北の十字軍
「ヨーロッパ」の北方拡大
著:山内 進
紙版
講談社学術文庫
良書、そして、驚異の書、そして、ヨーロッパへ見方が変わった警告の書である
ドイツとロシア、そして、ポーランドとの歴史的な確執、その根底は「北の十字軍」だ
北の十字軍とは、ドイツ騎士団をはじめとする、強大な軍事力による、イエ
...続きを読むス・キリストへの名のもとでの、非カトリック民族への殺戮と簒奪である
ロシア・東ヨーロッパ世界は、東からのモンゴル軍の脅威に加えて、西から、北の十字軍の脅威に対抗しなければならなかった
北の十字軍の特徴とは
①ドイツ騎士団を中心としたカトリック勢力を中心とした、バルト3国、ポーランド、ロシア地域による軍事行動である
②キリスト教の布教という名目の無差別殺戮と簒奪であった
③しかも、ローマ教皇公認のものであった
④さらに、キリスト教であるギリシャ正教をも、攻撃対象としていた
⑤タンネンベルクの戦いで終焉、それは、もはや、北・東ヨーロッパには、非キリスト世界=フロンティアがなくなったから
<ローマ・カトリックを迎え撃つ東側勢力>
ロシア 英雄アレクサンドル・ネフスキー 1240年の北の十字軍を撃退、ギリシャ正教によるロシアのカトリック化を推進、その精神はピョートル大帝へ受け継がれていく
リトアニア 最後までキリスト教化しなかた大国、ドイツ騎士団に追われた難民を受け入れて強大となっていく
ポーランド 穏やかなカトリック勢力として、リトアニアと連合、リトアニアの最後のキリスト教化と、タンネンベルクの東側の盟主をつとめる
<ローマ・カトリック化する東側>
ヴェンデ、バルト海沿岸、バルト・スラブと呼ばれた
リーガ(ラトビア)
エストニア
プロイセン
リトアニア
十字軍
その1 エルサレムへの巡礼の安全を確保する
その2 レコンキスタ 再征服という意味、イベリア半島をイスラム勢力から奪還するための、第2の十字軍
その3 ドイツ騎士団の北方征服、これが北の十字軍
その4 そして、カトリック勢力は、大航海時代にアメリカ・アジア・アフリカを植民化すべく、拡大していく
ヨーロッパとは、西ヨーロッパ+中央ヨーロッパのこと、つまり、ローマカトリック・ヨーロッパを意味する
■800年代 フランク王国カール大帝のザクセン攻略、そしてスペイン遠征、国家民族意識なき、フランク王国とは、戦う教会を意味している
■960年代 フランク王国オットー大帝 バルト海沿岸への派兵
■966 ポーランド ミェシュコ1世がカトリックに改宗、神聖ローマ帝国からの討伐名目を失わせることが目的
■1140年代~1190年代 第3回十字軍 いわゆる 北の十字軍が始まる
■1225 ハンガリーからドイツ騎士団が追放される
■1230年代 モンゴル軍がノブゴロド(ロシア)へ侵入、タタールくびきが始まる
■1249 クリストブルクの和約 一部の権利を非キリスト教徒に認めた初の条約
■1283 プロイセンの反乱 ドイツ騎士団のプロイセン人の奴隷化、簒奪、土地の荒廃化、その後その土地にドイツ人の入植がはじまる
■1330年代 ポーランドに開明君主、カジミェシュ大王が現れる。周辺の非カトリック民族、ユダヤ人を受け入れ、産業振興・経済発展につくす
クラクフのユダヤ人もこのころから
■1410 中世史上、最大の会戦、タンネンベルクの戦いにて、ドイツ騎士団が大敗し、事実上、北の十字軍は終焉する
目次
プロローグ――映画『アレクサンドル・ネフスキー』が語るもの
第1章 フランク帝国とキリスト教
第2章 ヴェンデ十字軍
第3章 リヴォニアからエストニアへ
第4章 ドイツ騎士修道会
第5章 タンネンベルクの戦い
第6章 コンスタンツの論争
エピローグ――「北の十字軍」の終焉とヨーロッパのグローバルな拡大
註
原本あとがき
学術文庫版あとがき
関連年表
解説
ISBN:9784062920339
出版社:講談社
判型:文庫
ページ数:382ページ
定価:1180円(本体)
発行年月日:2011年01月10日第1刷発行