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Posted by ブクログ
昭和の東北を舞台にした短編集。
「少しでも早く先を読み進めたい」とここまで思わせてくれた本は久しぶり。東北の田舎ではある意味当たり前だった”生活文化”を丹念に理解した上で、そんな生活者の一人である登場人物の想いを、派手ではないが丁寧な話の流れで描き、ほっこりとした感動短編や、ちょっと切ない短編として仕上げている。
「想いはあっても、あまりそれを表に出したがらない」東北の人によく見られる考え方も含め、東北出身のこの作者でないと描けない素朴でいて情動的な人物描写が秀逸。そんな人物が丁寧な時代考証・文化考証に裏打ちされた物語の中で、じわじわと躍動する。
堵殺行為も行うマタギ生活者や、川船輸送生活者など西日本ではやや扱いにくい生活者の姿や生活感が、東北ではまた違った形で捉えられている。文献では少し知っていたこととはいえ、それを物語という形でこうも活き活きと理解出来るとは思ってもいなかった。
「作者のすごさ」と「物語のすごさ」、それを両方感じられた一作。
NHKラジオ文芸館で「モウレン船」の朗読が2017年9月16日に放送。
Posted by ブクログ
再読です。
読んでいて、やはり吉村昭との類似性を感じます。最終的には記録文学の方向に行った吉村さんですが、初期の作品は物語性が高く、そのころの吉村作品に近い雰囲気があります。ただ、熊谷さんの方がより奔放です。
印象に残るのは「ひらた船」と「川崎船」。自然との厳しい戦いと対比するように人(夫婦間、親子間)に対する優しさが描かれた作品です。"厳しさ"と"優しさ"の対比、そこに熊谷さんの作品の力強さがあるのかもしれません。
====05-060 2005/06/08 ☆☆☆☆☆=====
最初は読みながら「新田次郎に似てる」「いや、戸川幸夫か」「いやいや、やっぱり吉村昭だ」などと思いながら読んでいました。
解説の中でも吉村昭との比較は出てきますし、まんざら外れでもないのですが、誰かに似てるというのは失礼ですよね。しかし、最後の「川崎船」まで行って一気に吹っ飛びました。たまたま題材が似てたのであって、独自の世界なんだと。
ストーリーそのものは、むしろ陳腐といってもおかしくありません。しかし、それを覆い隠してしまう迫力と躍動感があります。そして、力に裏打ちされた優しさがあります。
熊谷さんは初めてです。一作で判断するのは尚早かもしれません。しかし、熊谷さんの描く「力感のある生活」といった世界に強く惹かれます。
Posted by ブクログ
今までであればたぶん自分からはなかなか手を出さないジャンルの小説だったが、「幻の漂白民・サンカ」を読んでいてその話をM浦さんにしたら、「ちょうどこんなのを読んでいるよ」と言って貸してくれた。
タイトルからしてもう少し山の民や生活によっているかと思ったが、実際には「旅マタギ」「御犬殿」「皆白」以外はどちらかというと海や川といった水周りを舞台とした作品だった。「潜りさま」「旅マタギ」「御犬殿」「ひらた船」がよかったかな。もう少し民俗学的なところに寄っていてくれると個人的にはもっとおもしろかったんだけどな。
解説を読むとだいたいの作品が昭和20年代の東北を舞台にしているとのことで、ふと、そういえばM浦さんも秋田出身だったなと思い出した。サンカではないが、戦後という激動の時代の中でマタギのような山の民がどう変わっていったのかという小説が読みたいなあ。「邂逅の森」か「相克の森」どちらかの長編を読んでみたい。
Posted by ブクログ
(01)
9つの短編からなるが、近代東北の群像劇(*02)の様にも読める。人生のある瞬間というだけではなく、一人の一生や、数代にわたる因縁も綴られ、必然的に戦前戦中戦後の東北の生活が現れる。特に山に生態する狼や熊という動物や、漁業や運送に駆使された船が題材となって、現代では省みられなくなった習俗(*03)などにも焦点を当てている。
(02)
オチを知らないものにとっては、これらの短編がバッドエンドに終るのか、ハッピーエンドに終るのか、あるいはその間に宙吊りにされるのかを楽しむことができる。どちらかと言えば、「旅マタギ」や「モウレン船」などの唐突な終結が出色であるが、「艜船」のハラハラさせる展開と様相が最も出来がよいと思う。
(03)
近代マタギの分類、海上での漁法や操船術、漁村の人々の営み、北上川の舟運などは、調査とまとめが行き届いており、ストーリーとは別に読み応えのある生活誌となっている。東北地方ならではの鉱山に関わるエピソードも興味深い。
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