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Posted by ブクログ
素晴らしかった。最後のサメの2作品は最強。
第1話 朋香は精神科開放病棟に入院中だ。しょっちゅう自殺未遂を繰り返しては入院させられている。今日退院だ。できれば今日を最後の日にしたいと考えている。秘密兵器を持っているのだ。最後の診察と採血。朋香は2週間前に夫に別れて欲しいと言われた。退院の時に夫がくる。それまでに済ませたい。
第2話 後藤大貴は24時間ラインで働いているが、緊急停止ブザーの音を聞いた。右手を失った。幻肢痛に悩まされる。今の義肢はすごいらしい。後藤は黒い義肢を選ぶ。職場に復帰する。もらった保険金で義肢を強くすることにする。
第3話 大学が夏休みに入った。明晰夢に挑戦してみることにした。夢の中で夢だとわかると半覚醒になってしまう。夢の中で僕は大抵沙奈といる。だけど現実では友達でいることすら辛いと言われた。
第4話 絵を描いている時に何を考えているか。私は何も考えていない。美術館で絵の模写をして平穏に暮らす。美術館に鑑賞に来た女性にヤクヤレヴィレについて知らないか訊かれる。知らない。夢で見たかもしれなくて、現実にある絵かどうかも不明だという。その絵を描いてみることにした。コンクールに出したい。ところが完成間近にこの絵と作者が存在することがわかる。
第5話 榎本美結はボールペンで脇腹を刺された。小野寺知実に。でも刺した相手を間違えたのではないかとクラスでは話題になっている。
第6話 ずっとジョーズを見てからサメが怖かったが、水族館で見て克服した。母が死んで、父に勘当されて、就活に失敗、病気が悪化、犯罪に手を染める。その間ずっとサメを飼いたかった。ついにサメを飼う。サメがしゃべりだす。
第7話 サメはボラボラ島の浅瀬で捕まった。吾輩が生まれた意味はなかった。ただ、吾輩が楽しかっただけだ。
Posted by ブクログ
ずいぶん前に読みました。
サメの話が好きでした。スタンド・バイ・ミーのエンドロールと同じくらい泣きました。個人的な体験なので、その程度がどれほどかが誰かに伝わるかは、わからないですけど。
記憶もおぼろげです。自分にもサメがいれば良いなと思ったはずです。色々順応していくことに疲れたときに、何がダメで何が良いかもわからなくなったような人間をぺちんと叩いて顔を向かせて、話を聞いてやる姿勢を見せてくれるような感じがしました。
学校帰りに時間を潰している時、古本屋で背表紙に惹かれて手に取りました。この題名が気にかかるような人の多くはそもそもきっとこの本に特別な思い入れを持てるような性質をしているんだろうと思います。
Posted by ブクログ
文通友達さんとの読書会の課題本としていただいた本です。初めましての作家さん。
面白かったです。始めに収録されている「ラスト・デイ」の最初の一文から惹き付けられました。
消えたかったり、現実から逃避していたり、という、なんだか近しい病んだ人々…と思ってしまいましたが、「サメの話」「水槽を出たサメ」がとても好きでした。
「水槽を出たサメ」は、これがこの本の締めくくりのお話で良かった、と思いました。エーテルのサメが空中を泳ぐ様が綺麗で。そして涼香が前を向くのも。涼香も少女もサメを「サメ!」と呼んでいるのも好きです。
この作家さんの他の本も読みたくなりました。大森靖子さんの帯も良いです。
Posted by ブクログ
真っ先に抱いた感想は「メンヘラっぽい」。
この短編集の登場人物たちも、作者も、この本を気に入る読者たちも。
これは馬鹿にしているわけではない。
人間の心を描写する必要のある小説というものにおいて、「メンヘラ」というのはとても現代らしい扱うべき対象だと思う。
「メンヘラ」というネットスラングは最近では大分世間にもなじんできたと思うが、はっきりと説明するのは難しい。
一言でいえば「心の健康を損なっている人」を指すが、多くの場合、その病状が著しく重い人は含まれない。
希死念慮が中途半端に強いものの実行には移さない、いわゆる「かまってちゃん」のような人を揶揄する意味合いを含めて呼称することが多い。
ただ、重度にしろ軽度にしろ心が健康でないのは明らかで、現代の日本にはそういう人たちが一定数いる。
男女は問わないが、若者に多いイメージ。
彼らにとって、この短編集は少しの救いになるかもしれない。
メンヘラがメンヘラなりに納得できる一歩を踏み出した作品が揃っていて、過度な期待を持たせるような現実離れしたハッピーエンドではなくて、妥協点を見せてくれる。
もしかすると、自分を客観視するきっかけにもなるかもしれない。
「ラスト・デイ」
「さて、私は死にたい。」の一文から始まる本作の主人公は、強い希死念慮を抱いているものの、「一度しか死ねないからもったいない」とのたまう。
そんな主人公が、精神病院の退院日を最後の日と決めた。
自分の不安定な精神のせいで周囲の人間を振り回すわかりやすいメンヘラなのだが、終盤にかけて真意が見えてくると、清々しい物語に変わるのが面白い。
「ロボット・アーム」
不運な事故から右手が義手となった主人公は、力への憧れを刺激されて、その欲望がエスカレートしていく。
力を望むこと、力を手に入れること、その力を行使できることのそれぞれの間には大きな隔たりがあるな。
「夏の眠り」
主人公は幼馴染との出来事がトラウマになっていて、その記憶から逃れるために明晰夢を見ようとする。
悩みは人それぞれだとは思うが、悩み込みすぎておかしな方向にいってしまうのも病みがちな人の特徴か。
「彼女の中の絵」
絵の技術はあるのに絵を創造するセンスはないと悩む主人公のもとに、夢の中で見た絵を探しているという女性が現れ、主人公はその絵を再現することにする。
人それぞれにできることとできないことがあり、協力し合うという正しい人間の営みを見た。
この短編集の中で一番気に入った。
「虫の眠り」
学校でいじめられていた少女が、同級生をボールペンで刺す事件が起こった。
しかし、刺されたのはいじめの主犯格の生徒ではなく、いじめ被害者の少女に寄り添っていた生徒だった……。
「藪の中」のようでもありつつ、「人は自分が見たいように物事を見る」ということによりフォーカスした作品。
おもしろかったが、本当に病んでしまった人間は怖いなという感想が上回ってしまった。
「サメの話」
自分自身のコントロールもままならず、ぐちゃぐちゃな人生を歩みながらも、「サメを飼うこと」だけを目標に生きている主人公の物語。
強烈な欲望があっても、人生それだけではない、というか、環境が変われば望むものも変わる……。
「水槽を出たサメ」
サメ視点で語られる「サメの話」の後編。
「サメの話」の物語としてはすこし蛇足だったようにも感じるが、この短編集全体の総括のような位置づけでもあるので、不要とまでは言えないか。
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