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病床の妻子を置いて家を出た浪人は、なぜ自ら命を絶ったのか?―二度映画化され、二度ともカンヌ国際映画祭に出品された不朽の名作「異聞浪人記」の他、武家における殉死の意味を問う「高柳父子」、家族愛を描く「拝領妻始末」など6編を収録。武士の悲哀を描き続けた時代小説家の傑作選。
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Posted by ブクログ
「異聞浪人記」「貞女の櫛」「謀殺」「上意討ち心得」「高柳父子」「拝領妻始末」の6つの短篇時代小説。武士道とは対極にある士道。個人の生死など歯牙にかけない武家社会の欺瞞を描いている。なかでも「異聞浪人記」は、1962年『切腹』そして本年『一命』のタイトルで映画化され、二度にわたりカンヌ国際映画祭コン...続きを読むベティション部門に出品されたそうである。 巻末の解説によると主に史実に基づいたものと推察される。読むほどに奥深さが伝わってくる秀逸な短篇集だっ!
古本屋で偶然目に止まり手に取ってみる。 どうやら映画化の便乗商法による文庫のようですが、これは拾い物。 どの短編も体制とそこに無自覚な人々の曖昧さ・いい加減さ・狡さ等に人生を狂わされながらも、尚それでも真っ当に生きようとする人間への愛に満ちています。当然苦さの残る作品が多い訳ですが、苦くない人生なん...続きを読むてありませんのでね。 この作家が直木賞を取っていないらしい事実も含めて、当方にとっては「新しい作家」の発見でした。 ちなみに『切腹』は凄く良い映画、『一命』は未観賞です。
歴史ものは非常に苦手なのですが、短篇集ならと手にとってみたもの。なるほど、面白い。 読んだ後に印象が強いのは、切腹にまつわってはめられた人の復讐の2本。また、他の作品も「謀殺」なる作品もあるくらいで、立場上板挟みの末の話が多い。 映画の宣伝の表紙だったため、つい最近の話かと、それにしては堅苦しい...続きを読む言葉を使っているものであると思いながら読んでいたわけですが、解説までたどり着いて1950年代の作品と知る。たしかにね。 時代小説を敬遠しているのは、たとえば名前が難しい上に登場人物が多いとか、言葉遣いが今と違うのでわかりにくいなどもあるのだけど、それ以上に、時代小説って「回想」の文学なんですよね。 敵とまみえたとき、過去の確執や父親の仇の詳細の話にポーンと飛ぶ。さっき死んだはずの人間が、2行後には生きているわけです。しかも子供。 そのうえ、今の時間軸では、見合ったまま動かなかったり、刀一振りで勝負がついたりするわけ。 そこらの感覚についていけるようになった時に、もう一度読んでも良いなと思う短編集では有りました。
切腹、追腹、御家大事。士道という美名に欺かれた不条理。命を賭けて守るべきは何なのか。せつない気分の高まる短編集です。
2004年に亡くなっているらしいが、恥ずかしながら「滝口康彦」という作家を知らなかった。一貫して「士道」を題材にした小説を書かれた作家らしい。 「異聞浪人記(2度映画化)」「貞女の櫛」「謀殺」「上意討ち心得」「高柳父子(直木賞候補)」「拝領妻始末(映画化)」傑作6短編集、かなり一級品。 「武士は死...続きを読むを尊ぶ。生涯のすべてをその一瞬にかける」という死を賭した意地を描く。爽やかまたは説教くさい士道ではない、主人公の一方的な思いに同化するのでもなく、「少し違うな」という違和感と哀しみみたいなものを感じる。それは士道を賛美するのではなくむしろ逆。狂言切腹、追腹、お家大事など、歪んで成熟した士道や武士の意地で片づけるのを否定し裏には「生身の人間の思い」があるということを描こうとしているのか。
仲代達也主演の映画 「切腹」、そしてリメイク版 「一命」を観て、二つの映画のラストが異なることから、原作はどうなっているのか気になり、この短編集を読んでみた。 6作のうち、「浪人異聞記」がその原作だが、原作は主人公の津雲半四郎の立ちまわりは、書き込んでおらず、余韻を持たせて終わっている。 ここが、...続きを読む小説と映画の描き方の差だと感じる。 この原作は、井伊家の庭先で切腹させてほしいと浪人が申し出るという 意外な冒頭から始まり、その後も謎めいた展開で、惹きつけられる。 描かれるのは、武士の生き方の理念である士道というものが、次第に硬直化して建前に堕して、形式的になり人間味を欠いている様であり、 また、安泰こそい第一という組織の論理に押しつぶされる、人間の哀しみ である。
本当に久しぶりに読む滝口さんです。 滝口さんは白石一郎、古川薫とともに西国3人衆と呼ばれた歴史小説作家さんなのですが、最近はほとんど見かけなくなりました。本屋で見つけ「滝口さんが平積みは珍しいな」と思ったら映画化されたんですね。 この本は映画化を機に新しくまとめられた傑作短編集です。 調べたら滝口さ...続きを読むんの本は10冊ほど持っているようですが、今は殆ど廃刊になっているようです。 重厚と言える作品群です。 武士の凛とした姿を清々しく描くのではなく、武士道の問題を見つめ、どこか暗く悲惨さを感じさせせる作品群で読み応えがあります。
時代小説は、難しいからあまり得意ではないが、たまに妙な大和魂にスイッチが入って買ってしまう。でも本作は短編集なのでかなり楽に読めた。 読後しばらくして島田紳助の引退会見を見た。きっとこの人の中にもなんかの侍魂のスイッチがあって、押さなきゃならない事情があったんだろうなとこの小説の事を思い出した。
以前「切腹」というビデオを観たけれど、まさか原作がコレだとは・・・! 読んでいて、あれ?これは・・・、あれ?ってなった。 竹光で腹を切らせる映像が怖ろしく印象深かった「切腹」。 はてさてリメイク版の映画「一命」はどんなもんか、気になります。 小説は短編集で読みやすかった。 佐賀や福岡が舞台の話も多...続きを読むく、馴染みも深く感じた。 淡々と武士の悲哀や覚悟を記していて、そこがまた切ない。 自分たちの時代が終わるからといって、たとえ人に笑われ、嘲られても、そこから降りるわけにはいかないんだろうなぁ。 そういう人たちの礎の上に、私たちの世の中だ成り立っているんだ。 私はそういう人間になれるだろうか・・・。 今のところ無理そうだー!
短編小説なので読みやすい! 自分の判断で恋もできない、死ぬ時期も決められないのが当たり前の時代。日本人の考え方も大きく変わってきていると思った。
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