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リカちゃんが欲しいと頼んだようこに、おばあちゃんから贈られたのは黒髪の市松人形で、名前がりか。こんなはずじゃ。確かに。だってこの人形、人と心を通わせる術を持っていたのだ。りかさんに導かれたようこが、古い人形たちの心を見つめ、かつての持ち主たちの思いに触れた時――。成長したようことその仲間たちの、愛と憎しみと「母性」をめぐる書下ろし「ミケルの庭」併録。
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Posted by ブクログ
「りかさん」 幼い頃大切に抱いていた人形は、ぬいぐるみは、どこにやってしまっただろうか。あんなに楽しかった人形遊びをしなくなったのはいつだったか。温かい懐古と今を生きる私に寄り添ってくれるようなりかさんやおばあちゃんの言葉で胸がいっぱいになる。初めは奇妙な世界の話だと思ったけれど、じわじわと馴染んで...続きを読む、泣きそうになるくらい優しい。梨木香歩の作品は、いつも優しい。 「ミケルの庭」 「りかさん」の続編。幼子を可愛がる女性たち、皆、一様に優しく見える、幼子とは赤の他人なのに。 母性とはなんだろうと、いつも思う。純粋に「可愛い」と想う気持ちのようでもあるが、私がこれまで読んできた文学において、多くの場合、あまり美しいものではなかった。私自身が人生で感じてきた母の母性も、良いことばかりではなかった。母性が、母にとっても、娘にとっても、憎しみを生んでいるような気がした。母性についてもっと知りたい。私が扱おうとしている研究テーマが少し見えてきたかもしれない。
からくりからくさの伏線。 あの時のあれは、ここからつながってたのかーというのが上手くまとまってて面白く、蓉子がりかさんをあんなに大切にしていたのも納得でした。
あなたは、「りかさん」を知っているでしょうか? う〜ん、『りかちゃん』なら知ってるけど、違うのかなあ…そんな風に思う方もいらっしゃるでしょう。では、そんなあなたの思う『りかちゃん』だったとして、 あなたは、『今抱いているりかちゃんから声が聞こえた』としたらどう思うでしょうか? う〜ん、”Hi...続きを読む!Alexa!”とか”Hey!Siri!”と同じで人形の体内にAIが埋め込まれているのかなあ、今の時代であればそんな風に答える方が多そうです。また、そんな答えに何の違和感もありません。 科学技術の進歩には驚かされるばかりです。人形に話しかけて、そんな人形が返事をしたとしても大人も子供もなんの違和感を感じないという現代社会。ほんの20年前の時代からしても、それは魔法と言える出来事でもあります。 しかし、この世にはそんな科学技術の進歩だけでは説明できないことも多々あります。そして、人はそんな事象をファンタジーという言葉で一括りにします。そんなファンタジーの事ごともやがて科学技術の進歩で説明できる未来が訪れるのか、それは今は誰にもわかりません。 さて、ここに”Alexa”も”Siri”も動作していないのにも関わらず、『りかちゃん、しゃべれたのかあ』と主人公の ようこが驚く『真っ黒の髪の市松人形』が登場する物語があります。「りかさん」という名のそのお人形。そんなお人形と『なじんでおつきあいが始まった』ことで、ようこは『ほかの人形の気分も分かるようになっ』ていきます。この作品は、そんな ようこが数多のお人形の話を聞く物語。そんな話の中にお人形の裏に隠されたさまざまな人たちの存在を感じる物語。そしてそれは、そんな お人形たちが経験してきた事ごとの中に、出会ったことのない人たちのさまざまな思いを感じる物語です。 『ああ』と、『一人になってしみじみと箱を覗』いて、悲しいため息をつくのは主人公の ようこ。『母さんの前では』『がまんしていた』ものの、『がっかりのあまり、涙が出そうだ』と思う ようこ。『リカちゃん人形が欲しかった』ようこの元に届いたのは、『真っ黒の髪の市松人形だった』という展開に『なんでこんなことになったんだろう』と、ようこは『おばあちゃんとの電話のやりとり』を思い出します。『今度のお雛祭りに』欲しいものはあるかと訊かれた ようこは『「リカちゃん」が欲しいの』と答えるも『なんだえ、それは』と答えたおばあちゃんに『お人形よ』と説明した ようこ。『人形なら、ようく、知ってる』と言うおばあちゃんの『妙に力強い言い方を、少し変には思った』という ようこの元に届いたのは、『半紙に「りかちゃん」と書』かれた『古い抱き人形の箱に』入った『市松人形』でした。『こんなの、リカちゃんじゃない』と『みじめな気持ちで』ベッドに入った ようこ。そんな ようこの姿を見て母親は『おばあちゃんに電話をかけ』ます。『今日、お人形届きました』と言う母親に『説明書はちゃんと読んでいるようだったかい』と訊くおばあちゃん。電話を切った母親は、『人形の説明書って何だろう。あれ、からくりでもあるのかしら』と『首をかしげ』ます。(視点が切り替わり、)『今日からここが私のお部屋ね』と思うのは、お人形の『りかちゃん』。ベッドに ようこが『背を向けて眠っている』のを見て『がっかり』するものの、『ようこちゃん、つらいね』と『りかちゃんは同情』すると同時に祈ります。それによって『部屋に漂っていた「悲しい切ない」粒つぶが、急に小さくな』ります。『祈る力のある人形』でもある『りかちゃん』。そんな『りかちゃん』は『だいじょうぶよ、麻子さん。私、きっとようこちゃんとうまく行く』と遠くのおばあちゃんに語ります。(視点が切り替わり、)『朝、目覚めた』ようこは、『部屋の感じが普段と違っ』ているのを感じ、『風の吹き抜ける草原の朝の気持ち良さ』の中、『おかしいなあ』と思います。そんな ようこは『昨日届いた人形』を箱から出し、『りかちゃん』と呼びかけ抱きしめます。そして、母親から説明書の話を聞いた ようこは『朝は着替えさせて髪を櫛で梳き、柱を背に、お座布団に座らせておきます…』と細かく書かれた説明書を読み『新しいペットが来たみたい』と感じます。そして、一週間後、『りかちゃん』を抱いて客間の横を通ると、『障子の向こうが妙にざわついている』のを感じた ようこ。しかし、開けるのを躊躇する ようこ。そんな時、『だいじょうぶよ』と『りかちゃん』がしゃべりました。『うわ、りかちゃん、しゃべれたのかあ』と驚く ようこ。そして、『私のことを、りかさん、と呼んでくださらない?』と言う『りかちゃん』の希望に従って「りかさん」と呼ぶようになった ようこ。そんな ようこが体験するファンタジーな世界が描かれていきます。 “雛祭りに ようこがおばあちゃんからもらった人形の名は「りかさん」。生きている人間の強すぎる気持ちを整理し、感情の濁りの部分を吸い取る力を持った「りかさん」と ようこのふれあいを優しく描いたファンタジー”と内容紹介にうたわれるこの作品。そんなこの作品の作者である梨木香歩さんは、”云い忘れたが、私の名前は綿貫征四郎”という物書きを生業とする主人公・征四郎の前に亡くなった友人の高堂が船を漕いで掛け軸の中に現れる「家守奇譚」など独特な世界観の作品、他に替え難い魅力溢れる作品を多々刊行されています。そんな梨木さんがこの作品で描くのは、『うわ、りかちゃん、しゃべれたのかあ』と、言葉を話し、人と心を触れ合わせることのできる人形、「りかさん」が登場する物語です。主人公の ようこと、人形たちが語らう世界が描かれていくその世界は、まさしく和風ファンタジーです。 人形がしゃべるという衝撃的な事象を目の前にしたらあなたはどうするでしょうか?普通ならそんな恐ろしげな人形を手放して逃げるが勝ちとなるように思いますが、主人公の ようこは『かぐや姫でも抱いているような気分』と感じ、「りかさん」と自然に関わっていきます。『ようこちゃんが私とお食事するようになってから、今日で七日、今夜は七日目の夜ですから。だから、ようこちゃん、私がしゃべりかけても、それほど気味が悪くないでしょう』という『りかさん』の問いかけに『ほんとだ』と馴染む ようこ。そして、そんな「りかさん」との心の通じ合いが始まったことで、『ほかの人形の気配も分かるように』なっていく ようこが見る世界はたまらなく魅力的です。物語は、〈養子冠の巻〉と〈アビゲイルの巻〉の二つの章から構成されていますが、そこにはさまざまな人形たちが登場し、その人形たちが抱えるさまざまな悩み、苦しみが語られていきます。私が特に印象に残ったのは次の三つの物語です。 ・『りかさん、ほら、あの西洋人形の話が聞きたい』と手にした『ビスクドール』が、『生まれたのはフランスなの。お店のショーウィンドウで、日がな一日、外を眺めていた…』と語る先にまさかの展開を経て日本へとたどり着いたビスクドールの物語。 ・『男雛をはじめ、何体かは鼠に齧られてしまっ』たため、知り合いからもらったり、『父さんが自分の実家から男雛だけこっそり持って来た』りした混成の雛飾りは『別々につくられたお雛さまたちが、一つのセットになってしまった』ことで不協和音の中にいました。そんな中で『もの思いに沈』む男雛。そんな雛飾りたちに足りなかったあるものによって『あな、めでたや。 と、雛壇じゅうが歓喜の声をあげた』という物語。 ・『日本という東洋の国へ、親善のために送られる人形なの』というアビゲイルが送られたその先に、『あなたの故郷のアメリカとこの日本の国の間で戦争が起こってしまったの。あなたの身の上にも何が起こるか分からないわ』という戦時中の衝撃的な出来事に思わず息を呑む『親善大使』の人形に起こる運命の物語。 そこには、人形というものに心があるとするからこそ見えてくるさまざまな物語が次から次へと展開していきます。そんな人形たちの世界を見て、主人公の ようこはこんな風に感じます。 『同じ異界のものでも、幽霊と言われると気味悪いのに、不思議にさっきの人形たちが繰り拡げた世界は、ようこにはおもしろくあっても、怖いという気はあまりしなかった』。 そう、人形たちから逃げることなく、そんな人形たちの話を丁寧に聞き取っていく ようこは、『怖くはない。怖くても当然だけれど。向こうの世界の案内人のようなりかさんが付いているからだろう』と、「りかさん」の存在の大きさを感じていきます。『ベッドの中で、ようことりかさんは長いお話をした』とさまざまな話をする日々の中に、やがて『りかさんに連れられて、変わった演し物をしている劇場に行ったような印象だった』とさえ思うようになる ようこ。そんな ようこと共に人形たちと当たり前に心を通じていくことが読者にとっても当たり前の感覚になっていくのがとても不思議です。いつしかそんな物語世界にどっぷりと浸っている自分自身に気づくとともに、この物語世界にいつまでも浸っていたい、そんな風にも感じました。 『人形にも樹にも人にも、みんなそれぞれの物語があるんだねえ、おばあちゃん』と訊く ようこに『そうだね。哀しい話も、楽しい話もあるね』と返すおばあちゃん。そんな二人の会話の先に展開する人形たちと触れ合う主人公・ようこの摩訶不思議な体験が描かれるこの作品。そこには、『りかちゃんは祈る力のある人形なのだ』という主人公・ようこと共にある「りかさん」の存在がありました。『その存在自体、不思議の固まりのようなりかさんが不思議だと言うのを聞くのは、とても不思議な気分だった』といった絶妙な言い回しの数々にも強く魅かれるこの作品。不思議世界を当たり前の感覚の中に描くことで不思議感がさらに強調されもするこの作品。 和風ファンタジーの魅力溢れる世界にどっぷりと浸らせてくれた、梨木香歩さんの絶品だと思いました。
子どもに読ませてあげたい本だと思う。西の魔女が死んだの本と似ている感じで祖母との不思議な交流や小さな子にも分かる説明。ファンタジーなのに学ぶことが沢山ある本だと思った。
お雛様の時期に読みたいお話。私はお人形やぬいぐるみによく名前をつけていましたが、言葉が通じたらどのような話をしていただろうか。なんだか懐かしくて、毎年読みたくなります。
みんなが持ってるリカちゃん人形とは違う。 でもりかさんのほうが良い。ようこがそう思ってくれてコチラも嬉しく感じた。よかった。 心が清々しくなる優しいお話。 青い目の人形の話は辛かった。 傷つけられるために生まれた人形など居ないのに。 無抵抗のものに暴力を振るった人の狂気がとても怖くて、悲しかった。
梨木さんの世界観。 とても素晴らしい。 「からくりからくさ」の蓉子さんが子供の頃のお話。 蓉子さんが素晴らしいのは、おばあちゃん(麻子さん)からもらった人形「りかさん」がいたからだったのか。。 蓉子さんもとても素敵だけれど、原点は麻子さんとりかさん。 「歴史って、裏にいろんな人の思いが地層のように...続きを読む積もっているんだねえ」 なるほど。。 人形を通して人の思いがある。 こんな素敵な人形に出会いたいと思いました。 文庫化のために書き下ろしされた「ミケルの庭」は「からくりからくさ」の後のお話。 こうやって作品が繋がると、読んでいてゾクゾクっとしました。
以前読んだ 「からくりからくさ」の 前日譚と後日譚 物語が広がって面白かった 人の情緒や機微などの想いを 上質に紡いている感じで じわじわ心地よい作品
しゃべる市松人形「りかさん」との出会いと他の人形とのあれこれ 「からくりからくさ」の蓉子さんの子どもの頃の話と、本編の後日談を含む 以下、公式のあらすじ --------------------- 「彼女」と一緒なら、きっと大丈夫。書下ろし「ミケルの庭」併録。 リカちゃんが欲しいと頼んだようこに、...続きを読むおばあちゃんから贈られたのは黒髪の市松人形で、名前がりか。こんなはずじゃ。確かに。だってこの人形、人と心を通わせる術を持っていたのだ。りかさんに導かれたようこが、古い人形たちの心を見つめ、かつての持ち主たちの思いに触れた時??。成長したようことその仲間たちの、愛と憎しみと「母性」をめぐる書下ろし「ミケルの庭」併録。 --------------------- 梨木香歩さんの物語は児童文学とされているけれど 時には厳しく残酷な描写がある でも、すべて終わってしまえばどこか救いがあるような結末になっているので、読後感はそんなに悪くない不思議 それでも、作中に登場する人物や人形の悲しい出来事は読んでいて胸が苦しくなる 所々にはっとするような言葉もある ------------------ 人形の本当の使命は生きている人間の、強すぎる気持ちをとんとん整理してあげることにある。 ------------------ 気持ちは、あんまり激しいと、濁って行く。 ------------------ いいお人形は、吸い取り紙のように感情の濁りの部分だけを吸い取って行く。これは技術のいることだ。なんでも吸い取ればいいというわけではないから。いやな経験ばかりした、修練を積んでいない人形は、持ち主の生気まで吸い取りすぎてしまうし、濁りの部分だけ持ち主に残して、どうしようもない根性悪にしてしまうこともあるし。だけど、このりかさんは、今までそりゃ正しく大事に扱われて来たから、とても、気だてがいい ------------------ 実際に人形が喋るかどうかは別にして 人の形をしたモノという中間な存在だからこそ受け止められる感情というのはあるのでしょうね モノとして扱う人も人もいれば、同じ人のように捉える人もいる 人形がどう感じているかという想いを想像することで自分にフィードバックされてかえって苦しくなることもあるのだろうけど…… 以前に読んだ時は、「からくりからくさ」より先にこっちを読んだ なので、「いつ、りかさんがまた話し始めるんだろう?」と思って読んでいたら、結末があれですからね 結構な衝撃でした あと、紀久さんとかマーガレットの関係性を事前に知ってしまっていたので、そこもちょっと残念なところでしたね
女の子と人形とその周辺の温かく優しい物語でした。 私が中学生くらいに読んだ、同作家の作品、からくりからくさの登場人物の幼少期のおはなしでした。 中学生だった私には、からくりからくさは少し難しく、あまり心に残っていませんでしたが、この作品を読んで数十年ぶりに、もう一度からくりからくさを読んでみ...続きを読むようかなと思いました。 この作品に限らず、昔に読んだ本を今読むとまた違う何かが得られるのかなと思いました。
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りかさん(新潮文庫)
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