【感想・ネタバレ】刺繍する少女のレビュー

あらすじ

母がいるホスピスで僕は子供の頃高原で遊んだ少女に再会、彼女は虫を一匹一匹つぶすように刺繍をしていた――。喘息患者の私は第三火曜日に見知らぬ男に抱かれ、発作が起きる――。
宿主を見つけたら目玉を捨ててしまう寄生虫のように生きようとする女――。死、狂気、奇異が棲みついた美しくも恐ろしい十の「残酷物語」。

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Posted by ブクログ

何度目かの再読ですが、今回も面白かったです。小川洋子さんは長編も短編も大好きです。奇妙さや狂気が、どのお話からも静かに漂ってきます。時に残酷な描写でも、ひっそりと感じられます。これまで書いてこなかっただけで、「ケーキのかけら」が大好きなのを発見しました。「森の奥で燃えるもの」の、時間から離れた不思議な世界観も好きでした。「キリンの解剖」「トランジット」も好きです。最近、本格的に喘息を発症したので「第三火曜日の発作」を身近に感じます。こんなに密やかな時間は過ごしませんが…。

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2017年12月09日

Posted by ブクログ

善人として生きるのは、限界がある。誰もが両義的で、言葉にしてはいけない闇を抱えている。そういう短編集。

どれも心に強い染みを残していった。

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2017年01月14日

Posted by ブクログ

著者の作品はいくつかのジャンルに分かれると思うのですが、これは色んなタイプの話がバランスよく収録された短編集。
ちょっと不思議な感じのもの、グロテスクで残酷なもの、きれいで悲しいもの、感動的なものなど色々。
個人的には「地道な作業にひたすら専念する人の話」と「妄想癖があって少しヤバイ感じの人」の話が好きなのですがそういうのも入っています。

小川洋子さんの魅力を多角度から見ることが出来る、初めての方にもおすすめの一冊。
逆にこれを読んで好きな話が一つもなかったら、小川さんは合わないと言えるかも?

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2015年07月20日

Posted by ブクログ

酒井駒子さんの装画が素敵すぎて衝動買い。写真と実物は異なります。奥付の日付が今年の1月だったので、どうやら新装版になったようだ。

冷たい気配が漂う短編集。
あまりにも美しいものが、時に近寄りがたい雰囲気を纏っているのと同じような感覚だろうか。
ページを捲るたびに、行間に漂っている「死」の気配がぽろぽろと零れ落ちてくる。
淡々として端正な描写の奥で、「ああ、でも最後には、きっと恐ろしい裏切りが待っているに違いない」という予感に息が詰まる。
なんだかもう、「恐ろしいものを見てしまった」、という読後感だ。

短編集だけどちびちび拾い読みをしないで、ぜひ全篇をとおして読んでほしい一冊。
このただならぬ気配と緊張感に、どっぷり浸かってみてほしい。
戻って来られなくなってしまう危険性は大いにあるが。

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2014年03月10日

Posted by ブクログ

小川洋子の真髄をみた作品でした。
小川洋子作品に共通する、甘美なる残酷さ、人間の欲望がストレートにかつ、美しく描かれていました。
1つ1つの物語はさほどページ数が無いものの見事に上記の点が表れていました。
本当に美しく、残酷な物語。
秋の夜長に一人ゆっくりと味わいたい作品でした。

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2013年11月12日

Posted by ブクログ

イメージできる画がすごく鮮やかだった。
やりすぎだろと思う作品もあったけど、そういう過剰さも結局は静かに締めくくられていて心地よかった。
「ケーキのかけら」「ハウスクリーニングの世界」「トランジット」「第三火曜日の発作」が好きでした。

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2013年04月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうしてなのか分からないんだけど、急に胸をつかんでくる文章や、短編に出会う。
そういう文章には五感も鮮明に立ち表れてきて、その物語が心に住み着く、そんな感じがする。

これは〇〇をモチーフにしてるのか?と疑問符がついたまま終わる作品がいくつかあるけど、何度も読み返してわかったりするんだろうな〜
小川洋子先生の本もっと読ませてもらいます

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

10編の短編集

心がどうしようもない状態の時の私にとって特効薬、小川洋子さんの作品

溜めておいたもの(特効薬なのであえて積んでいる)を手に取りました。読み終わってもまだ落ち着かないけれどこれがなかったら私の心はどうしようもないままはず

解説にも書かれているとおり、狂気や死の物語なのに読めばその静謐さにどこか心落ち着いて惹かれるのは童話のように読めるからでしょうか、グリム童話も内容は残酷ですし…

刺繍する少女
こんな風に消えてなくなってしまいたいときもあるかな…

森の奥で燃えるもの
耳の中の奥が気になってしまうお話

ケーキのかけら
書かれた当時ならこんなアルバイト(物品整理)もあったかも。今はシステマチックになったけど情緒がなくなったなぁ

キリンの解剖
夜中の工場、入りたすぎる

トランジット
自分自身の体験を思い出しました。知らない人とずっとおしゃべりしたり(逃げ出せなかった)、上に行きたいのに上方向のエスカレータがなかったり…。

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2025年01月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小川洋子はひたすら美しく優しい物語を書くという勝手なイメージがあったので、衝撃だった。美しく優しい、のだけれど、恐ろしく奇妙でもあった。図鑑の最後は非現実では?と思った。トランジットとキリンの解剖が好き。

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2024年12月19日

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意外とスルメ本だった
寝る前に気が向いたら1話2話読もうかなという風にちょろちょろ読んでたけどなかなかちょうど良かった(短編が10話入ってる作品です)

短編を結構書いてる作家さんだと「またお決まりのこのパターンね」みたいな手癖がどうしても出てくる。例えば本作に入ってる「ケーキのかけら」は「いつもかれらはどこかに」に入ってる「帯同馬」と似たテイストだ。このふたつの作品は特別好きな手癖なのでもっと味がしなくなるまでこすってほしいと内心思ってたりする(一方で他作品はちょっとパンチが弱かった気がして内容あんまり覚えてないのは内緒だよ)。
「ケーキのかけら」と「帯同馬」のどちらの話も、ものすごく見栄を張りすぎていて心も服装や周りの物までも虚構でかためたアクの強い老婆に気が弱めな主人公が付き合ってやる話だ。どう見ても老婆の暮らしぶりがハリボテ過ぎてそれが可哀想で笑えてくるけど、こういう老婆あまりにも身近にいませんか。人生のいついかなる時もなんとなく周りに存在していた気がするな。だからなんか他人事には思えないなと思う。

あとこれは万人受けするだろうなと思ったのは「森の奥で燃えるもの」ですね。SF……と呼んでいいんだろうか、身体から謎の器官を摘出されて収容施設にぶち込まれる話。
この短編集の中でなにか一作他人に勧めるならこれかな。この短編の著者が小川洋子じゃなかったらその著者の作品漁ってたなというくらい良い。これは珍しく何かしら(謎の器官)に答えがある作品だなと思う。

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2024年07月29日

Posted by ブクログ

不思議な世界感。
ただそこに置かれている静物にも意志を感じ、時には狂気さえ見えます。
そんなところもひたすら優しい文章の中で共感してしまいます。
誰にも自分の気持ちは理解できない、ひとりの世界に漂います。

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2022年06月26日

Posted by ブクログ

1番図鑑がインパクトあった。
読み終わるとゾクゾクする。
普通の話をしていたのに、一瞬で狂気に繋がる。
口裂け女的な妖怪チックな、いきなり非現実に陥る感じに似てる気がした。

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2021年03月29日

Posted by ブクログ

「キリンの解剖」という話のわたしと守衛さんのやりとりが心地よかった。
工業地帯?をランニングするわたしの姿とそれを見守る守衛さんの画を思い浮かべながら読んだ。

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2021年03月28日

匿名

ネタバレ 購入済み

「トランジット」
 アンネの日記へのオマージュ。控えめな表現だがナチスから逃げていたユダヤ人の心象がよく表されている。
 短編集。適当にグロテスクであり、怪奇小説的なところもある。読ませる技術は上手く、村上春樹を思わせるところがある。

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2019年11月27日

Posted by ブクログ

怪談がかった話が大半の短編集。表題作なんかは」純文学なんだけど。

あいかわらず、特にこれというでもない言葉を取り上げてそこからどんどん想像して、大体の場合怖い方に持っていく小川洋子流の言葉の昇華方法が素晴らしい。

本作の場合、言葉というよりも、キリンや寄生虫というような生物が多いのだけれども。ぼろ屋の王女様なんてのは、小川洋子らしいなーというファンタジーでもある。

角川から発売されており、表紙もかわいらしくされているのは、内容も割と軽いタッチが多いのを表しているのではないかと思う。

芥川賞などと気負いせず読めるので、若い人にも勧めやすい1冊だ。

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2017年05月26日

Posted by ブクログ

【美しい孤独と死と華と虫】

小川洋子のある世界。

1日置いて解説を読んだ。そこには、本当に本書を読んだとは思えない事ばかり書いてあった。この刺繍する少女を含め本書は「残酷物語」ではない。死、狂気、奇異、恐怖などという、表面上の表現では表せない言葉がここにはある。見るだけでは読むだけでは聞くだけでは言うだけではわからない。よく冷えた生クリームのような美しさが本書にはある。多くを語る必要の無い素晴らしい作品だと思ったが、あまりにも解説が稚拙だったため追記させて頂いた。

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2016年05月16日

Posted by ブクログ

着想は桐野夏生そっくりなんだけど、仕上がりは全くの別物( ´ ▽ ` )ノ。
いつものように、ほのかな死の予兆を描いたものが多い( ´ ▽ ` )ノ。
ゼンマイの話は、もろ死後の世界の物語で、マシスンの「奇跡の輝き」みたいだった( ´ ▽ ` )ノ。
ケーキのかけらとアリアは合わせると、「サンセット大通り」みたいだね( ´ ▽ ` )ノ。
これぞ小川洋子、という短編集で、まだ彼女の世界に触れたことのない人にぜひ勧めたい一冊( ´ ▽ ` )ノ。
2015.4.14

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2015年04月14日

Posted by ブクログ

時々チラっと見える凶器がまた悲しくもなる
そんな物語が多数でした。

たんたんと語られる、なんでもないような雰囲気が大好きです。

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2015年02月15日

Posted by ブクログ

読み終わって最後のページを見たら、初版は1999年・・・もう15年も前の短編集なのですね。
小川洋子ワールド全開の短編集で、全く古さを感じない・・・と言っても15年しか経ってないか。
どれも日常のちょっとした心の隙間に、現れそうなお話。
怖いけれど、なんかわかるなあ~って感じ。

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2014年11月20日

Posted by ブクログ

どれもが冷たい美しさを持っている。現実を丹念に見つめていたら、幻想世界に迷い込んでしまったような。図鑑が一番好き。

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2014年02月11日

Posted by ブクログ

なんと美しい残酷物語。
特に「図鑑」は金井美恵子の「愛の生活」を彷彿させる。
小川洋子は、残酷な事、グロテスクな事を美しく丁寧な描写で書くのが本当に得意ですな。
今回も小川洋子ワールドに浸らせて頂きました。
トランジット、図鑑が特に好き。

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2013年10月22日

Posted by ブクログ

なんでこんなに綺麗で繊細な言葉なのに緒っとずつ怖いっていうか暗いっていうか、そんなギャップが好きなんだけれども。

どの話も世界観が大好きですが、特に「ケーキのかけら」が好き。
世にも奇妙なみたいな。定点カメラで撮影してほしい感じ。
終わり方もこう…歯がゆくて。息苦しい。

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2021年08月18日

Posted by ブクログ

『図鑑』が特に好きだった。『やさしい訴え』に近いものを感じさせる内容だった。小川洋子さんの書く女性の嫉妬の気持ちが好き。静謐な文章で淡々と綴られていく激しい感情には美しさと狂気的なものを感じる。この作品は狂気が沸騰し、目玉を取り出す奇行に走るが、やはり、美しい、と思わされてしまう。それも小川洋子さんの力量なのだと感心した。

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2024年02月26日

Posted by ブクログ

小川洋子の短編集ははじめて読んだ。「森の奥で燃えるもの」が1番好きだったかもしれない。どの短編を読んでも、小川洋子の他の作品に通じるなにかがあった。薬指の標本とか、完璧な病室とか、余白の愛とか。いささか繊細すぎ、美しすぎるがゆえに不気味さが静かに際立っていた。

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2024年02月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

不気味で残酷な話と、ただ残酷な話と、切ない話が散らばっていた。
特にアリアが印象的で、年に一度、誕生日に訪れ、贈り物専用棚に毎年1個ずつ品は増えていく。そしてお返しに叔母さんはオペラを披露する。年に1日だけだろうと、わざわざ誕生日にプレゼント片手に訪れてくれるのだから有難いのかもしれないが、叔母さんの方も人を持て成すことに慣れておらず、毎年大量の料理やデザートを用意して待ち構えている。
オペラで成功せず、化粧品売りになった叔母。
今では唯一披露するのがこの誕生日かもしれない。
「どうぞお元気で。また、来年」と帰っていく。
窓からじっと目を凝らして、彼の姿が見えなくなるまで見送る。
そして冷たくなった残った沢山の料理を前に、叔母さんは何を思うだろう。
叔母さんの交友関係の話は出ないので、この料理はどう始末されるんだろう。
誕生日祝い後の1人きりの静寂さを思うと、切なく、残酷。

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2023年10月09日

Posted by ブクログ

「刺繍ってそんなにおもしろいかい?」
ー「おもしろいかどうかは、よく分からない。一人ぼっちになりたい時、これをやるの。自分の指だけを見るの。小さな小さな針の先だけに自分を閉じ込めるの。そうしたら急に、自由になれた気分がするわ」(本文より)

短編集。題名にもなってる「刺繍する少女」がいちばんお気に入り。

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2020年06月04日

Posted by ブクログ

とても怖いはずなのに恐怖よりも違う感情が湧きあがってくる。美しすぎる作品は恐怖を薄めてしまうのだろうか。それとも誰もが隠し持っている狂気だからだろうか。不思議な作品であることは間違いない。
あらすじ(背表紙より)
これは記憶の奥深くに刺さった棘。そこから始まる、愛と死の物語――終末期を迎えた母の入院先のホスピスで、僕は12歳のひと夏を高原の別荘でともに過ごした少女と再会する。彼女はそこで刺繍をしていた。小さな針先に自分を閉じ込め、虫を一匹一匹突き刺すように――表題作ほか、日常のすぐ隣にある死、狂気、奇異を硬質な筆致で紡ぎだした、震えるほどに美しく恐ろしい十の「残酷物語」を収録。解説・飯島耕一

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2016年05月23日

Posted by ブクログ

登場人物に若い女性がいたら、きっと黒髪でロングまたはセミロングで、色が透き通るように白く、ほっそりとして、目には力がなく、表情が乏しい、怪しいおとぎ話またはホラーに出てくるような、昭和の美女じゃなかろうか。引きこまれる~。

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2015年10月08日

Posted by ブクログ

ぜんまい線の話と寄生虫図鑑の話が印象的。

ストーリーは若干取りとめもない感じがするけど、何と言っても文章が秀逸。本当に好きだ。

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2014年07月28日

Posted by ブクログ

一つ一つ、余韻の残る短編の集まった短編集。幻想的だったり、哀しかったり、官能的だったり…ふけや汗、病、傷などの、美しくはない生の痕跡が、目を逸らされることなく細かく描写されることで、独特の残酷性が生まれ、それが官能性につながっていく。

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2014年04月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ちょっと怖い内容。それでも美しい。
- 森の奥で燃えもの
- キリンの解剖
- ハウス・クリーニングの世界
この三話が特に気に入っている

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2013年09月21日

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