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攘夷か開国かで二分された国論を調停するために、皇妹・和宮は徳川将軍家に降嫁せよと勅命を受ける。彼女の身代りとされた少女フキは何も知らされないまま江戸へ向かう輿に乗せられる――。大義によって人生を翻弄された女たちの矜持を描き、犠牲になった者への思いをこめた、有吉文学を代表する不朽の名作。
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Posted by ブクログ
TVドラマ化されたものはずっと昔にちらっと見た記憶がある。フキの役を大竹しのぶが演じていた。 NHKの「100分de名著」に影響されて「青い壺」「恍惚の人」に続いて読む有吉佐和子作品。 最初は公家言葉に不慣れなためと章ごとに視点が変わるので読み進めるのに時間がかっかたが、途中からは面白さに一気に...続きを読む読み進んだ。
視点がコロコロ変わる系で、途中まで読むのに時間かかった。けど後半一気に読めてめちゃめちゃ面白かった。 なぜ替え玉をしたのか。 主謀者の思いは? なんてことは一切書かれず、想像するしかない面白さ。 距離が近くなるとイライラしてくる人間関係。 相手を軽んじているのが如実に伝わる感じ。 誰々があなた...続きを読むの悪口をこんな風に言ってたよ、と伝えてくる人のいやらしさ。 こういうものが、脇の下に嫌な汗をかいてしまうほど臨場感を伴って書かれている、名作でした。 きわめつけは御所言葉、京都のプライドを堪能できるところ。しびれました。 3周回って、京都好き!
有吉佐和子さんの時代もの大好き! 若い頃に読んで、衝撃でした。そんな身代わりのさせ方ある?さらにその身代わり? 和宮様に仕立てられる様子がかわいそうで、おかしくなってしまった時に悲しかったです。理由も教えてくれなかったらおかしくもなります。 フィクションとはいえ、現実味を感じさせる話でした。
NHK「大奥2」の岸井ゆきの演じる和宮を観て興味が湧いた。幕末を舞台にした大河ドラマでちょくちょく見かけてはいたのだが、たいていはサブ的な位置づけで印象派薄い人物だった。 一方でNHK大奥2の和宮はほぼ主役と言ってもよいインパクトを残した。男装の和宮と女将軍の家持。完全にフィクションなのだが、画面に...続きを読む映る二人は実在の人物としか思えないほど「生きて」いた。 フィクションではあるが、細部のリアリティーは歴史に忠実で、和宮の左手が無いこともこのドラマで知った。あまりに実在感が強いので、機会があれば増上寺の菩提に手を合わせに行こうと思っている。 間違いなくフィクションなのに、どうしても生きていた気がしてならない。この感覚は何なんだろう…。 本書の大筋としては、徳川家に嫁ぐことを拒否した和宮のために、母の観経院が使用人の女の子を替え玉として教育し江戸へ向かう、という話だ。 前半は幕末の京の公家社会を詳細に描いていて興味深い。ただ、本の折り返しまでドラマが立ち上がらないので若干の退屈さはある。 しかし後半に入り、江戸への道中で起こるサスペンスなイベントが連続して俄然面白くなる。 NHKのドラマとは違う展開だったが、本書は本書で感じるものがあった。 歴史に隠された「自分自身として生きられなかった人々」のことを思うと、今、自分にできることをしなければと思う。
40年くらい前に大竹しのぶさんが演じたドラマがありました。子供でしたがゾクゾクするほど面白く内容も鮮明に覚えていて、原作を読みたくなり読みました。有吉佐和子さんの取材力がすごく、和宮様は本当に偽物だったのではと思わせます。御所言葉など馴染みのない言葉が使われていますが全く飽きさせず一気に読めてしまう...続きを読む歴史小説です。
ずいぶん久しぶりに読み返そうと思ったのだが、持っている文庫本はあまりにフォントが小さくて、とてもじゃないが読めない(トホホ…昔の文庫を見るたびに本当にこれ読んでたのかと思ってしまう)。ちょっとためらったけれど、とっても面白かった記憶に押されて新装版を購入。いやあ、これは大正解!もう夢中になって一気に...続きを読む読んだ。 幕末、公武合体の掛け声のもと、徳川家に降嫁した皇女和宮は、実は替え玉だった。この設定だけでも興味深いが、そこに幾重にも肉付けされていく、小説としての厚みがすばらしい。思いつくままにあげていく。 ・一人目の替え玉として、フキという少女をつくりあげたことが、この小説のキモだろう。何も知らされずなんの抵抗もできず、思いもよらない運命に巻き込まれていくこの少女を作者は、否応なく苛烈な戦場にかり出され、狂ったり死んだりしていった若者たちのことを思いながら書いたそうだ。そう思うと、フキがいっそう哀れでたまらない。 ・二人目の替え玉宇多絵にはモデルがいるそうだが、替え玉説は否定されているようだ。フキと違い、裕福にかしずかれて育ったと描かれる宇多絵は、まさに青天の霹靂としか言いようのない運命に静かに従う姿のみ描かれ、その内面は一切説明されない。そのことがかえって、権力の非情をまざまざと浮かび上がらせていると思う。 ・考えてみると、和宮はそうした力を持つ側の人なのだが、降嫁を拒否し我が儘を押し通すといった印象がほとんどない。それどころか、彼女もまた犠牲者なのだと思わせられる。この点にも作者の筆の力を強く感じる。 ・物語の背景にある、公家と武家の価値観の違いがとても印象的だ。優雅な技芸、洗練された生活様式を代々伝え続ける一方、風雲急を告げる時代の動きには暗く、関心を持とうともせず、武家を見下し「伝統」に固執する公家。そうした公家を軽侮し、富と力によってすべてをなぎ払おうとする武家。しかし結局は、どちらも外国からの強力な波に呑み込まれていく。作者の視線は冷静だ。 ・全篇に登場する御所言葉が実に面白い。典雅でありつつ、どことなくユーモラス。「お嫌さんであらしゃりまして」「おするするにお運びあそばされ」などなど、耳について離れない。会話も手紙も持って回った言い回しの極地。京都人のいけずの源流だもんね。 有吉佐和子の代表作の一つ「華岡青洲の妻」について、橋本治は「作者は最後の最後で、大声で怒っている」と喝破した。この小説は、嫁姑の争いを描いたとととらえられがちだが、青洲の墓は、彼のために身を捧げた妻や母のものよりずっと大きいと書くことで、その理不尽に対して渾身の力で怒っているのだと。この指摘には参った。さすがだ。この「和宮様御留」にも、抜群のリーダビリティの底に、まぎれもなく同様の怒りがある。そこに強く惹かれる。 オマケ 本作はかつてテレビドラマ化されたものを見た記憶が鮮明だ。調べてみたら、私が見たのは81年フジテレビの正月特別番組だった。フジテレビの黄金期だけあって、俳優陣が実に豪華。 なんといってもフキ役の大竹しのぶが圧倒的だった。ほんと、この人って北島マヤそのものだわ~。和宮は岡田奈々(今どうしてるのかな)宇多絵は池上季実子、どっちも美しかった。和宮の生母観行院は森光子だったけど、原作とはイメージが違う。年増で険のある美人女優が良かったんじゃないかな。うーん、誰だろ。宰相典侍が園佳也子で能登命婦が吉田日出子というあたりは、もうそれしかない!というキャスト。他にも中村玉緒・乙羽信子・藤田まこと・丹阿弥谷津子・三益愛子・小林桂樹・佐藤慶などなど、名優がゾロゾロ。昭和のドラマが懐かしい。
失礼なことですが、一方的に和宮に同情して作られた小説だと思っていました。政治の道具として利用された可愛そうなお姫さま、という短絡なイメージ。 それでも、和宮以上に道具とされたフキの有様に哀れみと悲しみ感じつつ読み進んで、入れ替わりなったときには、歴史小説ならではのおもしろさ、と唸っていたわけですが。...続きを読む 本当に心底唸ることになったのは、あとがき読んでからでした。 歴史小説ではなくて、歴史のおもしろさ。 何より、幕末という時代が、今と地続きであるということを感じることのできる作者の生きていた時代に、憧れ覚えます。歴史の記憶というものが、その時代の臭いと共に触れられる世代。 新装版として、復刊されたこと非常に嬉しく思います。 これだから、歴史好きはやめられないとまらないです。
入れ替わりの発想がすごいな、って思った。 ふきが最初はただの女子(おなご)からいきなり、宮さんになって内心すごく怖かったろうな…。いきなり、「あんたはお上の妹君の和宮様におなりなしゃいまし」なんて言われたら、は?ってなっちゃうよ。戸惑うよね…。 最後に、宮様が徳川家の正室の中でただ一人、夫の隣に墓を...続きを読む建てられた人だと書いてあって、泣けた。京都から、政治の道具として、使われた和宮、すっごい、激しい人生だよん(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
江戸時代末期、外国から開国を迫られ、開国派の幕府と攘夷派の天皇と意見が分かれていた。 幕府と天皇との仲立ち(公武合体)のために徳川幕府14代将軍家茂に嫁ぐ天皇の子・和宮様の話。 最初は公家の言葉に慣れずなかなかページが進まなかったが、途中からおもしろくてどんどん読んでいってしまった。 和宮様が替え...続きを読む玉という発想がすごい! あとがきを読むとあながち突拍子もないとはいえないのかもしれないと思ってしまった。 確かにゴタゴタしていた時代だし、身分が高い女性だとたくさんの人に会わないから可能かもしれないなと。 最初の替え玉、フキはただただ不憫。 元気が取り柄で、下女見習いのような身分のフキには宮様の代わりなんて一番やらせてはいけなかったのでは? 気が狂わないほうがおかしい。 二番目の替え玉、宇多絵はフキよりは身分が違わないし、大切に育てられた子だからまだよかったかもしれない。 しかし、時代が変わる時に大変だっただろうな。 このふたりが頼りにしていた少進がすごくよかった! 少進がいなかったらこんなにうまく事は運んでいかなっただろうな。
「和宮様は私の家の蔵で縊死なすったのです。お身代わりになったのは私の大伯母でした。増上寺のお墓に納っているのは和宮様ではありません」そんなことを言う女が現れ半信半疑でなんとなく気をつけていると、身代わりを裏付けるような情報に目が止まるようになる。どうやら和宮様は、跋(びっこ)→健康体→左手首なし、と...続きを読む姿を変えているようだ。そんなことからこの小説は生まれた。 身代わりが真実なのかどうかは闇の中だが、話としてはめちゃくちゃ面白い。それもこれも全ては有吉佐和子の文章力。御所言葉を自由自在に使いこなし、高貴なお公家様の世界をリアルに再現。最初の身代わりフキが経験した堅苦しい作法の数々は、貧しくても一般ピープルの方が遥かに幸せ!と思えるほど異様だ。走れない、喋れない、笑えない、排泄もお付きの人に手伝ってもらい拭くことすら自分でやってはならない。言葉にしても行動にしても、とにかくまわりくどく、もったいつけてるのだ。 公武合体の象徴として徳川家に嫁入りする和宮東下をめぐり、右往左往する周辺の人たちの思惑も些細に描かれていて興味深い。
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