あらすじ
リカちゃんが欲しいと頼んだようこに、おばあちゃんから贈られたのは黒髪の市松人形で、名前がりか。こんなはずじゃ。確かに。だってこの人形、人と心を通わせる術を持っていたのだ。りかさんに導かれたようこが、古い人形たちの心を見つめ、かつての持ち主たちの思いに触れた時――。成長したようことその仲間たちの、愛と憎しみと「母性」をめぐる書下ろし「ミケルの庭」併録。
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「りかさん」
幼い頃大切に抱いていた人形は、ぬいぐるみは、どこにやってしまっただろうか。あんなに楽しかった人形遊びをしなくなったのはいつだったか。温かい懐古と今を生きる私に寄り添ってくれるようなりかさんやおばあちゃんの言葉で胸がいっぱいになる。初めは奇妙な世界の話だと思ったけれど、じわじわと馴染んで、泣きそうになるくらい優しい。梨木香歩の作品は、いつも優しい。
「ミケルの庭」
「りかさん」の続編。幼子を可愛がる女性たち、皆、一様に優しく見える、幼子とは赤の他人なのに。
母性とはなんだろうと、いつも思う。純粋に「可愛い」と想う気持ちのようでもあるが、私がこれまで読んできた文学において、多くの場合、あまり美しいものではなかった。私自身が人生で感じてきた母の母性も、良いことばかりではなかった。母性が、母にとっても、娘にとっても、憎しみを生んでいるような気がした。母性についてもっと知りたい。私が扱おうとしている研究テーマが少し見えてきたかもしれない。
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からくりからくさの伏線。
あの時のあれは、ここからつながってたのかーというのが上手くまとまってて面白く、蓉子がりかさんをあんなに大切にしていたのも納得でした。
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あなたは、「りかさん」を知っているでしょうか?
う〜ん、『りかちゃん』なら知ってるけど、違うのかなあ…そんな風に思う方もいらっしゃるでしょう。では、そんなあなたの思う『りかちゃん』だったとして、
あなたは、『今抱いているりかちゃんから声が聞こえた』としたらどう思うでしょうか?
う〜ん、”Hi!Alexa!”とか”Hey!Siri!”と同じで人形の体内にAIが埋め込まれているのかなあ、今の時代であればそんな風に答える方が多そうです。また、そんな答えに何の違和感もありません。
科学技術の進歩には驚かされるばかりです。人形に話しかけて、そんな人形が返事をしたとしても大人も子供もなんの違和感を感じないという現代社会。ほんの20年前の時代からしても、それは魔法と言える出来事でもあります。
しかし、この世にはそんな科学技術の進歩だけでは説明できないことも多々あります。そして、人はそんな事象をファンタジーという言葉で一括りにします。そんなファンタジーの事ごともやがて科学技術の進歩で説明できる未来が訪れるのか、それは今は誰にもわかりません。
さて、ここに”Alexa”も”Siri”も動作していないのにも関わらず、『りかちゃん、しゃべれたのかあ』と主人公の ようこが驚く『真っ黒の髪の市松人形』が登場する物語があります。「りかさん」という名のそのお人形。そんなお人形と『なじんでおつきあいが始まった』ことで、ようこは『ほかの人形の気分も分かるようになっ』ていきます。この作品は、そんな ようこが数多のお人形の話を聞く物語。そんな話の中にお人形の裏に隠されたさまざまな人たちの存在を感じる物語。そしてそれは、そんな お人形たちが経験してきた事ごとの中に、出会ったことのない人たちのさまざまな思いを感じる物語です。
『ああ』と、『一人になってしみじみと箱を覗』いて、悲しいため息をつくのは主人公の ようこ。『母さんの前では』『がまんしていた』ものの、『がっかりのあまり、涙が出そうだ』と思う ようこ。『リカちゃん人形が欲しかった』ようこの元に届いたのは、『真っ黒の髪の市松人形だった』という展開に『なんでこんなことになったんだろう』と、ようこは『おばあちゃんとの電話のやりとり』を思い出します。『今度のお雛祭りに』欲しいものはあるかと訊かれた ようこは『「リカちゃん」が欲しいの』と答えるも『なんだえ、それは』と答えたおばあちゃんに『お人形よ』と説明した ようこ。『人形なら、ようく、知ってる』と言うおばあちゃんの『妙に力強い言い方を、少し変には思った』という ようこの元に届いたのは、『半紙に「りかちゃん」と書』かれた『古い抱き人形の箱に』入った『市松人形』でした。『こんなの、リカちゃんじゃない』と『みじめな気持ちで』ベッドに入った ようこ。そんな ようこの姿を見て母親は『おばあちゃんに電話をかけ』ます。『今日、お人形届きました』と言う母親に『説明書はちゃんと読んでいるようだったかい』と訊くおばあちゃん。電話を切った母親は、『人形の説明書って何だろう。あれ、からくりでもあるのかしら』と『首をかしげ』ます。(視点が切り替わり、)『今日からここが私のお部屋ね』と思うのは、お人形の『りかちゃん』。ベッドに ようこが『背を向けて眠っている』のを見て『がっかり』するものの、『ようこちゃん、つらいね』と『りかちゃんは同情』すると同時に祈ります。それによって『部屋に漂っていた「悲しい切ない」粒つぶが、急に小さくな』ります。『祈る力のある人形』でもある『りかちゃん』。そんな『りかちゃん』は『だいじょうぶよ、麻子さん。私、きっとようこちゃんとうまく行く』と遠くのおばあちゃんに語ります。(視点が切り替わり、)『朝、目覚めた』ようこは、『部屋の感じが普段と違っ』ているのを感じ、『風の吹き抜ける草原の朝の気持ち良さ』の中、『おかしいなあ』と思います。そんな ようこは『昨日届いた人形』を箱から出し、『りかちゃん』と呼びかけ抱きしめます。そして、母親から説明書の話を聞いた ようこは『朝は着替えさせて髪を櫛で梳き、柱を背に、お座布団に座らせておきます…』と細かく書かれた説明書を読み『新しいペットが来たみたい』と感じます。そして、一週間後、『りかちゃん』を抱いて客間の横を通ると、『障子の向こうが妙にざわついている』のを感じた ようこ。しかし、開けるのを躊躇する ようこ。そんな時、『だいじょうぶよ』と『りかちゃん』がしゃべりました。『うわ、りかちゃん、しゃべれたのかあ』と驚く ようこ。そして、『私のことを、りかさん、と呼んでくださらない?』と言う『りかちゃん』の希望に従って「りかさん」と呼ぶようになった ようこ。そんな ようこが体験するファンタジーな世界が描かれていきます。
“雛祭りに ようこがおばあちゃんからもらった人形の名は「りかさん」。生きている人間の強すぎる気持ちを整理し、感情の濁りの部分を吸い取る力を持った「りかさん」と ようこのふれあいを優しく描いたファンタジー”と内容紹介にうたわれるこの作品。そんなこの作品の作者である梨木香歩さんは、”云い忘れたが、私の名前は綿貫征四郎”という物書きを生業とする主人公・征四郎の前に亡くなった友人の高堂が船を漕いで掛け軸の中に現れる「家守奇譚」など独特な世界観の作品、他に替え難い魅力溢れる作品を多々刊行されています。そんな梨木さんがこの作品で描くのは、『うわ、りかちゃん、しゃべれたのかあ』と、言葉を話し、人と心を触れ合わせることのできる人形、「りかさん」が登場する物語です。主人公の ようこと、人形たちが語らう世界が描かれていくその世界は、まさしく和風ファンタジーです。
人形がしゃべるという衝撃的な事象を目の前にしたらあなたはどうするでしょうか?普通ならそんな恐ろしげな人形を手放して逃げるが勝ちとなるように思いますが、主人公の ようこは『かぐや姫でも抱いているような気分』と感じ、「りかさん」と自然に関わっていきます。『ようこちゃんが私とお食事するようになってから、今日で七日、今夜は七日目の夜ですから。だから、ようこちゃん、私がしゃべりかけても、それほど気味が悪くないでしょう』という『りかさん』の問いかけに『ほんとだ』と馴染む ようこ。そして、そんな「りかさん」との心の通じ合いが始まったことで、『ほかの人形の気配も分かるように』なっていく ようこが見る世界はたまらなく魅力的です。物語は、〈養子冠の巻〉と〈アビゲイルの巻〉の二つの章から構成されていますが、そこにはさまざまな人形たちが登場し、その人形たちが抱えるさまざまな悩み、苦しみが語られていきます。私が特に印象に残ったのは次の三つの物語です。
・『りかさん、ほら、あの西洋人形の話が聞きたい』と手にした『ビスクドール』が、『生まれたのはフランスなの。お店のショーウィンドウで、日がな一日、外を眺めていた…』と語る先にまさかの展開を経て日本へとたどり着いたビスクドールの物語。
・『男雛をはじめ、何体かは鼠に齧られてしまっ』たため、知り合いからもらったり、『父さんが自分の実家から男雛だけこっそり持って来た』りした混成の雛飾りは『別々につくられたお雛さまたちが、一つのセットになってしまった』ことで不協和音の中にいました。そんな中で『もの思いに沈』む男雛。そんな雛飾りたちに足りなかったあるものによって『あな、めでたや。 と、雛壇じゅうが歓喜の声をあげた』という物語。
・『日本という東洋の国へ、親善のために送られる人形なの』というアビゲイルが送られたその先に、『あなたの故郷のアメリカとこの日本の国の間で戦争が起こってしまったの。あなたの身の上にも何が起こるか分からないわ』という戦時中の衝撃的な出来事に思わず息を呑む『親善大使』の人形に起こる運命の物語。
そこには、人形というものに心があるとするからこそ見えてくるさまざまな物語が次から次へと展開していきます。そんな人形たちの世界を見て、主人公の ようこはこんな風に感じます。
『同じ異界のものでも、幽霊と言われると気味悪いのに、不思議にさっきの人形たちが繰り拡げた世界は、ようこにはおもしろくあっても、怖いという気はあまりしなかった』。
そう、人形たちから逃げることなく、そんな人形たちの話を丁寧に聞き取っていく ようこは、『怖くはない。怖くても当然だけれど。向こうの世界の案内人のようなりかさんが付いているからだろう』と、「りかさん」の存在の大きさを感じていきます。『ベッドの中で、ようことりかさんは長いお話をした』とさまざまな話をする日々の中に、やがて『りかさんに連れられて、変わった演し物をしている劇場に行ったような印象だった』とさえ思うようになる ようこ。そんな ようこと共に人形たちと当たり前に心を通じていくことが読者にとっても当たり前の感覚になっていくのがとても不思議です。いつしかそんな物語世界にどっぷりと浸っている自分自身に気づくとともに、この物語世界にいつまでも浸っていたい、そんな風にも感じました。
『人形にも樹にも人にも、みんなそれぞれの物語があるんだねえ、おばあちゃん』と訊く ようこに『そうだね。哀しい話も、楽しい話もあるね』と返すおばあちゃん。そんな二人の会話の先に展開する人形たちと触れ合う主人公・ようこの摩訶不思議な体験が描かれるこの作品。そこには、『りかちゃんは祈る力のある人形なのだ』という主人公・ようこと共にある「りかさん」の存在がありました。『その存在自体、不思議の固まりのようなりかさんが不思議だと言うのを聞くのは、とても不思議な気分だった』といった絶妙な言い回しの数々にも強く魅かれるこの作品。不思議世界を当たり前の感覚の中に描くことで不思議感がさらに強調されもするこの作品。
和風ファンタジーの魅力溢れる世界にどっぷりと浸らせてくれた、梨木香歩さんの絶品だと思いました。
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子どもに読ませてあげたい本だと思う。西の魔女が死んだの本と似ている感じで祖母との不思議な交流や小さな子にも分かる説明。ファンタジーなのに学ぶことが沢山ある本だと思った。
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お雛様の時期に読みたいお話。私はお人形やぬいぐるみによく名前をつけていましたが、言葉が通じたらどのような話をしていただろうか。なんだか懐かしくて、毎年読みたくなります。
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みんなが持ってるリカちゃん人形とは違う。
でもりかさんのほうが良い。ようこがそう思ってくれてコチラも嬉しく感じた。よかった。
心が清々しくなる優しいお話。
青い目の人形の話は辛かった。
傷つけられるために生まれた人形など居ないのに。
無抵抗のものに暴力を振るった人の狂気がとても怖くて、悲しかった。
Posted by ブクログ
梨木さんの世界観。
とても素晴らしい。
「からくりからくさ」の蓉子さんが子供の頃のお話。
蓉子さんが素晴らしいのは、おばあちゃん(麻子さん)からもらった人形「りかさん」がいたからだったのか。。
蓉子さんもとても素敵だけれど、原点は麻子さんとりかさん。
「歴史って、裏にいろんな人の思いが地層のように積もっているんだねえ」
なるほど。。
人形を通して人の思いがある。
こんな素敵な人形に出会いたいと思いました。
文庫化のために書き下ろしされた「ミケルの庭」は「からくりからくさ」の後のお話。
こうやって作品が繋がると、読んでいてゾクゾクっとしました。
Posted by ブクログ
以前読んだ
「からくりからくさ」の
前日譚と後日譚
物語が広がって面白かった
人の情緒や機微などの想いを
上質に紡いている感じで
じわじわ心地よい作品
Posted by ブクログ
先日読んだ「からくりからくさ」のようことりかさんのお話でした。
これを読むとなおさら、「からくりからくさ」のりかさんがようこにとってただの人形ではないことが理解できます。
それにしてもなんという想像力。人形たちが話す過去の出来事もそうですが、桜の古木にようこが捕まってしまうところも・・・。ようこは「そういう質の、お子なんだねぇ」と言われますが、私は「そういう質」ではないなぁ、作者はきっと「そういう質」なんだろうな~と羨ましいような、それはそれでちょっと大変だろうなという気持ちもあったり。
おばあちゃんやりかさんの言葉や、モノや世の中への向き合い方などで幼いようこはたくさんのことを感じ取って、あぁ、そうか、だからあの「蓉子」に成長したんだなと、とても納得できました。
アビゲイルの話は実際にそのようなことがあったのでしょうか。つらく悲しいアビゲイルの運命でしたが、アビゲイルからの使命でりかさんは後々”マーガレット”に出会い、当初は蓉子にとっての「りかさん」を受け入れられなかったマーガレットの心持ちをも変えていったのでしょうか。それが果たされたから、りかさんは・・・と思ったりもしますが、「からくりからくさ」同様あまり読みきれたという感覚がないので、自信はありません。
ようこのおばあちゃんは「西の魔女が死んだ」のおばあちゃんを彷彿させる素敵なおばあちゃんでした。
「澄んだ差別をして、ものごとに区別をつけて行かなくてはならないよ」
とても良い言葉でした。
文庫書下ろしの「ミケルの庭」は「からくりからくさ」の後の話。マーガレットの赤ちゃん「ミケル」をめぐるお話。どこかで大きくなったミケルの記述を見たきがするので、作者の中でまだ蓉子たちのお話は続いているのかもしれません。(その短編をどこでみかけたか調べないと)
なんだか改めてフィクションというものの必要性を感じた気がしました。匿名で自分はひっそりと隠れて、他人を自分の思うままに攻撃できてしまうこの世の中、フィクションで想像力や他人を想う力、自分とは違う世界を知る機会を得ていきたいと、なぜかすごく思いました。人形がしゃべるという昔夢見たことが自身に起きたようこが羨ましいと、この歳になっても思いました。
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しゃべる市松人形「りかさん」との出会いと他の人形とのあれこれ
「からくりからくさ」の蓉子さんの子どもの頃の話と、本編の後日談を含む
以下、公式のあらすじ
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「彼女」と一緒なら、きっと大丈夫。書下ろし「ミケルの庭」併録。
リカちゃんが欲しいと頼んだようこに、おばあちゃんから贈られたのは黒髪の市松人形で、名前がりか。こんなはずじゃ。確かに。だってこの人形、人と心を通わせる術を持っていたのだ。りかさんに導かれたようこが、古い人形たちの心を見つめ、かつての持ち主たちの思いに触れた時??。成長したようことその仲間たちの、愛と憎しみと「母性」をめぐる書下ろし「ミケルの庭」併録。
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梨木香歩さんの物語は児童文学とされているけれど
時には厳しく残酷な描写がある
でも、すべて終わってしまえばどこか救いがあるような結末になっているので、読後感はそんなに悪くない不思議
それでも、作中に登場する人物や人形の悲しい出来事は読んでいて胸が苦しくなる
所々にはっとするような言葉もある
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人形の本当の使命は生きている人間の、強すぎる気持ちをとんとん整理してあげることにある。
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気持ちは、あんまり激しいと、濁って行く。
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いいお人形は、吸い取り紙のように感情の濁りの部分だけを吸い取って行く。これは技術のいることだ。なんでも吸い取ればいいというわけではないから。いやな経験ばかりした、修練を積んでいない人形は、持ち主の生気まで吸い取りすぎてしまうし、濁りの部分だけ持ち主に残して、どうしようもない根性悪にしてしまうこともあるし。だけど、このりかさんは、今までそりゃ正しく大事に扱われて来たから、とても、気だてがいい
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実際に人形が喋るかどうかは別にして
人の形をしたモノという中間な存在だからこそ受け止められる感情というのはあるのでしょうね
モノとして扱う人も人もいれば、同じ人のように捉える人もいる
人形がどう感じているかという想いを想像することで自分にフィードバックされてかえって苦しくなることもあるのだろうけど……
以前に読んだ時は、「からくりからくさ」より先にこっちを読んだ
なので、「いつ、りかさんがまた話し始めるんだろう?」と思って読んでいたら、結末があれですからね
結構な衝撃でした
あと、紀久さんとかマーガレットの関係性を事前に知ってしまっていたので、そこもちょっと残念なところでしたね
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女の子と人形とその周辺の温かく優しい物語でした。
私が中学生くらいに読んだ、同作家の作品、からくりからくさの登場人物の幼少期のおはなしでした。
中学生だった私には、からくりからくさは少し難しく、あまり心に残っていませんでしたが、この作品を読んで数十年ぶりに、もう一度からくりからくさを読んでみようかなと思いました。
この作品に限らず、昔に読んだ本を今読むとまた違う何かが得られるのかなと思いました。
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〈再登録〉ようこが誕生日におばあちゃんからもらった市松人形の「りかさん」。りかさんと心を交わせられるようになったようこは、りかさんと共にに人形達が幸せになれる手助けをすることになる…「からくりからくさ」の続編「ミケルの庭」を同時収録。
「からくりからくさ」以前のようこ(蓉子)とおばあさん、そしてりかさんの物語。「アビゲイルの巻」のアビゲイルと、幼くして死んだ少女の話はとても悲しい。りかさん達が人形達の悲しみを解いていく過程は、読んでいる側も幸せにしてもらった気分になりました。
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小さい頃遊んだ、りかちゃん人形、緑色のドレスを着たフランス人形を思い出した。
実家を出る時に処分してしまっけどきちんと感謝してお別れすれば良かったなと思ったり。
子供の人形遊びは、心の成長にとって大切なステップなんだなと再認識した。
生きてる人間の強すぎる気持ちをどんどん整理する使命を持った人形。人形に想いを預ける以上人には人形を慈しむ責任が生まれる。その愛があればこそ人形は重荷に耐えて微笑んでいられる。
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さてさてさんの本棚からチョイス
梨木果歩さん、好きです
あの幻想的なこの世とのあわいのような雰囲気
それを見事に綴っていますよね
やはり好き!
人形の持つ やさしさ・きびしさ・かなしさ
さてさてさんも書いておられましたが
お話しのつながりがちょっと複雑ですね
これはこれで楽しめばいいのですが……
以前読んだ「からくりからくさ」思い出しました
≪ 持ち主の 心とどめる その人形 ≫
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中学の頃に読んだ西の魔女が大好きで、12.3年ほど経った今、自然を感じられる本を読みたい気分になり、西の魔女を思い出して梨木さんの本を手に取った。
本書は、自然を感じる要素は多くなかったが、祖母と孫、りかさんを中心とした人形たちが織りなす純粋で不思議なファンタジーな世界観に魅了されなた。
これまで読んだ梨木さんの本に出てくるおばあちゃんは自然で、まっすぐで、強くて、聡明で、しなかやで、自分もこんな年の取り方をしたいと思わされる。
みなさん集合して住んだらどんな感じになるんだろうか、、
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「りかさん」
誕生日におばあちゃんがくれたのが、欲しかったりかちゃん人形ではなく、市松人形の「りかさん」だったことから始まる。雛人形、賀茂人形、這子、紙雛、ビスクドール、色々な人形の思いや持ち主の思いををりかさんから教えられる。戦争中の日米親善大使としての人形の悲劇を改めて思い知ることもできた。
「ミケルの庭」
赤ん坊の命を預かるということは、覚悟をもってやらなければと思った。ミケルの眼にまた景色が広がったときは心からよかったと思った。
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人形にも草木にも想いがあって、それぞれの物語があるっていう梨木さんの考えが優しくってとっても好きだ。何度も読み返すと、そのぶん物語の深みを感じられるところも好きなところ。なんだかうまく言えないけれど、小さい頃のわたしがこの物語を好きでいてくれて良かったなあと改めて。
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主人公で小学生のようこが2週間前に友達の家に遊びに行った時、偶然その時に来たみんながリカちゃん人形を持って来ていました。どうしてもリカちゃん人形が欲しくなり、おばあちゃんがプレゼントしてくれることになったのですが、届いたのは市松人形でした。名前はりかさん。もらった時はとても悲しかったのですが、そのお人形が喋り出し、ようことりかさんの人形をめぐる不思議な生活が始まります。りかさんを通じて色々な人形の物語や歴史に触れ、そして素敵なおばあちゃんとのことばで、ようこは優しく育っていきます。この素敵な人形物語に心が魅了されました。
ようこが大人の蓉子になった時のお話「ミケルの庭」も併録されています。
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梨木香歩さんシリーズ。
3つの短編からなる本です。
一つ前に読んだ「からくりからくさ」の前後譚で、これも女性の世界の物語ですね。
最初の2編は、主人公ようこ(まだ「蓉子」ではない)が少女で、日本人形の「りかさん」と出会う頃のお話。
寄せ集めの雛飾りを始め、なかなか難しい人形たちの固く絡まった人生?を、ようこがりかさんの力を借りながら解きほぐして行きます。
人形と話をするというのは、ファンタジー、またはスピリチュアルに思えるけど、感じやすい女の子には普通にできることなのかもね・・・と、読んでて思った。
りかさんと、ようこの祖母・麻子さんがことのほか魅力的。
若い女じゃなくてやっぱおばあちゃん、ベテランの凄みさえ感じます。オレもこういうおばあちゃんにならないと・・・!(男だけど)
3編目は、「からくりからくさ」直後の話。
女性にとって赤ん坊とはどういう存在なのかを描く。男の読者としてはやはり濃厚っていうか、生々しさを感じますねー。
Posted by ブクログ
リカちゃん人形を欲しがったのに市松人形のりかさんをプレゼントされて素直に受け取る子供なんている???私は人形が怖いが、それこそほんとうの人間のように感情や念を密かに抱いているように思えるから。本作はあたたかい作品だけれど、人形に対する恐怖は増した。
Posted by ブクログ
(シスジェンダーの)「男」にも「女」にもなれないわたしは、◯◯は◇◇が好き(なものだ)という文言が出ると、やりきれない上になかなかわかってもらえない、表現も難しい苦しみのために本を閉じてしまいたくなるのだけれど……。なんというのだろうか。「昔」から織りなしてこられたいとなみや科学では解けないふしぎに子供時代ごとかぶさっていくようなこの本は、ひだに染み入ってくるやさしい水のように、「人形」たちとのかかわりや桜の木との攻防も含めて、ぬくもるのだと思う。
Posted by ブクログ
人間と人形が紡ぐ、不思議な物語。
会話する人形なんて、ともすればホラーでしかない。
しかし、時代を経ても繋がっている想いや、感覚の表現で、魅せられる。
方や、併録の「ミケルの庭」は、鬼気迫る雰囲気が感じられた。
Posted by ブクログ
[1]ようこが祖母の麻子さんからもらった市松人形のりかさんは手続きはなかなか面倒だが馴染むとコミュニケーションもとれるようになった。
[2]りかさんと麻子さんは人形たちとのつきあい方、この世との接し方などの道しるべとなってくれ、ようこの世界は拡がってゆく。
[3]お祖母ちゃん語録いろいろあります。《人形の本当の使命は生きている人間の、強すぎる気持ちをとんとん整理してあげることにある。木々の葉っぱが夜の空気を露に返すようにね》p.76。
■りかさんについての簡単な単語集
【麻子】ようこの祖母。りかさんの元の持ち主。若い頃、理科の先生だったらしい。《年をとってありがたいのは、若いころ見えなかったことがようやく見えるようになることだ》p.100
【アビゲイル】日米親善使節として贈られたママードール。「ママー」と声を出し横にしたら目をつむる。
【因縁】けれど、因縁も結局、縁だからね、なにがどう翻って見事な花を咲かすか分からないもの(p.190)
【恨まない】恨まない、っていうのは、人形にはとてもめずらしい資質だ。美徳と言っていい。(p.14)
【男】そうだよ。男ってしようがないね、登美子ちゃんのところのおじいさんにしろ。考えが肝心のとこまでは及ばないんだよ。でもそれを責めちゃだめだよ、そんなもんなんだからね。こっちがそれと心づもりしていればすむ話だ(p.194)
【価値観】ようこと麻子さんは価値観が近いようだ。
【加代】麻子さんの友人。りかさんの前の持ち主。箪笥問屋の娘。身体が弱く早く亡くなった。
【がらくた】《人の思いのがらくたのようなものが詰まっているんだねえ……。》《―――そりゃあ、きっと、それが人間さまの拠りどころってんだヨ……。》p.56
【かわいい】《かわいい、という温かなどこかくすぐったくなるようなほんわかした気持ちがどんどん、心いっぱい拡がって行くようにした。それはだんだん、ようこの体の隅々まで、髪の先から手足の爪の先まで満ちて来た。両の手のひらを開けるとその間の空間までかわいい温かさでいっぱいになるようだ。》p.180。《ようこがりかさんから学んだこういう方法は、やがて大人になるまでに彼女独特のものとなり、不思議なムードメーカーと周りから見なされるようになるのだった。》p.181
【銀じいさん】三月三日に麻子さんちの雛人形を愛でに来る幽霊のような存在。りかさんはどうも銀じいさんが苦手。
【啓介】ようこの父。麻子さんの息子。合理主義的なところがある。
【桜の老木】ようこをつかんで離さなかった。
【汐汲/しおくみ】何かしら秘めたことがあって黙っている、登美子ちゃんちの人形。
【澄んだ差別】まず、自分の濁りを押しつけない。それからどんな「差」や違いでも、なんて、かわいい、ってまず思うのさ(p.203)
【食事】人形たちの食は人と同じ。ただし量は減らずその気配だけを食す。気配の去った抜け殻を食べるのは持ち主の義務?
【植物染料】植物のときは、媒染をかけてようやく色を出すだろう。頼んで素性を話して貰うように。そうすると、どうしても、アクが出るんだ。自分を出そうとするとアクが出る、それは仕方がないんだよ。だから植物染料はどんな井路でも少し、悲しげだ。少し、灰色が入っているんだ。(p.202)
【背守】昔、子どもたちの着物の背につけたお守りのような細工物。
【角】りかさんは大人に抱かれるとときどき角が生えてくることがあるが、それを兎の耳にして去らせる方法を会得した。
【登美子】ようこの友人。《ようこちゃんってときどき変なこと言うから好き。》p.61。《世の中のものみんな、ふりしてるだけなのかなあって思い始めたの》p.127
【登美子の家】立派な家。蔵もある。恐ろしげな人形がいる。家の大きな冠木門が開くと何かの結界が壊れてしまう。
【泣く】人が本当に悲しくて悲しくて泣くときは、顔が、バラバラになるのだ。(p.182)
【名前】名前を正しく呼びかけるって、魔法のようだ。(p.16)
【人形】お人形って、年齢を問わず女の子を夢中にさせる何かがあるみたいだ。《人形の本当の使命は生きている人間の、強すぎる気持ちをとんとん整理してあげることにある。木々の葉っぱが夜の空気を露に返すようにね》p.76。《人形遊びをしないで大きくなった女の子は、疳が強すぎて自分でも大変。積み重ねて来た、強すぎる思いが、その女の人を蝕んで行く》p.78。《人形に性格を持たせるのは簡単だ。人形は自分にまっすぐ向かって来る人間の感情を、律儀に受け取るから。》p.163
【雛人形】普通、お雛さまは、セットでやって来ることが多いので、セットで、一つの、ぼんやりした思いを醸し出しているものなの。(p.28)
【雛祭り】ようこのいるあたりでは三月から四月上旬頃まで雛人形をだしておきその家を訪ねるときは「お雛さま、ごはいけーん」と声をかける。
【マーガレット】アビゲイルが作られた頃、東ヨーロッパからアメリカに来たユダヤ人一家の女主人。まだ英語がよくわからない。いずれ生まれるだろう我が子を愛せる自信がない。
【待子/まちこ】ようこの母。
【ようこ】おばあちゃんからりかさんをもらった孫。ふしぎなことに馴染みやすいタイプなのかもしれなかった。染色に興味をひかれた。
【りかさん】性格のいい市松人形。同居するにはいろいろ面倒な手続きが必要だが馴染んでしまえばコミュニケーションも取れるしあっちの世界の案内もしてくれるしちょっとした能力も見せてくれる。《りかちゃんは祈る力のある人形なのだ。》p.14。《だって、おまえがりかさんを要り用だったじゃないか》p.75
【リカちゃん人形】みんなが持っている。
■ミケルの庭
【紀久/きく】マーガレットからミケルを預かっている。美大の大学院に籍を置いている。
【染色工房・f】紀久、与希子、蓉子、マーガレットで運営している。以前の下宿が焼失し、アトリエとして再建。大家は蓉子の父。
【マーガレット】米国人。「りかさん」の話に出てきたマーガレットとの関係は不明。夫は日本人。中国に短期留学中。
【ミケル】マーガレットの子ども。《未だこの世界のどことも馴染まずに、あるいは馴染めずに、ただ自分が此処にあることに戸惑っている》p.213
【蓉子/ようこ】「りかさん」の話の「ようこ」だろうとおもわれる。マーガレットからミケルを預かっている。草木染めが専門。《蓉子の手は確かさに満ちて力強い。まるでその上から、何世代もの女たちの手がふわりと重なっているかのように。》p.246
【与希子/よきこ】マーガレットからミケルを預かっている。大学を卒業後作家として活動しつつ染色講座を蓉子とともに開いている。
Posted by ブクログ
人生において、人形が身近な人にはぜひ読んでほしい物語だった!!
私自身はあまり人形とは縁のない人生を送っているが、私の妹は3歳のころから大人になった今でも、とある犬の人形(はなこ)を大事にしている。
妹にとってはなこは、人生で一番の親友であり、よき理解者だ。たぶん私より仲良し笑
だから、この物語を読んで、はなこの存在そのものや、はなこと妹の関係、はなこへの妹からの愛情が肯定された気がして、本当に嬉しかった。
また、裏ではこんなことを思っているんだろうなとはなこへの気持ちが深まった。
この小説では主人公の少女ようこが、人形のりかさんと他の様々な人形の人生に向き合うストーリーが描かれている。
ようこも、りかさんも、おばあちゃんも人に寄り添う力が強いし愛情にあふれていて、とてもほっこりするお話だった。
Posted by ブクログ
りかさんと会話ができるようになったとたん、第六感的能力が開花し、老木の精(?)や生霊とまでやり取りができるようになるなんて、なんだか都合のよい話だ。と思ってしまうところが、私の素直でない性格を表しているのだろう。
「ミケルの庭」は、その愛憎がぼやぼやっとしている上に、1歳前後の子どもの感覚を大袈裟に描いている気がして、少し感情移入しにくかった。
Posted by ブクログ
リカちゃん人形が欲しかったようこは祖母にそのことを話したのだが、贈られてきたのは日本人形のりかさんだった。
最初こそがっかりしたようこだったが、徐々にりかさんの持つ魅力にすっかり虜になっていく。
多感な少女がりかさんを通して成長していく様が、清々しく描かれている。
小さい頃にたくさん人形を持っていて、それでよく遊んだのを思い出した。今は甥っ子がそれで遊んでくれている。そういう脈々と受け継がれていくものっていいな。
目に見えるものだけが世界のすべてではないと忘れてはいけないね。
Posted by ブクログ
この作品はとても不思議な作品だった。理由は普通に人形がしゃべったり動いたり食べ物を食べたりするからだ。米国人形がつきさされた時はとても悲しい気持ちになった。少し