国内小説 - 集英社 - 集英社文庫作品一覧

  • 海の見える理髪店
    3.8
    主の腕に惚れて、有名俳優や政財界の大物が通いつめたという伝説の理髪店。僕はある想いを胸に、予約をいれて海辺の店を訪れるが…「海の見える理髪店」。独自の美意識を押し付ける画家の母から逃れて十六年。弟に促され実家に戻った私が見た母は…「いつか来た道」。人生に訪れる喪失と向き合い、希望を見出す人々を描く全6編。父と息子、母と娘など、儚く愛おしい家族の小説集。第155回直木賞受賞作。
  • キリングファーム
    3.0
    北海道は羊蹄山の東、支笏湖に連なる山間で競走馬を生産する風死狩牧場。起業に失敗した祐介はそこで働き始める。サラブレッドとの触れ合いに感動しながら、閉鎖された地での生活に不自然さも覚える。やがて次々と変死、失踪事件が発生。ヒグマか、怨恨か、謎が深まる。開拓時代の歴史を縦糸に、現代競馬の最先端事情を横糸に編まれゆく、人と馬との系譜。息もつかせぬ急展開、圧巻の競馬ミステリー。
  • 自由なサメと人間たちの夢
    3.8
    “さて、私は死にたい。心の底から死にたい”死に憧れ、リストカットを繰り返す女が病院で遂に決断。(「ラスト・デイ」)冴えない男が事故で手を切断。新型の義手で力を持った男は、悪者を倒す英雄に憧れ、夜の街に。すると、集団リンチの現場に遭遇し!?(「ロボット・アーム」)自堕落なキャバ嬢は、自分を変えるために憧れのサメを飼う。(「サメの話」)一行目から魅了される毒気と物語センスが炸裂する短編集。
  • 中退サークル
    -
    私立金田大学は、留年も中退もお咎めなしのおおらかな大学だ。そんな大学に通う社本勇の所属サークルは、メンバーがやめてしまうことで有名だった。そして、中退したクセの強いOBたちが部室を訪れ、お酒片手に語りまくる。そこに寝泊まりする勇は常に睡眠不足。勇がサークルで出会った後輩との初恋に浮かれる裏で、中退者たちはある画策をするのだが──。ラストまで目が離せないブラック“サークル”コメディ!
  • 雲の王(空の一族シリーズ)
    3.0
    1~2巻594~737円 (税込)
    気象台に勤務する美晴は、息子の楓大と二人暮し。ある日、自分たちが天気を「よむ」能力を持つ一族の末裔であることを知る。美晴にも天気を予知する不思議な能力が出現し、特別研究チームへの参加を任命される。それは、代々“空の一族”が担ってきた「外番」の仕事をすることを意味していた。「外番」とは、そして一族の「役割」とは一体何なのか? かつてない気象エンタメ小説、ここに開幕!
  • 大きくなる日
    4.0
    グーパーじゃんけんで人数の少ない方がコート整備をする。それが中学一年の太二が所属するテニス部のルール。ある日、太二は同級生の武藤にパーを出そうと持ち掛けられ、その結果、末永一人が負けてしまう。心にモヤモヤを抱えたまま、太二は翌日を迎えて……。(「四本のラケット」)子供も親も先生も、互いに誰かを育てている。四人家族の横山家の歩みを中心に、心の成長を描いた感動の家族小説。
  • ミチルさん、今日も上機嫌
    3.5
    45歳、職なし、バツイチ、彼氏なし。ミチルにあるのは元夫から譲られたマンションと貯金の三百万円。若くて可愛くてチヤホヤされたバブルの頃が忘れられず、そうかといって将来に不安がないわけでもない。恋愛、子供、親、仕事。あたし、これからどうするんだろう――。それでもミチルはめげずに前を向く。時代の波に翻弄されながらも懸命に今を生きる女性に贈るハートフルストーリー。
  • 小説版 サブイボマスク
    -
    人影まばらなシャッター商店街。過疎化が進み、ダムの建設予定地になると噂されている故郷・道半町に笑顔を取り戻したい熱血青年団員の春雄は、覆面レスラーだった父の形見のマスクをかぶり、商店街の真ん中で路上ライブを始める。感動で“心のトリハダ”を呼び覚ます謎のシンガー、「サブイボマスク」見参! ファンキー加藤初主演、ハートフル“自虐”コメディ映画のノベライズ。
  • 八月の青い蝶
    4.2
    【第26回小説すばる新人賞受賞作】「わしはずっと八月を、くり返してきたんじゃ」。急性骨髄性白血病で自宅療養することになった亮輔は、中学のときに広島で被爆していた。ある日、妻と娘は亮輔が大事にしている仏壇で古びた標本箱を見つける。そこには前翅の一部が欠けた小さな蝶がピンでとめられていた。それは昭和二十年八月に突然断ち切られた、彼の切なくも美しい恋を記憶する品だった。
  • 幸いは降る星のごとく
    3.0
    ときは1990年代前半、“女芸人ブーム”前夜。東京の国立大学に通う真名子は、幼なじみの貴子とお笑いコンビ「モンスーンパレス」を結成した。自らの不美人を認識しない真名子と、世間ズレしたOL志望の貴子。笑いとは縁遠い生活を送ってきた彼女たちが、なぜその世界に入り、どう生き延びていったのか。時代によって作り出された“女芸人”の先駆者となる四人の女性の悲哀と幸福を描いた長編小説。
  • ラブコメの法則
    3.5
    博多で映画評論家をしている松田杜夫、独身。見た目は悪くないくせに、彼女なし。一体なにが災いしているのか? そんな彼がシングルマザーの岩佐まち子に恋をした! 甥の裕樹をダシに使い、積極的にアプローチ。そんな中、映画の試写作品盗難事件が発覚する。その取引現場を見たかもしれない彼は、真相を探ることに――。美人でキョーレツなおばたちに振り回されながら疾走する青春恋愛小説!
  • ひゃくはち
    4.0
    地方への転勤辞令が出た青野雅人は、恋人の佐知子から意外なことを打ち明けられた。付き合い出すずっと前、高校生のときに二人は出会っていたという。彼は、甲子園の常連・京浜高校の補欠野球部員だった。記憶を辿るうち――野球漬けの毎日、試合の数々、楽しかった日々、いくつかの合コン、ある事件、そして訣別。封印したはずの過去が甦る。青春スポーツ小説に新風を注いだ渾身のデビュー作。
  • トナリの怪談
    3.5
    毎晩夢に出てくる、見知らぬ女性。夢の中で自分は彼女と幸せな恋人同士として暮らしていて――(「毎日見る夢」)。最愛の恋人の隣でほほ笑む女性の幽霊が繰り返すのは、「いつ死ぬの?」という言葉で――(「いつ死ぬの?」)。幼い頃から幽霊が見えるピン芸人が語る、日常のなかにある心霊体験の数々。今あなたの隣にいる方、足はあるし、しゃべるし……でも、幽霊かもしれませんよ?
  • 宅飲み探偵のかごんま交友録
    3.0
    1~2巻605~682円 (税込)
    大学三年生の僕こと小金井晴太は、ある春の日、憧れの先輩である清田小春に一世一代の告白をかます。玉砕覚悟の大博打は、拒否もされなければ承認もされないというなんとも中ぶらりんの結果に終わった。そして、これがあの偏屈マッチョと僕を巡りあわせるターニングポイントになってしまうわけだが……。面白さ“桜島”級の青春ミステリ。
  • 君だけに愛を
    -
    昭和の京都西陣。夏休み前夜、涼子は、北野天満宮の縁日で同級生と偶然出会った。花街で舞妓見習い中の静子で、今まで一度も話したことがない。お互い勉強が嫌いで意気投合。この夏休み、ジュリーこと沢田研二率いる大人気グループ「ザ・タイガース」メンバーの実家を探し当てよう──ささやかな計画を、涼子は静子に持ちかけた。少女たちが駆け抜けた“ひと夏の冒険”を情緒溢れる筆致で描く青春小説。
  • 人形たちの白昼夢
    4.1
    声が出なくなってしまった私は、見知らぬ相手からの招待状に誘われ、レストランを訪れる。給仕人にうながされ料理を口にすると、さまざまな情景が浮かんできて――。(「スヴニール」)荒廃した世界。空爆から身を潜め、不思議な「声」に導かれて目を開けると、自動機械人形(オート・ドール)が現れた。豪奢で美しい、暗殺用の人形に連れられて向かった先には――。(「リューズ」)『魚神』『男ともだち』の著者が贈る、リアルと幻想が溶けあうような12のショートストーリー。
  • アイドル 地下にうごめく星
    3.6
    初めて行ったアイドルのライブで、メンバーのひとりである楓に一目惚れした夏美は彼女をプロデュースすることを決める。グループの電撃解散後、夏美のアイドルユニットに入る楓、女装好きの男子でアイドルになりたい翼、訳あって天界から人の世界に来たと思っている瑞穂、容姿にコンプレックスがある愛梨……それぞれの内面を描く鮮烈さNo.1青春長編小説。
  • カイマナヒラの家
    3.8
    様々な人が共同生活を営むその家は、サーフィンに魅せられハワイイに通うぼくの滞在場所となった。夕日の浜でサムに聞いた「神様に着陸を禁じられた飛行機」の話、伝説の女性サーファー、レラ・サンの死。神話を秘めた島々ハワイイが見せてくれる、永遠に通じる一瞬と失わなければいけない時を描いた、美しい物語。この物語の登場人物はすべて架空であり作者の想像の産物であるが、家は実在した……。海と向き合う写真家・ 芝田満之撮影によるハワイイの光と波との幸福なコラボレーション。
  • バージンパンケーキ国分寺
    3.7
    女子高生のみほは、幼なじみの明日太郎が親友の久美とつきあいはじめてから、もやもやしてばかり。そんなとき、不思議なパンケーキ屋さんと出会う。くもりの日しか現れず、非処女のお客さんにだけドアベルが鳴るその店には、ポーカーフェイスな店主・まぶと、個性豊かなお客さんたちがいて──。恋と友情に悩むみほの見つけ出した答えと、お店の秘密が胸を甘く焦がす、特別なひと夏の物語。
  • 約束の地で
    3.3
    捨てたはずの故郷に戻り、父が大金を持っているとの噂に踊らされた男。呆けて我がまま放題の母と猫の世話に煮詰まっていく女。売りつけられたスクーターに乗り、愛犬と骨を掘り出してばらまく少年。好きな女の先輩を安物の車に乗せて旅立ったプー太郎。夫のDVに苦しめられ、死んだチワワの骨を抱え岬に立つ女。北海道の風土に閉ざされた人間の闇をえぐる全5話。新境地を拓いた傑作揃いの短篇集。
  • ひらひら
    3.5
    常巳22歳、腕っぷしが弱く、要領も悪い、お人好しのチンピラヤクザ。器量は悪いが、心やさしい年上の女・順子と同棲しながら、シンナー密売とパチンコでしのぐ毎日。だが、伝説の博徒・腕斬り万治さんの出所を機に、本物の男になろうと心に決める。仁義にあつく、一本筋を通す仁侠道を歩むため、常巳の悪戦苦闘が始まった――。町の片隅で必死に生きる落ちこぼれ達の姿が切なく胸に染みる物語。
  • 眠りなき夜
    4.0
    【第4回吉川英治文学新人賞受賞作】弁護士・谷の同僚、戸部が失踪、つづいて彼と関わりのあった小山民子が殺された。メモを手がかりに、谷は山形県S市に飛んだ。早速、三人組に襲われる。黒幕とみられる大物政治家・室井などの名が浮かぶ。そして戸部の惨殺体発見…。民子との間に何があったのか? 室井との関連は? 友の死を追って、谷は深い闇を解明すべく、熱い怒りを雪の街に爆発させる。第一回日本冒険小説協会大賞受賞作。
  • 愛がいない部屋
    3.5
    誰もが憧れる高層マンション。そこに住む愛子は、幸せな結婚生活を送るはずだった。しかし、ある日「愛」は暴力に変わり――(表題作)。セックスレスの夫婦生活に疲れた、うらら。彼女はマッサージ店で働く15歳年下の青年に想いを寄せるようになる。だが、突然彼にホテルへ誘われて…(「指の楽園」)。切なくて苦しい恋に悩みながらも、前を向いて歩いていく女性の姿を描いた10のラブストーリー。
  • 明るい街へ
    -
    青春の、出口のない陰と一瞬のきらめき。創造の、はてしない蒼き荒野。ひたすらにひたむきだったあの頃。限りない不安と一筋の希望に怯えていたあの頃。ハードボイルドから時代小説、そして『三国志』。北方謙三の世界のすべての萌芽がここにある。遙かなる源流に遡行して、いま蘇える、純文学デビュー作を含む、秘められた初期作品集!
  • 蠍のいる森
    4.2
    美千代は人間嫌いの図書館司書。英国人の夫と離婚して帰国した女流翻訳家、真樹子と知り合って初めて心の交流を持った。二人が共有する静かな日常に、ある日、奔放な人生をおくる修平が入り込んできた。三者三様に大都会で生きる男女のそれぞれの愛が進行するが、修平が資産家の老未亡人の財産を狙ったことから急展開し、恐怖の結末を迎える。ラブ・サスペンス。
  • 午後の音楽
    3.8
    父や母、妹との距離感がつかめなかった少女時代。夫に別の女性がいたとわかったときの喪失感や娘に与えてしまった心の傷。胸の中にそっととどめておいた様々なことを、いつのまにか打ち明けてしまっていた。音楽をふたりで奏でるように、メールで言葉を紡ぎ合う。こんなにも共鳴し合える人に出会ったことの驚きと喜び。それなのに相手は義弟、妹の夫……。メールで綴られる新たな大人の恋愛長編。
  • 遠き落日 上
    4.2
    1~2巻605円 (税込)
    【吉川英治文学賞受賞作】1876年猪苗代湖の貧農の家に生まれた野口英世は、母シカから受けついだ天性の忍耐力で肉体的なハンデを乗り越え、医学への道をめざす。周囲の援助で21歳で上京。北里研究所を経て、横浜海港検疫所、ペスト防疫のための清国行き、同郷の山内ヨネ子への恋の破綻。やがてアメリカに渡っての研究生活。若き無名時代の苦闘の日々――。人間野口英世の生命力あふれる半生を赤裸に描く伝記小説。
  • 蛇行する川のほとり
    3.7
    演劇祭の舞台装置を描くため、高校美術部の先輩、香澄の家での夏合宿に誘われた毬子。憧れの香澄と芳野からの申し出に有頂天になるが、それもつかの間だった。その家ではかつて不幸な事件があった。何か秘密を共有しているようなふたりに、毬子はだんだんと疑心暗鬼になっていく。そして忘れたはずの、あの夏の記憶がよみがえる。少女時代の残酷なほどのはかなさ、美しさを克明に描き出す。
  • 麗しき白骨
    -
    【渡辺淳一文学賞創設記念電子化!】T大医学部整形外科・藤本教授の定年退官の時期が迫っていた。絶大な権力を持つそのポストに、次に座るのは誰か――。有力候補の一人である東都大の可知教授は、実績作りのために、骨移植研究グループを発足させた。異種骨移植が上手くいけば、学会の注目を集めること必定である。動物実験もそこそこに、人体実験が開始されたが……。
  • 私小説
    -
    出家した作家・宇都木のまわりには、姉の死や裁判を受けている俳優からの電話、獄中の死刑囚からの手紙などの“事件”が相次ぐ。作家として尼僧として、誠実に対応しつつ、虚が実で実が虚の世界を書き続ける。現実の展開を小説の中に映し、自らの道をわき目もふらず独り歩きつづけた作家の、人生への愛と哲学に満ちた長編。瀬戸内寂聴が得度十年目に書いた、「亡き姉に」捧げる一冊。
  • 空き缶ユートピア
    -
    「老人による老人のための老人の有料老人ホーム」を目指し共同生活をはじめた八人の老人と老人候補。人情薄い時代の心あたたまるユートピア設立の話に、マスコミはとびついた。だが、これはマスコミ受けをねらった全くのお芝居。老人たちはもっと凄い事件を企んでいた……。ユーモアと風刺をきかせたドンデン返し。新しい共同体の夢を描いた意欲作。
  • ナルキッソスの鏡
    4.0
    女装倒錯、その美貌とあいまった孤高のナルシズムに生きる作家志望の青年。そして、殺戮をくりかえしてまでも子供たちを守ろうとする過剰な家族愛に生きる異形の大女。高原の避暑地を舞台に、それぞれの人生が交錯するとき悲劇のドラマがはじまる――。愛と憎しみに囚われた人間の2つのストーリーがモザイク模様のように絡み、展開する衝撃のサイコ・サスペンス。
  • 水に似た感情
    3.8
    人気作家・モンクは友人のミュージシャンたちとテレビの取材でバリ島を訪れる。撮影はスタートするが、モンク自身の躁鬱と、スタッフの不手際や不協和音に悩むが、呪術師を取材し超常現象を体験した後、モンクも落ち着きスタッフもまとまる。帰国したモンクは親しい友人たちを誘い再びバリを訪れるのだが。リアルに迫りくる幻想体験を通じ、なぜか読むほどに心安らぐ小説。
  • 酒気帯び車椅子
    4.0
    家族をこよなく愛する小泉は中堅の商社に勤める平凡なサラリーマン。彼は、土地売買の極秘巨大プロジェクトを立ち上げた。必死の思いで進めた仕事のメドがたったある日、計画を知るという謎の不動産屋から呼び出される。彼を待っていたのは暴力団だった。家族を狙うという脅しにも負けず敢然と立ち向かう小泉だったが……。容赦ない暴力とせつない愛が交差する中島らもの遺作バイオレンス小説。
  • 寂聴源氏塾
    4.7
    『源氏物語』の本当の主人公はプレイボーイの光源氏ではありません。藤壷、葵の上、紫の上、夕顔、朧月夜、六条の御息所、浮舟などなど、恋に生き、愛に苦しむ女君たちの心情と迷いを、作者である紫式部は描きたかったのでした――『瀬戸内源氏』を訳しきった著者ならではの解釈に充ち満ちた「千年の名作」の最高のガイドブック。
  • わたしの蜻蛉日記
    4.0
    通い婚の時代も今も、恋する女の苦悩は変わらない――。私小説の元祖といわれる『蜻蛉日記』。作家・藤原道綱母は、美と才能に恵まれながら、嫉妬深さゆえに夫・兼家や自身を追い詰めてしまう。彼女の半生記を通して、千年前の女たちの愛と性を読み解く。兼家を光源氏、道綱母を六条御息所に重ね合わせるなど、『源氏物語』を完訳した著者ならではの解釈も。古典名作の新たな魅力と出会える一冊。
  • 百年の恋
    3.7
    さえないライター稼業の真一が射止めたのは、容姿端麗、頭脳明晰、3歳年上のスーパーエリート梨香子。出会って4ヶ月で結婚はしたけれど、それこそ百年の恋もさめるような悲惨な日々がはじまる。仕事はできるけど、家事はいっさいダメな妻。妙に几帳面で生活巧者の夫。かみあわないふたりの毎日は、梨香子の妊娠で、そのキテレツぶりに拍車がかかる。逆転カップルの結婚生活を描く傑作コメディ。
  • 蝶のゆくえ
    3.9
    【第18回柴田錬三郎賞受賞作】10代で出産離婚し23歳で再婚した美加だが、新しい夫は息子にまったく無関心だった。彼女もそんな夫に同調し、いつしか虐待が始まる……。突然、夫の両親と同居することになった37歳主婦のいらだち。定年退職した直後の夫をオヤジ狩りでなぶり殺された58歳主婦の孤独。現代に生きる様々な年齢の普通の女たちを鋭く描いた傑作短編集。
  • 水中眼鏡(ゴーグル)の女
    3.6
    黒い水中眼鏡をかけた女が、精神科医の前にあらわれた。ある朝、突然目が開かなくなってしまったという。自宅で発生した火事によって夫を失ったことが原因かと思われたが――。治療が進むにつれ、驚愕の真実が浮かび上がっていく表題作ほか、難病の妻の介護人として雇われた女性が、歪んだ夫婦関係に巻き込まれていく「ペンテジレアの叫び」など。サイコサスペンスの傑作全三篇を収録。
  • 母六夜
    -
    父と子が、同時にひとりの女に魅かれ、愛憎の業のなかにあえぐ名作「沼津」、大岡文学のライトモチーフになる女性像を幻想的な世界に現出する「母六夜」ほか「焚火」「問わずがたり」「木下氏の場合」など、著者の文学世界の核心をかたちづくった傑作十三篇を収録。
  • 聖楽堂酔夢譚
    4.0
    古い木造の民家にしか見えず、表には看板もない。ほとんど誰も存在すら知らない書店。一歩踏みこめば出迎えるのは名著珍書の山。一風変わった店の名前は「聖楽堂」。祖父が書いた『清楽ひとり語り』の版元。著者が稀代の書『螺旋教典』を発見した店。――書評のようで伝記のような、伝記のようで書評のような、掟破りの意匠が冴える新小説。
  • 凍夜
    3.5
    高校卒業以来、20年ぶりの帰郷だった。鶴巻秀人、39歳、バツイチ。同窓会の懐かしい顔ぶれは、彼の中で風化していた記憶を呼び起こす。たまり場での仲間との会話、憧れの美人教師、初めて抱いた女の子のぬくもり、そして、夢。「俺、小説家になりたいんだ」。氷点下の夜、骨まで凍みる冷気に震えながらも希望に燃えていた1977年、冬、18歳の思い出――。二度と帰らぬ日々を鮮烈に描く青春小説の傑作。
  • 異形家の食卓
    3.8
    国際会議のため来日した、ゾエザル王国の外務大臣・ジュサツ。独裁国家に対する強い風当たりにもめげず、常に笑顔をたやさない彼を癒す、おぞましいストレス解消法。つぶれかけたフレンチ・レストランを救った、魅惑の食材の正体。一家団欒のテーブルで告白される、悪食の数々など、全11篇。異才が贈る、駄洒落×ホラー×グロテスクのフルコースを召し上がれ。
  • ノストラダムスと王妃 上
    3.3
    フィレンツェの富豪メディチ家のカトリーヌは、フランス王太子アンリ二世に輿入れしたものの、夫は寵妾ディアヌの虜。商家の娘と蔑まれ、子供にも恵まれず、宮廷で影の薄い存在だった。自分を守り、権力を握ろうとするカトリーヌは、預言者として評判になったノストラダムスに手をのばす。権謀術数の宮廷大河ロマン。
  • 若き日の詩人たちの肖像 上
    -
    1~2巻605~715円 (税込)
    北陸の没落した旧家から骨董を学費がわりに持って上京した少年は、その夜雪の東京の街に響く銃声、血ぬられた2・26事件に遭う。暗い夜の時代をむかえる昭和初年に目覚めた青春の詩情と若者の群像を描く長篇(第一部・第二部)。
  • 森のなかのママ
    4.0
    画家だったパパの突然の死から五年。浮き世離れしたママと、美術館に改装した家で暮らす大学生のいずみ。離れの間借り人、渋い老人の伏見に恋しているが、伏見はじめ美術館に出入りする男たちはみなママに夢中だ。ある日、放映されたパパのドキュメンタリー番組に、パパの愛人が出演していた……。なにが起ころうと否応なしに続いていく人生と渡り合うために、ママがとった意外な行動とは――。
  • 床屋さんへちょっと
    3.9
    「あたし今度、自分で店、開くんだ」。海外出張先への国際電話で娘に告げられ、宍倉勲は絶句した。就職したばかりの大手企業をすぐ辞めてしまったと思ったら、今度は何を言い出すのか――(「マスターと呼ばれた男」)。時に社長として、時にヒラ社員として、誠実に働き続けてきた男。彼と娘との関係、家族の歴史を時をさかのぼりながら描く連作長編。
  • 義珍の拳(琉球空手シリーズ)
    4.3
    時は明治。琉球の下級士族の家に生まれた富名腰義珍は、生来の病弱を克服するために門外不出の秘伝であった唐手を学びはじめる。ひたすら同じ型を練り続ける日々の中で義珍の心身は強靱になり、修行にのめり込んでいく。そして時は移り、教育者となった義珍は、唐手を青少年の育成に役立て、古伝の精神を本土に普及させることを決意する。琉球秘伝の「唐手」を極め、本土に「空手」を伝えた男の生涯。
  • バナールな現象
    4.5
    1991年1月17日、湾岸戦争が始まった。砂漠の戦場から遠く離れた東京の郊外で、妻の出産を待つ大学講師・木苺の凡庸な日常に突然、暗黒の陥穽が口を開く。モーセのトーラー、鴉、理不尽な暴力の予感、そして改竄される歴史。様々な謎が顕在し、現実は虚構に侵蝕されてゆく。あの日を境にして世界は変わってしまったのか? 21世紀の今日に鮮烈に屹立する、戦争と狂気の時代を黙示した問題作。
  • 千年樹
    3.5
    東下りの国司が襲われ、妻子と山中を逃げる。そこへ、くすの実が落ちて――。いじめに遭う中学生の雅也が巨樹の下で……「萌芽」。園児たちが、木の下にタイムカプセルを埋めようとして見つけたガラス瓶。そこに秘められた戦争の悲劇「瓶詰の約束」。祖母が戦時中に受け取った手紙に孫娘は…「バァバの石段」など。人間たちの木をめぐるドラマが、時代を超えて交錯し、切なさが胸に迫る連作短編集。
  • モビィ・ドール
    4.0
    東京から南へ二百二十キロ。太平洋に浮かぶ巌倉島は、イルカの棲む島として知られている。平和なこの小島で、動物行動学者・比嘉涼子は環境保護NPOの一員として、イルカの生態調査に従事していた。だがその平穏な日々は、突然出現したシャチの群に破られる。島のイルカたちを救うために、一頭のシャチ=モビィ・ドールへの追跡が始まった……。海に生きる生命を鮮やかに描く海洋小説の傑作。
  • 山背郷
    3.8
    「山背」とは初夏の東北地方に吹く冷たい風のことをいう。その山背が渡る大地で様々な厳しい営みを続け、誇り高く生きる男たち。マタギ、漁師、川船乗り、潜水夫……。大自然と共生し、時に対峙しながら、愛する家族のために闘う彼らの肖像を鮮やかに描き、現代人が忘れかけた「生」の豊饒さと力強さを謳う九編の物語。作家の原点が凝縮された傑作短編集。
  • 春のソナタ
    3.9
    聡明で、魅力的な表情の女性だ――17歳の直樹が年上の早苗に抱いた第一印象である。高校生のバイオリニストの直樹は、音楽を愛しながらも、ピアニストの父と同じ道を進むことをためらう。そんなある時、美貌の早苗に出会った。その時から彼の生活に明らかな変化が起きる。高校生の愛と自立、人生の試練を流麗に描く青春小説。
  • 婚約者
    -
    平穏無事な日常の少し外れたところには間違いなく不幸の嵐が吹いている。婚約した彼に中年の女性がいることを知った由美子、妻ある男と関係をもつ伊佐子、夫の先妻からの電話に心を乱す加代子、社長の囲われ者になっている章子……。孤独な影を曳きずりながら、幸せと不幸の間に、自ら身を添わせ、納得して生きる女たちを華麗な筆で描く8編。
  • 金の糸・銀の糸
    -
    民子と加奈子は評判の美人姉妹。彼女たちを囲む青年の中から、一雄は強引に民子にプロポーズし、二人は仲を深めていった。だが、一雄が泥酔のあげく突然一方的に婚約解消を宣言した。北国の城下町を背景に、明るくみずみずしい生命力にあふれる恋愛を、カラリとした性描写をまじえて描いて、若者たちの新しいモラルを問う長編。
  • 桜雨
    3.5
    【島清恋愛文学賞受賞作】東京の小出版社に勤める額田彩子は、幻想絵画集の出版準備をすすめる中、一枚の絵に出会った。闇の中を渦巻いて立ちのぼる朱色の炎、火の粉と共に乱舞する桜の花びら、描かれたふたりの女――。絵に魅せられ、その謎を追う彩子の前に、当時を知るひとりの老女が現れる。戦前の芸術村・池袋モンパルナスで生きた放縦な画家・西游と、彼を愛した早夜と美紗江の凄絶な日々。島清恋愛文学賞受賞作。
  • 翼はいつまでも
    4.4
    【第17回坪田譲治文学賞受賞作】青森県の中学三年生、神山は補欠の野球部員、平凡な生徒だ。ある日、米軍放送で聴いたビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」が彼を変えた。聞き覚えてクラスで歌い、彼はクラスで認められた。多恵からも声をかけられ初恋の思いを抱く。夏休み、さまざまなトラブルが彼を襲う。でも彼には仲間がいるし、ビートルズがくれた勇気もある。「本の雑誌が選ぶ2001年度ベスト1」「第17回坪田譲治文学賞」受賞。
  • 黒い船渠
    -
    超大型タンカーの建造計画がユニオン社から発表され、造船界は争奪戦の火蓋を切った。受注のカギをにぎる造船工学の権威、的野博士が突然謎の死をとげ、設計図が紛失する。企業の存続を賭けた暗闘は、幻の産業スパイ“香港グループ”の介入にまで発展し……。複雑に絡みあった造船界の謎を、鬼才・梶山季之がつぎつぎと暴く傑作サスペンス。
  • 火の曳航
    -
    「僕のヌードモデルになって下さい!」思いきって声をかけると、匂いたつように美しい人妻は、意外にもすんなりと承諾してくれた。そして撮影の日、レンズから覗いた彼女は……。若いカメラマンが体験する不思議な性を描いた「聖・スキャンダル」ほか、強烈なエロチシズムに満ちた推理タッチのスリリングな傑作短編集。
  • 光

    3.6
    島で暮らす中学生の信之は、同級生の美花と付き合っている。ある日、島を大災害が襲い、信之と美花、幼なじみの輔、そして数人の大人だけが生き残る。島での最後の夜、信之は美花を守るため、ある罪を犯し、それは二人だけの秘密になった。それから二十年。妻子とともに暮らしている信之の前に輔が現れ、過去の事件の真相を仄めかす。信之は、美花を再び守ろうとするが――。渾身の長編小説。
  • ちいろば先生物語(上)
    3.5
    1~2巻605円 (税込)
    雨天の日には、履く靴も、さす傘もなく、弟妹たちは学校を休まねばならぬ状態であることを、榎本保郎は百も承知だった。が、何としても同志社の神学部に進みたかった。結局は家族を真の意味で幸せにできると、固く信じた。イエスを乗せ、命ずるがままに行く小さなロバのようになりたいと決意した――。熱血牧師の生涯を描く。
  • 裁きの家
    3.6
    憩いの場でも許し合う場でもなく、エゴの衝突する裁きの場――現代の家庭とは何か。北都札幌を舞台に兄弟二人組の夫婦とその家族の内に渦巻く愛憎織りなす人間模様。愛の絆を喪失した現代人の孤独な内奥と原罪をつき、家庭のあり方を問いかける話題作。
  • 女の足音
    -
    前家元夫人の姑、明日香流に君臨する夫、舞踊の世界に身を置いて、裏方と忍従をしいられる木綿子。寂寥の日々にふとしのびよる若いパイロット小松雅志のおもかげに、木綿子の心はみだれる。人妻ゆえに、真実の愛を知っても、はぐくむすべなく身を灼く木綿子。因襲の世界にすむ女の愛の苦悩を流麗にくりひろげる平岩文学の傑作。
  • どさんこ大将(上)
    -
    1~2巻605円 (税込)
    男はこう闘うんだ! 北海道日高山麗に、ひとりの怪童があらわれた。姓は山丸、名は常義。幼い頃から比類のない腕力と闘争心、統率力で大人たちからも一目置かれる少年だった。ケンカ、仕事、女……。あらゆる男の闘いに裸一貫、腕と度胸で立ち向う北海道の怪男児の凄絶な生きざまを描く熱血冒険小説。
  • 女たちは泥棒
    -
    フランス料理店“リトリート”のオーナーは、堂島といういぶし銀のようなシブーイ男。本業は貴金属商で、都内にいくつも店を持ち、業界ではかなりの大物だった。その彼のもとに、若くてハンサムな谷本修一が、時折ふらりと現れるが、いつも心憎いほどイイ女が寄り添っていた。……なにやらいわくありそうな彼等こそ盗みのプロフェッショナル。それもケタ外れの泥棒たちだった。彼等の華麗な冒険を描く痛快ピカレスクロマン。
  • 昭和悪女伝
    -
    特殊慰安施設協会(RAA)――太平洋戦争直後、進駐軍兵士の性の処理のため作られた施設である。日本女性の貞操を守る、という理由で、ダンサーや事務員の名目を使い若い女性を募集した。華やかな銀座のクラブのマダムたちにも、この施設の出身者がいたのだ。伝説的なママ、津島映子を中心に、自らの知恵と肢体を武器に生き抜く女たちの物話。
  • ショートソング
    3.9
    ハーフの美男子なのに内気で、いまだチェリーボーイの大学生、克夫。憧れの先輩、舞子にデートに誘われたが、連れていかれたのはなんと短歌の会!? しかも舞子のそばには、メガネの似合うプレイボーイ、天才歌人の伊賀がいた。そして、彼らの騒々しい日々が始まった――。カフェの街、吉祥寺を舞台に、克夫と伊賀、2つの視点で描かれる青春ストーリー。人気歌人による初の長編小説。
  • 夜

    3.5
    「また、来るよ」そう言い残して父は女を作って家を出て行った。父親の「男」としての一面を垣間見て、戸惑いを覚える加那子だったが、次第にその存在は遠くなっていった。そんなある日、父危篤の報せが届き――(「暮色」)。女の視点から男を捉え、浮気、略奪、同性愛などの様々な愛の形に秘められた、男の存在の曖昧さを浮き彫りにした、著者の新境地。男と女の不条理を描く五つの物語。
  • 王妃の館 上
    3.8
    1~2巻605円 (税込)
    パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、ルイ十四世が寵姫のために建てたという「王妃の館」。今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて……。ぶっちぎりの笑いと涙満載の傑作人情巨編。
  • 東京物語
    3.6
    1978年4月。18歳の久雄は、エリック・クラプトンもトム・ウェイツも素通りする退屈な町を飛び出し、上京する。キャンディーズ解散、ジョン・レノン殺害、幻の名古屋オリンピック、ベルリンの壁崩壊……。バブル景気に向かう時代の波にもまれ、戸惑いながらも少しずつ大人になっていく久雄。。80年代の東京を舞台に、誰もが通り過ぎてきた「あの頃」を鮮やかに描きだす、まぶしくて切ない青春グラフィティ。
  • ららのいた夏
    3.7
    ふたりの出会いはマラソン大会で走っている最中だった。小杉純也はプロをめざす高校球児。坂本ららは走ることと笑うことが大好きな高校生。ららは運動会から始まって、ロードレース、駅伝、フルマラソンと、次々に記録を塗り変えてしまう。オリンピックすらも視野に入ってきた。純也もスカウトの目に留まって、プロ野球の選手としてデビューした。涼風のようなふたりの恋。すがすがしい青春長編ラブストーリー。
  • ドラキュラ記念吸血鬼フェスティバル(吸血鬼はお年ごろシリーズ)
    4.0
    とある企業の記念イベントに出演予定のゲストが不祥事で逮捕され、あわや中止に。急遽変更されたテーマ〈ドラキュラ生誕五百年〉に合わせ、企業の取引先〈クロロック商会〉の雇われ社長にして「正統な」吸血鬼のフォン・クロロックに出演依頼が舞い込むが、クロロックは依頼主とドラキュラの知り合いではないらしく……。おまけにこのイベント、どこか訳ありで!? 表題作ほか、うだつのあがらないサラリーマンの口座に突然二億八千万円が振り込まれ…(「吸血鬼の給与明細」)、観光バスのツアー中、乗員乗客全員が謎の眠気に襲われてしまい…(「吸血鬼の迷路旅行」)の2編を収録!
  • 出世払い おやこ相談屋雑記帳
    3.5
    1~2巻616~660円 (税込)
    招き猫が招く手、右左の違いとは?(「猫は招く」)。気の合う相談客と盛り上がって帰宅した信吾が犯した大失敗(「山に帰る」)。いつも声を掛けてくる老婆のある変化の理由(「サトの話」)など、盛りだくさんの全5話を収録。大病からの生還を機に動物と話せる力を持った信吾と妻の波乃が営む相談屋と将棋会所のにぎやかな日常を舞台にした、笑いあり涙ありの人情物語。「めおと相談屋」の看板が「おやこ相談屋」に掛け替えられて、お馴染み青春時代小説の新シリーズ開幕!
  • 鉞ばばあと孫娘貸金始末
    3.5
    1~2巻616円 (税込)
    お鈴は七歳のときに火事で両親を亡くし、貸金業を営んでいる祖母お絹に引き取られた。今は一日も早く独立して暮らしたいと思いつつ看板描きの仕事をしながら、祖母の集金を手伝っている。ある日、袋物屋の茂兵衛が返済を延ばして欲しいと頼みにきた。お絹は鉞を握り、覚悟してお借りと言ったはずと断る。帰宅した茂兵衛は首を括って死んだ。だが、お絹は殺しだといい、お鈴が様子を探ることに……。命懸けで金を貸す江戸最強の意地悪ばばあとお転婆孫娘の痛快事件帖!
  • その扉をたたく音
    3.9
    ミュージシャンの夢を捨てきれず、親からの仕送りで怠惰に暮らす、29歳無職の宮路。ある日、余興の時間にギターの弾き語りをするために訪れた老人ホーム・そよかぜ荘で、神がかったサックスの音色を耳にする。演奏していたのは年下の介護士・渡部だった。「いた、天才が。あの音はきっと、俺を今いる場所から引っ張り出してくれる」――神様に出会った興奮に突き動かされ、ホームに通うようになった宮路は「ぼんくら」と呼ばれながらも、入居者たちと親しくなっていく。人生の行き止まりで立ちすくんでいる青年と、人生の最終コーナーに差し掛かった大人たちが奏でる感動長編!
  • 梟の一族
    4.1
    1~3巻616~858円 (税込)
    梟の一族――。誰ともなくそう呼びならわされた限界集落で身を隠すように生活している住民たちには秘密があった。彼らは眠らないことに加えて、生まれつき常人離れした身体能力を保有しているのだ。それゆえに歴史の影で大きな役割を果たしてきた。榊史奈は一族の末裔中、唯一の十代として期待を一身に背負いながら平和に暮らしていた。集落が何者かにより襲撃され、一名が死亡し、その他全員が彼女を残して消えてしまうまでは……。敵の目的とは一体何なのか? 単身で逃亡生活に追いやられた史奈は一族の生存を信じて、また己のルーツに関する真実を知るため、戦い続ける。サイエンス×忍者エンターテインメント。
  • 雨あがり お江戸縁切り帖
    4.2
    1~4巻616~693円 (税込)
    明暦の大火が江戸を焼いて、一年が経った。人々の生活は未だ落ち着かないままだ。糸はひとり長屋で暮らしていたが、縁切りの手紙を代書する依頼を勢いに負けて引き受けてしまう。浮気亭主との別れ、悪友との絶縁、愛し憧れた役者との別離、親子の決別……「縁切り屋」として立ち会った様々な別れがもたらすのは不思議と涙だけではなかった。あたたかな別れを描いた時代連作短編シリーズ第一弾!
  • 吸血鬼心中物語(吸血鬼はお年ごろシリーズ)
    -
    吸血鬼フォン・クロロックに講演依頼!? とある大学の〈怪奇映画愛好会〉から講演を依頼され、正統な吸血鬼として大ハリキリのフォン・クロロック。一方で〈愛好会〉の大学生カップルはある晩、びしょ濡れの謎の女に遭遇し……!? 奇妙な心中事件解決のため、クロロックとエリカのおなじみ吸血鬼父娘が立ち上がる!! 表題作ほか、「吸血鬼たちの休暇旅行」「吸血鬼は今日も睡眠不足」の2編を収録。ロングランシリーズ、第29弾!
  • 帝都妖怪ロマンチカ ~猫又にマタタビ~
    3.0
    1~3巻616~649円 (税込)
    昭和初期の東京。浅草の片隅の見世物小屋でひっそりと暮らす猫又の弐矢は、むかし愛した女に瓜二つの美貌の持ち主を見つける。その青年・嘉寿哉の家に居候することに成功した弐矢だが、心理学を研究しオカルトを糾弾しようとする嘉寿哉の周りには何故か妖怪たちが引き寄せられてくる。愛しい彼を守るべく、弐矢は奮闘するが……。欲望渦巻く帝都で暗躍する、妖しくも美しい妖怪たちの物語。
  • 吸血鬼と呪いの古城(吸血鬼はお年ごろシリーズ)
    3.0
    温泉旅行に出かけたエリカたち仲良し三人組。安さで選んだバスツアーはTVドラマで人気が出た戦国武将・武藤宗正ゆかりの地を訪れる内容で、「ムネちゃん」ファンでいっぱい。プレハブの「新築の古城」(?)に呆れるエリカだが、お城の裏の古井戸から時空を超えたうめき声が聞こえ……!? 表題作ほか、「吸血鬼も夢をみる」「吸血鬼と揺れる大地」の2編を収録。ロングランシリーズ新装版、第28弾! 正義の吸血鬼父娘が今日も事件を華麗に解決!!
  • 朱華姫の御召人 上 かくて愛しき、ニセモノ巫女
    3.9
    1~2巻616円 (税込)
    「あなたがあの御方の娘だということは、絶対に誰にも知られてはいけないの。けして見つからないように生きなさい。帝の宮に近づいてはだめ。あそこはとてもおそろしいところだから」――母との約束で、先帝の血を引いていることを隠して暮らしている蛍。伯父の家で下働き同然に扱われていたが、ある日、奥の神に仕える巫女・朱華姫に選ばれる。朱華姫は帝の宮に住み、第二皇子が御召人となって世話をし、護衛するものらしい。冷ややかな美貌の皇子・柊にかしずかれる慣れない生活に戸惑う蛍だが、予想もしない秘密と向き合うことになり……。「後宮の烏」の原点!
  • ホラー作家八街七瀬の、伝奇小説事件簿
    3.8
    出版社で働く大和は、売れっ子ホラー小説家で高校時代の同級生の美女・八街七瀬の担当編集者として、ドSな彼女に振り回される日々を送っている。七瀬のもとに節分祭に関する不思議な体験談が書かれたファンレターが届き、二人は現地取材に行くことに。観光客を装うものの、集落の住人たちにはなぜか強く警戒されてしまい……。集落に伝わる「姿を見てはいけない神様」の恐るべき秘密とは!?
  • DEVIL'S DOOR
    3.0
    「マニピュレイテッド」と呼ばれる人型AIが自由に往来する近未来。自由都市サン・ハドクには、人とマニピュレイテッドと、そして悪魔が生きている。近年、悪魔が仕業の事件が多発し、一方で、人間によるマニピュレイテッド狩りが横行していた。マニピュレイテッドの射撃手・ユマは、聖書型の悪魔アグリとともに、悪魔祓いを生業としている。ある日、二人のもとにシオリという女性シンガーの護衛依頼が舞い込み……。人の心を理解し始めるAIと、人の魂を堕落せさようとする悪魔…二人の冒険が始まる!
  • 金の角持つ子どもたち
    4.5
    「サッカーをやめて、塾に通いたい」小6になる俊介は、突然、両親にそう打ち明ける。日本最難関と言われる中学を受験したいのだ、と。難聴の妹・美音の小学校入学を控え、家計も厳しい中、息子の夢を応援することを両親は決意。俊介の塾通いが始まる。だが、彼には誰にも言えない“秘密”があって……。人は挑むことで自分を変えることができる。未来を切り開こうと奮闘する人々を描く、感動の長編小説。
  • カモフラージュ
    3.7
    いつもより荷物の重い日が好きだ。 お昼の弁当に加えても、もう二つ、夜に彼と食べる用の弁当を作る。食べる場所は決まって“ホテル”で ──「ハンドメイド」。僕のお父さんは一人じゃない。お父さんの後ろには、真っ白な顔のお父さんたちが並んでいる ──「ジャム」。恋愛からホラーまで、松井玲奈が見つめる“人間模様”を描く、鮮烈なデビュー短編集が待望の文庫化。単行本収録作品6編に文庫書下ろしの「オレンジの片割れ」を加えた全7編を収録。
  • 会津 友の墓標(十津川警部シリーズ)
    -
    東京荒川河川敷で、車のトランクからK出版編集者・佐伯隆太の死体が発見された。被害者は、大学ヨット部の仲間だった十津川警部に、最後の手紙を送っていた。同じ大学の旧友・折戸修平に会うため、会津若松に行くと書かれていたのだが……。捜査を開始した十津川は、亀井刑事と会津若松へ向かう。友情か裏切りか、歴史と怨念が複雑に絡み合った殺人事件の真相とは!? 傑作長編トラベルミステリー。
  • 二度目の過去は君のいない未来
    3.0
    二十九歳の高校教師・兼祐は仕事がうまくいかず、七歳年下の妻・陽子との喧嘩も増えるばかり。結婚一年目の記念日に、二人は自殺寸前の生徒を助けようとして、電車に轢かれそうになり――気がつけば、大人の記憶を持ったまま、十年前の世界に戻っていた。兼祐は大学一年生、陽子は小学六年生。悩みながらも“二度目の過去”をやり直す二人が最後に選びとった“未来”とは。明日への道標となる物語。
  • たとえ君の手をはなしても
    3.5
    青山透、高校二年生。地味で陰気な彼には、匿名で犯罪捜査に協力する別の顔があった。2年前に起きた凄惨な立てこもり事件で、透の姉・光は命を奪われた。事件の裏側に、犯人をそそのかした黒幕の存在があると知った透は、黒幕の正体を探るため、危険な捜査協力をしているのだが――。小説投稿サイト「エブリスタ」の人気作品が、大幅改稿で書籍化。スリリングなサスペンスアクション!
  • 木もれ日を縫う
    4.3
    ファッション業界で働く紬の前に、長らく行方不明だった母親の文子が姿を現した。紬の部屋で暮らし始めた母は自身を「山姥になった」と言い、面影にもどこか違和感がある。困惑する紬は、同じく故郷を離れ東京で暮らす二人の姉に相談するが――。20代、30代、40代。それぞれの年代の三姉妹は、母との再会をきっかけに、自分自身を見つめ直すことになる。母と娘の絆を描く、心に染みるミステリー。
  • 星に願いを、そして手を。
    3.6
    中学三年の祐人は、いつも薫、理奈、春樹とプラネタリウムのある科学館で過ごしていた。宇宙に憧れる四人は似た夢を持ち、同じ高校に進む。だが、月日が経ち、祐人は逃げた。夢を諦めて町役場で働く彼は科学館を避け、幼馴染の三人をも避け続ける。ところが、館長の訃報を受けて三人に会うことに。そこで科学館の閉鎖を知り…。瑞々しい筆致で描かれる青春群像劇。第29回小説すばる新人賞受賞作。
  • ニューカルマ
    4.0
    人生や社会を豊かにすると喧伝するネットワークビジネス。ある日大学時代の友人から突然かかってきた電話で勧誘されたユウキ。今、彼の勤める会社ではリストラが始まり不安な気持ちが膨らんできていた。そんな状況の中、副業のつもりで入会し、順調に会員を増やしていき、次第にそのビジネスにのめり込んでいくものの、周囲からは冷ややかな目で見られるように。そして思ってもみない落とし穴に嵌まり──。
  • 水銀虫
    3.6
    17歳を目前に自殺した姉。明るく優しい性格で、直前までそんな素振りはなかったのに、なぜ…背後には、死神のような女生徒の姿があった(「はだれの日」)。孫を交通事故で亡くした祖母。断ち切れない愛情と悲しみが、孫の幼友だちをおぞましい事件に巻き込む(「虎落の日」)。惨劇の陰には、人の心を蝕む「水銀虫」の存在が。取りつかれ、罪を犯した人々の、悪夢のような一日を描いたホラー短編集。
  • 桜のような僕の恋人
    4.7
    美容師の美咲に恋をした晴人。彼女に認めてもらいたい一心で、一度は諦めたカメラマンの夢を再び目指すことに。そんな晴人に美咲も惹かれ、やがて二人は恋人同士になる。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。美咲は、人の何十倍もの早さで年老いる難病を発症してしまったのだった。老婆になっていく姿を晴人にだけは見せたくないと悩む美咲は……。桜のように儚く美しい恋の物語。
  • リケコイ。
    3.0
    恋愛経験ゼロ。冴えない理系大学院生の森は、ある日突然恋に落ちた。相手は、卒業研究をするためにきた、黒髪メガネの年下リケジョ・羽生さん。ところが、好みド直球な彼女にはある重大な秘密が! 妄想と現実に身悶えながら、あの手この手でアプローチを仕掛けるが、ひたすら空回り。それでも諦めきれない……。どこまでも不器用で、思わず応援したくなる、歯がゆさ満載の青春ストーリー!
  • 弾丸スタントヒーローズ
    3.0
    千鶴は冴えない大学二年生。ある日、父から「双子の嗣美が怪我をした」という突然の連絡が。駆けつけた先は、なんと映画の撮影現場だった。そこで美作という女性スタントマンに出会った千鶴は、成り行きでスタント・チームに所属することになる――。幼い頃の火事の記憶、母親との葛藤、姉妹の確執を乗りこえて成長していく、一人の女性の物語。共感と感動と癒しの青春×家族×お仕事小説!
  • 失踪(鶴見京介弁護士シリーズ)
    3.0
    鶴見弁護士の中学の恩師夏川が、札幌から上京した。城巡りが趣味の夏川は、雲海に浮かぶ城として有名な竹田城へ行く予定だという。数日後、神戸から竹田城へ向かった夏川が、忽然と消えたと連絡が入る。事故か事件か、恩師の安否を心配し鶴見は竹田城へ。やがて、教育熱心で生徒に慕われた男が抱えた暗い秘密を突き止めるが……。驚愕の真実を前に若き弁護士が下した決断とは?
  • オズの世界
    3.9
    配属先はローカル遊園地!? ディズニーランドで働く夢に破れ、二度と遊園地には行かないと心に決めた久瑠美。失意のうちにホテルへの入社を決めた彼女が命じられたのは、グループ傘下にあたる九州の遊園地での勤務だった。理想と現実のギャップに不満だらけの久瑠美、しかしそこでは更なる試練が待ち受けていた――。遊園地の知られざる裏側と不慣れな地で奮闘する新米社員を描くお仕事小説。
  • ギンカムロ
    3.9
    花火には、二つしかない。一瞬で消えるか、永遠に残るか。幼い頃、花火工場の爆発事故で両親を亡くした昇一は、高校を卒業後、一人東京で暮らしていた。ある日、祖父から電話があり、四年ぶりに帰郷する。そこには花火職人として修業中の風間絢がいた。十二年前に不幸な出来事が重なった。それぞれが様々な思いを抱え、苦しみ、悩み、葛藤していく。花火に託された思いとは――。希望と再生の物語。
  • 残り全部バケーション
    4.1
    当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯電話の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに――。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。
  • ジヴェルニーの食卓
    4.2
    ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシュがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が映っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)新しい美を求め、時代を切り拓いた芸術家の人生が色鮮やかに蘇る。マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌら印象派たちの、葛藤と作品への真摯な姿を描いた四つの物語。

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