作品一覧 2022/05/30更新 壊れた世界で彼は 試し読み フォロー 死んだレモン 値引きあり 試し読み フォロー 1~2件目 / 2件<<<1・・・・・・・・・>>> フィン・ベルの作品をすべて見る
ユーザーレビュー 死んだレモン フィン・ベル / 安達眞弓 タイトルからは全くなんの小説か想像もつかず。読んでみてびっくり、これはオモロい! いわゆる勝ち組な人生の成功を得つつも、心に空虚さを覚え、ウツ的に空虚になった挙句、妻に逃げられ、交通事故で下肢を麻痺する大けがを負った主人公。 彼の人生を取り返す再生の物語と、ニュージーランド最南端の小さな町リヴァ...続きを読むトンに隠された秘密を暴く物語、さらにはそこにどんでん返しのミステリーまで伴い、やや詰め込みすぎかとも思いきや、最後見事な着地を決める巧みさ。 小説の構成も見事で、現在パートと過去パートを交互に織りなすパターンは良くあるが、マンネリ臭は一切なく、王道のパターンの利点を存分に生かして楽しませてくれる。 これがデビュー作とは恐れ入る、次作以降も翻訳されるだろうか?是非追いかけたい作家がまた一人増えてしまった。 Posted by ブクログ 死んだレモン フィン・ベル / 安達眞弓 下は海、崖の途中で宙吊りって、『その女アレックス』の宙吊りの檻とどっちが恐ろしいやろかと震える。そんな絶体絶命の状況から始まります。 町の中心から外れた最果ての地で、明らかに怪しい三人兄弟の隣家に住むことになった主人公は車椅子、バツ1、元アル中。ひたすら暗いサスペンス劇になりそうなところ、彼の周囲...続きを読むに集まるのがユーモアに溢れた善人ばかりで救われます。 謎解きではなくて三人兄弟が罪を犯した理由を追求する物語だと思ったら、あらら、やっぱりそれだけじゃなかったのか。自費出版の翻訳とは驚き。ついでに、双子の出生率はベナンが世界でトップクラスという豆知識も(笑)。 映像化するとしたら、ちょっと年齢がちがうかもしれませんが、フィンにエドワード・ノートン、タイにドウェイン・ジョンソンというのはどうでしょう。温水のトゥイにはエディ・マーサンとか。三兄弟が悩むところ。少なくともショーンは男前じゃないと。 Posted by ブクログ 死んだレモン フィン・ベル / 安達眞弓 冒頭で、車椅子に固定されたまま、崖に逆さ吊りという絶体絶命のピンチに立たされた主人公フィン。さらにピンチに襲われる現在パートと、殺人の疑いのある隣人、ゾイル兄弟からと思われる不気味な数々の事件の謎を追う過去パートが交互に提示される。まぁゾイル兄弟の不気味なこと!こんな隣人だと引っ越すしかないでしょ!...続きを読むてくらい不気味だった。からこその面白さ。たくさん大怪我は負ったものの、よく生きてたね。不死身か。アル中、離婚、事故による半身不随と苦悩続きのフィンが、町人との交流、ある女性との恋と、生まれ変わっていく再生の物語でもある所が良かった。 Posted by ブクログ 死んだレモン フィン・ベル / 安達眞弓 七月の目玉となった作品。個性がいくつもある。一つにはニュージーランド発ミステリー。作者は、法心理学者としての本業の傍ら、小説は電子書籍でしか契約しないという欲のない姿勢を貫いているが、この通り、内容が素晴らしいため、作者の意に反して紙のメディアでも世界中に翻訳され、売れっ子となりつつある。 ペ...続きを読むージを開いた途端、絶体絶命の窮地にある主人公の現在が描写される。いきなりの海岸の崖に車いすごと足が岩に引っかかって宙ぶらりん。ぼくはこの作品の前に、クレア・マッキントッシュの『その手を離すのは、私』という本を読んでいて、その最終シーンが海辺の崖の上での意味深なシーンだった。まるでその続きみたいに始まるのだが、場所は『その手を離すのは、私』のウェールズの崖ではなく、遠く離れた南半球、ニュージーランドは南東のしかも南の外れにあるリヴァトン。面白過ぎて、グーグルマップで場所を探す作業からぼくの読書は始まる。凄い! 南の果てで南極に一番近い海岸線。凄い! それも崖の上で宙ぶらり状態。しかも車いす利用者なのか。凄い。描写は六か月前の過去に、私ことフィン・ベル(そう著者と主人公が同名である)が銃と、人の頭を吹き飛ばせるホローポイント弾を買い込むシーンから始まる。その後、気になり過ぎる現在と、過去とを行き来しつつ物語は進んでゆく。 主人公は南アフリカ出身でニュージーランドに流れ着いた「人生の落後者」(=原題のDead Lemons)であり、妻に去られ、酔いどれてトラックに突っ込んで両足とその感覚を失ってしまった車いす生活者。『楽園の世捨て人』というカナリア諸島に行き着いた中年男が正義を通して自分を撮り戻す作品があったが、そちらが悲壮で真面目な小説だったのに比べると、こちらの作品は同じような絶望的設定なのに、何故か明るいのだ。脇役たちの明るさ、軽さ、人の好さ、等々が主人公を助けると同時に、読者をも笑いや優しさに満ちた時間へと掬い上げてくれる。主人公の独り語りも、悲壮感というより破れかぶれな決意感のようなものがすっと通っていてなかなか宜しい。 作家の持ち分であるサイコセラピーの部分は、優しく厳しく熱いおばはんセラピストによって、すごく専門的な知識を駆使して語られてゆく。この辺の知識豊富な部分と、ニュージーランドに流れ着いた者たちの歴史を紐解く部分も凄まじい。 捕鯨やら砂金やらに群がった無法者たちの300年前の姿がロマンチックであると同時にワイルドで、その舞台となったこのリヴァトンの辺りが、何ともきな臭い隣人三兄弟の薄ら寒いような悪の怖さを醸し出し、主人公の緊張感を行間から滲ませ続ける。過去に起こった少女とその父の連続行方不明事件を調査するにつれ、緊張は高まる。 主人公が車を飛ばして相談に駆け付ける元刑事ボブ・レスの犯罪心理分析の語りのシーンもおそらく作者ならではの専門知識が活躍する。怖い隣人のこと。行方不明事件のこと。主人公自身が脅しや恐怖に曝される緊張状態の中で、世界の果ての海岸線に接した小さな町が、事件の再びの捜査に湧き立つ。 そして最後に現在に戻る。二転三転。驚きの結末。全体を包む現在時間の緊張感と、じっくり語りゆっくり進み、時々恐怖、という過去時間がついに集約する大団円。見事な構成。見事な読ませ感。ミステリの要素をいろいろと重ね合わせてホチキスで止めたような結末。読み始めたら最終シーンまで収まりのつかないこの一冊に、是非とも翻弄されて頂きたい。 しかし、これがこの作者、小説デビューだって? うーむ、俄かに信じ難いのだ。次が楽しみである。 Posted by ブクログ 死んだレモン フィン・ベル / 安達眞弓 車椅子生活の主人公の、ニュージーランドの南端での緊迫したシーンから物語がスタートする。 筆者はカウンセリング専門職が前職ということで、犯罪者の言動や行動に反映されている内面が細やかに描写されていて、怖かった。 地名や人物名に慣れず読むのが大変だったが、サスペンスとしての出来も高く暇なシーンはない。 ...続きを読むそれでいて、終盤の終盤にどんでん返しもある。 また、自分に絶望していたり、この先どうしていいかわからない、そんな状態の時に読むと、希望が見えるような一面も持ち合わせている作品でもありました。 学びとは苦痛であるという言葉は、しっくりきました。 Posted by ブクログ フィン・ベルのレビューをもっと見る