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Posted by ブクログ
美しく、そして悲しい物語だ。
森、泉、果てしなく広がる草原。これ以上ない大自然の中に「創作者の家」があり、あらゆる芸術家がそこを訪れては楽器を演奏し、小説を書き、編み物をしては帰って行く。「僕」はそこに住み込みで創作者達のお世話係をしている。ある日、母親からはぐれて傷ついた動物が迷い込んできたのを保護し、「ブラフマン」と名付けた。そこからが僕とブラフマンの濃密な生活の始まり。僕はこよなくブラフマンを愛し、かわいがり、ブラフマンは僕を慕い甘える。寝る時は存在を確かめるように尻尾を絡め、姿が見えないと不安がる。もう可愛くて仕方がない。犬とおんなじ。でも犬じゃないんですよね。犬のように賢いけど水かきがあって水に潜れる。足が短く尻尾が太く長い‥なんだろう。最後までわからない。わからないからいいのかも。
ブラフマンはいたずらっ子で家の中をめちゃくちゃにする。僕が説教をするとき、ブラフマンは目をそらさない。僕が言葉を発するとき、目が合っていなければ、その言葉は宙をさまよって、どこにもたどり着けない、と信じている。ブラフマンの目をできるだけ長く見つめていたくて、僕はいつまでも喋っている。‥わかる〜!人間の言葉を理解しようと努める犬の顔って本当に愛おしいですからね。犬じゃないけど。
二人の関係が深ければ深いほど悲しみは増す。だってタイトルからすでにブラフマンは死ぬんだって知らされているんだから。こういうのってずるいですよね。
Posted by ブクログ
小川洋子先生。今回も小川フレグランスが
まかれまくりです。オサレな読みモノ( ´ ▽ ` )
日常の世界にファンタジーのエッセンスが、
ほんの少し振りかかっているんです、ほんの少し、それがいい。不思議の国のアリスまでのファンタジーは私には楽しめない。装画を愉しめたらめっけもんくらいです。
本作の舞台は、モノづくりをする人が
ゆっくり創作できる「創作者の家」。
主人公はそこの管理人。
この舞台が海外のヴァカンスをイメージさせて、読み手からしたら非日常な空間。
極めつけは、登場人物に名前がない。
なのに、不思議と存在感があり
読みやすいし、魅力的。
そして謎の生き物「ブラフマン」。
犬、猫ぽいですが、全く違う架空の生物。
モフモフでかわいい、
みなまで語らないことで読み手の頭の中を
ブラフマンが駆け巡るぅ!
ぴょんぴょん、スーイスーイ!
アンニュイな空気感♪(´ε` )
サラサラしたり、じっとりしてたり
小川さんの世界観を愉しむ作品でした。
ラストの淡々とした描き方はロス感が
否めませんが読後感は悪くないです。
初夏に読むのにいい作品ですね。
170ページの中編、一気読みがオススメです。
「ブラフマンの埋葬」
この小説は、人にも場所にも名前がないおとぎ話だ。年代不詳、どこかの国の、山と海と川と沼に囲まれた村。
芸術家の桃源郷「創作者の家」で管理人を務める若者の僕は、森で親とはぐれた小動物を「ブラフマン」と名付けて飼い始める。
よそ者の男とつきあう雑貨屋の娘への僕の恋心。
ひと夏が過ぎ、季節風が死の気配を運んでくる。
この得も言われず愛らしい生き物がなんという動物なのか書かれていないが、そこが限りない夢想を誘って効果的だ。
読み手に具体像を思い描かせない力があり、それがこの小説をファンタジー以上のものにしているのだ。
映像文化に押されている小説だが、この小説を読むと、今もって言葉だけに成し得る魔術がある事を再認識させられた。
ブラフマンとは何者だろう? 象徴的な解釈はいろいろあるだろうが、読み終えて、ほーっとため息をつくしかなかった。
小川洋子の小説は、いつも余韻がとりわけ素晴らしいのだ。
Posted by ブクログ
この人の文章、多分特に自分のツボなんだろうけど本当に魅力的。
小説の面白さの一つは、読み進めながら自分なりに想像を膨らませて着色していくところにあると思うけど、この作品ほど読者に想像のゆとりを設けてるものは無いように思う。
建物ひとつとっても、動物ひとつとっても、読む人によってまったく違った色形で記憶になっているような気がする。
小川洋子さんにしか書けないこの尊さというか、儚さというか、整いきった危うさはなんなんだろう。
沈むみたいに、縋るみたいに、飲み込まれるみたいに、ずうっと文章を読んでいたくなって、不思議。
今作においては、人物などの固有名詞が出てこないという世界観もてつだって、なにか物語全体に薄く靄がかかってるみたいな幻想的で、淡い、夢の中みたいな世界に浸れる。
日に当てられた古紙みたいな、薄い黄色なイメージのお話だった
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