【感想・ネタバレ】滅びのモノクロームのレビュー

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Posted by ブクログ

すこぶるよくできた作品。

読後、解説を見て江戸川乱歩賞受賞作品と知る。受賞は伊達じゃないと納得。ミステリの面白さはもちろん、戦争の悲惨さを伝える社会性も備えており、一気に読み終えてしまった。

骨董市で売られた古い釣り道具が、戦時中の封印された犯罪を暴き出す。過去と現在を結ぶ展開は見事だった。戦争が生み出した狂気を、ミステリという小説の形にして読む者の心に打ち込もうという意欲を感じた。
ラスト。過去の残酷な真実が明らかとなり、しばし茫然。このラストで、過去の罪の真相について多くを語らせなかったところは特に好感が持てた。いろいろと考えさせられるところとなったからだ。

著者の誠実さが滲み出た、傑作ミステリだと思う。

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2011年12月04日

Posted by ブクログ

ー 「1999年の改正住民基本台帳法、そして翌年国会に出された個人情報保護法案、自衛隊法改正案。すべてが法案として通過しているわけではないが、こういうのが続々と出されてくる。何やらきな臭い感じもする。見過ごしておるうちに、わしらは、国家の奴隷になってしまうかもしれん」

奴隷という言葉に、少なからずショックを受けた。

「歴史は、単なる過去ではない。未来のひな形だ。不平を言うだけで手をこまぬいておれば、ひな形はそのままの形で現実となる。そうなるに決まっておる。何故なら人間は愚かだからじゃ。わしだって、正真正銘の愚か者だ」 ー

戦時中の“罪”に向き合わない政治家との戦いを描いたサスペンス。

戦争を“生きた”世代がいなくなる世の中は本当に恐ろしい。特に日本は。そんなことを考えさせられる作品。

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2021年01月06日

Posted by ブクログ

第48回江戸川乱歩賞受賞作。
 CM制作者・日下が骨董市で偶然手に入れた、古いフライフィッシング用のリールとスチール缶。その中から発見した古い16ミリフィルムの映像を使い政党の広告を制作しようとする日下だが、そのことから歴史の中で蓋をされてきた事件に巻き込まれていきます。
 トーマス・グラバー、長崎の原発、特高警察、在日外国人二世
 戦争と言う狂気が生んだ事件。でも、それで済まされることなのか?戦争の歴史が忘れられ、市民が考えることをしなくなった時、狂気の歴史をまた繰り返すのではないのか?真実から目を背けようとする怠惰な生き方を戒める一冊です。

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2010年03月25日

Posted by ブクログ

日本人が忘れてはいけない先の大戦について
取り上げられており、読み終えたときに
妙な余韻が残りました。
著者の作品は初めて読みましたが読みやすくて
よかったです。内容も江戸川乱歩賞を取っただけの
事はあると思いました。

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2009年11月25日

Posted by ブクログ

久々の推理小説だったわけですが、面白かったです!
やっぱり推理小説っていいなと思えた一冊。
ストーリーの展開の速さとかもちょうど良かった。

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2010年01月05日

Posted by ブクログ

日本の過去の罪に切り込んだ作品。過去の話とは言え、まだ生々しさが残る戦時中の問題。先の大戦を語るとき、どうしても語り手のイデオロギーが強く出てしまったり、感情的な描写が増えたりすると思うのだが、本作は極めて淡々と日本の過去を見つめていたと思う。
何をもって日本人と定義するのか、誰もわからぬままに、結論だけが先走る恐ろしさ。弱い者の矛先はさらに弱い者に向くという言葉に、現代日本にも通ずる闇を感じた。
良作ではあると思うが、もう少し事件に意味を持たせてほしい…と感じた。核となる事件が、あまりにもあっけなく、それを取り巻く物語の重厚さに霞んでいる印象を受けた。このあっけなさが、ある意味リアルか。

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2019年11月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

滅びのモノクローム/三浦明博:第48回大賞受賞。2002年。
始まりは、長崎原爆。そして現代の仙台と日光。骨董市で高値をつけて売る出戻り女。出戻り女は由緒ある家の娘。当然売れないのだが売れた。それは売ってはならないものだった。祖父に回収を命じられる。助手にいけすかない男。そいつが自殺っぽく殺される。
出戻り女の元夫が会いに来る。来る衆院選?のため協力してほしい。はぁ?
買った男は釣り好きだから。そこに古いフィルムを発見。修復してくれる男に依頼。修復してくれた、けど行方不明に。ひとりでごはん作れない父を残してどこかに行くはずがない。
犯人は、出戻り女の元夫の祖父の隠し子。祖父はもちろん地元の権力者。戦時中の犯罪を隠すため。元特高だから。混血児の子をハダカにして走らせ撃った。死体を埋めたのは出戻り女の祖父。
釣り竿にフィルムを隠すんだよ。今は暴けないけれど、後世の誰かが見つけてくれることを願って。釣りに詳しくないから、どのように隠したかは斜め読み。
そして長崎原爆。混血の彼は自殺した。やっとつながったけど。
人が殺されるあたりから、ジェットコースター小説でじゃんじゃん読んだ。

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2019年01月02日

Posted by ブクログ

考えてみれば特別なことではない。
それまで普通に友情や交友関係を築いていた人たちが、戦争のという状況下で敵国人になってしまう。
歪んだ攻撃性は無抵抗な人たちへと向かい、それまで平和に暮らしていた同じ空間で無惨に命は奪われていく。
偶然に手に入れた1本のフィルムには、遠いけれどけっして忘れてはならない過去が封印されていた。
あらたに起きた殺人事件のきっかけになったものは何だったのか。
現代の事件を手がかりに過去の事件に迫っていく。
とても読みやすかったけれど、途中で展開が読めてしまった。
江戸川乱歩賞を受賞した物語・・・ハードルをあげて読んでしまったせいだろうか。
奥行きのないミステリといった思いを抱いてしまった。
ガツンとくるようなメッセージ性もなく、引き込まれるような展開があるわけでもない。
よほど他に受賞作にふさわしい作品がない回だったのか、などと余計なことを考えてしまう。
もちろん、普通に読むには十分に面白いし楽しめる物語だった。

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2017年03月09日

Posted by ブクログ

戦争中の狂気が古いフィルムによって現代に蘇る。特高という名の狂気、親子の悲しい関係。読み終わってためいきがでた。

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2012年07月09日

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第48回江戸川乱歩賞。
主人公である広告代理店勤務の男が、骨董市で偶然手に入れた16mmフィルム。しかしそれを取り返そうと何者かが陰で動いている。
フィルムは、ある政治家にとって知られてはいけないものが写っていた。戦時中の“鬼畜狩り”だ。戦時中日本にいた外国人、混血児らは、敵国スパイとみなされ、日本産業に貢献していようが、日本国籍を持っていようが、厳しく監視され、または殺された。
グラバー邸でおなじみグラバーの子・倉場富三郎(トーマス・グラバー)、鯛生金山を経営した範多範三郎(ハンス・ハンター)などもその影響で生活が制限されていた。

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2010年07月10日

Posted by ブクログ

 サスペンスの方に分類。とはいえサスペンスにしては全体的に緊迫感に欠ける。ミステリとしては意外性が薄く物足りないし、犯人や悪玉キャラの動機とか、造型もうすく、クライマックスはチープだった。小説の書き方はすごく手馴れた感じがするし読んでいる間はそこそこ面白いけど、それゆえに、全体的に作り物の感が否めない。「TENGU」ぐらいの筆力があるともっとよかったんだけどな……。
 でも私はこの作品は好きだ。戦争と歴史についての考え方は胸をつかれるところがあると思う。小説の「つくり」を読むべきか「なかみ」を読むべきか、それは読む人の自由だけど、この作品を書いた作者の、誠実な姿勢が見えるような気がして、(まるで論文でも書いたかのような参考文献の多さからもそれはうかがえると思うんだけど)そういう作品は、基本的に全部好きです。

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2009年11月22日

Posted by ブクログ

第48回江戸川乱歩賞受賞作品。
乱歩賞受賞作なので、ミステリーなんだろうけど、私にとっては、ミステリーと言うより、「戦争が残したもの」がどれほどの人の心に傷をつけているのか?
そんなことを考えてしまいました。
ストーリーは、ある骨董市で偶然手に入れたフィルムの映像に隠された謎を解き明かすと言うもの。
その間にいくつかの殺人はあるものの、60何年前の戦時中の日本では、当り前のように殺人が行われ、それが罪に問われない時代があったことに怖さを感じた。
ミステリーとしては、オススメってほどじゃないけど、そういう歴史の上に、今の私たちの生きている世があることは、きちんと自覚して生きていかなければいけないと、考えさせられた作品だった。

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2009年10月07日

Posted by ブクログ

ミステリーミステリーしてるミステリーです。まさに教科書通りという感じでよくできています。でもあまりに教科書通りで物足りなさも感じます。個人的には横溝正史ばりにもうちょっとグロさが欲しかったところです。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

まさに「こう来たか!」というミステリーでした。
フィルムの中に隠された真実。身内の心の闇―
読み進めると、その苦しみが伝わってくる、そんな気持ちにもさせられました。

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2009年10月04日

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