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深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説
昭和12年(1937年)5月、銀座で似顔絵描きをしながら漫画家になる夢を追いかける那珂一兵のもとを、帝国新報(のちの夕刊サン)の女性記者が訪ねてくる。開催中の名古屋汎太平洋平和博覧会の取材に同行して挿絵を描いてほしいというのだ。超特急燕号で名古屋へ向かい、華やかな博覧会を楽しむ最中、一報がもたらされた殺人事件。名古屋にいた女性の足だけが東京で発見された!? 同時に被害者の妹も何者かに誘拐され――。名古屋と東京にまたがる不可解な謎を、一兵はどんな推理を巡らせて解くのか? 空襲で失われてしまった戦前の名古屋の町並みを、総天然色風に描く長編ミステリ。/解説=大矢博子 -
少女の鏡
「おまえ一昨日、旧校舎に行ったりしてないよな?」クラスメイトに言われて驚いた。美弥は旧校舎に足を踏み入れたことはない。学校の七不思議では旧校舎の鏡に姿を映すと、鏡の中の自分が抜け出て襲いに来るらしい。その後も覚えのない場所で彼女を見たという目撃者が続出、ついに美弥自身も出会ってしまった。そのとき、助けてくれたのは大きな犬と、その犬を兄と呼ぶ少年朱鷺だった。朱鷺は各地を旅して呪物を集めているらしい。半信半疑のまま美弥は自分に起きている奇妙な出来事を彼に打ち明けるが……。『魔導の系譜』の著者の新シリーズ開幕。 -
飢え渇く神の地
死の神ダリヤが支配する西の砂漠。遺跡の地図を作ることを生業とする青年カダムは、探索を終えて落胆しながら帰宅した。十年前、遺跡の調査に行くと言い残したまま、西の砂漠に消えた家族の行方を探し続けているのだ。もう見つからないのかもしれない。そんなある日、レオンという若い宝石商が、カダムを道案内に雇いたいと言ってきた。どうやら治安警護隊に追われているらしい。カダムは渋々引き受けるが、彼らが砂漠の奥深くに迫ったとき、そこに眠る恐るべき秘密が目を覚ます……。第2回創元ファンタジイ新人賞受賞の著者が贈る意欲作!/解説=乾石智子 -
人魚と十六夜の魔法
四月、綾乃は無事ディアーヌ学院高等部に進級した。中等部には雪之丞の従妹のまりんや、絵葉の弟大地や、人間の女の子桜子も入学してきた。そんな新学期の慌ただしい一週間が終わったころ、綾乃たちの学年に転校生がやってきた。ロシアから来た礼儀正しい水妖ヴォダーくんは、あっという間にみんなの人気者になった。だが、そのころから学院内で奇妙なことが起こり始める。学院の周辺で不審者が目撃され、寮の部屋からお八つが消える。なにかがおかしい……。妖怪と人間が一緒に学ぶ魔女学校を舞台に繰り広げられる、愉快な学園ファンタジイ。 -
目黒の狂女
日常の謎ミステリの元祖ともよばれる、老歌舞伎俳優・中村雅楽探偵譚。歌舞伎界で起こった様々な事件や謎が持ち込まれると、雅楽は経験に裏打ちされた鋭い洞察力で鮮やかに絵解きをしてみせる。竹野記者の手記によって、雅楽が遭遇したあまたの事件の顛末が明かされていくシリーズ第3巻は、昭和50年代を中心とした作品群。竹野記者が目黒のバス停でつづけざまに出会った狂女にまつわる表題作「目黒の狂女」。なぜ淀君は逃げ延びなかったのかという、歴史に埋もれた謎を雅楽なりの解釈で解明していく「淀君の謎」など粒ぞろいの全23編を収録。【収録作】「かんざしの紋」/「淀君の謎」/「目黒の狂女」/「女友達」/「女形の災難」/「先代の鏡台」/「楽屋の蟹」/「お初さんの逮夜」/「むかしの写真」/「砂浜と少年」/「大使夫人の指輪」/「俳優祭」/「玄関の菊」/「梅の小枝」/「女形と香水」/「子役の病気」/「二枚目の虫歯」/「コロンボという犬」/「神かくし」/「芸養子」/「四番目の箱」/「窓際の支配人」/「木戸御免」/講談社版『目黒の狂女』 あとがき=戸板康二/講談社版『淀君の謎』 後記=戸板康二/創元推理文庫版編者解題=日下三蔵 -
砂漠を走る船の道 ミステリーズ!新人賞受賞作品集
「ミステリーズ!新人賞」から、これまで数多くの才能が登場してきた。ここに収められた五編のミステリは、それぞれ新鋭たちの輝かしい出発点となった作品である。居酒屋の片隅で、駆け出しのシナリオライターと映画監督が交わす歴史推理談義。無実の罪で父を囚われた少女と不思議な力を持つ老人が、毒死事件の真相を追う中華探偵行。のどかな田舎で起きた本ワサビ盗難事件と、それを捜査する刑事の趣味が迎える顛末。道に迷い無人駅で一泊をすることになった大学生ふたりを待つ、奇妙な一夜の出来事。そして、砂漠を行くキャラバンを襲った異様な連続殺人――。期待を集める五人の作家の、記念すべき“はじまりの物語”。/解説=福井健太*本電子書籍には、配信中の作品に収録されている次の短編が含まれます。『漂流巌流島』(創元推理文庫版 2010年8月初版発行)収録の表題作・『もろこし銀侠伝』(創元推理文庫版 2010年9月初版発行)収録の「殺三狼」・『田舎の刑事の趣味とお仕事』(創元推理文庫版 2009年9月初版発行)収録の表題作・『夜の床屋』(創元推理文庫版 2014年6月初版発行)収録の表題作・『叫びと祈り』(創元推理文庫版 2013年11月初版発行)収録の「砂漠を走る船の道」 -
ドミノ倒し
地方都市・月影市で探偵業を営む十村は、亡くなった元恋人の妹から「殺人事件の容疑者となっている男の無実を証明して欲しい」と依頼される。久しぶりの依頼に、十村は旧友の警察署長も巻き込んで、癖のある月影市の住人たちを相手に早速調査に着手する。しかし調査を進めていくうちに、過去に月影市で起きた別の未解決殺人事件との奇妙な共通点が見つかり、さらに別の殺人事件との繋がりも浮かび上がる。ドミノ倒しのように真実を追えば追うほど異様に広がっていく事件。その真相に探偵が迫るとき、恐るべき結末が待ち受ける――。人間の歪みと捩れを浮き彫りにする、衝撃の長編ミステリ。/解説=三島政幸 -
玉妖綺譚
異界と現実世界との間にある“はざま”。そこで産する竜卵石は妖力をもち、主の“気”を受けて玉妖と呼ばれる精霊を宿す。中でもその美しさ、知性から伝説的な存在とされるのが、難波俊之が育てた“難波コレクション”の七つの玉妖たちだ。そのひとつ〈くろがね〉を受け継いだ修業中の驅妖師・彩音は、玉妖に魅入られ眠り続ける姉を救おうとする……。人々の目に見えない異界妖が跋扈する皇国大和の首都・櫂都を舞台に、少女驅妖師・彩音と相棒の玉妖くろがねが、妖がらみの摩訶不思議な事件に挑む。第1回創元ファンタジイ新人賞優秀賞受賞作。/解説=井辻朱美 -
僕の探偵
宗介とは半年前、街で偶然再会した。学生時代の友人で、ひとから見下されるような仕事をしている僕とは違い、将来を嘱望された秀才だ。その彼が勤めていた大手コンサルタントを辞めて、行くあてもないと言う。仕方なく一晩だけ泊めるつもりが、その後も居着いて、今ではうちの居候。普段は暢気にヨガの修行をして過ごしている。そんな彼は、僕が仕事で遭遇した事件を持ち帰ると、瞬く間に解決していく探偵へと姿を変えるのだ。だけど、僕は知っている。宗介自身が誰より深い悩みを抱えていることを……。暗い過去を持つふたりの青年が、五つの事件を通して経験していく出会いと別れ。爽やかな余韻を残す連作短編集。/解説=千街晶之 -
松谷警部と三ノ輪の鏡
元プロゴルファーの横手祐介が台東区三ノ輪の自宅で殺害された。発見者は横手に呼び出された元妻の佐々木鴻子。二人の間には娘がいてプロゴルファーを目指しており、その関係でよりが戻りつつあった。当夜、横手は葉賀開発の石井経理部長と会う予定で、現場に「いしい」と読めるダイイング・メッセージが残され、当の石井は消息を絶っている。この状況に加えて、横手が関わる斜陽ゴルフ場に融資した常磐銀行の営業一課長、横手を目の敵にするジャーナリストの死が相次いで報告され、事件は一挙に多層化して松谷警部らを困惑させるが……。これぞ謎解きの醍醐味、シリーズ最高峰、充実の第3作。 -
松谷警部と三鷹の石
三鷹の堀越俊介殺害事件は無理心中の様相を呈し、松谷警部も当初捜査が難航するとは考えなかった。しかし白石巡査は納得しない。堀越の本命らしき女性の線から、次第に河口湖とカーリングに絡む諸々の事情が判明。堀越は長野オリンピック有力候補の木屋沢を事故に巻き込み、将来の芽を摘んでいた。カーリング場開設とクラブ結成の話が持ち上がった際に木屋沢はコーチに招かれ、土建屋&スポーツ用品店主の兄弟が一儲け企み……事実を積み上げても明確な方向性は見えなかったが、地道に聞き込みを続けた白石巡査はついに真相を看破する。ど真ん中の本格ミステリ、好評シリーズ第2作。 -
刑事たちの三日間
1889年、切り裂きジャックの恐怖がいまだ残るヴィクトリア朝ロンドン。地に落ちた警察への信頼を回復するため、警視総監サー・エドワードは、ロンドン警視庁(スコツトランド・ヤード)に殺人捜査課を創設する。だが、刑事の数はわずか12人。日々捜査に忙殺される中、あろうことか仲間のひとりが無残な死体となって発見される。新米刑事のディは、警視総監からこの事件の捜査を命じられるが――。巨大都市にはびこる犯罪の闇、正義を信じてそれに立ち向かう刑事の光。斬新なスタイルで刑事たちの三日間を描く、鮮烈なデビュー作。バリー賞、〈ストランド・マガジン〉批評家賞ノミネート。 -
国王陛下の新人スパイ
ベルリンのレジスタンスグループに無線機の部品を運び、ナチス高官の自宅に盗聴器を取りつけよ――。第二次世界大戦が勃発して約2年。チャーチル英国首相のタイピストから、エリザベス王女の警備役を経て、ついにスパイとしてベルリンへ送り込まれることとなったわたし、マギー・ホープ。そこで待ち受けていたのは、予想をはるかに上回る困難、そしてわたし自身の過去の問題だった――。読み手の予想を大胆に裏切り続ける、大展開に次ぐ大展開のストーリー! 赤毛の才媛マギーの活躍を描く、読み出したら止まらない、大好評シリーズ第3弾!/解説=大矢博子 -
チャーチル閣下の秘書
アメリカで育ったわたしが、ロンドンで暮らしはじめて1年余り。その間、この国はナチス・ドイツと開戦し、チャーチルが首相になり、そしていま、空襲の時が迫っていた。そんな折、首相官邸での職の話が舞い込んでくる。数学の能力を活かせる秘書官ではなく秘書としてのオファーだが。女性にタイプとファイリングしかまかせようとしないこの国に苛立ちを感じながらも、わたしはその誘いを受け入れる。官邸を取り巻くいくつもの謀略が、待ち構えていることなど知るはずもなく。才気煥発なマギーが体当たりで陰謀に挑む、魅力のシリーズ開幕編。MWA賞、バリー賞、ディリス賞ノミネート! -
本の町の殺人
【ミステリ専門書店本日開店!殺人事件の在庫はございません】古書と専門書の書店が軒を連ね、それを目当てに大量の観光客が押し寄せる、読書家の聖地、本の町ストーナム。トリシアはそんなストーナムにあるミステリ専門書店の店主だ。ヴィンテージものの初版から、新刊のベストセラーまで取りそろえたこの店は、彼女の夢と努力が詰まった大切な城。ところが経営不振だった隣の料理書専門店の店主が殺され、高価な料理本の初版が消えた。保安官は第一発見者のトリシアを容疑者扱い。なんとか容疑を晴らそうと、彼女は必死で事件を調べはじめる。本屋だらけの町を舞台にしたライトなミステリシリーズ第1弾。 -
完全・犯罪
「本来、これはわたしが貰うべき賞だったのだ!」ライバル、水海月博士に研究発表で先を越された時空博士。憤慨した博士は、自ら開発したタイムマシーンを活用して過去の水海月博士を殺害しようと決心した。念のため、自分に鉄壁のアリバイがある日時を犯行時刻に設定したのだが──(「完全・犯罪」)。真帆と嘉穂は、服も、玩具も、名前まで共有する一卵性双生児。自分は本当に「真帆」なのか。成長するに従い、真帆は次第にアイデンティティーを失っていく。思春期を迎え、恋を覚えた姉妹の運命は──(「双生児」)。驚きと恐怖、黒い笑いが詰め込まれた、全5篇のミステリ短篇集。 -
明日の空
桜が満開に咲き誇る4月。帰国子女の栄美にはその美しさを楽しむ余裕はない。何しろ今日、日本での高校生活の初日を迎えるのだ。「アメリカの話はなるべくしないように。日本人は、みんな一緒なのが好きなんだ」パパの忠告はしっかりと胸にしまってある。けれど予想に反して高校生活は心弾むものだった。ある日、栄美は気になる男の子と遊びに行く約束をしたのだが、なぜか二人は必ずすれ違ってしまい……。時は流れ、栄美は大学生となった。ある人との出会いをきっかけに、高校時代の大切な思い出と痛みの記憶はまったく別の形を見せてゆく――。「誰かのために」清廉な願いを名手が鮮やかに描く、忘れられない青春ミステリ。 -
月夜の晩に火事がいて
月夜の晩に 火事がいて/水もってこーい 木兵衛さん/金玉おとして どろもぶれ/ひろいにいくのは 日曜日――わらべ歌の歌詞どおりに、木兵衛屋敷が火事になり、屋敷の当主は顔を潰され、金玉をとられて死んでいた! 被害者の許には事前に事件を予告するかの如く、この歌の歌詞が届けられていた。調査に当たるのは、東京に出て私立探偵事務所を開いているぼく、山浦歩。旧友からの依頼を受けて久しぶりの故郷、善音寺市に帰ってくるや、待ち受けていたように事件が相次いで起こり、おかげでぼくはすっかり容疑者扱いだ。『ミミズクとオリーブ』『嫁洗い池』の主婦探偵シリーズでお馴染みの著者、初の本格長編推理。 -
大きな森の小さな密室
会社の書類を届けにきただけなのに……。森の奥深くの別荘で幸子が巻き込まれたのは密室殺人だった! 閉ざされた扉の奥で無惨に殺された別荘の主人、そしてそれぞれ被害者とトラブルを抱えた、一癖も二癖もある6人の客。犯人はこの中にいる──。犯人当ての「大きな森の小さな密室」。遺跡の発掘現場で発見されたのは、絞殺された若い女性の遺体。死亡推定時期は150万年前!? 抱腹絶倒の「更新世の殺人」。ミステリでお馴染みの7つの「お題」を天才殺人者やマッドサイエンティストなど一筋縄ではいかない探偵たちが解く。精密な論理が黒い笑いを構築する全7篇のミステリ連作集。 -
ねむりねずみ
「ことばが、頭から消えて行くんだ」若手歌舞伎役者の中村銀弥は、役者生命を奪いかねない症状に苦しんでいた。妻の一子は文芸誌記者の男性に惹かれている後ろめたさを抱えつつ、夫を気遣うことしかできない。その約二カ月前、銀弥の亭主役を務める花形役者・小川半四郎の婚約者・河島栄が、「絵本太功記」を上演中の劇場内で殺された。衆人環視の状況で胸元を刺されたはずが、犯行を目撃した者は名乗り出ないという。梨園を巻き込む事件を調べ始めた大部屋役者の瀬川小菊とその友人である私立探偵の今泉文吾は、いかなる真相に辿り着くのか。/解説=西上心太 -
神様の次くらいに 人の死なない謎解きミステリ集
デートに誘ったはずが「家電量販店に行こう」と言われ、憧れの女性と開店前行列に並ぶことになった大学生の青年。その日遭遇したある謎解きの顛末から、彼は人の優しさについて思いを巡らすことになる。著者の実体験を反映した佳品の表題作ほか、文化祭前日に生徒会副会長が密室の謎に直面する学園もの「ライオンの嘘」、公園からひとつずつ何かが消えていくのはなぜかを名探偵凜堂星史郎が推理する「小さいものから消えよ」など五編を収録する。日々の暮らしのなかにふと入り込んだ謎とその真相を鮮やかに描いた、人の死なない謎解き作品集。著者初の〈日常の謎〉、文庫オリジナル。/【目次】「さくらが丘小学校 四年三組の来週の目標」児童たちのいざこざを収めるため謎解きに挑む新米教師の悪戦苦闘/「ライオンの嘘」男子サッカー部の部室からパソコンが消失。現場は密室だった――/「神様の次くらいに」家電量販店の開店前行列に並んだ先輩と俺のささやかな謎解き/「小さいものから消えよ」公園からひとつずつ何かが消えてゆく? 名探偵凜堂星史郎の推理/「デイヴィッド・グロウ、サプライズパーティーを開く」『星読島に星は流れた』の青年デイヴィッド、セグウェイに乗って再登場/あとがき -
心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿
ロンドンの医師で“心霊博士”でもあるジョン・サイレンスのもとには、超自然現象に悩む患者たちが訪れる。屋敷の悪霊に取り憑かれた作家の災難を描く「霊魂の侵略者」、前世の記憶から猫の街に引き寄せられた男の妖しい体験が語られる「古えの妖術」、旅の途中で30年ぶりに母校を訪れた商人が引きずり込まれた黒魔術の恐怖「秘密の崇拝」、青年の激しい恋情が驚愕の人狼事件へと発展する「犬のキャンプ」など、英国恐怖文学の巨匠ブラックウッドのジョン・サイレンスもの6編を完全収録した傑作短編集。/【目次】/事例一 霊魂の侵略者/事例二 古えの妖術/事例三 炎魔/事例四 秘密の崇拝/事例五 犬のキャンプ/事例六 四次元空間の虜/解説=朝松健 -
恐怖 アーサー・マッケン傑作選
アーサー・マッケンは平井呈一が最も愛した怪奇小説家だった。二十代の頃、友人から借りた英国の文芸雑誌で「パンの大神」に出会った平井青年は、読後の興奮収まらず、夜が明けるまで東京の街を歩き回ったという。戦後その翻訳紹介に尽力、晩年には『アーサー・マッケン作品集成』全6巻を完成させた。太古の恐怖が現代に甦る「パンの大神」「赤い手」「白魔」他の初期作に、大戦中に英国の或る地方を襲った怪事件の顚末を描く中篇「恐怖」など、異次元を覗く作家マッケンの傑作を平井呈一入魂の名訳で贈る。/【目次】訳者のことば/パンの大神/内奥の光/輝く金字塔/赤い手/白魔/生活の欠片/恐怖/アーサー・マッケン作品集成 解説/解説=南條竹則 -
見守るもの
兄冬二と喧嘩別れした朱鷺は、体調を崩し気を失って倒れているところを時藤蓮香という女性に助けられた。目を覚ました朱鷺は、蓮香が何かに呪われていることに気づく。時藤家には一族を守る石が伝わっており、石に選ばれた蓮香は、常に得体の知れないものからの視線を感じるせいで、人付き合いもできず、引きこもって暮らしていたのだ。呪物ならば千蔵家の蔵に収めなければ。朱鷺は蓮香に石の所在を尋ねる。一方、朱鷺の元を去った冬二は、獣医に保護されていた――。呪物を求めて旅をする朱鷺と、獣の姿をした兄冬二の運命を描く、三部作完結。 -
星空にパレット
九重高校で黒マスク姿の男による合宿費強奪事件が起きた。犯人のあまりの足の速さに、誰も追いつけない。できたばかりの探偵部に所属する浩介たち三人は解決のため独自に調査を開始するが、二度目の強奪の後に、事態は殺人事件へと発展してしまう――。夏の避暑地での不可解な連続殺人、ミステリ小説として書かれた殺人事件が実際の事件と重なっていることに気づいた作家の推理、大学病院での転落死の真相と、夜空に煌めく星のごとき全四編。学園ミステリにクローズド・サークル、二転三転するフーダニットとハウダニット。鮎川哲也賞作家が贈る、純度百パーセントのミステリ短編集。【収録作】黒いアキレス/夏の北斗七星/谷間のカシオペア/病院の人魚姫/あとがき -
京都東山 美術館と夜のアート
神戸静河は学芸員志望だったものの、縁あって採用されたのはイチビこと、地元の市立美術館の常駐警備員。警備システムの解除や正面玄関の開錠など、展覧会スタッフたちを迎えるためにいち早く出勤しなければならない。これが施設常駐の警備員のオシゴトである――。深夜に美術館裏の庭園で遭遇した不審な男の正体は? 巡回中の展示室で見た浮世絵が新発見の写楽? 展示物のブログ紹介がきっかけで神社の失われた御神刀が発見されたが……などなど、地道な警備のオシゴトと美術ミステリのコラボレーション! ミステリーズ!新人賞受賞作家が、京都の町と美術館を舞台に描く、連作短編集。 -
なぎなた
【倉知淳ノンシリーズ作品集成第一弾】死神を思わせる風貌の警部が、完璧だったはずの殺人計画を徐々に崩壊へと導いてゆく――倒叙ミステリ「運命の銀輪」をはじめ、残虐な場面が映し出されているにもかかわらず観客席の闇の中で微笑を浮かべる女性の謎を追いかける「闇ニ笑フ」、米大統領選挙の熱狂の最中に発見されたひとつの死体の謎をファンタスティックな筆致で描く力作本格推理「幻の銃弾」など7編収録。たくらみに満ちたミステリ・ワールドを二分冊で刊行!【収録作】「運命の銀輪」「見られていたもの」「眠り猫、眠れ」「ナイフの三」「猫と死の街」「闇ニ笑フ」「幻の銃弾」/単行本版あとがき -
ブラウン神父の不信
名作揃いの〈ブラウン神父〉シリーズでも、とりわけ傑作が集まっている第三集が、読みやすくなって、新しいカバーでリニューアル! これを読まずして〈ブラウン神父〉シリーズは語れない傑作「犬のお告げ」、チェスタトンならではの大胆で奇想天外な密室トリックが炸裂する「ムーン・クレサントの奇跡」、濃厚なオカルティズムで後世に多大な影響を及ぼした必読作「金の十字架の呪い」、真相の意外さが光る逸品「翼ある剣」など、珠玉の8編を収録する。ブラウン神父の魅力あふれる名推理をご堪能あれ!【収録作】「ブラウン神父の復活」「天の矢」「犬のお告げ」「ムーン・クレサントの奇跡」「金の十字架の呪い」「翼ある剣」「ダーナウェイ家の呪い」「ギデオン・ワイズの亡霊」/解説=法月綸太郎 -
監獄舎の殺人 ミステリーズ!新人賞受賞作品集
「ミステリーズ!新人賞」から、数多くの才能が登場してきた。さる旧家の美人姉妹の鞘当てから起きた悲劇を、圧倒的な筆力で描く美輪和音。胎児に憑依した“幽霊探偵”の謎解きを、緻密な構成で魅せる近田鳶迩。深夜の公園で起きた奇妙な事件を軽妙に描く、ユーモアミステリの新星・櫻田智也。脳外科の臨床講義を舞台にしたミステリを発表、医療ミステリの新たな書き手と期待される浅ノ宮遼。明治時代の監獄舎で囚人が殺害される謎を描く、時代ミステリの旗手・伊吹亜門。新鋭たちの輝かしい出発点となった受賞作五編を収録した作品集を贈る。/解説=福井健太*本電子書籍には、配信中の作品に収録されている次の短編が含まれます。『強欲な羊』(創元推理文庫版 2015年7月初版発行)収録の表題作。また、以下の収録作は、各短編ごとに単体の電子書籍で配信中です。「かんがえるひとになりかけ」「サーチライトと誘蛾灯」「消えた脳病変」「監獄舎の殺人」 -
影王の都
【第1回創元ファンタジイ新人賞選考委員特別賞受賞作】村はずれに一人住む少女リアノ。両親が相次いで亡くなり、兄も夢を追って家を出ていってしまった。そんな孤独な彼女のもとにある日やってきたのは、口をきく髑髏。図々しいことに髑髏はリアノに砂漠に連れていって欲しいと求めた。若く美しい娘としゃべる髑髏の奇妙な道行き。だが砂漠で待っていたのは、〈影王〉が統べる呪われた〈影の都〉。不老不死を望んで神の怒りにふれ、永遠に砂漠を彷徨う運命になったという伝説の都だった。捻れた運命の糸に搦め捕られるリアノ。〈影王〉とは何者か。/第1回創元ファンタジイ新人賞選考経過、選評=井辻朱美、乾石智子、三村美衣 -
お人好しの放課後 御出学園帰宅部の冒険
授業が終われば速やかに帰宅し、成績は平均以上、通学区域で社会奉仕をすべし――帰宅部といっても佐々木幸弘が入学した御出学園の場合、正式な部活動としての規定がある。ベニヤ製の人形が夜な夜な徘徊していると聞いて調査に乗り出したのは、地域の皆さんのためにと燃えたわけではなく単なる成り行きだったが、結果的に帰宅部メンバーの認知度は上がり、相談と称してささやかな事件が持ち込まれるようになる。それなりに、または懸命に、使命を果たすべく奮闘する生徒たち。笑いのち友情ときどき謎の高校生活を描く、軽やかなデビュー連作集。/解説=佳多山大地 -
天使の歌声
身体も顔も河馬に似ている弁護士に案内され、一登はまだ見ぬ父親に会うため秋庭邸を訪れた。そこで一登は言語能力を持たない弟に出会う。彼は言葉を話せない代わりに、聞くものの心を癒す特殊な能力を持つ〈天使の歌声〉を発することができた。訓練では決して到達し得ない、澄みきった神秘の歌声。その弟をめぐってある悲劇が起きる。そして六年後、一通の手紙によって、一登はふたたび秋庭邸を訪れた──。静かな探偵・嶺原克哉が、調査依頼を通して出合った六つの難事件。不思議な親子関係と複雑に入り組んだ謎、多重どんでん返しが魅力の、著者初のシリーズ連作集。 -
ゴシックタウン
自身が切り盛りするニューヨークの一流料理店を閉店し、母とも仲違いして落ち込んでいたビリーの元に、ジュリアナという南部の町への移住勧誘メールが舞い込んだ。たった百ドルでヴィクトリア朝様式の邸宅を提供し、しかも起業の資金援助もするという内容に、疑いつつも好奇心に駆られ返信して以降、ジュリアナの魅力に惹かれたビリーは夫と幼い娘と猫とともに移住を決断する。穏やかな気候、豪華な館、親切な住民、理想の仕事……だがジュリアナを支配する奇妙なルールが徐々に家族の生活を侵食してゆく。シャーリイ・ジャクスンを彷彿とさせるアメリカン・ゴシック・ホラーの新機軸。 -
メインキャラクター
ベストセラー作家、ジネヴラ・Exからプレゼントされた、オリエント急行での三日間の旅。ジネヴラは実在の人物をモデルとして小説を執筆しており、最新作の主人公(メインキヤラクター)に選ばれたローリィは、報酬として豪華列車の旅を贈られたのだ。しかしローリィが列車に乗りこむと、そこには兄、親友、元恋人など、彼女と浅からぬ関係をもつ人々の姿が。さらに列車内では件(くだん)の最新作『湖畔のキャビン』の製本原稿が手渡される。ローリィたちの人生が描かれたはずの本書はミステリで、作中で誰かが死ぬらしい……。盗まれた本、姿なき作家、そして客室の死体。絢爛たる謎に彩られた極上のミステリ。/解説=大矢博子 -
山伏地蔵坊の放浪
洒落者の猫井は紳士服店の若旦那、禿頭が眩しい藪歯医者の三島に写真館の床川夫妻、そしてレンタルビデオ屋の僕、青野良児。年齢も職業もまちまちな僕らは、土曜の夜になるとダンディなマスターの店『えいぷりる』に集い、地蔵坊先生の話を聴く。この先生、鈴懸に笈を背負い金剛杖や法螺貝を携え……と十二道具に身を固めた正真正銘の山伏なのだ。放浪中の体験談といって披露してくれるのは、およそ実話とは思えない怪しい事件揃い。額面通りに受け取れば、彼はさながら遍歴する名探偵だが。さて、眉に唾をつけつつ今宵も幕を開けるとしよう――「面白そうですね。ぜひ聞かせてください」/【目次】第一話 ローカル線とシンデレラ/第二話 仮装パーティーの館/第三話 崖の教祖/第四話 毒の晩餐会/第五話 死ぬ時はひとり/第六話 割れたガラス窓/第七話 天馬博士の昇天/あとがき/文庫版あとがき/解説=戸川安宣 -
魔術師ペンリックと暗殺者
愛する妻と可愛い娘と共にオルバスで平和に暮らしていたペンリック(とデス)。だが、そんなささやかな平和も、妻の兄アリセイディア将軍に、かつての故郷セドニアから暗殺者が差し向けられたことで、もろくも崩れ去った。“魔”を使っての暗殺を阻止したペンリックだったが、故郷の政争に否応なく巻きこまれてしまった義兄とは別ルートでセドニアに向かうことに……。長編「ササロンの暗殺者」に、遺体安置所に収容された死体が動き出した事件解決にペンリックが駆り出される短編「影の結び目」を併録。ヒューゴー賞シリーズ部門受賞シリーズ第四弾。/【目次】ササロンの暗殺者/影の結び目/訳者あとがき -
ミミズクとオリーブ・シリーズ
八王子の郊外に住む作家のぼくのもとへ、大学時代の友人が相談にやってきた。謎めいた文言の並ぶ書き置きを遺して、奥さんが家出したという。自慢の手料理を供しながら友人の話を聞いていたぼくの妻は、たちまち奥さんの所在を突き止めてしまった。さらに、高校時代の友人で刑事をしている河田の自慢話を聞いているうちに、女社長殺しの捜査のミスを見つけたばかりか、事件の真相をも言い当ててしまう……。ひょっとしてぼくの妻は、料理の腕前ばかりでなく、推理能力にも長けているのだろうか?! 直木賞作家が安楽椅子探偵ものの歴史に新しい一ページを切り拓いたシリーズ第一弾!/【目次】ミミズクとオリーブ/紅い珊瑚の耳飾り/おとといのおとふ/梅見月/姫鏡台/寿留女/ずずばな/*本電子書籍は『ミミズクとオリーブ』(創元推理文庫 新装版 2025年1月30日初版発行)を底本としています。 -
女彫刻家
オリーヴ・マーティン――六年前、母親と妹を切り刻み、それをまた人間の形に並べて、台所の床に血みどろの抽象画を描いた女。嫌悪と畏怖をこめて彫刻家と呼ばれるこの無期懲役囚について一冊書け、と版元に命じられたライターのロズは、覚悟を決めて取材にかかる。まずはオリーヴとの面会。並はずれた威圧感に震え上がったが、相手は意外にも理性の閃きをのぞかせた。かすかな違和感は、微妙な齟齬の発見をへて、大きな疑問に逢着する……本当にオリーヴがやったのか? 謎解きの興趣に恐怖をひとたらし。その絶妙な匙加減が、内外で絶賛を博した、ミステリの新女王の出世作。MWA最優秀長編賞に輝く、戦慄の第二長編!/解説=野崎六助 -
はじめて話すけど…… 小森収インタビュー集
各務三郎に海外ミステリの魅力を、皆川博子に本に溺れた子ども時代を、三谷幸喜に理想の〈作戦もの〉とは何かを、法月綸太郎にバークリー作品の真骨頂を、石上三登志にヒーロー論での読み解きを、松岡和子に戯曲を翻訳することの困難さと楽しさを、和田誠にアメリカ文化に触れる喜びを、それぞれはじめて話してもらいました――〈短編ミステリの二百年〉で日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をW受賞した評論家による他に類を見ない贅沢なインタビュー集が待望の文庫化。本書では新たに、北村薫に「良き読者」であり続ける秘訣を訊ねています。/【目次】各務三郎「ミステリがオシャレだったころ」/皆川博子「皆川博子になるための136冊」/三谷幸喜「理想の作戦ものを求めて」/法月綸太郎「本格推理作家はアントニイ・バークリーに何を読みとるのか?」/石上三登志「札付きファンのミステリの接し方」/松岡和子「戯曲を翻訳する幸せ」/和田誠「バタくささのルーツを探る」/北村薫「良き作品の良き読者であるために」/あとがき -
多重迷宮の殺人
首都圏を震撼させた地下遺構連続殺人事件。その犯人も被害者の共通点も不明のまま、捜査は暗礁に乗り上げていた──。そんななか、地下遺構探索サークルを主宰する大学生・藤間秀秋、名探偵・七ツ森神子都とその助手・風野颯平らは、令嬢・御坂摩耶の依頼で、彼女の祖父である有名政治家が遺した別荘を訪れる。そこに隣接する地下遺構を調査中に山崩れが発生、身元不明の屍蝋化死体、摩耶の祖父が金塊を残したと信じるグループとともに、内部に閉じ込められてしまった。脱出方法を探して地下遺構を彷徨うなか、何者かに一人また一人と殺されていく。七ツ森と風野たちは連続殺人犯を突きとめ、閉鎖空間から無事生還できるのか。 -
神保町の怪人
百貨店の催事で古書展覧会が行なわれるようになった昭和42年春。詩集のコレクターである大沢から、古書収集の極意は「殺意」と聞かされた喜多は、彼が本を借りてはそのまま私物化しているという噂を耳にする。その後大沢が居合わせた展覧会で、稀覯書が忽然と消え失せた……本を手に入れるためなら手段は選ばない収集家の闇を描く「展覧会の客」、古書オークション開催者に翻弄される喜多が最後に意外な真相に辿り着く「『憂鬱な愛人』事件」、古書店で起きた盗難事件と、図書館での司書強殺。「電網恢々事件」の三編を収録する。/【目次】第一話 展覧会の客/第二話 『憂鬱な愛人』事件/第三話 電網恢々事件/あとがき/文庫版刊行にあたって/解説=北原尚彦 -
ヴェネツィアの陰の末裔
ベネデットには、11歳で孤児院に拾われるまでの記憶がない。あるのは繰り返し見る両親の死の悪夢だけだ。魔力を発現して以来、彼の護衛剣士に志願した同じ孤児院出身のリザベッタと共にヴェネツィア共和国の魔術師の一員として、陰の世界に生きている。あるとき魔術師たちはハプスブルクの暗殺者による、元首(ドージェ)暗殺計画の情報を掴んだ。計画は未然に防いだが、背後にはベネデットらを巻き込む恐るべき陰謀が……。16世紀、異端と迫害されながらも、列強の権謀術数のただ中に身を置く魔術師の姿を描いた、第5回創元ファンタジイ新人賞佳作作品。/第5回創元ファンタジイ新人賞選評=井辻朱美、乾石智子、三村美衣 -
悪い弁護士は死んだ
その日は犯罪捜査部のベックストレーム警部にとって、人生最良の日だった。マフィアお抱え弁護士として警察を悩ませてきたエリクソンが殺されたのだ。ベックストレームは部下を率いて捜査を開始。殺害場所は被害者の自宅らしく、死因は鈍器による殴打、部屋からは被害者が発射した銃弾の跡が発見された。だが奇妙なことに、主人が殺害された四時間後に、飼い犬が喉を掻き切られて殺されていたのだ。なぜ犯人はわざわざ引き返して犬を殺したのか。エリクソンを恨んでいた人物は多数いるはずだが……。CWAインターナショナル・ダガー賞最終候補作。 -
ただし、無音に限り
推理小説の名探偵に憧れて開設した〈天野春近探偵事務所〉。主な依頼は浮気調査ばかりと理想どおりにはいかないが、ときにいかにも探偵らしい仕事が舞い込むこともある。しかしその大半は、春近の“霊の記憶が視える”という特異な能力を当てにした無茶なものだった。制約の多いその力に振り回されながらも、春近は霊と人を救うため調査を開始する。事件性なしと判断されたはずの資産家の死、二年前に借金を残して行方をくらましていた生死不明の失踪人の「死体」捜索――霊視探偵・天野春近が解き明かす二つの事件を描いた霊能力×ミステリ!/解説=大山誠一郎 -
死の黙劇
月のない夜、華奢な欄干を破り、一台のタクシーが崖下に転落した。運転手は一命を取り留めたが、乗客の男は即死する。死者は顔いちめんに包帯を巻きつけていたものの、その下にはなぜか傷ひとつなかった。さらに死者の所持品からは探偵砧順之介の名刺が発見されたが、その名刺を死者が所持することは論理上不可能だった――奇怪な謎が読者を魅了する表題作ほか、書籍未収録の犯人当て短編などを所収。職業作家の道を選ばず、生涯に亙って緻密極まりない作品を執筆、巨匠鮎川哲也も畏敬した本格推理作家、山沢晴雄。その作風を一望できる作品を精選して贈る〈山沢晴雄セレクション〉。/【目次】砧最初の事件/死の黙劇/銀知恵の輪/金知恵の輪/見えない時間/ふしぎな死体/ロッカーの中の美人/密室の夜/京都発“あさしお7号”/編者解題=戸田和光 -
パズラー 謎と論理のエンタテインメント
高校の同窓会に出席する予定の小説家・日能は、幹事から衝撃の事実を聞く。ずっと亡くなったと思っていたクラスメイトが、実は生きていたのだ。何をどう勘違いしてそう捉えていたのか、訝しみながら同窓会当日を迎えると、さらに謎は深まるばかり……「蓮華の花」。数年ぶりに訪れた書店で購入した文庫本に、謎のメッセージが挟まれており、そこから小学生時代のある出来事に結びつく「時計じかけの小鳥」。師と仰ぐ、都筑道夫の代表作〈退職刑事〉シリーズのパスティーシュ、「贋作『退職刑事』」など、論理的な謎解きにこだわった、六編を収録。/【収録作】蓮華の花/卵が割れた後で/時計じかけの小鳥/贋作「退職刑事」/チープ・トリック/アリバイ・ジ・アンビバレンス/集英社文庫版解説=巽昌章/創元推理文庫版解説=阿津川辰海 -
龍の刻
恐るべき力を秘めた古(いにしえ)の呪術品〈アーリマンの心臓〉を手に入れた黒魔術師。彼は〈心臓〉の用法に熟達した大神官を3000年間の死から蘇生させた。世界再編のためネメディア国を動かし、西方のアキロニア国を打ち倒すのだ。かの国の王は北の国から訪れた蛮族の子孫――その名をコナンといった。だが勇猛果敢をもって鳴るコナンさえ、大神官の妖術の前では虜囚となり果てる。逆襲はなるか? 30歳で夭折した天才作家が創造し、すべてのヒロイック・ファンタジーの源(みなもと)となった傑作シリーズを、最新の校訂研究にもとづいて贈る全集はここに完結する。/【収録作】「龍の刻」/資料編「I・M・ハワード博士からH・P・ラヴクラフトへの手紙」/「I・M・ハワード博士からE・ホフマン・プライスへの手紙」/解説=中村融 -
世界怪奇実話集 屍衣の花嫁
推理小説ファンが最後に犯罪実話に落ちつくように、怪奇小説愛好家も結局は、怪奇実話に落ちつくのが常道である。なぜなら、ここには、なまの恐怖と戦慄があるからだ――伝説の〈世界恐怖小説全集〉最終巻のために、英米怪奇小説翻訳の巨匠・平井呈一が編訳した幻の名アンソロジー『屍衣の花嫁』が、60年の時を経て、〈東西怪奇実話〉海外篇としてここに再臨! 怪奇を愛し霊異を尊ぶ、古き佳き大英帝国の気風がノスタルジックに横溢する、遠き世の怪談集。ハリファックス卿やE・オドンネルら、英国怪奇実話を代表する幽霊ハンターが集結!【収録作】1「インヴェラレイの竪琴弾き」/「鉄の檻の中の男」/「グレイミスの秘密」/「ヒントン・アンプナーの幽霊」/「エプワース牧師館の怪」/「ある幽霊屋敷の記録」/2「死神」/「首のない女」/「死の谷」/「女好きな幽霊」/「若い女優の死」/「画室の怪」/「魔のテーブル」/「貸家の怪」/「石切場の怪物」/「呪われたルドルフ」/「屍衣の花嫁」/「舵を北西に」/「鏡中影」/「夜汽車の女」/「浮標」/3「ベル・ウィッチ事件」/解説=平井呈一/新版解説=東 雅夫 -
菖蒲狂い
柳橋の船宿に居候する、“若さま”と呼ばれる謎の侍がいた。姓名も身分も一切不明だが、事件の話を聞いただけで真相を言い当てる名探偵でもあった。扇に秘められた暗号の謎を解く「舞扇の謎」。菖蒲作りの名人の娘が殺され、些細な手がかりから犯人の異様な動機に辿り着く「菖蒲狂い」。祭りで同じ酒を飲んだ4人のうちひとりが毒殺された。犯人がどのように毒を仕込んだのかを暴く「面妖殺し」など、250編近い短編から厳選した25編を収録。「五大捕物帳」の一つにして、〈隅の老人〉に連なる、伝説の安楽椅子探偵シリーズの決定版、登場!/【収録作】「舞扇の謎」/「かすみ八卦」/「曲輪奇談」/「亡者殺し」/「心中歌さばき」/「尻取り経文」/「十六剣通し」/「からくり蝋燭」/「菖蒲狂い」/「二本傘の秘密」/「金の実る木」/「あやふや人形」/「さくら船」/「お色検校」/「雪見酒」/「花見船」/「天狗矢ごろし」/「下手人作り」/「勘兵衛参上」/「命の恋」/「女狐ごろし」/「無筆の恋文」/「生首人形」/「友二郎幽霊」/「面妖殺し」/編者解説=末國善己 -
知りすぎた男
「我々は知りすぎているんです。お互いのこと、自分のことを知りすぎている。だから、僕は今、自分の知らない一つのことに本当に興味をおぼえるんです──あの気の毒な男がなぜ死んだか、ですよ」新進気鋭の記者ハロルド・マーチは財務大臣との面会に向かう途中で出会った奇妙な釣師とともに自動車が断崖から転落するさまを目撃する。後に残されたのは車の残骸と男の死体だった。なぜ彼は昼日中見晴らしの良い崖から転落したのか? 国際情勢への鋭い眼差しが光る、英国的諧謔精神に満ちた連作ミステリ集を新訳にて贈る。創元推理文庫初収録作。/【収録作】「標的の顔」/「消えたプリンス」/「少年の心」/「底なしの井戸」/「塀の穴」/「釣師のこだわり」/「一家の馬鹿息子」/「彫像の復讐」/解説=大山誠一郎 -
見習い警官殺し
死体の第一発見者は、早朝の犬の散歩から戻ってきたマンションの住人だった。被害者の名はリンダ、母親のマンションの部屋に滞在していた警察大学の学生だ。彼女は強姦されたうえ絞殺されていた。県警本部長は腕利き揃いの国家犯罪捜査局の殺人捜査特別班に応援を要請する。それに応じて派遣されたのはエーヴェルト・ベックストレーム警部、伝説の国家殺人班の中では、少々外れた存在だ。現地に入ったベックストレーム率いる捜査チームは、早速捜査を開始する。CWA賞・ガラスの鍵賞など5冠に輝く『許されざる者』の著者の最新シリーズ第1弾。 -
ごきげんいかが、ワトスン博士
1889年夏。アイリーン・アドラーと親友のペネロピーは、パリで意識を失った男性を助ける。偶然にも、彼はペネロピーが家庭教師をしていたときの知人クウェンティンだった。医師の診察により、昏倒したのは毒物が原因だと判明するが、彼は詳細を語らない。だが、アイリーンの家で療養中に狙撃されたことで事情を打ち明ける。かつて戦場で助けられた軍医に迫る危機を知らせるため、危険を承知で彼を捜しているというのだ。軍医の名はワトスン――。アイリーンたちはアフガニスタンに端を発する事件をめぐり、名探偵ホームズとまたもや相まみえる! -
櫛の文字 銭形平次ミステリ傑作選
神田明神下に住む、凄腕の岡っ引・銭形平次。投げ銭と卓越した推理力を武器にして、子分のガラッ八と共に、江戸で起こる不思議な事件に立ち向かっていく! 見せ世物小屋にて、水槽で泳ぐ美女ふたりのうちひとりが殺された謎を解く「人魚の死」。暗号が彫られた櫛をきっかけに殺人が起こる「櫛の文字」。評判の良い美人の妾が奉公した材木屋で、店を脅かす事態が発生する「小便組貞女」。世間を騒がす怪盗の意外な正体を暴く「鼬小僧の正体」。383編にも及ぶ捕物帳のスーパーヒーローの活躍譚から、ミステリに特化した17編を収録した決定版。【収録作】「振袖源太」「人肌地蔵」「人魚の死」「平次女難」「花見の仇討」「がらッ八手柄話」「女の足跡」「雪の夜」「槍の折れ」「生き葬い」「櫛の文字」「小便組貞女」「罠に落ちた女」「風呂場の秘密」「鼬小僧の正体」「三つの菓子」「猫の首環」/編者解説=末國善己 -
退職刑事3
話半ばで目を閉じ、眠ってしまったかに見える父だが、油断はできない。こうしているときに思考回路はめまぐるしく動いているに違いないのだ。それが証拠に、私にはおよそ目鼻をつけられなかった事件が、鮮やかに解きほぐされていく……。ダイイング・メッセージから犯人を割り出す「乾いた死体」や暗号もどきを解読する「筆まめな死体」など、現職刑事の手に余る難題に往年の辣腕を揮う、退職刑事の事件簿7編を収録。国産の《安楽椅子探偵小説》定番中の定番として揺るぎない地位を占める、名シリーズ第3集。/【収録作】「大魔術の死体」/「仮面の死体」/「人形の死体」/「散歩する死体」/「乾いた死体」/「筆まめな死体」/「料金不足の死体」/解説=新保博久 -
ペインスケール
ロングビーチ市の高級住宅街で、下院議員の息子ベントン三世の妻と幼い子どもたちが殺害された。強盗から政治がらみの怨恨までさまざまな動機が考えられたが、刑事のダニーは壁に飾られた一家の写真を見て不自然さを感じる。子持ちの家庭なら子どもを中心にした写真を飾るのが一般的だろうが、主であるベントン三世の写真ばかりだったのだ。手がかりはそこに? 過去の事件で負った体と心の痛みを抱え、捜査に没頭する刑事ダニーと、静かに彼を支え続ける相棒の女性刑事ジェン。緻密極まりない捜査の魅力と男女刑事コンビの絆を描く警察小説!/解説=若林踏 -
月下の蘭/殺人はちょっと面倒
温室での洋蘭の栽培に全身全霊を捧げる美しい義姉。彼女が育てる人面花を巡る悲劇と戦慄の真相を描いた表題作ほか、花・星・蟲・鳥を題材として、幽玄の世界のうちに技巧を尽くした傑作ミステリ短篇集『月下の蘭』。かつて公安警察の鬼と呼ばれた盲目の老人と、彼の愛娘が伴った謎の客との会話が思わぬ過去を暴き出す「夜のジャスミン」ほか、男女の愛憎を中心に据え、鮮やかなツイストで読者を唸らせる『殺人はちょっと面倒』。幻の2冊を合本にて贈る。『血の季節』『弁護側の証人』など大胆な仕掛けで世を驚倒せしめた著者が、歌舞伎、能楽などの古典芸能をモチーフとした8篇を収録。【収録作】『月下の蘭』「月下の蘭――春は花」「残酷なオルフェ――夏は星」「宵闇の彼方より――秋は蟲」「ロドルフ大公の恋人――冬は鳥」/『殺人はちょっと面倒』「ラヴ・ホテル〈瀧〉にて」「殺人はちょっと面倒」「夜のジャスミン」「空白の研究 A Study in Blank」/『月下の蘭』初刊本あとがき/編者解題=日下三蔵 -
007/ロシアから愛をこめて【井上一夫訳】
ソ連情報部は、このところの失策続きを、なんとか挽回しようとしていた。そこで槍玉に挙げられたのが、英国秘密情報部。なかでも腕利きのスパイとして知られる、007ことジェームズ・ボンドだった。こうしてソ連の公式殺人機関スメルシュの、ジェームズ・ボンドに対する死刑執行計画が動き始める。舞台はイスタンブール。ヨーロッパとアジアが交わる混沌とした街。ボンドに恋するソ連情報部の美女との、豪華なオリエント急行での逃避行。二重三重に仕かけられた巧妙な罠に、さしものジェームズ・ボンドも、次第に搦めとられていく。シリーズ最高峰の傑作。/解説=戸川安宣 -
幻夢の聖域
「あたしの一族は死神に狙われているの。だからそいつを追い払うために、幻魔法師を探している」峠の宿屋で手伝いをしていたハーブラギスに、旅の薬師見習いミリナはそう告げた。だが、ハーブラギスがミリナの旅に同行することを決めたのは、彼女が持っていた金貨のせいだった。遠い昔に消えた王国エディムーンの金貨。ハーブラギスが子供の頃暮らしていた施設で、面倒を見てくれた不思議な女性が持っていた本に描かれていた紋章と同じだったのだ。エディムーンとは何なのか? 第1回創元ファンタジイ新人賞選考委員特別賞受賞後第1作! -
花嫁首 眠狂四郎ミステリ傑作選
ころび伴天連(バテレン)の父と武士の娘である母を持ち、虚無をまとう孤高の剣士・眠狂四郎。彼は時に老中・水野忠邦の側頭役から依頼を受け、時に旅で訪れた土地で謎と遭遇して、数々の難事件を解決する名探偵でもあった。密室状態にある大名屋敷の湯殿で、奥女中が相次いで不可解な死を遂げる「湯殿の謎」。寝室で花嫁の首が刎ねられ、代りに罪人の首が継ぎ合せられていた「花嫁首」。偶然助太刀した武士の妻の仇討ちに隠された、意外な真相が明かされる「悪女仇討」。時代小説の大家が生み出した異色の名探偵が奇怪な事件に挑む、珠玉の21編を収録する。【収録作】「雛の首」「禁苑の怪」「悪魔祭」「千両箱異聞」「切腹心中」「皇后悪夢像」「湯殿の謎」「疑惑の棺」「妖異碓氷峠」「家康騒動」「毒と虚無僧」「謎の春雪」「からくり門」「芳香異変」「髑髏屋敷」「狂い部屋」「恋慕幽霊」「美女放心」「消えた兇器」「花嫁首」「悪女仇討」/編者解説=末國善己 -
深夜の市長
昼とは全く別の姿を見せる真夜中の東京“大都市T”。奇怪な人々が闇に潜む不思議な都市を支配するのが、謎の老人・深夜の市長である。ある晩の殺人事件をきっかけに、彼の存在を知った僕。果たして深夜の市長の正体は? 傑作都市ミステリ「深夜の市長」。祖父とも思う資産家の老人が亡くなった後、少年が取った行動が予想外の事態を招く「仲々死なぬ彼奴」。人間の興奮をグラフにした“興奮曲線”によって、殺人犯を特定した博士が陥った悲劇を描く「キド効果」など珠玉の11編を収録。日本SFの先駆者にして唯一無二の奇想で彩る作品を描いた著者の真髄を示す、傑作ミステリ短編集。 -
猫が死体を連れてきた
身を切るような秋風がたちはじめたバラクラヴァ。新たな騒動の始まりを告げたのは、シャンディ教授の家政婦ミセス・ローマックスの飼い猫、エドモンドがくわえてきたかつらだった。持ち主にしてローマックス家の下宿人でもあるアングレー名誉教授に返却すべくさがしに出かけると、当の本人は博物館(になる予定のクラブハウス)の裏手で冷たくなっていた。第一発見者になったミセス・ローマックスの要請で駆けつけたシャンディ教授が少し調べただけで、不審な点がいくつも見つかり……? 農業大学の町が舞台の、明るく楽しいシリーズ第4弾。/解説=澤木喬 -
密室の鎮魂歌
世界的に成功した、ある女流画家の個展会場で、『汝、レクイエムを聴け』という作品を見た女が、悲鳴をあげて失神した。失踪した自分の夫の居場所をこの画家が知っているにちがいない、というのが彼女の不可解な主張だった。しかし、画家と失踪した男に接点はなかった。五年前の失踪事件は謎に満ちていた。そして五年後の今、ふたたびその失踪事件の現場だった家で事件が起きる。今度は密室殺人事件。さらに密室殺人は続く。問題の絵に隠された驚くべき真実! 魅力的な謎といくつもの密室に彩られた第14回鮎川哲也賞受賞の傑作本格ミステリ。/解説=村上貴史 -
【東京創元社無料読本】ベストセレクション〈2015 Summer〉
『ビール、枝豆、ミステリ』は夏の新しい習慣! 今年もまた「ベストセレクションフェア」の季節になりました。今回のラインナップは読み継がれている東京創元社の定番中の定番をはじめ、これから新たな定番になる新作・話題作など目白押しです。本電子書籍は、フェアのガイドブックとしてお役立ていただけるよう、ベストセレクションフェア・ラインナップ作品の立読み版(電子書籍を配信している作品に限る)を収録しております。どうぞお楽しみください。/立読み版収録作品=『体育館の殺人』青崎有吾、『アヒルと鴨のコインロッカー』『夜の国のクーパー』伊坂幸太郎、『聴き屋の芸術学部祭』市井豊、『夜の写本師』乾石智子、『配達あかずきん』大崎梢、『二度のお別れ』黒川博行、『青空の卵』坂木司、『模倣の殺意』中町信、『まもなく電車が出現します』似鳥鶏、『慟哭』貫井徳郎、『ハルさん』藤野恵美、『もう年はとれない』ダニエル・フリードマン/野口百合子 訳、『星を継ぐもの』ジェイムズ・P・ホーガン/池央耿 訳、『シャドウ』道尾秀介、『盤上の夜』宮内悠介 -
海辺の幽霊ゲストハウス
ニュージャージーの海辺に建つヴィクトリア様式の屋敷を買ったアリソン。シングルマザーの彼女は、築百年以上のこの屋敷を自らリフォームしてゲストハウスにし、9歳の娘メリッサと新しい生活を始めようとしていた。だがひょんなことから、屋敷に取り憑いているふたりの幽霊が見えるようになってしまう。それは、屋敷の前オーナーでツンツンしたマキシーと、気弱な私立探偵のポール。誰に殺されたか調べてほしいというポールの頼みで、調査を手伝うことにしたアリソンだったが、事件が起きてしまい……。明るく楽しい、コージーミステリ・シリーズ第1弾。