Posted by ブクログ
2020年11月29日
カトゲン作品を読むのは3作目だけど、読むたびに違う印象を与えてくれる作家さん。今回は、まるで湊かなえ作品を読んでいるかのようなイヤミスの様相。
ある病院で起こった入院患者の連続死。これがある看護師の仕業だという噂が囁かれる。噂はほんとうなのか?悪魔のような看護師の正体を探るべく、関係者にインタビュー...続きを読むをしていく記者。10人の女性たちの証言だけで構成される物語は、終始緊張感に包まれている。次第に明らかになる真実。果たして悪魔の正体は‥‥
人の心の醜さ、嫌らしさを描き、人間関係の残酷さをこれでもかと見せながら、興味を逸らさない筆力はさすが。多数派が必ずしも正義ではないこと。いじめる側に回る人間の言い分、切り捨てられる側の思い。スピード重視、声の大きな者が優位に立つ社会、そんな世の中の風潮にささやかな疑問を投げかけるとともに、弾かれる側への優しさに溢れた作品でした。