作品一覧
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5.01990年代まで「結婚」や「家」と密接な関わりがあった仲人は、どのように広まり定着したのか。また、なぜ衰退して現在では見られなくなったのか。 明治時代以前の村落共同体では見合いが浸透していなかったが、教育勅語や家制度によって仲人が急速に普及する。明治期の家族主義と個人主義、大正期以降に登場する恋愛などとのせめぎ合いのなかで、見合い結婚が「正しい結婚」として位置づけられ、強固に維持されたことを史料を渉猟して明らかにする。 また、明治期に民間の結婚相談所が設立されたが、戦時下の人口政策に組み込まれ厚生省が結婚媒介を統制するに至って、優生思想とも接続しながら全国に結婚斡旋網が形成されたことも掘り起こす。 そして、戦後の民主化や高度経済成長によって見合い結婚は封建的と見なされるようになりながらも、仲人は恋愛結婚や職場結婚と折衷して1990年代まで存続し、2000年代に消滅するプロセスを跡づける。 村落共同体、家、国家、企業と、時代ごとに個々人の帰属先と密接に結び付いてきた仲人の近・現代史から、近代日本の家族や結婚をめぐる価値観の変容を照射する。
ユーザーレビュー
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Posted by ブクログ
酒井裕一郎「結婚の社会学」は自分の当たり前を揺さぶってくれた本でした。引き続き、ということで「仲人の近代」にも手を伸ばしました。社会で齢を重ねると仲人って頼まれるもの、と薄々思っていましたが、自分の場合はまったく頼まれることもなく一生を終えそうです。別に頼まれたかった訳ではなく(逆にそんなことなくてラッキーと思っています…)20年ぐらいの間に社会的慣習ってガラリと変わるんだな、ということを改めて気づいたのです。本書の序章にある1934年の新聞に報じられた「死ぬ前に一度仲人をしてみたい」という願望を持ち、一度だけ「本望」を果たすと、その後すぐ自殺した男の記事、もうびっくりです。日本が近代化してい
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Posted by ブクログ
20代後半に差し掛かって、結婚というものを意識する機会が多かったので読んでみた。あと、最近話題の文芸評論家兼作家の三宅香帆さんがお勧めされていたのでつい買ってしまった面もある。全体的に、この手の学術書としてはかなり読みやすく、興味を持って読み進めることができた。やはり結婚というのはあくまで制度であって概念であって、時代を経て変わってきているものであるというのは納得した。明治以前の日本の結婚の主流は村内での夜這いであったというのも、お見合いが伝統だと思っていた身としては意外だった。後は、友人と結婚関係を結んでもいいという考えも斬新だと思った。なかなか答えが難しいテーマであるけど、自分がどういう人