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人間の業を映す独自の作家活動を続けた森崎和江は、日本統治下の朝鮮に生まれた。大邱、慶州、金泉、現地で教師を務める父、温かな母と弟妹、そして「オモニ」たち――歴史的背景を理解せぬまま己を育む山河と町をただひたすら愛した日々に、やがて戦争の影がさす。人びとの傷と痛みを知らずにいた幼い自身を省みながら、忘れてはならぬ時代の記憶を切に綴る傑作自伝。
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Posted by ブクログ
とってもいい本だった。 森崎和江自身の、自分を育んだ土地への心からの愛着と植民2世としてのどうしようもない後ろめたさがびしびしと伝わってきて、心が切なさと哀しさでいっぱいになる。韓国に行きたくなる。 贖罪に貫かれているけど、少しも説教くさくはないところもすごい。ただ温かく、とても切ない。 戦後80年...続きを読むであり、私にとっては仕事で思いがけず韓国と関わる機会を得たこの1年の、まさに締めくくりにふさわしい本だった。 やっぱり人生って自分の生きる日常と本が連動している。こんなに面白く豊かなことはなく、静かに感動する。 森崎和江の書く朝鮮半島はとても魅力的。 静かで趣があって伸びやか。 そういえば私は植民地時代の朝鮮半島のまちや人々の暮らしについてちゃんと読んだことがなかったかもしれない。 「まちですれ違うオモニが頭をなでてくれた」とか、そんなことがあるんだと意外に思った。もっと人々はいがみ合って交わらず暮らしていたのかと思い込んでいた。 軒先の道端で寝ているアボジの足先の間を縫って通学していたくだりとかも、意外だった。ちゃんと庶民の生活は存在し続けていたんだなと初めて知った。 牧歌的な幼少期から、どんどん戦況は悪化していき、それに重なるように母も病床に伏し亡くなった。そんなふうに、時代と個人的な生活が重なっていることにも引き込まれた。 なんと心細い思春期を過ごしたんだろう。 母を失ったために、父母の会話に耳をそばだてられることがなくなり、父の内心がわからずおろおろするなんて、そんな感情があると初めて知った。なのにその感情が手に取るようにわかった。 朝鮮の人々に対して特別な思いを抱き続け、それゆえに不遇も経験したであろう父。 当時は家父長制の常識ゆえ、父と娘が自分の思想信条を率直に話したり聞いたりできなかったんだろうと思うと、とてももったいない。一読者としても、「この時の父の思いをもっと知りたいな」などと思ってもどかしかった。 それでもこの父あっての森崎和江なんだなととても腑に落ちた。 年の暮れにいいものを読んだ。 私はもちろん戦争を知らない世代だけど、すばらしい本は時代を超えて人を感動させる。 改めてそう思った。
「私たちの生活がそのまま侵略なのであった」 植民二世からの立場で書かれた本を初めて読みました。読んで良かったです。「書こうと心にきめたのは、ただただ、鬼の子ともいうべき日本人の子らを、人の子ゆえに否定せず守ってくれたオモニへの、ことばにならぬ想いによります。」と書かれていて、胸が痛くなりました。そし...続きを読むて弟さんの弁論「敗戦の得物」は1人でも多くの人に読んでもらいたいです。
著者のことはサークル村の主要人物の一人ということは知っていたが、その著作で読んだのは『からゆきさん』と『まっくら』の二冊。本書は、著者が自らの原郷とする生まれ育った朝鮮での17年間の生活を回想したもの。 著者は、理想化肌の朝鮮学校の教師である父と、優しく慈しんでくれる母との間の長女であった。そし...続きを読むて父の学校異動の関係で、慶尚北道の大邱、慶州そして金泉に住んだ。 幼き日の思い出から著者は朝鮮での生活を細部まできめ細かく描いていく。朝鮮人のアブジやオモニの姿も自らの見たままに生き生きと描かれる。こんなにも瑞々しく記憶にとどめ文章として表現できるというのは本当にすごい。 愛情を注いでくれる両親ー特に父はあの時代に ”自由放任” を教育方針と言っていたほどの人物であったがーの下で育つ著者は、ある意味では内地の日本より伸び伸びと育ったのであるが、当時の朝鮮での体験を今の時点で書く著者の思いは苦い。自らの愛した故郷が日本が植民地としていた地であることを知り、オモニやアブジが日々の生活に痛みを感じ、日本人をどのように思っていたかを振り返って考えるようになったから。 戦後ずいぶんの年月が経過したが、今なお重い問いを投げかけている一冊だと思う。
この一年半ほど、 「まっくら―女坑夫からの聞き書き―」1961、 ラジオ「にっぽんの子守唄~出稼ぎの女たち(F面)」、 ラジオドラマ「海鳴り」「いのちの木の方へ」「産湯の里」、 現代詩文庫の「森崎和江詩集」、 「からゆきさん」1976、 とぼちぼち読んでいる。 本書は1984。 作者の著作は膨大なの...続きを読むで全容を把握するのは難しそうだが、本書は作者にとっての根っこを描いているので、読んでよかった。 まずは朝鮮植民二世としての、原罪意識。 これだけなら辛さ一辺倒になりかねないが、さらに、生きて在ることのエロスを文章の端々から感じる。 これは例えばこうの史代と片渕須直の「この世界の片隅に」や、おざわゆきの漫画「あとかたの街」に通じる、少女の目から戦争を証言する作品だと思った。 作者は他の著作でいわゆる証言文学をものしているが、本書は自分の声を散文で残した証言文学でもあるだろう。 「からゆきさん」の感想で、以下のように書いた。 ・ 一人の少女が、成長過程で得た根拠地を引き剝がされた後、得たり失ったりした挙句、回顧するときどう思うか……その機微にまで、さすがに一読者は至れない。 が、当人や関係者から話を聞いた森崎和江は、身が震えたのだろうな。 ・ これはおヨシさんという女性の話を森崎和江が書いていることを受けての感想なのだが、このときの「震え」は自分自身のものでもあったのだろう、と感想が深まった。 また、以下のような詩がある。 ・ おはよう!/おはようと夜明けの空がこたえた/うれしくてからだがふるえたの/でもその空/にほんが攻めこんだくにの空でした ・ これはそのまんま。 所謂ポストコロニアル文学としても拡大して考えたい作品。 それにしても、お父さんの偉大さに敬服。 (森崎庫次についての研究論文が検索するとヒットする。) @ ■序章 007 ■第一章 天の川 012 ■第二章 しょうぶの葉 072 ■第三章 王陵 110 ■第四章 魂の火 169 ■余章 226 ■あとがき 247 ◇解説 松井理恵 252
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