韓国のフェミニズム小説と称される本作品
私は1982年生まれの主人公より少し年上だけど、フェミニズムもミソジニーも意識することなくやってきた
あまり積極的に生きてこなかったし、真ん中あたりでふわふわと生きてきたからかもしれない
まったくないわけではないけれど男尊女卑って昔の概念、という感覚だった
そりゃ「弟はいいなあ、なんで男子っていうだけで許されるんやろ」と思うことはあった
でもこの小説のように、“男子は食べるのが先”“形がちゃんとしているものを食べられる”“箸や靴下、下着の上下は男子はちゃんと組になっているが女子はバラバラなのがふつう”といった差別は受けたことはなかった
女の子の出生が続くと男の子を授かるまで堕胎させる、なんて身近で聞いたことはない
就職活動のさいに「女の人は結婚したら辞めるでしょ。だからあまり採らないよ。こんな正直なこと、ほかでは言ってくれないだろうけど」と言われたことはある
「あそこの会社の営業は『女を使ってでも仕事取ってこい!』って言われるらしいよ」と聞いたこともある
でも大学卒業後、看護学校に進学したので、女社会で働くことになり、そういうこととは無縁だった(院長が「また妊娠でひとり欠員になる」と文句を言っているのは聞いたことがあるけど「しょうがなくない?」くらいにしか思わなかった)。男女での給料格差もないはずだ
だから、私の少し下の世代なのに韓国ではこんなにも女性卑下がなされていたのか!と驚いた
女性大統領がいたからてっきり“女性の社会進出”が進んでいるのだと思っていた
以前働いていた職場の労働組合の話し合いで、女性部が戦って権利を勝ち取ってきたという話を聞いたことがある
韓国の女性も少しずつ抵抗をしている
教師に抵抗した女生徒がTシャツとスニーカーを黙認させるようになった、姉妹の部屋を持てるようになった、給食を食べる順番が変更になった、出産休暇と育児休暇が保障される会社ができた、など
現在日本のXでは男女が「女のくせに」「これだから男は」と揉めているのを見かける
こういった問題の背景には貧困化や経済格差があるのではという意見を読んだ
そうなるとこれまでの日本で感じなかったミソジニーを経験する可能性がある
また、技術革新も大きいのかもしれない
個人の意見が拡散されて、マジョリティの意見として捉えられて、争いを生む
韓国でも「ママ虫」という母親を害虫のように扱う侮辱的なネットスラングがあり、ヘイトスピーチがあり、それらが日常に侵食しているらしい
女性K POPアイドルがこの「82年生まれ、キム・ジヨン」を読んだと発言したところ、一部男性ファンが「フェミニスト宣言をした」として写真やグッズを破棄する動画を投稿する騒ぎが起きたこともあるしい
ディープフェイクも問題になっている
救いは主人公に「でもね、世の中にはいい男の人の方が多いのよ」と声をかける人がいること
以前働いていた職場で「農業をやっていると自分と夫の役割がよくわかって、男女がいる理由がわかった」というようなことを言っていた人がいた
このへんにヒントがある気がするんだけどなぁ