山内進のレビュー一覧
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ヨーロッパで紛争解決手段として行われていた決闘裁判についてその起源から終焉まで法制史の専門家でない読者にも理解できるように記述している。ヨーロッパでは初期キリスト教と古代ゲルマン人の心情が混沌としていた中世末期に神に審判を委ねる神判として行われた決闘裁判が他の神判と同様に世俗権力が強化されるにつれて廃れていった。しかしアメリカでは、イギリスからの移民が伝えた中世の末期の心性が残っており、アメリカの民主主義や個人主義は中世からストレートに伝わっていると言えるという。アメリカが決闘裁判の思想的背景である自力救済に基づく裁判の当事者主義を採用しているとの指摘には驚いた。日本の実体的真実主義とアメリカ
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北の十字軍
「ヨーロッパ」の北方拡大
著:山内 進
紙版
講談社学術文庫
良書、そして、驚異の書、そして、ヨーロッパへ見方が変わった警告の書である
ドイツとロシア、そして、ポーランドとの歴史的な確執、その根底は「北の十字軍」だ
北の十字軍とは、ドイツ騎士団をはじめとする、強大な軍事力による、イエス・キリストへの名のもとでの、非カトリック民族への殺戮と簒奪である
ロシア・東ヨーロッパ世界は、東からのモンゴル軍の脅威に加えて、西から、北の十字軍の脅威に対抗しなければならなかった
北の十字軍の特徴とは
①ドイツ騎士団を中心としたカトリック勢力を中心とした、バルト3国、ポーランド、ロシア地域によ -
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高校世界史ではいまいちマイナーな東欧世界の中世に関して入門するには調度良い一冊です。
ヨーロッパ拡大とキリスト教がなぜ不可分なのか。その根本的な理論の部分から説明し、その理論を軸にフランク王国の拡大から大航海時代までを説明して見せます。その理論こそ「入るように強制せよ」。すべての異教徒を改宗させるための装置という性格をフランク王国や騎士団国家から見出し、鮮やかに中世東欧の世界を描き出していきます。
またポーランド=リトアニア連合王国についてもその成立が触れられている点が嬉しかった。中世東欧の強国という割には、今まであまり知ることができなかったので。 -
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日本人にとって(少なくとも私にとって)なじみの薄い、北方ヨーロッパに派遣された十字軍に関する第一級の資料として、でも堅苦しくなく接することの出来る良書。
東方十字軍は、エルサレムへの巡礼を保護することが目的であり、西方への十字軍は「レコンキスタ」として知られるとおりイスラム教徒からのヨーロッパの奪還であったのに対して、北方十字軍はローマ・カトリックを中心とするヨーロッパの「辺境」一帯における領土拡張を純粋な目的としていたことが本書で明らかにされる。
本書のスタンスはあくまでも事実を丁寧に積み重ねることであり、単純にローマ・カトリックが悪だとか異教の民の野蛮さを告発するものではない。双方それ -
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ドイツ騎士修道会を中心に、バルト地方やプロイセン、ポーランドに侵攻した、十字軍のヨーロッパ北方への展開をわかりやすく解説している本です。
聖地回復を元来の目的としていた十字軍が、世界のキリスト教化という使命にもとづいて、異教徒に対する軍事的な侵攻を進める論理をつくり出したのかということが、歴史的な事実をたどりつつ明らかにされています。
その後、ドイツ騎士修道会とポーランド・リトアニア連合のあいだでおこなわれたタンネンベルクの戦いの経緯と、それにつづくコンスタンツの論争がとりあげられています。著者は、ポーランド側の弁護をおこなったパウルス・ウラディミリの議論に立ち入って、その意義を考察してい