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Posted by ブクログ
酒井駒子さんの装画が素敵すぎて衝動買い。写真と実物は異なります。奥付の日付が今年の1月だったので、どうやら新装版になったようだ。
冷たい気配が漂う短編集。
あまりにも美しいものが、時に近寄りがたい雰囲気を纏っているのと同じような感覚だろうか。
ページを捲るたびに、行間に漂っている「死」の気配がぽろぽろと零れ落ちてくる。
淡々として端正な描写の奥で、「ああ、でも最後には、きっと恐ろしい裏切りが待っているに違いない」という予感に息が詰まる。
なんだかもう、「恐ろしいものを見てしまった」、という読後感だ。
短編集だけどちびちび拾い読みをしないで、ぜひ全篇をとおして読んでほしい一冊。
このただならぬ気配と緊張感に、どっぷり浸かってみてほしい。
戻って来られなくなってしまう危険性は大いにあるが。
Posted by ブクログ
彼女の小説を読んでいると、村上春樹の小説を早回しで読んでいる感覚に陥る。似たような花が咲く短い道を散歩しているような。
年老いた叔母や母親、収容所を経験して後に亡くなったユダヤ系の祖父など、この本には家族との関係を描いた短編が多い。肉親との微妙な距離感、距離があるのに心の片隅に確固たる場所を持つ人々。読み手の無意識の感覚を言葉でなぞっていくような文章。
後ろの解説で、著者の言葉が紹介されている。「小説の中に輪郭を持った主題、しかもまやかしの主題が、くっきりと見えてくるような小説は信用できない」。まさにこの輪郭が掴めない自然な成り行きの中に、ふと読み手の無意識を目覚めさせるような何かが埋め込まれていて、でも最後までそれが掘り出せない、そんな面白さが彼女の物語にはあるような気がする。
Posted by ブクログ
意外とスルメ本だった
寝る前に気が向いたら1話2話読もうかなという風にちょろちょろ読んでたけどなかなかちょうど良かった(短編が10話入ってる作品です)
短編を結構書いてる作家さんだと「またお決まりのこのパターンね」みたいな手癖がどうしても出てくる。例えば本作に入ってる「ケーキのかけら」は「いつもかれらはどこかに」に入ってる「帯同馬」と似たテイストだ。このふたつの作品は特別好きな手癖なのでもっと味がしなくなるまでこすってほしいと内心思ってたりする(一方で他作品はちょっとパンチが弱かった気がして内容あんまり覚えてないのは内緒だよ)。
「ケーキのかけら」と「帯同馬」のどちらの話も、ものすごく見栄を張りすぎていて心も服装や周りの物までも虚構でかためたアクの強い老婆に気が弱めな主人公が付き合ってやる話だ。どう見ても老婆の暮らしぶりがハリボテ過ぎてそれが可哀想で笑えてくるけど、こういう老婆あまりにも身近にいませんか。人生のいついかなる時もなんとなく周りに存在していた気がするな。だからなんか他人事には思えないなと思う。
あとこれは万人受けするだろうなと思ったのは「森の奥で燃えるもの」ですね。SF……と呼んでいいんだろうか、身体から謎の器官を摘出されて収容施設にぶち込まれる話。
この短編集の中でなにか一作他人に勧めるならこれかな。この短編の著者が小川洋子じゃなかったらその著者の作品漁ってたなというくらい良い。これは珍しく何かしら(謎の器官)に答えがある作品だなと思う。
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