この現実に対し、メディアはさまざまな方法で権力と渡り合っている。ウクライナ侵攻前後のロシアで、新型コロナ流行下の中国で、軍政のミャンマーで、内戦に苦しむ中東の国々で――。世界中で繰り広げられる言論の自由を目指す戦いから、報道の力を捉え直す。
  • 福沢諭吉 変貌する肖像 ――文明の先導者から文化人の象徴へ
    3.5
    福沢の思想は毀誉褒貶にさらされてきた。それは福沢の議論の変化というよりも、福沢をとりまく世論の側の変化によるものといえる。福沢を評価した徳富蘇峰は、晩年には福沢が日本の伝統的な良風美俗を破壊したと罵倒。戦後は丸山眞男から原則ある実学思想家として賞賛されるも、朝鮮蔑視の脱亜論者として批判もされ、他方で1980年代半ば以降は1万円札の肖像となり、文化人の象徴となった。福沢評価の変遷をたどり、その過程を詳細に考察。福沢の実像を浮かび上がらせる。
  • 民間企業からの震災復興 ――関東大震災を経済視点で読みなおす
    -
    富国強兵と殖産興業が一段落、新興帝国日本が漂流し始めた大正時代に、大災害が首都を襲った。本書は、経済活動の担い手である実業家・企業・財界の視点と活動に注目し、大震災からの復興過程を考察する。彼らが大震災に対してどのような復興構想を持ち、どこまで実現したのか。それは近代化を目指した日本社会や日本を取り巻く国際社会にどのような影響を与えたのか。植民地を含む当時の日本帝国全体の経済地図を塗り替える、もう一つの近現代史を浮き彫りにする。
  • 資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか
    4.0
    なぜ経済が発展しても私たちは豊かになれないのか。それは、資本主義が私たちの生活や自然といった存立基盤を餌に成長する巨大なシステムだからである。資本主義そのものが問題である以上、「グリーン資本主義」や、表面的な格差是正などは目くらましにすぎず、根本的な解決策にはなりえない。破局から逃れる道はただ一つ、資本主義自体を拒絶することなのだ――。世界的政治学者が「共喰い資本主義」の実態を暴く話題作。(解説・白井聡)
  • リスペクト ――R・E・S・P・E・C・T
    4.1
    1巻1,540円 (税込)
    やれるか、やるべきか、じゃない。やるしかないときがある。2014年にロンドンで実際に起きた占拠運動をモデルとした小説。ホームレス・シェルターに住んでいたシングルマザーたちが、地方自治体の予算削減のために退去を迫られる。人種や世代を超えて女性たちが連帯して立ち上がり、公営住宅を占拠。一方、日本の新聞社ロンドン支局記者の史奈子がふと占拠地を訪れ、元恋人でアナキストの幸太もロンドンに来て現地の人々とどんどん交流し……。「自分たちでやってやれ」という精神(DIY)と、相互扶助(助け合い)と、シスターフッドの物語。
  • 父の時代・私の時代 ――わがエディトリアル・デザイン史
    4.3
    「anan」「BRUTUS」「POPEYE」日本の出版文化の一時代を築いた雑誌を生み出したアートディレクターであり、数々の名作絵本の作者としても知られる堀内誠一。エディトリアルデザインの先駆者であり、天才と呼ばれた著者が、戦前から1980年代までの雑誌と絵本作りの現場を生き生きと語る唯一の自伝が初の文庫化。各方面で活躍したクリエイターたちとの交遊録も必見。
  • 資本主義から市民主義へ
    4.3
    貨幣は貨幣だから貨幣なのだ。貨幣を根拠づけるものはただ貨幣だけ。言語・法・貨幣の、社会と人間を貫く自己循環論法こそが、恐慌も生めば、自由をももたらす。それを踏まえて、われわれはどのような市民社会を構想すべきか。資本主義を超えて、来たるべき市民主義とはいかなるものか。貨幣論に始まり、資本主義論、法人論、信任論、市民社会論、人間論、そして倫理論まで、経済学や社会哲学を縦横に論じつつわかりやすく解説。次代の社会像を示す!
  • アイデンティティが人を殺す
    4.0
    集団への帰属の欲求とは何を意味するのか。この欲求が他者に対する恐怖や殺戮へとつながってしまうのはなぜなのか――。グローバル化の進展は、さまざまな文化の保持者たちの基盤を揺るがし、時に偏狭で排他的な帰属意識を生み出してしまう。複数の国と言語、そして文化伝統の境界で生きてきた著者は、本書のなかで新しい時代にふさわしいアイデンティティのあり方を模索する。鍵となるのは、「言語」だ。言語を自由に使う権利を守ること、言語の多様性を強固にし、生活習慣のなかに定着させること、そこに世界の調和への可能性を見る。刊行後、大きな反響を呼んだ名エッセイ、ついに邦訳。文庫オリジナル。
  • 二十一世紀の資本主義論
    4.0
    グローバル市場経済にとっての真の危機とは、金融危機や恐慌ではない。基軸通貨ドルの価値が暴落してしまうグローバルなハイパー・インフレーションである。しかし、自由を知ってしまった人類は好むと好まざるとにかかわらず、資本主義の中で生きていかざるをえない。21世紀の資本主義の中で、何が可能であり、何をなすべきかを考察し、法人制度や市民社会のあり方までを問う先鋭的論考。
  • 核戦争、どうする日本? ──「ポスト国連の時代」が始まった
    4.7
    1巻1,540円 (税込)
    核兵器をもつ権威主義的国家による、国際秩序への危険な挑戦。地獄のフタを開けたプーチン、相次ぐ北朝鮮のミサイル発射、間近に迫る台湾侵攻。平和と安全を守る唯一の道とは?
  • 空芯手帳
    4.0
    「だから私は嘘を持つことにしたの」―日々押し付けられる雑務にキレてつい「妊娠してます」と口走った柴田が送る奇妙な妊婦ライフ。第36回太宰治賞受賞作にして、昨年刊行された英語版がNYタイムズやニューヨーク公共図書館の今年の収穫に挙げられるなど話題となり、現在、世界14カ国語で翻訳進行中の鮮烈デビュー作が待望の文庫化!
  • メディアの生成 ――アメリカ・ラジオの動態史
    -
    メディアの近未来を予測するとき、ラジオの歴史から学ぶことは多い。20世紀が幕を開けた頃、電波を用いたコミュニケーション領域=無線は、最新のニュー・メディアだった。そこから徐々にラジオ放送が産業として編成され、マス・メディアとして確立し、日々絶え間なく放送される番組が人々の生活文化を形成していくことになる。本書は20世紀初頭から半ばまでのアメリカにおけるラジオの動向を通じ、メディアが経験した地殻変動や、近代社会における文化の諸相に迫る。インターネット登場前夜に書かれた名著に、新章を増補した待望の文庫版。
  • 責任と判断
    4.3
    「歯車理論」や「小物理論」の虚偽を突き、第三帝国下の殺戮における個人の責任を問う「独裁体制のもとでの個人の責任」、アウシュヴィッツ後の倫理を検討し、その道徳論を詳らかにする講義録「道徳のいくつかの問題」など、ハンナ・アレント後期の未刊行論文集。ユダヤ人である自らの体験を通して全体主義を分析し、20世紀の道徳思想の伝統がいかに破壊されたかをたどる。一方、人間の責任の意味と判断の能力について考察し、考える能力の喪失により生まれる“凡庸な悪”を明らかにする。判断の基準が失われた現代こそ、アレントを読むときだ。
  • 忘却の整理学
    4.3
    知識は「盾」である。仕事や試験において時間を削り取ろうとする敵から自分を守ってくれる。知識によってタスクは効率化され、浪費は防がれる。では「矛」は? ……それは「忘却」である。なぜなら、常識やルールといった自分の内なる暗黙知、さらには時間すら忘れて物事に打ち込んだとき、そこから得られる成果物は、きっとあなたにとって代えがたい武器となるからだ。
  • 子どものことを子どもにきく
    3.5
    父親が息子に年に1回インタビューをする――3歳から10歳になる子どもの成長をとらえた新鮮な試み。1年ごとに新しい価値観と言葉を獲得していく過程をこれほど豊かに切り取った記録があるだろうか。意表をつく受け答えは驚きと笑いの連続。知る人ぞ知る子育てエッセイが待望の復刊。ちくま文庫化に際し、刊行から20年以上を経て、著者と息子・隆さんの現在と当時を語る「あとがき」を収録。
  • 彗星交叉点
    4.0
    1巻1,430円 (税込)
    街角でふと耳にした会話、お店の看板……たまたま出会った言葉の断片が詩に見えてくることがある。そんな「偶然性による結果的ポエム」についての考察。【目次】この本の目次/忘れ得ぬ言葉/前にも云ったかもしれないけど/白い天然、黒い天然/最期の言葉/ネーミング/客たち/自慢/本当の名前/脳内留学生との会話/兄弟姉妹/怪しい扉/無茶/花だと思ったこともない/駅前の「声」たち/もげたり、にえたり/正解は後ほど/おにぎりの病院/その言葉を自分に向かつて云うのは/ありがとうござ/ベー/名前の教え方/名前の教え方・2/自分の伝え方/熱いアンケー卜/昭和の逆襲/午後のくノ一/生きていく力の強さ/間違いよりも変/名前の間違えられ方/「あやせない」と「くどけない」/間違った夢/辿り着ける地図/謎の言葉を発する人/待遇の良い会社/店名の謎/おませ/ヒヤリング/昭和?/ヌーン/衝撃の記憶/ざっくりショツク/父の口癖/オーラ/精密妻/混乱書店/強気な店/エラーミッキー/グミと赤裸々/眩しい言葉/失言/くらっとくる言葉/昭和のテレビ/振り切られる言葉/電気のコンセント/即答断言ガールズ/名付けのカ/隣の声/ラインマーカーズ/この本の目次/忘れ得ぬ言葉/前にも云ったかもしれないけど/白い天然、黒い天然/最期の言葉/ネーミング/客たち/自慢/本当の名前/脳内留学生との会話/兄弟姉妹/怪しい扉/無茶/花だと思ったこともない/駅前の「声」たち/もげたり、にえたり/正解は後ほど/おにぎりの病院/その言葉を自分に向かつて云うのは/ありがとうござ/ベー/名前の教え方/名前の教え方・2/自分の伝え方/熱いアンケー卜/昭和の逆襲/午後のくノ一/生きていく力の強さ/間違いよりも変/名前の間違えられ方/「あやせない」と「くどけない」/間違った夢/辿り着ける地図/謎の言葉を発する人/待遇の良い会社/店名の謎/おませ/ヒヤリング/昭和?/ヌーン/衝撃の記憶/ざっくりショツク/父の口癖/オーラ/精密妻/混乱書店/強気な店/エラーミッキー/グミと赤裸々/眩しい言葉/失言/くらっとくる言葉/昭和のテレビ/振り切られる言葉/電気のコンセント/即答断言ガールズ/名付けのカ/隣の声/ラインマーカーズ
  • 休館日の彼女たち
    3.8
    1巻1,430円 (税込)
    算数で「平行」を習ったときから、ひとには見えない黄色いレインコートに身をつつむことになったホラウチリカ。ある日、大学の恩師から紹介された仕事は古代ローマの女神像のおしゃべり相手だった――。誰もがコミュニケーション不全を抱える世界で、有機物と無機物の境界すら越えて、わたしとヴィーナスは手に手を取り合い駆け出していく。新しい関係性の扉をひらく無敵のシスターフッド小説!!
  • 南北朝正閏問題 ――歴史をめぐる明治末の政争
    -
    1巻1,595円 (税込)
    国定教科書の記述をきっかけとして起きた、日本の南北朝時代において南朝と北朝のどちらが正統かをめぐる明治末の論争は、当時の閉塞的な政治状況もあり、重大な政治問題と化した。最終的に政府は危機を乗りこえたが、深刻なダメージを負った。多様なアクターがそれぞれ自分の信念や思惑をもって活動した結果として生じた、深刻かつ複雑なこの南北朝正閏問題を、現代政治における歴史問題・皇室報道問題の原点として徹底的に掘り下げて考察。そこから浮かびあがる近代日本の特質に迫る。 【目次】はじめに/第一章 南北朝正閏問題の背景/第二章 南北朝正閏問題の突発/第三章 藤沢元造の質問に向けて/第四章 大日本国体擁護団と政府弾劾決議案/第五章 桂内閣による「第一の政治決着」/第六章 南北朝正閏論争の構造/第七章 桂内閣による「第二の政治決着」/おわりに/参考文献/言説分析原典一覧/あとがき
  • 古代中国 説話と真相
    4.3
    殷の紂王の《酒池肉林》、呉王夫差と越王句践の《臥薪嘗胆》、秦の始皇帝の《焚書坑儒》……、『史記』にも記され、広く知られる古代中国の説話は真実か? もちろん、これらは後世の創作である。本書では、信頼できる資料に拠って、これらの虚構を検証すると共に、貴族制が専制君主制に移行した春秋・戦国時代の社会制度、勢力バランス、法治システムを浮彫りにする。初期の王朝から貴族の台頭、そして中国統一へ、説話を検証し、中国古代史をいきいきと再構築してみせる意欲作! 【目次】はじめに/第一章 三皇五帝――禅譲・放伐/第二章 夏の禹王――九州の治水/第三章 殷の紂王――酒池肉林/第四章 周の幽王――笑わない褒姒/第五章 斉の管仲――衣食足りて礼節を知る/第六章 楚の荘王――鼎の軽重を問う/第七章 夫差と句践――臥薪嘗胆/第八章 魯の孔子――由らしむべし、知らしむべからず/第九章 魏の恵王――五十歩百歩/第十章 蘇秦と張儀――合従連衡/第一一章 戦国四君と呂不韋――奇貨居くべし/第一二章 秦の始皇帝――焚書坑儒/終章 古代中国史の研究方法/結び/主要参考文献
  • 微分と積分 ──その思想と方法
    -
    「微分積分という学問の本質的性格をていねいに解き明かした教科書はあんがいに少ないのではあるまいか。たしかに微分積分学はきわめて広い応用範囲をもっていて、それらをすべて網羅しようとすれば、何冊あっても足りないだろう。だが、その思考法の本質にねらいを定めて解説すれば意外に簡単なものである」(本書「はしがき」より)。微分積分法をその根底にある思想から数学史に即して語り、微積のエッセンスを基本から丁寧に分かりやすく説明する。数学者数学教育者として一流であった著者による、曖昧な説明や証明の省略を一切排した微積分学最高の入門書。
  • ゴダール革命〔増補決定版〕
    -
    いつ炸裂するかわからない時限爆弾として映画があるとするならば、ジャン=リュック・ゴダールの作品はいかなる条件のもとにそうであるのか、あるいはそうでないのか。映画批評的/映画史的差異を捉えた者だけに現れる問題が存在する──。最初の長編『勝手にしやがれ』から遺作『イメージの本』まで、稀代の映画作家が置かれ続けた孤独。撮ることと観ることとのいまだ決着のつかない闘争の場に対峙してきた著者は、「映画はもはやゴダールなど必要としていない」と断じる勇気を持てと訴える。新たなる孤独の創造のために。ゴダールへのインタヴューなどを再録増補した決定版論集。

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