あらすじ
生命を賭して一対一で戦い、その結果にしたがって紛争を決着した「決闘裁判」。中世ヨーロッパに広く普及したこの裁判は、どのように行われ、いかにして終焉を迎えたのか。決闘裁判は、熱湯神判、冷水神判といった神判が禁止された以後も、1819年にイギリスで廃止されるまで存続した。それはなぜか。著者は、解決を他者に任せない自力救済の要素に、現代にまで通じる「当事者主義」の法精神をみる。法とは何か、権利や自由、名誉や正義とはどんなものかといった深い問いを投げかける法制史の名著に、「法と身体のパフォーマンス」を増補した決定版。
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Posted by ブクログ
ヨーロッパで紛争解決手段として行われていた決闘裁判についてその起源から終焉まで法制史の専門家でない読者にも理解できるように記述している。ヨーロッパでは初期キリスト教と古代ゲルマン人の心情が混沌としていた中世末期に神に審判を委ねる神判として行われた決闘裁判が他の神判と同様に世俗権力が強化されるにつれて廃れていった。しかしアメリカでは、イギリスからの移民が伝えた中世の末期の心性が残っており、アメリカの民主主義や個人主義は中世からストレートに伝わっていると言えるという。アメリカが決闘裁判の思想的背景である自力救済に基づく裁判の当事者主義を採用しているとの指摘には驚いた。日本の実体的真実主義とアメリカの当事者主義の違いが違いが大谷さんへの日米の空気感の差にあるような気がする。