フィン・ベルのレビュー一覧
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ネタバレタイトルからは全くなんの小説か想像もつかず。読んでみてびっくり、これはオモロい!
いわゆる勝ち組な人生の成功を得つつも、心に空虚さを覚え、ウツ的に空虚になった挙句、妻に逃げられ、交通事故で下肢を麻痺する大けがを負った主人公。
彼の人生を取り返す再生の物語と、ニュージーランド最南端の小さな町リヴァトンに隠された秘密を暴く物語、さらにはそこにどんでん返しのミステリーまで伴い、やや詰め込みすぎかとも思いきや、最後見事な着地を決める巧みさ。
小説の構成も見事で、現在パートと過去パートを交互に織りなすパターンは良くあるが、マンネリ臭は一切なく、王道のパターンの利点を存分に生かして楽しませてくれる。 -
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ネタバレ下は海、崖の途中で宙吊りって、『その女アレックス』の宙吊りの檻とどっちが恐ろしいやろかと震える。そんな絶体絶命の状況から始まります。
町の中心から外れた最果ての地で、明らかに怪しい三人兄弟の隣家に住むことになった主人公は車椅子、バツ1、元アル中。ひたすら暗いサスペンス劇になりそうなところ、彼の周囲に集まるのがユーモアに溢れた善人ばかりで救われます。
謎解きではなくて三人兄弟が罪を犯した理由を追求する物語だと思ったら、あらら、やっぱりそれだけじゃなかったのか。自費出版の翻訳とは驚き。ついでに、双子の出生率はベナンが世界でトップクラスという豆知識も(笑)。
映像化するとしたら、ちょっと年齢が -
Posted by ブクログ
七月の目玉となった作品。個性がいくつもある。一つにはニュージーランド発ミステリー。作者は、法心理学者としての本業の傍ら、小説は電子書籍でしか契約しないという欲のない姿勢を貫いているが、この通り、内容が素晴らしいため、作者の意に反して紙のメディアでも世界中に翻訳され、売れっ子となりつつある。
ページを開いた途端、絶体絶命の窮地にある主人公の現在が描写される。いきなりの海岸の崖に車いすごと足が岩に引っかかって宙ぶらりん。ぼくはこの作品の前に、クレア・マッキントッシュの『その手を離すのは、私』という本を読んでいて、その最終シーンが海辺の崖の上での意味深なシーンだった。まるでその続きみたいに始ま -
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物語はその昔、ゴールドラッシュに湧いたニュージーランド南島の小さな町の人質事件から始まる
皆がなぜ?と思う善良な市民の家族をギャングたちが人質にとる
そして主犯格のギャングと家の主人が姿を消す…
一体なぜ?どこに消えたのか?
二人を追うのはニックとトーブの歳の離れた警察官
とにかくこのバディがいい!
ニックの一人称で語られる章、逃走している二人を描く章、嵐を描く章…
この3つのパートの繰り返しで物語が進む
ニュージーランドの気候やゴールドラッシュなどの歴史、土着のマオリとヨーロッパ系・中国系移民との確執…
それらに絡んだミステリーという設定が大変興味深く、おもしろい
嵐のなか、ニックとト -
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妻と離婚し、酒に溺れ飲酒運転で下半身の自由を失ったフィン(作者と同じ名前)が心機一転向かったのがニュージーランド最南端の町
フィンはその町のさらに南の人里離れたコテージを購入
しかしフィンが購入する以前にコテージに住んでいたコッター家の娘アリスが26年前に失踪していた
それを知ったフィンは事件に関わっていると思われるゾイル家を調べ始めるが…
冒頭、いきなりフィンは絶体絶命…
車椅子に乗ったフィンは崖で車椅子ごと巨石にはさまれ宙ぶらりん…
どうした?
なぜ?
助かるのか?
そんなことを気にかけながら、フィンがそれに至った出来事の道筋をたどっていくようにページを捲っていく
そして明かされた事実 -
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車椅子生活の主人公の、ニュージーランドの南端での緊迫したシーンから物語がスタートする。
筆者はカウンセリング専門職が前職ということで、犯罪者の言動や行動に反映されている内面が細やかに描写されていて、怖かった。
地名や人物名に慣れず読むのが大変だったが、サスペンスとしての出来も高く暇なシーンはない。
それでいて、終盤の終盤にどんでん返しもある。
また、自分に絶望していたり、この先どうしていいかわからない、そんな状態の時に読むと、希望が見えるような一面も持ち合わせている作品でもありました。
学びとは苦痛であるという言葉は、しっくりきました。 -
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のっけから車椅子の主人公はピンチに陥っており、すでに犯人と思われる敵に狙われている。回想と現在が交互に語られるうちに、事件の詳細が分かってくるというストーリー。タイトルの「死んだレモン」とは「人生の落伍者」という意味らしい。その一歩手前でふんばる主人公は、結構大変な目にあってもしぶとく生き残る。まるでホラーな犯人たちとは対象的に、主人公の周りは温かく優しい人たちに見守られている。この人たちが巻き込まれませんようにと思いながら読んだ。最後すっきり決着できて良かった。
舞台はニュージーランド。羊が人口より多い国など牧歌的なイメージしかなかったが、入植者、捕鯨、ゴールドラッシュ等、どんな国にも黒い歴 -
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島国ニュージーランドのミステリーが読めるとは。グローバル社会の恩恵を実感します。日本のミステリーがニュージーランドで読まれることがあるかなあ。
風景描写が具体的なので、荒涼として寒々しいリヴァトンの風景がイメージできました。ニュージーランドの歴史の説明も実に詳しく、知らなかったことばかり。一冊で二種類の本を読んでいるかのような錯覚に陥ります。やり直そうとするフィンを囲む地元の人々の温かさが沁みますね。タイの接し方が素敵で、こんな風にしたい!と思わされました。
事件の方は誉田哲也作品かと思うくらいの酷さだし、冒頭はヒッチコックの映画のよう。けれど、前述のようなサブストーリーの中に埋もれてしまって -
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ニュージーランド南島の最南端「リヴァトン」が舞台のミステリー
NZも大好きな国の一つだが、「リヴァトン」なんて初めて聞く
早速Googleアースで検索
うーん田舎(笑)
リヴァトンはかつて捕鯨とゴールドラッシュの二度の好景気に湧いた街
どちらも採りまくったらどうなるか…
それが今のリヴァトン
その中でも街から離れた海沿いのフィヨルド地域の「最果ての密猟小屋」と呼ばれる古いコテージを手に入れ新生活を始める主人公
訳あり感満載
彼の名前はフィン・ベル
著者と同姓同名だ
その意味深な理由は、実はトホホな内容だが、お陰で著者の名前をバッチリ覚えることが出来た
この作品は著者フィン・ベルの初出版との -
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ネタバレ珍しきかな、ニュージーランド発ミステリ。
ナイオ・マーシュ賞新人賞受賞作とのこと。
幼い頃を南アフリカで過ごし、若くして成功した主人公のフィン・ベル。
35歳を過ぎた頃から、午前3時になると目覚めてしまう不眠に悩まされ、酒に溺れる。
妻との別れを迎えた矢先、交通事故に遭い下半身麻痺の障がいを負ってしまう。
事故後のリハビリ、セラピーを経て、まだ明確な意志は形作られないものの、酒を断ち、事業を売却し、”南の南、ニュージーランドの果ての果て”リヴァトンのコテージを購入し人生のリスタートを切ろうと移り住んできた。
そんなベルが冒頭、車椅子と共に崖で宙吊りになり、目前に迫った死を嘆くシーンに始ま -
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死んだレモンとは、人生の落伍者のこと。
カウンセラーに「あなたは死んだレモンか」と
聞かれたフィンは返事ができなかった。
妻と離婚し、事故で半身不随になり
アル中克服の修行中。
半ば死ぬ気でニュージーランドの片田舎の
コテージを買って移り住んできた。
ところが、このコテージの隣人兄弟がいわくつき。
前のオーナーの娘が誘拐・殺害された事件は
街の誰もが彼らの犯行だと思っているが
まったく証拠がないので逮捕できずにいた。
隣人に怯えて暮らすことに耐えられないフィンが
なんとか事件の謎を解こうと動き始めて
ついには自分の命まで狙われてしまう!
くそ〜、犯人わかってるのになぁ〜と
やきもきしながら