国内小説作品一覧

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  • 体の中を風が吹く
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    章子は、ぐうたらな夫と別れ、2人の子供をかかえて働く、婦人記者である。わが子の成長を楽しみに生きる章子にも、女としての心のひもじさに耐えきれぬ夜もあった。彼女には、年下の恋人・省吾がいた。誠実な彼は結婚を迫るが、章子は自分の境遇を負い目として応じられない。愛しあい、逢瀬を重ねながら、章子の心は、かたくなに閉されてしまう。そして、上役の世話で、省吾に若い笹子との縁談が起こるのだが……。年上の女の情熱と哀しみを主題に、定年を迎えた隣りの山崎家、そこに同居する共稼ぎの安川夫妻など、善意をもって生きる人々の生活の哀歓を描く、長編傑作。
  • 青い貝殻
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    生きているウシロメタサと抑圧された性の欲望、抜き差しならぬ友人や女との関係を、安岡章太郎節とも言うべき苦いユーモアと自在の文体で描いた5つの短篇集。
  • 人斬り新兵衛
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    田中新兵衛は、鹿児島城下の船頭だった。彼を薩摩勤王党に推挙したのも、商人から武士になった森山新蔵である。尊王討幕の気運がみなぎる京にあって、新兵衛は、孤独な末輩でしかなかった。やがて、彼が心から頼った森山新蔵は、寺田屋の変に連座し、あえなく切腹して果てる。佗しく郷愁に身を焦がしていた新兵衛にも、ここで転機が訪れた。酔って中座同心を斬ったのをきっかけに、九条家の諸太夫・島田左近を斬殺、首を三条河原に梟した。旋風のように、人斬り新兵衛の名は、京洛に鳴り響いてゆくのだった。そして、姉小路卿の暗殺……。幕末転変の人生を描いた佳篇「人斬り新兵衛」はじめ、全12篇。
  • 女の椅子
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    夫が若い商業デザイナーを愛し、間もなく子供さえ生まれようとしていることを知ったとき、由紀子は、小さな息子の洋を連れて、家を出た。家政婦として働き始めた彼女は、いままで知らなかったさまざまな家庭と、その中に息苦しく耐えている夫婦の姿を見た。それぞれの業を背負った男と女が、お互いに傷つけあっている姿に愕然とするが、それでも彼女は、安らかな「女の椅子」が欲しいと願いつづけた。その間に、夫との溝は、ますます深くなって行くのだった。……新鋭女流が、動揺しやすい夫婦愛の機微を、きめこまかな筆づかいで捉えた、味わい深い佳篇である。
  • 嫉妬やつれ
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    夫がポケットにしのばせていた、女文字の手紙。《夫を愛している女性がいる》……三千代はとまどった。40歳をこして、冬眠した動物のように、枯れきっていた夫に、そんな情熱が、どうして甦ったのだろう……。相手は若い女なのだろうか? 三千代は、夫の後をつけた。そして見た、夫の情熱を呼びさました冴子という女を。突然、三千代は乾きを覚えた。忘れていた性の乾き。雑踏の中で、稲妻のように体を突き抜けた思いに、三千代は戦慄する。《私も夫を裏切ってみたい!》……中年夫婦の愛情の危機を繊細な筆でえがく、『嫉妬やつれ』はじめ、全10篇。
  • 算士秘伝
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    現代での数学=算法を操る者たちの悲喜こもごもを描いた表題作や、超能力である千里眼を持つという女と、そこに群がる者たちを描いた『千里眼』など、時代物の短編集、全7編。
  • 銀の庭
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    京都の名刹・聚閣寺の住職・栂春泉には、貞淑な妻と美しい2人の娘とがあった。ある年の5月、アカ新聞が誤解に満ちた筆で、春泉の私行を暴露した。寺の金を横領して、先斗町の女にバアを経営させているというのである。それは、燈全寺派法類間の政治的な争いの材料にされ、栂一家は蟻地獄に突き落とされた。事件の成り行きを通して、それは次第にあきらかになった。そして「法衣を着たけもの」の爪は、春泉の娘・圭子にも迫った。……慈悲の法燈の影にひそむ俗臭と本能とを執拗に追求し、そこに散る花びらの哀切な美しさを描いたこの連作は、水上文学を象徴する野心作である。
  • 兜町狼
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    三条銀行の頭取・高藤喜七郎は、財閥解体政策によって統制を失っている旧三条財閥を、銀行の主導権の下に復活させることを悲願としている。しかし、三条不動産社長・田淵英造は、高藤に対抗し、不動産の主導権による三条系列再編成を画策する。一方、もと証券取引所守衛・山沢新二郎は、某外国人と組み、三条不動産株の買占め、乗っ取り、さらには東京のド真中・日本橋の租界化を企む。買占めの情報は「とり屋」の栗山に嗅ぎつけられ、事件は影の主役、保守政党政調会長の登場をよぶ。欲望の町・兜町を舞台に、利権を追って浮沈する人間の相をダイナミックに描く長編ロマン!
  • 海流
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    遭難した紅洋丸の通信長・豊野道彦を救った密輸船の秘密。沖縄と海の生活を舞台に展開される、波瀾万丈のメロドラマ。海難事故から始まる出だしで、壮大な海洋物の長編と思いきや、ぐいぐい恋愛に引き込まれていく傑作。
  • 右京介巡察記
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    将軍代替りのたびに、各藩へむけて発向せしめられた幕府巡察使は、しだいに初めの意義がうしなわれ、形骸化してきている。各藩が失政をおおいかくすため、巡察使に対して酒色と賄賂の奸策を用い、その口を封じようとしたからだ。だが、その年の3人の正副使のなかに、ひとりの気骨ある武士がいた。瀬名伝右衛門。巡察の古習を守ろうとする正義のふるまいは、各藩にとって、若々しいかぎりであった。しかし、藩の秘密を守ろうとする奸計にはめられた伝右衛門は、腹を切って果てる。その怨念を承けついで日かげに育った一子・紫右京介は……。神変無想流をきわめた虚無的な瞳の美剣士が、父の仇を討つ時が刻々せまる!
  • しょうゆ顔少年の謎
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    「おしょうゆ顔」世代のダンディズム研究。汗なし、涙なし、脂気なし。「朝シャン」で髪を整え、バーゲンに賭ける青春? ポスト新人類の思想と行動を鋭く分析、時代を読む痛快キーワード集――「もう、早く洗面所あけてよ。私だって使いたいんだから!」「一体なんなんだ、キミたちは!」……しょうゆ顔少年の朝、至福のひとときは姉貴の悲鳴によって破られる。シャンプー、整髪、お肌の手入れ。東にバーゲンあれば、青春を賭けて並び、西にパーティーあれば、タキシードで駆けつける。彼らのダンディズムとは何か? 軟弱と笑わば笑え、現代少年生態図鑑。
  • シバテン群像
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    高知に棲息する天狗の幼虫的存在で、道行く人に相撲を挑み、1000人から勝ちを得ると天狗になれるという、妖怪・シバテンを題材に、江戸時代から明治開花の御世までを舞台に、坂本龍馬なども登場させて、虚実綯い交ぜの民話風味わいの滑稽譚集。
  • 江戸落語奇譚 寄席と死神
    3.7
    1~2巻660~748円 (税込)
    大学2年生の桜木月彦は、帰宅途中の四ツ谷駅で倒れてしまう。助けてくれたのは着物姿の文筆家・青野で、「お医者にかかっても無理ならご連絡ください」と名刺を渡される。半信半疑で訪ねた月彦に、青野は悩まされている寝不足の原因は江戸落語の怪異の仕業だ、と告げる。そしてその研究をしているという彼から、怪異の原因は月彦の家族にあると聞かされ……。美形文筆家と、なりゆきでその助手になった大学生の謎解き奇譚! 第6回角川文庫キャラクター小説大賞<優秀賞>受賞作。 イラスト/硝音あや
  • モンスターと食卓を
    3.9
    1~3巻660~682円 (税込)
    杉石有(なお)は、研修医時代のある出来事によるトラウマを抱えつつ法医学者として暮らしている。そんな彼が突然恩師から託されたのは、美しすぎる非常識な青年シリカ。果たして奇妙な同居生活が始まり……
  • 我慢できない女ざかりの私 1
    -
    熟年婦人たちの赤裸々な性体験告白手記を集めた、女性の性体験告白がたっぷり読める告白手記集。若者との性交、初めてのバイブの快楽など、普通の人妻主婦たちの赤裸々な体験談を収録。※この電子書籍は「官能私小説(7)」を電子化したものです。※収録作品:「女肉の抵当」「本物の愛の味」「性的好奇心」「最高のセックス」「肉色の玉の輿」「背徳19番ホール」「主婦が獣になる時」「アナルアクメ」「豪華な乱交戯」「甘美な記憶」「罪深き性欲」「M女の気持ち」「私のM性を見出したパート先の上司との緊縛戯で大悶絶」「性欲ヘルパー」「淫乱なお尻」「後家くずれ」「旅の思い出」「老人への性的虐待」◆主婦が描いた掌編官能小説「主婦が獣になる時」「アナルアクメ」「豪華な乱交戯」「甘美な記憶」「罪深き性欲」「M女の気持ち」◆熟年婦人の独り言「目下主人との自慰ごっこに夢中の熟年妻です」「還暦過ぎてやっと出合った我が人生最高の男」「読んで大興奮!私の不感症を治した官能小説」「凄まじく快感だった海外旅行での危ない体験」「五十路の初挑戦!オナニーの快感に痺れて…」「いい年こいて初めて夫と入浴した恥ずかしさ」「三十年ぶりに初恋の男性とばったり遭遇して」「縄掛けされて失神するほど鞭で打擲されたい」「五十歳過ぎて初めて体験したフェラチオの味」「生まれて初めての自慰で絶頂感を知りました」「女のプライドをかけて老紳士を奪い合った私」「浣腸が便秘症の私の性生活を充実させました」「バイブ狂い」「抱かれたい男」「金で買える男」「悦楽の禁断症状」「疼けるお尻」◆熟女乱倫手記集「淫らでふしだらな私を夫に代わって折檻して」「もっと太い巨根を求めて不倫を重ねる私です」「下着泥棒の隣の息子を性欲処理道具にした私」「強引にお尻の穴を嬲られて変態女になった私」「少年を挑発して強姦魔にさせる罪作りな私」「妻妾同居生活」「色狂いの舅」「忘れ難きレズ性感」「高慢美女の流転」
  • 薔薇の木にバラの花咲く
    -
    潔癖で清純な心の持主の黎子は、アルバイトをしながら大学で学んでいた。戦災で両親を失い、肉親は姉ひとり。人の負担になるまいと肩を張って生きている彼女の前に、名門の建築設計士の叶が現われる。叶は黎子を愛し、若い直情から、彼女の肉体に愛の烙印を押した。黎子に静かな愛を寄せていた誠実な鳴海は、事情を知ったとき、男らしく耐えて、黎子と叶が結ばれることを願った。が、それは、黎子を蟻地獄のような苦しみと迷いに追いやるのだった。純粋な処女の心理と、愛情の哀しみと美しさを追究した、清爽な抒情あふれる青春ロマン。
  • 夜と昼と
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    静子は過去に一度結婚したが、夫に女ができると自ら身を引いて別れるような、内気なやさしい性質であった。姉の愛子の家に、妹の珠子とともに身を寄せているが、姉たち夫妻のいまだに新婚気分の漂う幸福そうな様子、バレエに打ち込む珠子に較べ、女としての自分の幸福を夢みることもあった。静子は姉の夫の弟の和夫に親しみを感じていたが、和夫の方も共かせぎを続ける妻のさばさばした性格とは違って、いつも「女」を意識させる静子にひかれてゆき、やがて二人は周囲の人々の目を忍ぶ暗い情熱に結ばれてしまう。現代社会における愛のあり方を追求した力作。
  • 鶴の来る町
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    南国・薩摩半島の農家に生まれ、枕崎のあいまい屋で働いているかね子は、一度だけ男にだまされたことがあった。それ以来、男に気を許すまいと誓っていたのに、蜂飼い男の刀祢吉が店に現われたとき、ふしぎな心の動揺を感じた。刀祢吉は、妻に先立たれ、まだ幼い一人娘をかかえた、風采のあがらない男だった。なぜ馬ヅラの蜂飼い男に惹かれるのか、かね子自身にもわからなかった。まして、それが悲しい運命の序章になるとは、夢にも思わなかった。……この作品は、貧しく世間知らずの二つの魂が、幸せを求めてのたうつ姿を、社会性のある眼で捉えた、美しい心の歌である。
  • 忠直卿行状記
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    越前宰相・忠直には、沸々たる不満がたぎる。二代将軍・秀忠の兄・秀康の長子に生まれ、大坂の陣にも東軍随一の戦功をたてながら、恩賞は薄かった。「血統から言えば、わしが将軍となって当然の身分ぞ!」忿懣は忠直を酒色に走らせて、やがては狂乱の殺戮をほしいままにする。愛妾の一国とともに罪人の処刑を見物し、鮮血のなかに盃を傾け、果ては罪なき家臣に無理難題をつきつけて成敗する。残虐の裡に無上の快楽を求めていた。忠直の妻は、秀忠の娘・勝姫である。狂気の中に身を滅亡の淵に追い込もうとする夫の行動を、彼女は江戸に告げた。独自の新解釈による「忠直卿行状記」ほか9篇を収録。
  • 地場者
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    地場者、それは日のあたる証券会社の椅子から振り落とされた一匹狼たちである。大相場師と謳われた亡父の夢のお告げに人生を賭けようとしている神沢、客の株券で思惑を張り1800万円の大穴をあけて悩む隅野。彼らは、喫茶店ナインに集まっては自嘲をくり返し、情報を囁きあうのだ。そこで神沢は資金繰りの秘策を練り、隅野は逃亡を決意した。しかし、所詮は地場者、神沢は空しく高騰を続ける相場を傍観するだけだったし、隅野もこの街の魔力から離れることはできなかった。兜町の影に生きる男たちの生態を生々しく描く「地場者」のほか、企業小説2篇を収録。
  • 鮮血洋燈
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    洋燈(ランプ)に隠された、ロマノフ王朝最後の王女・タチアナの宝石を巡って、ロシア、満洲、日本を舞台に繰り広げられた殺戮と惨劇。だが、実はその宝石は、ある日本人が軍に供出していた品で、ある日本の大臣が秘匿しようとしていたことがわかり……。元・日本探偵作家クラブ会長の手による、戦争が生んだ狂気を描いた傑作ミステリー。
  • 戦国兄弟
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    敵の内部を分断する反間苦肉の策。秀吉一流の調略に見事はまった織田信雄は、亡父・信長以来の家老・岡田重孝の誅殺を策した。豪邁の士・重孝は「さらば死に狂いの働きを見せよう」と主の面前に進む。暗愚な信雄に、戦国武士の死にざまを示そうというのだ。深傷を負いながらも、なお屈しない凄絶の暗殺劇だった。そして、兄への諫言も空しく残された重孝の弟・義同は憤激した。織田・徳川連合軍相手に奮戦し、小牧長久手の戦いに発展してゆく。義同はやがて前田・加藤両家を転々するが、その雄偉なる骨格、性根は、戦国の世にも異彩を放ってやまない。剛毅に己が信念を貫いた「戦国兄弟」の生涯を描く。
  • 神々の岩壁
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    南は、ハーケンを打つ右手に、異常を感じた。手ごたえが甘い。垂直300メートルに屹立する衝立岩にとりついて3日目、最後の一滴の水もつきていた。バランスを失って、危うく墜落しそうになる。もはや彼の心には、岩に対する憎しみだけがあった。登攀不可能といわれる衝立岩は、神々の手に守られて、人間を拒んでいるかに思える。それでも、南は危険な垂直の前進をやめようとしない! 少年の日、登山家を夢見ていらい、ヒマラヤを志して精進を続けた、天才的クライマーが、魔の谷川岳、衝立岩に挑む姿をえがいた実録小説「神々の岩壁」はじめ山岳小説4篇。
  • 新編 八犬伝
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    おなじみ、苗字に犬という字があり、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌それぞれの文字のある玉を持つ、8剣士ならぬ8犬士の物語。日本文学最大の長編と言われる滝沢馬琴の名作を、剣豪小説の名手が描く!
  • 告白・女心遍歴
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    幾度も職業を変え、貧に悩み、さまざまな傷心を、人の何倍か味わった水上勉は、人間のおそろしさにおののき、しかも人間を愛さずにはいられない。「女心遍歴」という言葉の中には、理想の女を求め、裏切られ、やはりそれを思うことをやめられない男の、せつない祈りがこめられている。また、みずから破戒坊主と称して、女性とのもつれ合いを「告白」するとき、水上勉の心には、愛へのはげしい願いが、こみあげてくる。……自伝的な、この2つの異色作は、著者の作品群の中で印象的な位置を占め、著者の心の記念碑ともいうべき、美しくかなしい物語である。
  • 慶長大判
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    関ヶ原の戦いの翌年、徳川家康は江戸大判座で大型金貨を鋳造し、日本で初めての全国的流通金貨とした。その金貨を届けるために男たちは……という表題作はじめ、人情や愛嬌のある人々を描いた、8作品の短編集。
  • 国枝史郎伝奇文庫 暁の鐘は西北より
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    帝政ロシアの極東政策が、ひそかに日本に上陸か? ……得体の知れない奇妙な建物、浅間山の谷間にあるという人体建築の秘密とは? 日本人ばなれした濃艶な娘・ニナ小夜子をめぐって、泉東十郎と坂部軍之進との激烈な恋あらそい。また、オリガ桜子一党と人体建築の主・溝呂木信兵衛一党との凄惨な確執。世紀末的症状を現わす田沼時代の、秘密に満ちた多様な人間の綾なす絵巻!
  • 偽りと真実のあいまに
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    たみ子とのぶ子は、魅力的な結婚適齢期の姉妹である。よく似た顔立の2人だが、性質は対照的で、姉は引っこみ思案、妹は積極的でコケティッシュでさえある。ある日、のぶ子は、デパートの特売場で好意を感じている好青年・野崎正雄と出会い、急速に親しくなる。そこでのぶ子は、野崎とたみ子を結びつけるために、野崎の若い血潮を燃え上らせ「飢餓状態」に引き入れようと企んだが……。ユーモアと健康なエロティシズムで愛情の真実を描いた「偽りと真実のあいまに」の他、「ハシカのようなもの」「辛抱づよく生きたS氏の像」「私の犬はレオという」「猫」「老婆」を収録。
  • 甘いホテル
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    いっけん英国紳士風の直江一良は、「善良な市民のよき相談相手」と称する《直江コンサルタント》を開いている。ある日、麗しい女性の依頼人がやってきた。彼女は細谷てい子といい、金力にものをいわせて温泉マークのホテル建設を狙って画策している萩原仙三に対抗して、品格あるホテルを建て上品な保養地にする計画の実現に力を貸してほしい、という相談であった。躊躇している直江のもとに「彼女こそコール・ガールの組織を操る悪女」という怪電話があり、助手の紀子と竜平の応援をえて、俄然真相究明にのりだす。笑い・スリル・お色気に溢れるユーモア・ミステリー。
  • 歌舞伎剣法
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    15歳の美少年・山三郎は、蒲生氏郷に召し抱えられたが……という表題作はじめ、五味康祐、柴田錬三郎とともに、剣豪小説を支えてきた著者による傑作8編。
  • 佳人
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    一日中、子供用の肘かけ椅子に行儀よく坐って、紅殻色の出格子にはめこまれた小さなガラス窓から道路をのぞいていた、足なえの童女、その名は圓(つぶら)。薄い皮膚に「いのち」を包んで、それは幻のように美しい童女であった。女にとって、いちばん華やかで夢多い季節になっても、彼女は10歳にも満たぬ躯しかなかった。が、数奇な運命をになう彼女に、結婚の日が訪れる。それは非情な忍従を求める、おそろしい日々の明け暮れだった。清純に死を選んだ彼女が残していった紅絹の匂い袋……。直木賞作家・藤井重夫が哀切な筆でえがいた佳人の生涯。
  • まぼろしの人
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    初恋の女性との結婚生活に失敗した私は、いまふんぎりの悪い独身生活をつづけている。ある日、私は、既に人妻となっているリキ子と、37年振りに再会した。私とリキ子には、東北のS町で幼い性の遊びをしたという遠い記憶がある。それは異常な老婆の仲だちで行われた暗い彩色画のような、心の歴史の一齣であった。幼い体験から出発した二人は、それぞれに辿った人生の半ばを過ぎた頃、ホテルの一室で語り合う夜がめぐり来るとは、夢にも思わなかった……。人生のたしかな実感に裏打ちされた中年男性の抒情を流露させた「まぼろしの人」ほか4編収録。
  • チンネの裁き
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    ヒマラヤ遠征隊のリーダーとして有名な蛭川繁夫が、剣岳チンネをめざして池の谷左俣の雪渓で落石死した。剣尾根のドーム壁を登攀していた木塚健は、落石が3方から起こり、その上にそれぞれ人がいたことから遭難に疑惑を抱く。しかも、アイゼンの紐が切れていた! 何者かの作為を感じ真相の究明にのりだした木塚と蛭川の兄・一郎の前に立ちふさがる、山の偉容となまぐさい人間関係……。この「チンネの裁き」は、美貌の女流アルピニストをめぐって山の掟をやぶった山男たちの愛の確執から、登攀ルートに企らまれた完全犯罪が山の裁きをうける顛末を、逞しい筆致で描いた異色作。
  • この子の父は宇宙線
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    11人の女性だけを月に送り込んだ国と、9人の男性ばかりを送り込んだ国があったが……、という表題作はじめ、山岳小説で有名な著者が描いた、貴重な4つのSF小説。現在の電気通信大学卒で気象学者という、理系の作者だと実感できる。
  • 国枝史郎伝奇文庫 猫の蚤とり武士(上)
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    秘密結社・明暦義党は、徳川幕府転覆を謀る組織である。首領の鵜の丸兵庫は、由井正雪の異母弟で、猫の蚤とりという賤業に身をやつし、義挙の機会を狙っている。だが、盟主とあおぐ紀州・頼宣の違約により、計画の実現は容易でない。松平伊豆守の女隠密・梶子、頼宣の嫡孫・萩丸、兵庫の恋人・菊女、義党にとって凄愴な敵・刃三十郎など、種々多様な人間模様の、種々多様にからみあう、謀反と反逆と宝探しの面白さ。<上下巻>
  • 国枝史郎伝奇文庫 明暗二道
    -
    戯作者の鵞湖亭茅舎が、木曽へ向かって旅立ったのは、天保10年の夏のことでした。鳥居峠まで来た時でした。一人の武士が鵞湖亭を見詰めながら立っていました。ところがちょっと意外なのは、その武士が顫えていることでした。…………老婆が一人崖っぷちに、切り倒されておりました。(さっきの武士が切ったんだろう)(抵抗力もないあんな老婆を、何故あの武士は切ったのだろう?)…………鵞湖亭茅舎の行く先々にもちあがる、意外、不思議な事件の数々!
  • 花嫁の父となりぬ
    -
    娘の結婚に、どこの家の父親も……。銀行員をしながら作家をしていた著者の、ユーモアあふれるホームドラマ。父と娘の愛情を描き、連続ドラマにもなった作品。
  • 鬼役外伝
    5.0
    ――毒を啖うて死なば本望と心得よ。将軍の毒味役、通称鬼役の矢背蔵人介は、毒味御用の一方で、江戸の悪を成敗してきた。そんな鬼役を支える家族がいる。養母で薙刀の達人の志乃、剣は不得手だが勉学熱心な息子の鐡太郎、成敗御用を支える用人の串部六郎太……。そんな家族たちの「もうひとつの物語」を綴った短編六編を収録。鬼役ファンならずともハマる一冊。
  • 野火
    -
    若い兄弟の孤児が、つまずきやすい青春を支え合い、貧しいながらも美しい恋を得て、人生行路を乗り出す、正義と純情の現代ロマン。競馬場のシーンがたくさん出てきて競馬ファンにもおすすめの1冊。
  • 冬の椿
    -
    戦火がいよいよ烈しさを加えて来た昭和19年、画学生・笹田香澄は、母とともに鎌倉に疎開して来た。隣家の青年実業家・瀬木龍彦は、香澄の美しさに惹かれ結婚を申し込んで来るが、香澄の心には同じ研究所の画学生・伊吹慎一の面影が焼きついて離れない。しかし伊吹に赤紙が来て、応召の前夜、香澄は伊吹に抱かれた。……何年か後、香澄は財力にものをいわせた求愛の前にくずれ、瀬木の妻となっていた。しかし戦死を伝えられた伊吹が突然生還し、香澄の情熱は再び燃えあがった。ふとした事で知った革染の美と伊吹への恋が、香澄の前に明るく開けて来る……女の恋と情熱を描く長篇!
  • 子供の眼
    -
    利発な、長いまつげをした小学校3年の修。実母は病気で世を去り、新しく来た母・幸子は歯科医で、結婚後も実家の仕事場通い。父も勤め人だし、家を切りまわすのは若い叔母の喜世子だけ。黙って梨の実をかじる修の童心の四季に、父の不満や義母の気苦労、婚期にある叔母のあせりなど、おとなの生活と愛情の重みが投影する。「第二の母をもった私の経験が、この作品にいちばん入っている」と作者は自らいう。一度はこわれかけて、また作り直される善意の人々の<家庭>の中に、ひとり眼をみはる修少年のすがたを、流麗の文章にうたいあげた秀作。
  • 仮面と衣装
    -
    港湾の小都市・南浦市のパチンコ屋の娘・戸田松子が堕胎し、そして縊死した。日日新聞の支局付記者・番匠谷人志は、松子の死を疑い、調べてゆくうち、ヤクザの大里組と葦原組との争いの中に巻きこまれていった。何かを画策している大里組の小湊正美、しばしば番匠谷の危難を求う傷病軍人・城励太郎、妖艶な芸者・つた代、女給・ミリー。サスペンス溢れるスリラー長編。
  • としまあず
    -
    30代の女の盛りを楽しもうという、としまのぐるうぷの名誉会員・その子は、富士大学教授夫人の美女である。愛の充たされぬ夫との生活を過して来たその子にとって、熱烈なファンである新進オペラ歌手・柳瀬俊吉の愛の告白は、青春が再び甦り、女としての充実した時を予感させる快いできごとであったが……。虚構の物語の中に女性心理を追究した力作長編小説。
  • 柊先生の小さなキッチン
    3.3
    彼氏に振られた痛手から、ひどい食欲不振に陥った一葉。小さな我が家・万福荘のお隣さんとして、柊先生が越してくるまでは……。偶然の出会いと、心もお腹も癒す先生のごはんに、少しずつ自分を取り戻していく一葉。一方、万福荘には次々に個性的な住人が引っ越してきて……? 「嘘偽りなきポトフ」「小説家のための角煮」「あつあつプリン」やさしいメニューが絆を繋ぐ、満腹×万福ストーリー。
  • 欺(あざむ)きの訴(そ)~吟味方与力 望月城之進~
    4.0
    1~3巻660円 (税込)
    「殴ったことは間違いありませんが、殺しちゃいません」番頭殺しの疑いで捕らえられた政吉は、お白洲での吟味で、罪を真っ向から否認した。さらに、金貸しの藤兵衛夫婦を殺したことを訴えた。その騒動はすでに落着し、下手人は死罪に。だが、政吉の訴えは、真の下手人でなければ知りえないことだった。吟味方与力の望月城之進は、騒動の真相を探るため政吉を解き放った。
  • 家康・十六武将
    -
    誰に仕えるか、どう仕えるか。この決断が、一族の存亡を左右した戦国乱世の時代。主家のために、そして己れのために、男たちは戦場を疾駆し、難局に立ち向かっていた。本書は、徳川家康の天下取りを支えた井伊直政、本多忠勝ら16人の武将をとりあげ、その武勇と知略、そして壮絶なる生きざまを描いたものである。
  • 猫に知られるなかれ
    3.7
    終戦後の混乱と貧困が続く日本。凄腕のスパイハンターだった永倉一馬は、池袋のヤクザ用心棒をしていたが、陸軍中野学校出身の藤江忠吾にスカウトされ、戦後の混乱と謀略が渦巻く闘いへ再び、身を投じる――。吉田茂の右腕だった緒方竹虎が、日本の再独立と復興のため、国際謀略戦に対抗するべく設立した秘密機関「CAT」とその男たちの知られざる戦後の暗闘を、俊英・深町秋生が描く、傑作スパイ・アクション!(解説・杉江松恋)
  • 無頼空路
    -
    加島は東京駅で、元海軍の機長に護衛を頼んだ。名古屋に着いてからのことを。機長は鉄道で行くと言うが、加島は飛行機を使うという……。守るのは現ナマ。ある企業の株主総会へ向けて、ある計画が……。経済小説の第一人者による、共同通信経由地方誌配信の連載小説。
  • 肌は匂っていた
    -
    デパートに配送ミスの苦情が来た。ワイシャツがパンティにすり替わっていたというのだ。配送担当の枝里子は、自分のミスでも責任でもないという思いを抱きながらも、お客様の家へ謝りに行く。そして家に帰ると、結核の夫が待っているのだった。そして、意外な事件が起こり……。サスペンス感もあふれる、働く女性の物語。
  • 女の港
    -
    丘の上にあるカトリック系の女子学園。港を見下ろすことができる。西川はそこで英語を教える、数少ない男性教師である。信者ではないが、司祭をしている叔父の紹介で勤めているが……。周囲の人々との関係性を描いた、生活感のある傑作。
  • 私の耳は貝の殻
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    引き揚げ船で日本に戻ってきた奔放な美少女が、サーカスで暮らしたあと、波瀾万丈の人生を送る。社会性も常識もない彼女だが、エネルギーあふれ野生的、そしてなにより魅力的だ。女優としてデビューし出会った、セクハラ親父の大金持ちにもひるむことなく、手にした財産もすべて寄付してしまう……。ジャン・コクトーの詩から取ったタイトルも印象的な傑作。
  • テント劇場
    -
    作者の得意とする大阪は河内を舞台に広げる男女の恋愛絵巻。どさ回りの一座がテント劇場にやってきて、大入り満員に。大学中退の演出家に惚れる、座長の娘二人。しかも姉の方は、看板スターの妻なのに……。複雑な三角関係を中心に、様々な男と女の関係を描いた作品。今村昌平監督の初監督作品「盗まれた欲情」の原作にもなった傑作。
  • たれかが呼んでる
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    本州最北端のふのりの採れる集落。15歳になったスズは、大農の長男のもとに嫁いだが、姑の気に入られず、やがて、実家にかえされる。スズの流転の人生は、ここからはじまる。ひたすらに愛を求めるスズは、その後、若い教師、行商人、牧場経営主、脱獄囚、牧夫と関係し、次々に子供を産んでいく。6人の男に身をまかし、10人の私生児を産んだ、スズという女の一生を温い目で描いた力作。
  • おこまさん
    -
    「おこまさん」は、小ぶりな身体から生れた愛称である。年ごろの一人娘・萱子と二人ぐらし。亡夫の遺志で建てたアパート「松の荘」の持主で未亡人。親切で世話好きなおこまさん母娘を中心に、現代社会の縮図ともいえる、男女さまざまな10人のアパート止宿人の生活から、笑いとペーソスを織込んだ人生悲喜劇が展開される。庶民的ユーモア溢れる長編小説。
  • P+D BOOKS 天上の花・蕁麻の家
    5.0
    1~2巻660~880円 (税込)
    萩原朔太郎の長女が描く、壮絶な物語2篇。 「天上の花」は、詩人・三好達治を、幼いころから三好にかわいがられていた著者ならではの目線で描く。三好は前妻(佐藤春夫の姪)と別れ、朔太郎の妹・慶子と付き合うようになるが、きらびやかな生活を好む慶子と、貧しくても平和な暮らしを望む三好の愛の生活は、やがて破滅的な最後を迎える――。第55回芥川賞候補作。 「蕁麻の家」は、母親が他の男のもとに走ったことが原因で、幼少期から祖母、叔母など家族みんなに疎まれ、頼みの父親からも避けられてしまう主人公の、まさに棘に囲まれているような生活を描いた秀作。第15回女流文学賞を受賞。
  • ちびねこ亭の思い出ごはん~キジトラ猫と菜の花づくし~
    3.9
    「バカ、死んじゃえ」。夫の保と喧嘩した陽葵は、出勤する彼にひどい言葉を投げつけてしまった。その日、夫は事故に遭い、生きて帰ることはなかった――。悔やんでも悔やみきれない最後の別れ。陽葵は、亡くなった人ともう一度だけ会えるという千葉の内房にある食堂へとやって来るのだが……。人々の切ない想いに涙がとまらない、温かくて優しい連作短編集第3弾。
  • 斬鬼狩り~船宿事件帳~
    -
    駿河国江崎藩の隠目付だった海野洋之介は、藩の仕事を離れ、深川今川町の船宿「舟政」の亭主に収まっている。好きな釣りをしながら客に料理を出すなど静かな生活を楽しんでいた。そこに舟政の客である両替屋の稲兵衛が殺されたという知らせが入る。友の敵を討つべく洋之介は動きだす――。隠目付シリーズの主人公が新たな活躍をする著者渾身の新シリーズ開幕。
  • 父の秘密
    -
    中学3年生の娘は、年末のある日、父と暮らす家の古土蔵を大掃除していたら、ある家族の写真を見つけてしまった。それは、昭和19年5月、東京・麹町の家で、その家族が撮った1枚のようだったが……。戦争を抱えながらも、懸命に戦後を生きて行く家族たちの物語。
  • 化身
    5.0
    琵琶湖が一望に見下される泰門庵の庵主・梵仙は、眉涼しく筋骨たくましい青年であった。尼僧の舜海も、画学生の阿井子も、祗園の美しい芸子すら、身を投げだして悔のない魅力をそなえていた。しかし、法燈のもとの愛欲の業は、五条の親分の怒りを誘い、梵仙の法衣もまた風を孕む。厳しい戒律に反抗しつづける梵仙。彼によって女の灯を点された舜海尼。ここに生々しい人生図があった。……
  • ポプラ並木はなにを見た
    -
    北海道の貧しい村。そこに暮らす、やさしい人たち。小学校の吉岡先生は、子供たちに人気がある。そして、独身でまだ若い。 ある日、新潟から津軽海峡を渡ってきた祖父と孫がいた。村の人たちは心配して……。テレビドラマ化もされた感動の物語。
  • サラリーマン芸人。
    3.7
    1巻660円 (税込)
    中野界隈で夜な夜な飲んだくれているだけの芸人集団「竜兵会」。しかし、そのメンバーは土田晃之、有吉弘行、劇団ひとり等、いまのバラエティ番組には欠かせない売れっ子ばかりである。実は竜兵会は単なる飲み会ではなく、サラリーマン諸氏の行なうノミニケーションと経営戦略会議を兼ねた場だったのだ! 大人気トークバラエティ『アメトーーク!』でもたびたび取り上げられる、不況を生き抜くためのバカイイ話満載、サラリーマンなら必読の一冊!
  • つながりの蔵
    4.0
    小学5年生だったあの夏、幽霊屋敷と噂される屋敷には、庭園に隠居部屋や縁側、裏には祠、そして古い蔵があった。初恋に友情にファッションに忙しい少女たちは、それぞれに“哀しみ”を秘めていて――。
  • 隊長と犬係りと橇犬たち
    -
    西堀隊長率いる南極越冬隊。天候の悪化で、ソリを引く犬たちが……。という表題作のほか、山の中の狼、鷹匠と鷹、土佐闘犬、全部で4つの物語。動物文学を確立させた直木賞作家の腕が冴える傑作集。
  • 海は七色
    -
    九州若松港の肉体労働者たちと、そこを取り仕切る親分衆。彼らはみな血気盛んで、ギャンブルにのめり込んでいる。ふとしたことから、海女だったという女と出会い……。北九州の海や島も舞台に、心意気を見せる男たちの物語。『糞尿譚』が芥川賞を受賞した作家の傑作。
  • 加納大尉夫人
    -
    大阪で指折りのメリヤス問屋の末娘に生まれた安代は、卒直な明るさを持つ娘であった。安代が女学校を卒業した年に、戦争が始まった。ある日、母に見せられた1枚の写真、それが海軍中尉・加納敬作であった。敬作のりりしさにあこがれた安代は、彼の妻になった。少女時代の延長のような稚なさの安代が、帝国軍人の妻らしくなりたいと努力し、緊張するほど、無邪気な失敗がくり返された。そんな妻を、敬作はいとしく思った。戦いは次第に苛烈さを加え、敬作の出征中に、安代は男の子を生んだ。そして半年の後に、敬作の戦死が伝えられた……。ほかに「猫」「山」「二人の女」を収録。
  • ふくろうの歌
    -
    昼は写真工場の工員、夜は定時制高校に通う泰彦に注ぐ母の愛は、母一人子一人ゆえに大きかったが、職場の無理解、定時制に対する世間のハンデキャップから、泰彦は母に抵抗する。演劇部グループ内の恋のさやあて、学生運動、そして絶望、幻滅、孤独、虚無……。現代の若い生命の苦悩と哀歓を描いた長編力作。
  • あやつられ文楽鑑賞
    4.0
    あなたは、人形浄瑠璃・文楽を知っていますか? え、知らない? 大丈夫、ぜったい退屈しない仕掛けが満載! ほお、ご存じですか。でもちょっと待った。あなたの知らなかったことが、こっそりと書かれています。ーー若き直木賞作家が、いかにして“文楽くん”に恋をし、はまっていったのか。文楽の真髄に迫るべく資料を読み、落語を聞き、突撃インタビューを敢行する愛と笑いに溢れたエッセイ。小説『仏果を得ず』と合わせて読むと、おもしろさ10倍増!
  • 仏果を得ず
    4.0
    高校の修学旅行で人形浄瑠璃・文楽を観劇した健は、義太夫を語る大夫のエネルギーに圧倒されその虜(とりこ)になる。以来、義太夫を極(きわ)めるため、傍からはバカに見えるほどの情熱を傾ける中、ある女性に恋をする。芸か恋か。悩む健は、人を愛することで義太夫の肝(きも)をつかんでいくーー。若手大夫の成長を描く青春小説の傑作。直木賞作家が、愛をこめて語ります。
  • 妙齢失わず
    -
    本を読まない人を馬鹿にしているちず子が久しぶりに実家に帰ると、姉の明子が出迎える。その明子は、実は子供を……。大人の女性たちの心模様を、詩的な風景描写をまじえて描いた、日本を代表する詩人の長編小説。
  • 武四郎探検譚
    -
    動物文学の第一人者が、戦国・江戸時代の歴史的人物を描く、傑作短編7編。蝦夷地探検で名を残す幕末の探検家・松浦武四郎の大自然の中での行動を描いた表題作ほか、鉄砲伝来の種子島、織田信長、今川義元、武田勝頼など、ノンフィクション作家としても定評のある著者ならではの作品ばかり。
  • 武豪列伝
    -
    動物文学の第一人者にして、ノンフィクション作家としても多くの名作を残した著者による、12編の傑作。山岡鉄舟、千葉周作、沖田総司、嘉納治五郎などを見事に描いた作品。
  • 濡れにぞ濡れし
    -
    恐怖と表裏をなしている幼年時代の性の記憶、羞恥に彩られた少年期の性の意識……京都の三高に入学した私は、倉田百三の「出家とその弟子」の恋愛観、ひいては親鸞の「歎異鈔」の倫理観によって、新しい精神の世界にめざめていった。性には罪悪感がつきまとう。私には愛を伴わない情慾は考えられない。東大に進学した年、六本木のカフェで女給の柳とく子に逢ったとき、私は「ここに私の妻がいた」と直感する。彼女と旅に出た私は、宿では手を握り合って寝たが、帰京した夜、彼女の下宿で初めて烈しい性衝動に襲われ……。晩年までの性中心の自伝で、絶筆となった長篇。
  • 天国遠征
    -
    大雨の日、筑後川の氾濫を心配する人々。その中に、戦後の新しい時代に、資本家となり芸術に心を傾ける家族がいた。その家の娘は、お芝居に夢中になり、配役で抜擢されもする。そして……。キリスト教をモチーフに人間の罪と罰を、『糞尿譚』で芥川賞を受賞した作家が描いた長編小説。
  • 子供は悪魔だ
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    弁護士、売春婦、留年続きの大学生が探偵役という3つの探偵小説に、奇妙な味のどんでん返しの短篇を加えた、4つの短篇集。親のすねをかじる子供たち、雪山での死、三角関係……当時の世相や風俗が浮かび上がる背景と小道具が盛りだくさんの傑作だらけ。
  • 山は大きい
    -
    大阪・心斎橋で、田舎から出てきた少年がスリを働き、地元のワルどもに因縁を付けられていたところ、一人の青年が助けに入った。お金持ちのその青年は、少年を自宅のある東京に連れてこようと上京すると、一人の女性が……。そして、ある事件に巻き込まれ……。少年と青年の交流を描いた感動の名作。
  • 花嫁太平記
    -
    親藩・松平家の江戸留守居役を、倅の藤太郎に譲って隠居した藤翁は、同藩目付役の娘・お乃芙を倅の嫁に迎えたが、藤太郎は国事に奔走するため、妻と相談の上、脱藩する。家名の断絶をおそれて倅を勘当した藤翁は、夫を信頼する嫁の強さといじらしさに心うたれて、勘当を思いとどまる。という、幕末の藩邸にありがちの事件を描いた「花嫁太平記」のほか、格式ばった武士階級の中に人情味を汲みとった「藪うぐいす」「ばかむこの記」や、勤皇浪人に危難を救われた男嫌いの姐御が、一夜の情交からすっかり女らしくなる「舞鶴屋お鶴」など、幕末動乱期のなかに義理人情を描いた、珠玉の名作集。
  • くれない系図 若さま侍捕物手帖
    -
    両国広小路「娘手ずま胡蝶斎一座」の君太夫が、何者かに殺された。親方・一神は、秘蔵弟子の死をきくと、なぜか花太夫の安否を気遣う。おなじみ遠州屋小吉が駆けつけ取調べていると、花太夫が行方不明となり、常回り同心・矢村小左衛門が検死にきたとき、君太夫の死体は煙のように消えていた。そのうえ小吉は、剣客風の武士に事件から手を引けと威される。花房家跡目相続にからむ一党と幻術師の死闘が展開され、渦中にまきこまれた「若さま」は、船宿・喜仙で淘然とばかりもしていられず、忍者もどきの大活躍をする。数多い作者の「若さま侍捕物手帖」のうちでも屈指の異色長篇。
  • お助け河岸
    5.0
    江戸の下町、居酒屋「上州屋」にあつまる常連のなかで、奇妙な話が流れた。どこの河岸かはわからないが、その河岸に悩みをもつ者がたたずむと、きっと「旦那」があらわれて窮境を救ってくれる……そこを「お助け河岸」と呼ぶそうな。上州屋の常連客のなかに、いわくありげな隠居がいる。そして、若い浪人・仙之介の闊達な飲みっぷりに、看板娘のお菊はぞっこん惚れていた。その頃、江戸の町に、奇怪な殺人が続発する。第一の殺人は、質屋の番頭・和三郎、彼は「お助け河岸」を探すうちに殺されたらしい。事件の探索に仙之介が立った。意外や若きこの浪人剣土の腕の冴え!
  • おえん殿始末 若さま侍捕物手帖
    -
    将軍家の寵妾おえんの方付の奥女中が、宿下り中、謎の矢に射られて死んだ。その背後に秘められた大事件!? ――「ここは柳橋米沢町、船宿喜仙の大川に沿った二階屋敷。齢のころなら三十四五……」一向に格式張らず、何の屈託もなさそうな至極のびのびと育った人柄の若さま。船宿の一人娘で今年19のおいと。二人の閑談をいつも邪魔して無粋さをおいとにうらまれる御用聞き、遠州屋小吉。……ご存じ、若さま侍捕物手帖『おえん殿始末』は、将軍家の寵妾・おえんの方という歌川の局付の奥女中が、宿下りして謎の矢に射られて死んだことから、大奥を舞台に豊臣家遺臣の謀叛事件が発覚する。その底深さに挑戦する若さまの鋭い推理と、優美な剣の冴えが、錦絵さながらに繰り広げられる巨篇。
  • 夜は新しく
    -
    香料技術家の夫・毛利直保が、銀座街頭に連れだっていた若く背の高い女は誰だろう……。平穏な日常生活に退屈した28歳の人妻・由美子の心にしのびよる愛の渇き。そして、濃い眉と逞しい胸をした建築家の小泉青年とともに、バア・トレントで乾したジン・フィズの味が、ひとつの危機の重みとなって冷たくのしかかる。傷ついた美しい獣のような由美子が、死を賭してまで捉えようとしたものは何であったのか……。人妻の不倫に内側から照明をあて、大胆な筆致と濃密なムードに浮彫した野心的長編。永遠にかなしく美しい〈女のかたち〉がここにある。
  • 夜の人魚
    -
    シベリア抑留から生還した、頑固一徹の元・師団長がたどる、変わってしまった日本の世相。清純な長女といわゆるアプレゲールの次女が、社長の息子で漁色家に翻弄され、ついには騒動に巻き込まれるが、その先に幸せをつかんでいく……。
  • 虹の誘惑
    -
    国鉄で若い頃一緒だった津村基幸と祖父江謙吉。平凡な幸せを掴んだ基幸家の人たちと、出世はしたが、道彦という長男が冷血な色魔である祖父江家の人たちの、愛と苦悩の物語を飽かせることなく読ませる。定年後、囲碁だけを趣味に生き、いかなる苦労も淡々と引き受ける飄々たる人生観が魅力的な基幸という人物像が、非常に魅力的に描かれている。
  • 地に満つる愛
    -
    瀬戸内海の同じ島に育った、高校の同級生という二人の青年。一人は高松市の講習所で農業を教えているが、船に乗って島へ帰ってきた。二人は役場に勤めている同級生の女性に声をかけるが、その女性は……。まじめな島の若者たちを描いた名作。
  • 大阪の風
    5.0
    しがないサラリーマンの大川清吉と朝子夫妻、その子どもたちの久子、一郎、次郎3人の成長の物語。清吉が東京支店に左遷させられた後、子どもたちは大人たちの生き方を見て、それぞれの形で自立していく。久子は台湾人との結婚を宣言、清吉と朝子は衝撃を受けるが、一郎と次郎は受け入れる……。長門裕之、南田洋子、浅丘ルリ子らが演じてで映画化された家族物語。
  • 若草軍記(上)
    -
    紀ノ川の近くの館で、真田昌幸・幸村に仕える忍びの又四郎。また猿飛佐助。徳川の策略で秀頼は……。そして真田が動くとき……。大阪城落城前後の攻防のとき、隠密の活躍や人心の混乱を描き、被害を受けた善意の人々を浮彫にした異色時代長編。<上下巻>
  • 若い樹々
    -
    快活で美しい立花理々子には、父がない。中学を卒業すると、東京に出て働きながら夜間高校に学ぼうと決心する。上京した彼女はお手伝いさん勤めをするが、慣れない環境で身も心も疲れていった。そういう理々子の心の支えになるのが、洗濯屋のご用聞きをしている戦災孤児の橘悟くん。周囲の無理解と蔑視に傷つき、また悩みながら、しかし希望をもって彼等は生きる……。幸せを願い、明日をさして伸びゆく若い樹々のような若者たち。働く人たちの愛と生活を暖かく描いて定評ある壺井文学の名作長篇。大映映画化。若い世代に贈る話題の1冊。
  • 死のある風景
    3.0
    妹の誕生日に、謎の失踪をした石山真砂子。嫁ぐ日近く、未来の夢にふくらんでいるはずの彼女なのに……。一方、北陸の内灘海岸で無惨にも射殺された看護婦の春日鶴子。疑惑の人間数人が、いち速く警察のリストに上った。真砂子の婚約者・鳥居、鶴子の同行者・百済木医師、鶴子が裏切ったセールスマンの橋口、鶴子を憎む塩沢という女性たち。金沢から遠路上京して、容疑者のアリバイ崩しに汗水たらす伴刑事の苦労。独特のカンで情報を集めまわるトップ屋の桑原。事件は泥沼におちこむかにみえるが、著者の精緻な構成はひときわ冴えかえる。昭和40年度最優秀作との声が高い傑作。
  • 絞首台の下
    -
    北海道の開墾地で兄と働く近代娘の千早。消息を絶っていた許婚のハガキを手に千葉へ向かうが、そこは刑務所で彼は殺人罪で服役中だった。そしていろいろと周囲に話を聞くうちに、事件を取材した新聞記者が会社を辞めていたり、不可解なことが出てきた。だが、彼は脱獄を……。赤木圭一郎、長門裕之らで映画化された傑作。
  • 見えない影に
    -
    戦後、数年にわたって起きた不可解な3つの事件。社会的地位のある被害者と加害者が、何のために殺し合わなければいけなかったのか、まったく不明な難事件だ。双方同時に殺意を抱くという、加害者もなければ被害者もない、この相互殺戮事件のカギは……。240年以上前にもさかのぼり、そして日米両国を舞台に繰り広げられる、直木賞作家の傑作。
  • 花園を荒す者は誰だ
    -
    渋谷のハチ公前に一人の貧しい青年がいた。古雑誌を売って今晩のおかず代にしようとして。そこにケーキの宣伝カーが現れ、美人のキャンペーン・ガールが登場した……。新しい時代には、金がものを言うことを今さらながら感じた青年は、犯罪に手を染めてでも……。アプレな戦後成長期の日本、そこでもがく若者たちを描いた傑作。戦争中に「糞尿譚」で芥川賞を受賞した作家の手による戦後の作品。
  • 愛が扉をたたく時
    -
    アパートの一室で、歌手の朱実は自殺した。彼女の突然の死は謎につつまれていた。朱実の死の翌日にその部屋を訪れる人が、朱実のほんとうの恋人なのだと、妹のみどりは言う……。男たちの欲望の渦の中を生きる美しい姉妹と、転向という過去を持つ中年の作家との交渉を描きながら、真実の愛の成り立ち難い戦後の暗さを追求した力作長篇。
  • Red Vanilla
    5.0
    1巻660円 (税込)
    「今度いつ来る?君と話がしたいんだ」 彼に見つめられた瞬間、ふわりとおちてゆく自分がわかった。 ボーイフレンドに連れられて訪れた、晩夏のフランス・パリ。 偶然一人で入ったセーヌ川左岸のレストランで、えりかは運命の恋に落ちた。 帰国後も「あの日」を忘れられないえりかは、2カ月後に再びかの地へと向かう。名前も知らない彼の元へ、出会った場所だけをたよりに——。 名句とともに紡がれる、パリの恋の物語。 <著者紹介> 葛生みもざ(くずうみもざ) 東京生まれ。てんびん座。 訪パリ経験五回。 ほかドイツ・オーストリア・イタリア・バリ島・台湾などを巡る。 気がついたら、海外紀行文を書いていた。 料理とフレーバーティーと異文化が好き。 ケーキならドイツ菓子、お酒なら日本酒。 俳句結社「花鳥」同人 「街」同人  俳人協会会員

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  • 東京0番地
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    戦後、不運にも刑務所に収監された男がいた。その刑務所の中での囚人たちの姿と心を通し、犯罪の本当の姿を暴いていく。欧米や朝鮮半島などと日本との微妙な関係など、当時の世相も見事に活写した傑作。芥川賞候補にして『早稲田文学』で多くの作家と接した著者の代表作。
  • 女の繭
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    菱川佳世は、銀座「丸藤」専属の若い和服デザイナー。彼女の染めた衣裳を、一流会社の社長夫人・菅野三千代が着ると、人目をそばだてる。生家が西陣の帯地問屋と織元という関係で、三千代の方が年上だが、二人は幼い頃から姉妹のように親しかった。佳世の兄・豊喜は太平洋戦争の軍医で、ある夏、突然帰国する。彼は抑留中のいまわしい経歴から、虚無的な影のある男となっており、佳世はそんな兄の底知れぬ冷たさに幻滅するが、彼の帰還を10年待ち暮して今は人妻の三千代の瞳は、妖しく燃えるのだった。人間に絶望した男を愛のちからで蘇らせる、京おんなの激しくも哀切な恋を描く傑作。
  • 子供は知っている
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    大人はわかっているつもりでいるが、子供のことを本当にわかっているのだろうか。そして、子供のことを大切にしているのだろうか。だから、いつもこんな……。貧しい家庭に生まれながら肉体労働をして早大で学んだ経験を経て、「子供をよくする会」設立、更生施設建設など、自ら少年少女の救済活動をおこなった作家による、大人と子供の相容れない視点の差異を描いた、リアルな長編小説。現代の教育・子育ての課題・問題にも通じる、心揺さぶられる普遍性に満ちた傑作。
  • 妻は知っていた
    -
    デパートの設計部に勤務し、若くて優秀な室内装飾デザイナーの菊雄を夫にもつ多緒子は、幸福な家庭生活をおくっている。ところが、菊雄が上顧客である貿易会社の社長令嬢・潮子から、商業装飾の店の専門技師として転職をすすめられ、この事件をめぐる夫婦の感情のもつれが、やがては家庭の苦悶の姿に変っていく……。
  • 現代好色一代女
    2.0
    男の欲望のまにまに押し流されて生きる美しい母・よし乃。真実の愛を求めて悩む娘・ゆかり。夫の岳夫と母との不倫な関係を知ったゆかりは、恋人・篠田との新生活を望みながら、夫の脅迫に怯えその腕に抱かれつづける。この女体の哀しさは、母の弱さとどこが違うといえようか……。戦争を境に、衣笠家は没落した。かつて宮家の姫たちに仕え由緒ある豪農に嫁いだよし乃は、夫・義則の嗜虐的な愛撫に馴らされていたが、夫の死後は女手一つで生きるため、次々と男に身を委せていくのだった…。女盛りの寡婦のたどる数奇な男遍歴を通して、女体に潜む「業」を追求した、円地文学の会心作。
  • 四角な卵
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    戦後のオフィス不足の時代、銀座にオフィスを持っているだけで信用される……。元植木職人とその妻、姪……経営者と普通の人々……。新しい時代に立ち向かう人々を、作者ならではの暖かい眼で描いた、朝日新聞連載小説。
  • エール  愛を闘え、女と男
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    裕福な家庭で育ち、大手出版社に勤め、恋人はエリート。 順風満帆な毎日を送る梅村靖子の前に突然現れた若き格闘家・真島一馬。 「俺はあんたのために闘うよ」。しなやかな獣と運命の恋に堕ちた靖子。 その人生に初めて、闘いのゴングが鳴り響く。 話題のベストセラー作家初の本格恋愛小説!
  • 官能文学電子選集 蘭光生『生贄処女』
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    拉致監禁された深窓の令嬢が二人の兄弟に弄ばれながらも、徐々に快楽の虜となっていき・・・・・・。 30歳になるしがないサラリーマンの「おれ」は、女房にせがまれ、やっとの思いで一戸建ての家を購入した。しかし、女房からは1年も経たずに三行半を突きつけられた。出て行った女房の代わりに自宅に住み着いたのが8歳年下の弟の治だった。  肉体労働をしている治は並みのサラリーマンよりも稼ぎは良い。あるとき、治は“大きな荷物”を抱えて帰ってきた。その荷物の中身は、深窓の令嬢だった。その日から、その令嬢は兄弟たちの欲望のはけ口とされるようになる。  自宅に軟禁され、食事と眠る時間以外はひたすら陵辱の限りを尽くされる。当初こそ、必死に逃げようとしていたものの、檻の中で飼われる彼女は次第に気力をなくし、しまいには自らとろんとした眼で腰を振るうようになっていくのであった・・・・・・。  メインの「俺たちのペット」に加え、同時収録されている「レイプライダー」「乱歩を読みすぎた男」も清純な処女たちを陵辱するというなんとも過激な作品集。 団鬼六に師事し、季刊官能文芸誌「悦」の創刊編集長を務めた松村由貴による解説つき。

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