あらすじ
母がいるホスピスで僕は子供の頃高原で遊んだ少女に再会、彼女は虫を一匹一匹つぶすように刺繍をしていた――。喘息患者の私は第三火曜日に見知らぬ男に抱かれ、発作が起きる――。
宿主を見つけたら目玉を捨ててしまう寄生虫のように生きようとする女――。死、狂気、奇異が棲みついた美しくも恐ろしい十の「残酷物語」。
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Posted by ブクログ
どうしてなのか分からないんだけど、急に胸をつかんでくる文章や、短編に出会う。
そういう文章には五感も鮮明に立ち表れてきて、その物語が心に住み着く、そんな感じがする。
これは〇〇をモチーフにしてるのか?と疑問符がついたまま終わる作品がいくつかあるけど、何度も読み返してわかったりするんだろうな〜
小川洋子先生の本もっと読ませてもらいます
Posted by ブクログ
10編の短編集
心がどうしようもない状態の時の私にとって特効薬、小川洋子さんの作品
溜めておいたもの(特効薬なのであえて積んでいる)を手に取りました。読み終わってもまだ落ち着かないけれどこれがなかったら私の心はどうしようもないままはず
解説にも書かれているとおり、狂気や死の物語なのに読めばその静謐さにどこか心落ち着いて惹かれるのは童話のように読めるからでしょうか、グリム童話も内容は残酷ですし…
刺繍する少女
こんな風に消えてなくなってしまいたいときもあるかな…
森の奥で燃えるもの
耳の中の奥が気になってしまうお話
ケーキのかけら
書かれた当時ならこんなアルバイト(物品整理)もあったかも。今はシステマチックになったけど情緒がなくなったなぁ
キリンの解剖
夜中の工場、入りたすぎる
トランジット
自分自身の体験を思い出しました。知らない人とずっとおしゃべりしたり(逃げ出せなかった)、上に行きたいのに上方向のエスカレータがなかったり…。
Posted by ブクログ
小川洋子はひたすら美しく優しい物語を書くという勝手なイメージがあったので、衝撃だった。美しく優しい、のだけれど、恐ろしく奇妙でもあった。図鑑の最後は非現実では?と思った。トランジットとキリンの解剖が好き。
匿名
「トランジット」
アンネの日記へのオマージュ。控えめな表現だがナチスから逃げていたユダヤ人の心象がよく表されている。
短編集。適当にグロテスクであり、怪奇小説的なところもある。読ませる技術は上手く、村上春樹を思わせるところがある。
Posted by ブクログ
不気味で残酷な話と、ただ残酷な話と、切ない話が散らばっていた。
特にアリアが印象的で、年に一度、誕生日に訪れ、贈り物専用棚に毎年1個ずつ品は増えていく。そしてお返しに叔母さんはオペラを披露する。年に1日だけだろうと、わざわざ誕生日にプレゼント片手に訪れてくれるのだから有難いのかもしれないが、叔母さんの方も人を持て成すことに慣れておらず、毎年大量の料理やデザートを用意して待ち構えている。
オペラで成功せず、化粧品売りになった叔母。
今では唯一披露するのがこの誕生日かもしれない。
「どうぞお元気で。また、来年」と帰っていく。
窓からじっと目を凝らして、彼の姿が見えなくなるまで見送る。
そして冷たくなった残った沢山の料理を前に、叔母さんは何を思うだろう。
叔母さんの交友関係の話は出ないので、この料理はどう始末されるんだろう。
誕生日祝い後の1人きりの静寂さを思うと、切なく、残酷。