小説・文芸 - 講談社文庫作品一覧

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  • 春、死なん
    4.0
    「春、死なん」 妻を亡くしたばかりの70歳の富雄。理想的なはずの二世帯住宅での暮らしは孤独で 何かを埋めるようにひとり自室で自慰行為を繰り返す日々。そんな折、学生時代に一度だけ関係を持った女性と再会し……。 「ははばなれ」 実母と夫と共に、早くに亡くなった実父の墓参りに向かった、コヨミ。 専業主婦で子供もまだなく、何事にも一歩踏み出せない。久しぶりに実家に立ち寄ると、 そこには母の恋人だという不審な男が……。 人は恋い、性に焦がれる──いくら年を重ねても。揺れ動く心と体を赤裸々に、愛をこめて描く鮮烈な小説集。 紗倉まな(さくら・まな) 1993年千葉県生まれ。工業高等専門学校在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。 '15年にはスカパー! アダルト放送大賞で史上初の三冠を達成する。 著書に小説『最低。』『凹凸』(いずれもKADOKAWA)、 エッセイ集『高専生だった私が出会った世界でたった一つの天職』(宝島社) 『働くおっぱい』(KADOKAWA)スタイルブック『MANA』(サイゾー)がある.。
  • 袋小路の男
    値引きあり
    3.4
    高校の先輩、小田切孝に出会ったその時から、大谷日向子の思いは募っていった。大学に進学して、社会人になっても、指さえ触れることもなく、ただ思い続けた12年。それでも日向子の気持ちが、離れることはなかった。川端康成文学賞を受賞した表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」を収録。(講談社文庫)
  • 滅びのモノクローム
    3.4
    CM制作者・日下(くさか)が骨董市で偶然手に入れた、古いフライフィッシング用のリールとスチール缶。その中から発見した16ミリフィルムの映像をCMに利用しようと考えた日下だったが、そのことが戦時中の封印された犯罪を暴き出し、新たな殺人を引き起こす結果に!? 第48回江戸川乱歩賞受賞作、待望の文庫化。(講談社文庫)
  • 新装版 和宮様御留
    値引きあり
    4.1
    攘夷か開国かで二分された国論を調停するために、皇妹・和宮は徳川将軍家に降嫁せよと勅命を受ける。彼女の身代りとされた少女フキは何も知らされないまま江戸へ向かう輿に乗せられる――。大義によって人生を翻弄された女たちの矜持を描き、犠牲になった者への思いをこめた、有吉文学を代表する不朽の名作。
  • プリズン・トリック
    3.3
    市原の交通刑務所内で、受刑者石塚が殺され、同所内の宮崎が逃亡。遺体は奇妙にも“前へ倣え”の姿勢をとっていた。完全な密室で起きた事件は、安曇野を舞台にした政治汚職にまで波及していく。第55回江戸川乱歩賞受賞作。さらに単行本未収録の“ある人物からの手紙”を収めた最強のトリックミステリー。(講談社文庫)
  • 海翁伝
    3.5
    瀬戸内の水軍・河野氏を祖として、若狭を経て蝦夷地で花開いた松前氏。戦国期、主君への忠義を果たしつつ、前田利家の勧めによって上洛し、豊臣秀吉から交易権を得、さらには徳川家康に安堵されて藩主に。秀吉、家康という二人の天下人に認められ、戦わずして北の大地を護り通した一族を描いた歴史長編。
  • 動かぬ証拠
    値引きあり
    3.8
    ラスト1ページの驚愕! 新形式本格ミステリー! ……犯行は完璧のはずだった。だが、そこには犯人が見落とした、たったひとつのミスが残されていた。ラストで絵(イラスト)による《動かぬ証拠》が目の前に浮かび上がる、まったく新しい推理短編集。カラーイラストが鮮やかなボーナス・トラックも収録。《証拠》が見えてしまうので、ページをパラパラめくらないでください。
  • 神の島のこどもたち
    4.5
    奇跡のように美しい南の島 そこには、もうひとつの戦争があった―― 空をゆく特攻機の下、激しい空襲にさらされ、 戦争の最前線となった沖永良部島。 それでもわたしたちは生きる、この小さな島で。 青い空を沖縄に向かって飛ぶ特攻機、天国のように美しい海には死んだ兵隊さんが浮かぶ。第二次大戦末期、小さな島沖永良部に暮らすマチジョーとカミは、大切な家族を失い、食料にも不自由する日々を過ごしていた。それでも唄い、恋をし、ひたむきに働き、生き抜く。南の島に刻まれた知られざる戦争の物語。
  • 真夜中の料理人
    値引きあり
    3.0
    北国から友人が送ってくれた鮭をめぐり、折り合いのわるい夫婦の対立が深まる。肉好きの妻、魚好きの夫、日常の不平をつのらせる妻、日常あたまの上がらない夫。仕方なく夫は包丁を買い込み、深夜のベランダで鮭を切るが……。人生の断面を巧みに描いて定評ある著者の、しみじみと怖い秀作11編。
  • さよなら日和
    3.6
    「別れ」は止められないけれど、止まった「想い」は動かせる。 閉園をむかえる遊園地を訪れた人々。 彼らの「さよなら」が繋がったとき、心に染みる奇跡が起こる! 閉園が決まった遊園地・星が丘ハイランドパークの最後の一日。訪れるのは、淡い思いを秘める中学生に、離れて暮らす息子と遊びにきた父親、認知症の妻をかかえた老人と、ワケありな人ばかり。営業終了時間が迫る中、なんの縁もない彼らの人生が交錯するとき、小さな奇跡が巻き起こる! 心温まる傑作群像劇。(単行本『廃園日和』を改題。) ~~~ ようこそ、星が丘ハイランドへ! ~~~ ジェットコースター 少年は淡い思いを胸に、苦手なコースターへ。 ゴーカート 久しぶりに会った息子は大人びていて――。 コーヒーカップ 遠距離恋愛の彼氏は、アタシのことをどう思ってる? ヒーローショー 20年ぶりに1日限定で出演するはめになったけど……。 メリーゴーランド 認知症の妻は、この光景を覚えていてくれるのか。 観覧車 家族のいる人との恋。このままでいいわけない――。
  • 人肌ショコラリキュール
    値引きあり
    3.8
    今の彼の将吾は元カレと違って自分勝手ではないし、セックスも優しくて、料理が上手。でも将吾と付き合ったのは、元カレと顔が似ているから……(「あなたモドキ」)/四年間セックスなし。いまやヴァイブレータが友達の私、浩未、33歳……。(「ヴォルフガング」)など、リアルな女の性と心を描いてきた著者による、「わかるわかる」満載、ドキドキ満載、美しくリアルなエロチカ短編集。甘くて苦い大人の恋。
  • ヒットラーの遺産
    -
    ヒットラーが最後の夢を託した幻の秘密兵器とは? マスコミ世界の暗部を遊弋(ゆうよく)する二人の男が嗅ぎつけた奇怪な噂、謎の追及と共に浮び上がる現代史の深い亀裂を描く表題作。異国の夜、ファドの調べを背に、長い尾を曳いて消えた二つの星の物語「暗いはしけ」。他に「暑い長い夏」「怨念コマソン館」「双面のヤヌス」。
  • ブラフマンの埋葬
    3.7
    ある出版社の社長の遺言によって、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している〈創作者の家〉。その家の世話をする僕の元にブラフマンはやってきた――。サンスクリット語で「謎」を意味する名前を与えられた、愛すべき生き物と触れ合い、見守りつづけたひと夏の物語。(講談社文庫)
  • またね家族
    -
    父の余命は3ヵ月。 何者にもなれなかった僕は―― あなたの息子には、なれたのでしょうか。 小劇団を主宰する僕〈竹田武志〉のもとに、父から連絡があった。余命3ヵ月だという――。 自意識が炸裂する僕と、うまくいかない「劇団」、かわっていく「恋人」、死に行く大嫌いな「父親」。 周囲をとりまく環境が目まぐるしく変わる中、僕は故郷の福岡と東京を行き来しながら、 自分と「家族」を見つめなおしていく。 映画、演劇、ラジオなど多岐にわたって活躍する松居大悟が、 不完全な家族が織りなす、歪だけど温かい家族のカタチをまっすぐ描く。
  • 雨の温州蜜柑姫
    値引きあり
    3.0
    榊原さんと磯村くんと木川田くんと一緒にやってきた青春大河小説「桃尻娘」シリーズもとうとう完結します。でも青春が終わったってことじゃなくて、いつだってそこにあるかもしれないってことなの。最後の主役は醒井さんねっていう橋本さんのとっても長いあとがきもあるので、ぜったい読んでくださいね。
  • 新検察捜査
    値引きあり
    3.5
    殺害した女性の心臓をえぐり出す猟奇事件を起こした少年に、横浜地裁は騒然となる。別の法廷では、被告の医師が何者かに射殺される。少年を担当する検事岩崎紀美子は、少年の心療内科の担当医師のゆがんだ欲望に気づく。激変する法曹界、オレンジ・タブレット、事件の背後にうごめく巨悪。乱歩賞受賞作『検察捜査』のヒロインが、周囲の軋轢を振りはらい、ひるむことなくふたたび巨悪を引きずり出す。痛快本格リーガルサスペンス!
  • ハッピネス
    -
    夫と妻、父親と息子、男と友人、主人公と隣人たち。執拗にくりかえされる対話のうちに見えてくるのは、彼自身の心の中の「町」。だが彼は、彼らは、ほんとうにわかり合えるのか? 会話の多い小気味よい文体が、一方でモノローグのように読者に訴えかける。独自の感性で、現代文学の地平に未知の領域を拓く、新鮮な短篇群。
  • 宮辻薬東宮
    3.7
    ちょっぴり怖い、だからおもしろい。これぞエンタメ!!前代未聞の「ミステリー短編バトンつなぎ」「宮辻薬東宮」(みやつじやくとうぐう)宮部みゆきさんお書き下ろし短編を辻村深月さんが読み、短編を書き下ろす。その辻村さんの短編を薬丸岳さんが読み、書き下ろし……今をときめく超人気作家たちが“つないだ”ミステリーアンソロジー。
  • 傷痕
    値引きあり
    3.0
    裁判員制度勉強会で知り合った桜井香子に一目惚れして以来、一色知也の人生は、次第に暗がりへと呑み込まれていく。実は知也は養子で、実父は二十年前の一家惨殺事件で死刑になっていた。刑期を終えて目の前に現れたその共犯者小田島の影に怯えつつ、知也は香子がひた隠す、二人の呪われた宿命を辿ってゆく。
  • アフリカの蹄
    値引きあり
    4.1
    絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を滅亡させようとする非人間的な白人支配層に立ち向かう若き日本人医師。留学先の南アフリカで直面した驚くべき黒人差別に怒り、貧しき人々を救うため正義の闘いに命をかける。証拠品の国外持ち出しは成功するか!? 黒人差別に怒る日本人医師を描く冒険小説!
  • 瓦礫の死角
    3.8
    父親の性犯罪によって瓦解した家族。その出所が迫り復讐を恐れる母。消息不明の姉。17歳・無職の貫多は……。傑作「私小説」4篇。 性犯罪による父親の逮捕を機に瓦解した家族。出所後の復讐に怯える母親。家出し、消息不明の姉。罪なき罰を背負わされた北町貫多は17歳、無職。犯罪加害者家族が一度解体し、瓦礫の中から再出発を始めていたとき、入所から7年の歳月を経てその罪の張本人である父親が刑期を終えようとしていた。──表題作と“不”連作の私小説「病院裏に埋める」、〈芝公園六角堂跡シリーズ〉の一篇「四冊目の『根津権現裏』」、“変化球的私小説”である「崩折れるにはままだ早い」の全四篇を収録。
  • 清正を破った男
    4.0
    戦国時代末期、九州では島津勢が猛威を振るっていた。肥後の一豪族・木山弾正の居城にも島津の大軍が押し寄せる。城を枕に討ち死にか、それとも軍門に下ってしまうか。だが弾正は決意する。選んだ道は、敵の包囲網を突破して、義兄のいる天草へ落ち延びることだった。無事脱出に成功した弾正だが、時代はさらに変転する。弾正は九州の新たな支配者、太閤秀吉の奮う権勢にどう対峙するのか? 傑作戦国時代小説。
  • 真友
    3.0
    「父さんが殺された。親友の父親に」。刑事による警官殺し。憎悪と絶望を胸に、親友だった二人の人生は激変する。仇討ちを誓った少年は刑事に。世間を敵にまわした少年は裏側の世界に。その間で揺れ動く女心ふたつ。二人の人生は二度と交差しないはずだった。さらなる事件が起きるまでは――。
  • ラストチャンス 再生請負人
    3.8
    1~2巻880~902円 (税込)
    順調にメガバンクの出世コースを歩んできた樫村徹夫は、送別会の帰り道「あんたの人生、七味とうがらし」と、辻占師に不吉で不可解な言葉をかけられる。深みある人生にするか、辛すぎて酷い味になるかは自分次第。吸収合併を機に、飲食店チェーンのCFOに抜擢された樫村は、綻びだらけの企業を再建できるのか?
  • 抱影
    4.0
    生と死のはざまでほとばしる情念。これが北方謙三だ。 定期的に食事はするが、踏み込まない。響子とは二十二年、そうしてきた。死期が近いと告げられるまでは。硲(はざま)冬樹は画家。売れない絵描きではない。横浜に数軒の酒場を持つ。硲の絵を望んだ響子。消えゆく裸身をキャンバスにして、硲は鑿(のみ)を手にした硲は消えない絵を刻みつけようとする。男と女、北方ハードボイルドの到達点!
  • 青空に飛ぶ
    値引きあり
    3.4
    中学2年の萩原友人は、伯母の住む札幌を訪れていた。学校での凄絶ないじめで心が折れた友人は、高いところから“青空に飛ぼう”と決意をしていた。そんなとき、伯母の勤務する病院に入院している佐々木友次のことを知る。佐々木は、太平洋戦争時、特攻隊に選ばれ9回も出撃しながら生還したという人物だった。「死ぬのが当然という状況で、どうして“生きよう”と思い続けられたんだろう」佐々木が所属した陸軍万朶隊の物語、そして佐々木自身の言葉を前に、友人の傷ついた心は少しずつ前を向きはじめるが……。
  • 虹のふもと
    4.5
    やめるなら――それは一体いつなんだ?球界を代表するピッチャーとして海を渡り、MLBでも活躍した川井秀人。45歳となった今も、日本の独立リーグ「JMリーグ」でプロとして現役を続けている。人気拡大を目指し、リーグはエクスパンションを決定。川井は新設されるハワイのチームに移籍することに。そこで待っていたのは、かつて「棄てた」一人娘の美利だった。独立リーグを足がかりに、「メジャー」を目指す若い選手やフロント陣の野心。その中で、元一流選手のベテランが「現役プロ」にこだわり続ける意味とは――。
  • 美濃牛
    4.0
    病を癒す力を持つ「奇跡の泉」があるという亀恩洞(きおんどう)は、別名を〈鬼隠れの穴〉といい、高賀童子(こうがどうじ)という牛鬼が棲むと伝えられていた。運命の夜、その鍾乳洞前で発見された無惨な遺体は、やがて起こる惨劇の始まりに過ぎなかった。古今東西の物語の意匠と作家へのオマージュが散りばめられた、精密で豊潤な傑作推理小説。(講談社文庫)
  • 藤壺
    値引きあり
    3.2
    54帖からなる「源氏物語」には、題名しか伝わっていない"消えた一帖"があった!? 5歳年長の義母にして帝の妃・藤壺は、幼くて顔も覚えていない時に亡くなった生母・桐壺と瓜二つのように似ているという。切ない恋心をつのらせていく若き光源氏と藤壺の、許されぬ初めての逢瀬を、作家・瀬戸内寂聴が小説化。
  • 悦楽王 鬼プロ繁盛記
    5.0
    バカでもエロでもええじゃないか! 鬼才、最後の自伝的小説――自らを「サディストではない」と言い切る著者は、いかにして雑誌『SMキング』を立ち上げ、官能小説の大家となったのか? たこ八郎、渥美清ら多彩な人々との交流、’70年代アングラカルチャーの勢い、破天荒な私生活。「どんな風に生きてもいい」と教えてくれた鬼才が、最後に著した自伝的小説。 ◎「明るさと暗さの引き立て合い。まさに、これこそ、団鬼六という作家の真髄ではないでしょうか。そして、『SMキング』の三年間が、その明るさを演出したとは考えられないでしょうか。」<山田詠美「解説」より>
  • この悲しみの世に
    値引きあり
    4.0
    異父姉弟とも知らず不倫の愛におちた人妻。聖地への旅に始まる至高の愛を描く問題作。極限の愛と悲しみを描く恋愛大作! ――私たちが「この悲しみの世に」あると思うこと以外の認識は、すべて幻想です……。不倫の愛におちた人妻・節子と年下の青年・善彦は、ある日、自分たちがこれまで別れ別れに生きてきた異父姉弟であると気づく。断ちきれぬ愛の流れのままに、節子は男子を出産した。聖地への旅に始まる、至高の愛を描く、長編小説。
  • 終末曲面
    3.0
    SF界の異才・山田正紀が放つバイオレンスと終末の黙示録。ーー終末の時、日本人は全員が発狂しているはずだ……。個体維持本能と種族維持本能の軋轢値Ωは、あの赤い光点で示される。この曲面は、Ω点がある時点まで連続的に変わり、ジャンピング・ポイントP点で突然に大変化を起こすことを表わしている……という表題作の「終末曲面」。ほか6篇を収録する山田正紀の第一短篇集。
  • 不発弾
    値引きあり
    3.6
    今度はあなたが、爆発させてみる? 退屈な日常から逃れられるきっかけなんて、どこにでも転がってる。デパート勤務の的場智明は、地味な売り場での仕事に耐える日々を過ごしていた。そんな折、息子や娘の、“秘密”を妻までが一緒になって隠していたことに気づく。たまりにたまった憂さをはらすために彼がとった行動とは……。表題作など、現代人の爆発寸前の心境を的確に捉え、見事な筆致で描く、秀逸短編集。(講談社文庫)
  • ニューナンブ
    3.0
    ニューナンブとは、日本の警察が使用している拳銃のこと。研修中に上司を目の前で殺された北守(きたもり)は、配属後も、犯人の少年を執念深く追い続けていた。そんななか連続殺人事件が起き、捜査に奔走する。警察官と殺人犯、それぞれが"真の正義"を探し求めて闘う――善と悪の境界線を彷徨(さまよ)う男たちを描いた傑作。
  • 野川
    4.0
    急逝した友人の一周忌近く、故人からの遺贈として届いた一枚の絵地図。友人が好んだ野川の散歩道を描いた絵の片隅で、大人が子供の手を引いていた。それは子を妊った娘の未来像か、東京大空襲の翌朝に母親と歩いた荒川土手の風景か――。はるか時空を往還し、生と死のエロスの根源に迫る、古井文学の到達点。
  • 青春漂流
    4.2
    一度は挫折し、方向転換した若者たち。その大胆な選択が成功だったかどうかを、語ることはまだ出来ない。何しろ彼らは、迷いや惑いの青春の真っただ中にいるのだから。自らも不安や悩みの放浪の旅から、自己確立をしたという著者は、職業も種々な11人の若者たちと、夜を徹して語り合う。鮮烈な人間ドキュメント。……あらゆる失敗の可能性を見すえつつ、大胆に生きた人こそ、よく青春を生きたと、言うべきだろう。
  • 最悪
    3.8
    不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。和也は、トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。無縁だった3人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。比類なき犯罪小説、待望の文庫化! (講談社文庫)
  • 波之助推理日記
    値引きあり
    4.0
    旗本の三男坊で、気儘(まま)な毎日を送っていた早川波之助。ところが、釣りに興じていた舟の上で、女性の遺体を発見してから事態は一変する。その首筋には不自然な痣(あざ)が残されていた。自殺か他殺か? 難事件に直面したその時、波之助の推理が冴え渡る。そして辿り着いた真相とは。書下ろし二編を含む三編を収録。
  • 怪獣記
    4.1
    トルコ東部のワン湖に棲むといわれる謎の巨大生物ジャナワール。果たしてそれは本物かフェイクか。現場に飛んだ著者はクソ真面目な取材でその真実に切り込んでいく。イスラム復興主義やクルド問題をかきわけた末、目の前に謎の驚くべき物体が現れた! 興奮と笑いが渦巻く100%ガチンコ・ノンフィクション。
  • とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起
    値引きあり
    4.1
    故郷をおん出て何十年、他国に流離で十何年、親も夫も子も危機で、死と老いと病とが降りかかる。それでも生き抜く伊藤しろみ。この苦が、あの苦が、すべて抜けていきますように。本書は詩であり、語り物であり、また、すべての苦労する女たちへの道しるべである。(講談社文庫)
  • 私的生活
    4.2
    辛く切ない大失恋のあと、剛から海の見えるマンションを見せられて、つい「結婚、する!」と叫んでしまった乃里子、33歳。結婚生活はゴージャスそのもの。しかし、金持ちだが傲慢な剛の家族とも距離を置き、贅沢にも飽き、どこかヒトゴトのように感じていた。「私」の生活はどこにある?
  • 鳴子守 見届け人秋月伊織事件帖
    3.5
    悲運の姉弟の絆を想い、哀しく田に響く鳴子守の音。南原(なんばら)家の埋蔵金騒動に絡んで、穴掘り人足が次々と殺される。真相の見届けにあたっている秋月伊織は、数日前に縄暖簾で「穀潰し」と罵られていた貧相な若い人足・仙吉の豹変ぶりを不審に思い、探索を開始した。苦界に身を沈めた姉と、貧しさに翻弄された弟の運命を描く、大人気文庫書下ろしシリーズ第5弾。(講談社文庫)
  • サンティアゴの東 渋谷の西
    値引きあり
    3.4
    遠く離れた南米チリで。瀬戸内海に浮かぶ島で。雑踏の渋谷で。あの何気ない出会いは運命だった。静かな感動が降り積もる六編。
  • 地図のない場所で眠りたい
    3.8
    探検部を卒業し、今を時めく人気ノンフィクション作家となった高野秀行と角幡唯介。未知の世界への憧れを原動力とする点は共通するが、テーマの選び方やアプローチの仕方は大きく異なる。高野は混沌とした人の渦へ頭からダイブし、角幡は人跡未踏の地をストイックに攻める。夢追い人二人の、仕事の流儀!
  • シューマンの指
    3.8
    音大のピアノ科を目指していた私は、後輩の天才ピアニスト永嶺修人が語るシューマンの音楽に傾倒していく。浪人が決まった春休みの夜、高校の音楽室で修人が演奏する「幻想曲」を偶然耳にした直後、プールで女子高生が殺された。その後、指を切断したはずの修人が海外でピアノを弾いていたという噂が……。(講談社文庫)
  • 年に一度、の二人
    値引きあり
    3.7
    医師の夫との偽りの結婚生活に疑問を感じながらも、1歩を踏み出せずにいる沙和子。そんな時、出張先の香港で門倉と出会う。強く惹かれあうが、互いを縛りつけることのできない2人が行き着いたのは「年に1度だけ、同じ日に、同じ場所で」という約束。電話番号もメールアドレスも知らない2人の、愛の姿を描く。(講談社文庫)
  • 隣人X
    3.0
    難民問題や異文化交流、同調圧力など現代の世相を作品に昇華した第14回小説現代長編新人賞受賞作。2023年12月1日映画公開! 現代の社会が抱える問題と巧くリンクさせ、登場人物の置かれた環境や心情を通じて難民や移住外国人の受け入れ、違法労働について投げかけてくるところに作者の並みならぬ手腕を感じた。  ――朝井まかて(選考委員) 小説の主軸は三人の女性それぞれの日常にある生きづらさの描写にあり、それが作者と地続きのテーマであるだけに、とてもよく描けている。   ――中島京子(選考委員)
  • 暁の旅人
    値引きあり
    3.9
    幕末の長崎、オランダの医官ポンぺから実証的な西洋医学を、日本人として初めて学んだ松本良順。幕府の西洋医学所頭取を務め、新撰組に屯所の改築を勧め、会津藩で戦傷者の治療を指南、さらに榎本武揚に蝦夷行きを誘われる。幕末、そして維新の波にもまれながらも、信念を貫いた医家を描く感動の歴史長編。(講談社文庫)
  • 夜の眼
    値引きあり
    3.0
    性に奔放な三十四歳の愛人・静子。あどけなさの残る二十歳の葉子。「性具」と「飼育」、岸波は二人の女との情事に溺れ、“小さな死”という名のオーガズムを求めて喘ぐ。死を求めながら、死に恐怖する。老いのとば口に立った一匹のオスが渇望する真のエクスタシーとは? 社会の禁忌に触れる、衝撃の情事小説。
  • OVER DRIVE
    値引きあり
    4.0
    生真面目で寡黙だが、確かな技術で信頼されているメカニックの兄・檜山篤洋と、世界ラリー選手権へのステップアップを目指している天才的ドライバーの弟・檜山直純。篤洋のアドバイスを無視して無謀で危険なレースをする直純はレースの度に篤洋と衝突を繰り返す。ある日、直純の新しいマネジメント担当として、遠藤ひかるがやってくる。彼女を待ち受けていたのは檜山兄弟の確執に秘められた過去、チーム全体を巻き込む試練だった。
  • 霧舎 巧 傑作短編集
    3.9
    名探偵・後動悟が、密室の列車内で、華麗なアリバイ崩しを披露する「手首を持ち歩く男」。師・島田荘司の人気シリーズから御手洗潔と石岡和己の名コンビが登場する「動物園の密室」。ほかに《あかずの扉》研究会と《霧舎学園》のメンバーも集結し、オールスター探偵がハイレベル推理を連発する、珠玉のミステリ短編集!
  • 人生ベストテン
    値引きあり
    3.6
    40歳を目前にして、人生のイベントベストテンを自虐的に並べてみれば、我が身には25年間、なにも起きてはいないのだ。年相応の達成感も充実感もない日々に愕然としながら、私は岸田有作に会いに行く。13歳の夏に恋をした相手に――どこにでもある出会いが生み出す、おかしくいとしいドラマ、全6篇。
  • セイフティボックス
    値引きあり
    3.4
    エイミーが語りかける優しい声に耳を澄ます――私のセイフティボックスの中味は、パスポートでも、お財布でも、クレジットカードでもなく、私を取り巻く人間たちのような気がする。そして、その人たちが喋る言葉や、考えたことや、心の動きなどが絡み合って、貴重品を作って行くのだと思う。だから、セイフティボックスの鍵は、失くさないようにしなくっちゃね。
  • 逆光の女
    値引きあり
    -
    ワイルドターキーの香る横浜の小さな酒場で重なり合った男と女の人生。慈しみ、惜しみなく奪い合う愛。そして訪れた別離。ひととき心から愛した雅子が殺された。マセラッティを駆り、凶暴なまでに真相を追い詰める風泰生。血肉を注ぐ情念。決して譲ることの出来ない男の美学。これぞハードボイルドの神髄!
  • 白いメリーさん
    値引きあり
    3.7
    まっ白な帽子に白いスーツ、白いストッキングに白いハイヒール。髪もまっ白という「白いメリーさん」。誰を殺してもいいという年に一度の「日の出通り商店街 いきいきデー」――など、怖すぎて、おもしろすぎる9編を集めた珠玉の短編集。ナニワの奇才・中島らものユニークな世界に思わず引き込まれる一冊!
  • となりの姉妹
    3.5
    近所の小母さんが遺した、謎めいた「暗号」。隣家に住む姉妹とともに解読をこころみる佐保(さほ)は、土地に根づく習俗がからみあう、不思議な世界に迷いこむ。幾重にも交わる家や人の縁、わけしり顔の兄、そして庭から見つかった蛇の石の意味とは? 懐かしくも妖しい世界を描き出し、著者の新境地を拓く長編小説。(講談社文庫)
  • イキルキス
    4.1
    物語には生をもたらすキスと、死を招くキスがある。青春、恋愛、セックス、暴力、家族。みんなカナグリ生きている。荒々しく吹きすさぶ言葉たちはいつしか紙の上に優しく降り積もり小説となる。表題作「イキルキス」他4編を収録。2編は文庫書き下ろし!
  • コーヒー党奇談
    値引きあり
    3.2
    霧深い夜、アムステルダムで立ち寄ったカフェで飲んだアイリッシュ・コーヒーの美味さに驚いた隆二は、店主と再会を約す。そして10年後、半信半疑で出かけた青山の街で見たものは!? 東京、大阪、沖縄、京都……一つの街に一つの謎、旅先で出会った不思議な出来事を描く、旅情あふれる短編集。全12編収録。
  • 月下美人
    値引きあり
    -
    生と死を見すえる冷徹な眼。傑作短編小説集。軍用機を爆破した元脱走兵を取材する「私」と、家族にも過去を語らず苦悩の歳月を過してきた男との関わりを、咲き散る月下美人に託して描く表題作等、8編を収録。(講談社文庫)
  • 路傍の熱血ポンちゃん!
    値引きあり
    4.3
    極楽のフィジーでも東京の昭島でも、気の合う仲間がいれば、心は贅沢! キュートでおしゃれなポンちゃんが、かっこつけずに本音で楽しく生きる方法を自らの退屈でエキサイティングな日々を披露しながら綴る、おもしろエッセイ。恋に友達に遊びに仕事に、ちょっとだけ悩んでいる人たちに贈るステキな一冊!
  • 鬼

    3.5
    平安の都で起こる怪事件の影で跋扈(ばっこ)する道鏡、菅原道真らの怨霊、邪鬼。弓削是雄、安倍晴明ら陰陽師の系譜を辿り、歴史の暗部から世界を読み解いていく。藤原氏支配の礎を築いた政変〈応天門の変〉の謎を陰陽術で解き明かす「髑髏鬼」他、秀逸な怪異譚全5編。『白妖鬼』へ連なる妖かしの物語の原点がここにある。(講談社文庫)
  • 試験に出ないQED異聞 高田崇史短編集
    5.0
    歴史ミステリ「QED」、論理パズル「千葉千波の事件日記」など、 人気シリーズの各短編が一冊に詰まった贅沢な短編集。 「古事記異聞」の橘樹雅と、桑原崇・棚旗奈々が旅先で出会い、 雅の進路を決定づける出来事を描いた中編「木曾殿最期」収録。 高田作品の幅広い魅力が楽しめるお得な一冊。
  • 男の城
    -
    マイホームができてみると、設計図の書斎は子供部屋に化けていた。桐原は怒った。妻や義母から逃避する書斎こそ、夢にまで見た男の城ではないか。そしてやっと手に入れた書斎は廊下脇の貧相な部屋。それでも桐原の心のなかでは大書斎なのだ――。女臭ふんぷんたる当世マイホームの中で、けなげに生きる男たちを絶妙な語り口で描く傑作集。
  • 時の過ぎゆくままに
    -
    クラスでふたりは際立っていた。英語をきれいに発音できる少女と、訳出が上手な少女。ふたりの奇妙な友情は、大人になり、互いの社会的条件がちがってきても、独得の心理で表向き続いていたが……。洗練されたセンスと鋭い感性に裏うちされ、優美と毒とを巧みに織りまぜる、秀作12編。惜しまれつつ急逝した短編の名手の、「忘れがたみ」というべき作品集。女同士の友情に潜む毒の凄み! 鋭い感性で、人生の光と影を描き出す都会小説集。
  • 噛みあわない会話と、ある過去について
    4.0
    あなたの「過去」は、大丈夫? 美しい「思い出」として記憶された日々――。 その裏側に触れたとき、見ていた世界は豹変する。 無自覚な心の内をあぶりだす「鳥肌」必至の傑作短編集! 大学の部活で仲のよかった男友達のナベちゃんが結婚するという。だが、紹介された婚約者はどこかズレていて――。 「ナベちゃんのヨメ」 国民的アイドルになったかつての教え子がやってくる。小学校教諭の美穂は、ある特別な思い出を胸に再会を喜ぶが……。「パッとしない子」 人の心裏を鋭くあばく傑作短編集!
  • 埠頭の風
    -
    幕末から明治の激変期を、熱く描く短編集。日本を追われたシーボルトが、許されて再び長崎港の岸壁を踏んだとき、娘お稲の胸中には……。文明開化の日本人と、訪れてきた異邦人との愛憎を描く傑作短編他。
  • QED Another Story 毒草師
    3.3
    『伊勢物語』になぞらえて、<毒草師>御名形史紋(みなかたしもん)が、密室からの連続失踪事件を解き明かす!「恐ろしいのは毒草ではなくて人間です」。名家・鬼田山家で、「1つ目の鬼を見た」と言い残し、施錠された離れから家人が次々と失踪する事件が発生。さらに長男・柊也が何者かに毒殺され……。関係者全員を前に、古今東西の薬と毒に精通した<毒草師>を名乗る男・御名形史紋が、鮮やかすぎる推理を披露する!
  • パズル自由自在 千葉千波の事件日記
    3.1
    これは、論理パズルでデコレーション(装飾)した本格ミステリか、それとも本格ミステリの仮面を剥ぎ取った論理パズルか? 天才高校生・千波くん、平凡浪人生・ぴいくんたちと一緒に、筋道だったチャーミングでエレガントでスプレンディッドな謎解きを、ご堪能あれ! 病み付きになること間違いなし。本当だよ。 (講談社文庫)
  • 四つの終止符
    4.3
    下町のおもちゃ工場で働く晋一は耳の不自由な青年だった。ある日、心臓病で寝たきりの母が怪死する。栄養剤から砒素が検出されたとき、容疑は晋一に集中した。すべてが不利な中で彼は無実を叫びつつ憤死する。そして馴染みのホステスも後を追う。彼をハメたのは誰? ヒューマニズムに裏打ちされた秀作。(講談社文庫)
  • 軍神の血脈 楠木正成秘伝
    4.0
    薬剤師の早乙女瑠璃は、神風特攻隊の生き残りで祖父の修吉から、『太平記』を渡される。だが、楠木正成に関する部分を読むよう告げた修吉は、何者かに毒を射たれ、瀕死の重体に。事件の背後には秘密結社〈南木の会〉が。瑠璃は、祖父の命を救うため、元同級生で作家の京一郎とともに、正成の死に纏わる謎を追う!
  • 千葉千波の怪奇日記 化けて出る
    3.0
    国際江戸川大学の1年生、ぴいくんと慎之介は、同期生の古都里ちゃん、海月ちゃんと居酒屋「ちの利」で開く宴が学校帰りの楽しみ。そんなある日、大学に伝わる恐怖の七不思議、通称「江戸七」の一つを目の当りにしてしまう。4人は、ぴいくんの従弟である天才高校生、千葉千波くんに解決を依頼するのだが――!? 書き下ろし特別編も収録した、ユーモアとパズル感覚満載の好評シリーズ第5弾!
  • クリスマス緊急指令 ~きよしこの夜、事件は起こる!~
    3.2
    クリスマスに、不思議な事件が発生! 大伴黒主(おおとものくろぬし)の歌が、ダイイング・メッセージとなった事件を解明する「鏡影」。バーでカクテルを傾けながら謎を解き、相談者の心も溶かす「K's BAR STORY」。調律を誤ったオルゴールの音色が、琴線に触れ、宿泊客の人生さえ変えてしまう「オルゴールの恋唄」など、珠玉の短編集。
  • 一命
    3.8
    病床の妻子を置いて家を出た浪人は、なぜ自ら命を絶ったのか?―二度映画化され、二度ともカンヌ国際映画祭に出品された不朽の名作「異聞浪人記」の他、武家における殉死の意味を問う「高柳父子」、家族愛を描く「拝領妻始末」など6編を収録。武士の悲哀を描き続けた時代小説家の傑作選。
  • 冬の伽藍
    値引きあり
    3.9
    煉獄の中で、私は天上の果実を口に含んでいた……。夫を事故で失った高森悠子は、薬剤師として勤めることになった軽井沢の診療所で医師・兵藤義彦と出会う。彼もまた、妻の美冬を自殺で亡くしていた。義彦に恋心を抱きながら、好色なその義父・英二郎の誘いを拒みきれない悠子。エロス匂い立つ、長編恋愛小説。
  • ウエストサイドソウル 西方之魂
    値引きあり
    -
    父子家庭に育った十七歳のピカイチは登校拒否中。ある日、古本屋で同級生の日向淑子と出会ったことから、彼の人生は大きくうねりだしていく。ほとばしる音楽への熱情、日向淑子から始まり年上の女性とも交わす性体験、そして実母との邂逅――。屈折した少年が大人へ成長する姿を描ききった傑作青春小説!
  • 迎え火の山
    値引きあり
    3.6
    生と死の臨界に迫る傑作伝奇ミステリー。旧盆の十三夜、出羽三山の霊峰月山(がっさん)の頂から麓に連なる迎え火。即身仏(ミイラ)取材で帰省した工藤の友人正志は、古来の採燈祭(さいとうさい)復活に奔走していた。だが工藤の父親に続き、正志も闇の中で襲撃される。もう1人の同級生由香は工藤に、鬼から村を守ってきた一族だと明かし、「祭を止めて。ソ乱鬼(そらんき)が降りてくる」と告げた。(講談社文庫)
  • 誰が千姫を殺したか 蛇身探偵豊臣秀頼
    4.0
    まさしく豊臣秀頼こそが戦国乱世におけるシャーロック・ホームズだったのである。 大坂夏の陣の終結から四十五年が経った万治三年六月、大坂城の焔硝倉に落雷し、大爆発が起こる。 城の修復中に地下へ続く豊臣時代の石段が見つかる。 暗闇の先には、豊臣秀頼と名乗る人物がいた。 恐ろしき姿となった秀頼は「千姫は大坂城で殺された」と驚くべき物語を話し始める。 書下ろし時代本格ミステリ。 どうしてこんな作品を書いてしまったのか自分にもわからない。田中啓文
  • オルゴォル
    4.1
    母親と二人で東京に住む小学生のハヤトは、同じ団地のトンダじいさんから「一生に一度のお願い」を預かる。それは古いオルゴールを鹿児島に届けること。福知山線の事故現場、広島の原爆ドーム、父さんの再婚とお腹の大きな女の人――出会うものすべてに価値観を揺さぶられながら、少年は旅を続けていく。直木賞作家が紡ぎ出す心温まる成長物語。親が子どもに読ませたい本。(講談社文庫)
  • 新装版 正月十一日、鏡殺し
    3.5
    彼女が勤めに出たのは、このままでは姑を殺してしまうと思ったからだった―。夫を亡くした妻が姑という「他人」に憎しみを募らせるさまを描く(表題作)。猫のように性悪な恋人のため、会社の金を使い込んだ青年。彼に降りかかった「呪い」とは(「猫部屋の亡者」)。全七編収録。鬼才初の短編集を、新装版で。
  • 新装版 海も暮れきる
    4.2
    「咳をしてもひとり」「いれものがない 両手でうける」――自由律の作風で知られる漂泊の俳人・尾崎放哉は帝大を卒業し一流会社の要職にあったが、酒に溺れ職を辞し、美しい妻にも別れを告げ流浪の歳月を重ねた。最晩年、小豆島の土を踏んだ放哉が、ついに死を迎えるまでの激しく揺れる八ヵ月の日々を鮮烈に描く。(講談社文庫)
  • 沈底魚
    3.5
    現職国会議員に中国のスパイがいるという情報によって、極秘に警視庁外事課に捜査本部が設置された。指揮官として警察庁から女性キャリア理事官が送り込まれるが、百戦錬磨の捜査員たちは独自に捜査を進める。その線上に浮かんだのは、次期総理の呼び声高い芥川健太郎だった。(講談社文庫)
  • 少年H(上)
    4.1
    1~2巻743~924円 (税込)
    胸に妹尾肇のイニシャル「H」の文字を編み込んだセーター。外国人の多い神戸の街でも、昭和12年頃にそんなセーターを着ている人はいなかった……。洋服屋の父親とクリスチャンの母親に育てられた、好奇心と正義感が人一倍旺盛な「少年H」こと妹尾肇が巻き起こす、愛と笑いと勇気の物語。毎日出版文化賞特別賞受賞作。2013年夏・映画公開決定。
  • サーカス市場
    3.5
    毛鉤をピアス代わりにつける謎の美女を追いかけたサラリーマン二人組が、足を踏み入れたのは……。都市の中心部で、密かに口を開けて待っている異界“サーカス市場”。死者のためのサーカスが行われていたり、裏切りの重さが量れる天秤を持つ質屋があったり。幻想味あふれる「奇妙な味」の傑作連作短篇集!
  • 新装版 白い航跡(上)
    4.0
    薩摩藩の軍医として戊辰戦役に従軍した高木兼寛は、西洋医術を学んだ医師たちが傷病兵たちの肉を切り開き弾丸を取り出す姿を見聞し、自らの無力さを痛感すると同時に、まばゆい別世界にあこがれる。やがて海軍に入った兼寛は海外留学生としてイギリスに派遣され、抜群の成績で最新の医学を修め帰国した。(講談社文庫)
  • 光る牙
    値引きあり
    3.6
    厳冬の北海道、消息を絶ったカメラマン捜索のため、若き森林保護官はスキーを履き、険しい山中へ向かう。カメラマンは無残な遺体で発見され、手負いの羆は銃殺され事件は一件落着したかに見えた。しかし、噛み跡はその羆のものより遙かに巨大だった。最強の野生動物「羆」との壮絶な死闘を描く、元自衛隊の、期待の大型新人による傑作山岳小説。
  • ロカ
    値引きあり
    4.3
    長らく文庫化されなかった、中島らも、最後の小説。天才が予見した自らの未来は。作家・小歩危ルカ、六十八歳。巨額の印税を得て以来、新宿のホテルで一人暮らし。相棒はWネックのギター「ロカ」。あとは酒と大麻と鮟鱇鍋。「IQが185もあると予知能力が備わる。だから私の予知したことは、ほぼ、九十六パーセント当たるんだ」。著者が急逝直前まで書いていた、問題の近未来の私小説。
  • やむにやまれず
    3.3
    時は、過ぎてゆく。何かを成し遂げても何ひとつなさなくても。青春を遠く離れ、その間に何かを得、多くを失った。そんな記憶の断片からなる18の物語は、いまだ胸に残る希望の欠片(かけら)と諦観の間で揺れている。豊かなユーモアとペーソス、やせ我慢と自嘲、感情と論考、それらに昭和の匂いが織り込まれた上質の短編集。(講談社文庫)
  • 中年シングル生活
    値引きあり
    3.5
    懲役18年――私は彼女が最後にいった言葉を忘れずにいる。オトナになるまで再婚しては駄目といったのである。そしてすでに懲役は20年の長きにおよんでいる。不幸でもなく幸せでもなく、同時につまらなくもない中年的シングル生活の実情を、自信と痩せがまん半々に記した、これはユーモア読み物なのである。
  • 霧のレクイエム
    -
    人影のない秋の軽井沢。そこで仁科洋子は男と出会い、恋におちた。語り合ううちに洋子は、男に悩みを洩らす。東京のマンションで不気味な隣人から恐怖を与えられている、と。男はやがて或る計画を持ちかけた。即ち交換殺人! そして事態は予想外の展開へ。哀愁と恐怖が交錯する、ロマンチック推理。
  • Vの悲劇
    3.0
    スケッチ旅行といつわって親友の夫と逢う瀬を重ねる女流画家・安津子。日光霧降高原のコテージで待っているはずの彼は、クロゼットで冷たくなっていた。「V」ヴォラージュのかすかな香りを残して。だが安津子にはこの香りに幼い日に出会った記憶があるのだ。ブラックユーモアの名手が挑む本格長編推理作品。
  • ああ、禁煙vs.喫煙
    値引きあり
    4.0
    店内の喫煙。嫌がる禁煙者。しかし喫煙者は悪者ではなかった? なんでもかんでも「いただく」ってのは丁寧な表現なのか? 「無差別殺人」って実は「差別殺人」ではないか?なんとなく「あたりまえ」とされる事も、大きな勘違いってこともある! 超然的な記憶力を保持する著者による、クリアで笑えるエッセイ。頑固な思い込みで凝り固まった頭を柔らかくする! (講談社文庫)
  • 藍色回廊殺人事件
    3.5
    四国八十八ヶ寺取材で徳島を訪れた浅見光彦は、迷宮入り直前の事件に導かれるように吉野川流域の「第十堰」問題にぶつかる。調査を進めるうち、現実の問題として浮上する事件。そして再び起こる殺人。浅見の鋭い推理が暴いた真相とは……。愛、憎しみ、人間の悲しい業までも描き出す内田ミステリーの白眉。(講談社文庫)
  • 愛がわからなくなったら読む本
    -
    「この人しかいない」そう心に決めた恋人と別れ、人生まっ暗、涙も枯れ果てて……。男に都合のいい女、だまされやすい女、男に逃げられる女、いつも運を逃してしまう女。こうした女にならないために、どう行動すべきか? さまざまな愛、葛藤、別れをみつめてきた恋愛論の権威が説く、恋愛指南の快エッセイ。
  • 愛犬リッキーと親バカな飼主の物語
    3.5
    なぜこんなに可愛いの! 恥も外聞もうち捨てた、汗と涙の仔育て記。生後2ヵ月の仔犬との出会い、そしてなりふりかまわぬ溺愛の日々――生後2ヵ月の小型犬を衝動買いし、仔育てに臨んだ作家は、たちまちノイローゼに陥った。仔犬の食の細さに心を痛め、少し変わった鳴き方をしたといっては、動物病院に通いつめる日々。だが、何物にも代えがたい幸せが、たしかにそこにある。全編にあふれる無上の愛が、読む者の胸を熱くする、汗と涙の愛犬エッセイ。
  • 愛子いとしや
    -
    11も年下なのに、膵臓癌で先に逝ってしまった最愛の妻にささげる、鎮魂の書。才能豊かな女優でありながら、家事一切もみごとにとりしきった、妻・三益愛子とともに過ごした46年間の、尽きぬ思い出。深く結ばれた夫婦の愛。「次の世に生まれ代っても三益愛子を妻に持ちたい」という、涙でつづる、感動的な亡妻記。
  • 愛子のおんな大学
    -
    笑って、怒って、考える、女の行く道・生きる道。娘と妻と母親と、世の中半分、女族。男と女の生活が、この世の幸せであるならば、女の道を教えます。ご存じ愛子の痛快な、男女共読、名エッセイ。「離婚常習者の弁」「母性愛のワナ」「わが教育愚論」「姑のブルース」「ヤキモチは焼くべし」など、24篇を収録。
  • 愛さずにはいられない ~ミーハーとしての私~
    4.0
    ミーハーって最高! もうヤメられないっ! 愛は最強! ――私のミーハーは、一生、治らない。ミーハー心こそ、すべての創作の源! エステでオイルマッサージ、デパートで思いっきりお買い物、たっぷり昼寝を楽しんで、地方都市までスピッツを追いかける。ワイドショーの女王と呼ばれ、魔性のミーハーを自認する人気漫画家が、追っかけ人生を振り返る、ユーモアエッセイ集。
  • 愛されかた知ってますか 他人が言わない29項
    -
    あなたは愛のありかた、恋のありかたを、誤解してはいませんか? 誤解と言わないまでも、ひとりよがりの考えかたで、せっかくのチャンスを、見逃したり、見失なったりしていませんか。愛の世界は、思う以上に、複雑な心理や感情の錯綜している戦場、闘いの場なんです。――あなたは、愛されかた知ってますか!?
  • 「愛されたい」症候群
    -
    夫婦、親子、老人など「家族の絆」がいま危機にある。NHK「おはようジャーナル」でおなじみの人気キャスターが、夫婦、子供の教育、老人介護、悪徳商法などの取材を通してとらえた現代の家族の肖像。この現実をいかに乗り切ったらよいか。人間関係に悩みを持つ老若男女に提案する、打開のための具体例。潤いのある人間関係を築くための愛の処方箋。
  • 愛死(上)
    4.5
    愛する人がエイズを発症したとき、恋人は、家族は、いかに行動するのか? 共に闘い心により添って今を生きる命の手応えを描く感動の物語――パキスタンの旅で、遥子は、物静かな美青年・亮(りょう)と知り合った。恋人の遺骨を埋めに来た、という。帰国したその遥子を頼って、舞が家出して来た。薬害エイズに苦しむ若者・祐二を愛する舞を、家族の偏見が追いつめていた。懸命に舞を励ます遥子を、新しい衝撃が襲った。母親代わりのやさしい伯母の、失踪であった。<上下巻>

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