なかなか手をつけられなかった一冊
同業者として「ツッコミどころ」を見つけてしまうのが嫌だったから
「動物のお医者さん」で味わった嫌な感じ
物語りとしては面白くてもリアルでは違うということが多々ある…医療ドラマで「嘘つけ」というヤツと同じ…変な理想論とかイメージが先行するヤツ
ようやく重い腰を上げて読み出したら…止まらなかった…久しぶりに一気読み…気づいたら深夜2時だった
「とわの庭」でも感じたが、藤岡さんの作品には色々な女性像が登場するも、一貫して生き方に芯があり迷いながらも前進しようと足掻く姿にも温かな視線を感じられる…人を憎んだり恨んだりしても不思議ではない過酷な状況で育ちながらも、その環境から抜け出し自分の居場所を求めて努力する人の姿…それが描かれていて、取り巻く人々との出会いや別れが真っ直ぐに表現されている
「とわの庭」も鮮烈な印象が残ったけれど、この作品も同じように、多分、記憶に焼きついて忘れられない情景を残してくれたと思う
危惧していた先入観は、結局のところ杞憂だった
多分、とても良く取材をされたのだろう
獣医学部の学生の日常やカリキュラム、解剖や牧場の実習の様子、そして何より臨床の場での獣医のリアルが描かれていたと思う
助けるばかりではない、、、そのリアルが
特に自死をした獣医師の件は…切なかった
感染症に罹患した鶏や豚など…殺処分するニュースをよく耳にすると思う
それらを行う人々の中には勿論、獣医師もいる
馬だけでなく、牛だけでなく…日々、人間が口にする肉は全て獣医師が検閲をして、食の安全を担保している
本来、動物が好き(勿論、それだけでできる仕事ではない)な人間が、その対象を自分の手で殺めなければならない…しかも、一度ではなく何度も、大量に…
その精神の軋轢が時として襲いかかり、物語りの中の彼のように病んでゆくことが、実はとても多いのだ
そういった負の一面にも正直に触れていて…ちゃんとされているな、と感じた
何事にも明と暗はある…
毎日のように命の始まりと終わりの狭間で生きる彼ら彼女らに求められる強い精神力は、学生の頃からの、いや、もっともっと前からの鍛錬と倫理の熟考によって成されるもので、一朝一夕に成り立つものではない
国試に合格し、獣医師として歩き出した聡里の6年後が描かれているけれど、その先も見たいなぁ…と思う
チドリさんという名の祖母の、とても凛とした生き方に憧れる…自分もこんなふうに生き、旅立ちたいと思った…そして、対照的に描かれる「嫌な女」も…
あからさまに継母のエゴを体現している義母や、嫉妬を煽るような先輩の女性(聡里は気づいてないのかな)…あー、やだなー、でもいるよね、こーゆーの、と思わせる、、、ありがちな女性もいて、対比が見事だなぁと思わせる、、、嫌いだけどね、笑
聡里さんには幸せになってほしいな