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CM制作者・日下(くさか)が骨董市で偶然手に入れた、古いフライフィッシング用のリールとスチール缶。その中から発見した16ミリフィルムの映像をCMに利用しようと考えた日下だったが、そのことが戦時中の封印された犯罪を暴き出し、新たな殺人を引き起こす結果に!? 第48回江戸川乱歩賞受賞作、待望の文庫化。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
すこぶるよくできた作品。 読後、解説を見て江戸川乱歩賞受賞作品と知る。受賞は伊達じゃないと納得。ミステリの面白さはもちろん、戦争の悲惨さを伝える社会性も備えており、一気に読み終えてしまった。 骨董市で売られた古い釣り道具が、戦時中の封印された犯罪を暴き出す。過去と現在を結ぶ展開は見事だった。戦争...続きを読むが生み出した狂気を、ミステリという小説の形にして読む者の心に打ち込もうという意欲を感じた。 ラスト。過去の残酷な真実が明らかとなり、しばし茫然。このラストで、過去の罪の真相について多くを語らせなかったところは特に好感が持てた。いろいろと考えさせられるところとなったからだ。 著者の誠実さが滲み出た、傑作ミステリだと思う。
ー 「1999年の改正住民基本台帳法、そして翌年国会に出された個人情報保護法案、自衛隊法改正案。すべてが法案として通過しているわけではないが、こういうのが続々と出されてくる。何やらきな臭い感じもする。見過ごしておるうちに、わしらは、国家の奴隷になってしまうかもしれん」 奴隷という言葉に、少なからず...続きを読むショックを受けた。 「歴史は、単なる過去ではない。未来のひな形だ。不平を言うだけで手をこまぬいておれば、ひな形はそのままの形で現実となる。そうなるに決まっておる。何故なら人間は愚かだからじゃ。わしだって、正真正銘の愚か者だ」 ー 戦時中の“罪”に向き合わない政治家との戦いを描いたサスペンス。 戦争を“生きた”世代がいなくなる世の中は本当に恐ろしい。特に日本は。そんなことを考えさせられる作品。
第48回江戸川乱歩賞受賞作。 CM制作者・日下が骨董市で偶然手に入れた、古いフライフィッシング用のリールとスチール缶。その中から発見した古い16ミリフィルムの映像を使い政党の広告を制作しようとする日下だが、そのことから歴史の中で蓋をされてきた事件に巻き込まれていきます。 トーマス・グラバー、長崎...続きを読むの原発、特高警察、在日外国人二世 戦争と言う狂気が生んだ事件。でも、それで済まされることなのか?戦争の歴史が忘れられ、市民が考えることをしなくなった時、狂気の歴史をまた繰り返すのではないのか?真実から目を背けようとする怠惰な生き方を戒める一冊です。
日本人が忘れてはいけない先の大戦について 取り上げられており、読み終えたときに 妙な余韻が残りました。 著者の作品は初めて読みましたが読みやすくて よかったです。内容も江戸川乱歩賞を取っただけの 事はあると思いました。
久々の推理小説だったわけですが、面白かったです! やっぱり推理小説っていいなと思えた一冊。 ストーリーの展開の速さとかもちょうど良かった。
日本の過去の罪に切り込んだ作品。過去の話とは言え、まだ生々しさが残る戦時中の問題。先の大戦を語るとき、どうしても語り手のイデオロギーが強く出てしまったり、感情的な描写が増えたりすると思うのだが、本作は極めて淡々と日本の過去を見つめていたと思う。 何をもって日本人と定義するのか、誰もわからぬままに、結...続きを読む論だけが先走る恐ろしさ。弱い者の矛先はさらに弱い者に向くという言葉に、現代日本にも通ずる闇を感じた。 良作ではあると思うが、もう少し事件に意味を持たせてほしい…と感じた。核となる事件が、あまりにもあっけなく、それを取り巻く物語の重厚さに霞んでいる印象を受けた。このあっけなさが、ある意味リアルか。
考えてみれば特別なことではない。 それまで普通に友情や交友関係を築いていた人たちが、戦争のという状況下で敵国人になってしまう。 歪んだ攻撃性は無抵抗な人たちへと向かい、それまで平和に暮らしていた同じ空間で無惨に命は奪われていく。 偶然に手に入れた1本のフィルムには、遠いけれどけっして忘れてはならない...続きを読む過去が封印されていた。 あらたに起きた殺人事件のきっかけになったものは何だったのか。 現代の事件を手がかりに過去の事件に迫っていく。 とても読みやすかったけれど、途中で展開が読めてしまった。 江戸川乱歩賞を受賞した物語・・・ハードルをあげて読んでしまったせいだろうか。 奥行きのないミステリといった思いを抱いてしまった。 ガツンとくるようなメッセージ性もなく、引き込まれるような展開があるわけでもない。 よほど他に受賞作にふさわしい作品がない回だったのか、などと余計なことを考えてしまう。 もちろん、普通に読むには十分に面白いし楽しめる物語だった。
骨董市で手に入れた古いフィルムが…ミステリーなのだが、ストーリー展開が荒過ぎる。余りの無理矢理な理由付けだな。なかなか良いアイディアだけに惜しい。登場人物の心情を書き込み、ストーリーに迫力があればな。 と、また偉そうな感想を述べてしまった…
戦争中の狂気が古いフィルムによって現代に蘇る。特高という名の狂気、親子の悲しい関係。読み終わってためいきがでた。
第48回江戸川乱歩賞。 主人公である広告代理店勤務の男が、骨董市で偶然手に入れた16mmフィルム。しかしそれを取り返そうと何者かが陰で動いている。 フィルムは、ある政治家にとって知られてはいけないものが写っていた。戦時中の“鬼畜狩り”だ。戦時中日本にいた外国人、混血児らは、敵国スパイとみなされ、日本...続きを読む産業に貢献していようが、日本国籍を持っていようが、厳しく監視され、または殺された。 グラバー邸でおなじみグラバーの子・倉場富三郎(トーマス・グラバー)、鯛生金山を経営した範多範三郎(ハンス・ハンター)などもその影響で生活が制限されていた。
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