国内小説 - 講談社作品一覧

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  • 焦土の刑事
    3.6
    1~3巻924~990円 (税込)
    東京は壊れつつある。見慣れぬ街に変わりつつある――。 1945年。B29による空襲の翌朝、防空壕の中で女性の遺体が発見される。首には刃物による切り傷が。無数の遺体と目の前のたったひとつの遺体。 これは戦争ではない。個人に対する犯罪だ――。 捜査を進める京橋署刑事の高峰は署長から思わぬ言葉を聞かされる。「あれは、空襲の被害者だ」。殺人事件のもみ消し――そしてまた殺人が起きる。 高峰は、中学からの同級生で特高に籍をを置く海老沢とともに、終戦をまたいで「戦時下の殺人」の犯人を追い詰めていく。 警察小説の旗手が満を持して描く、壮大な警察大河シリーズ、ここに開幕。
  • 鉄の骨
    4.4
    中堅ゼネコン一松組の若手、富島平太が異動した先は、「談合課」と揶揄される、大口公共事業の受注部署だった。今度の地下鉄工事を取らないと、ウチが傾くぞ――たしかな技術力を武器に、真正面から入札に挑もうとする一松組の前に、「談合」の壁が立ちはだかる。組織に殉じるか、正義を信じるか。吉川英治新人賞に輝いた白熱の人間ドラマ!(講談社文庫)
  • 新装版 懲戒解雇
    4.0
    旧財閥系の合繊大手トーヨー化成で中堅の筆頭株と自他共に認める森雄造は、常務の川井が主張する拡大強硬路線を批判した。その後、川井の不正を指弾する投書が社長宛に届く。森の仕業だと勝手に決めつけた川井は、手下に彼の粗探しを命じ懲戒解雇に追い込もうとするが……。勇気あふれる企業小説の傑作。(講談社文庫)
  • 空飛ぶタイヤ(上)
    4.4
    1~2巻759円 (税込)
    走行中の大型トレーラーが脱輪し、はずれたタイヤが歩道を歩く若い母親と子を直撃した。トレーラーの製造元ホープ自動車は、トレーラーを所有する赤松運送の整備不良が原因と主張するが、社長の赤松は到底納得できない。独自に真相に迫ろうとする赤松を阻む、大企業の論理に。会社の経営は混迷を極め、家族からも孤立し、絶望のどん底に堕ちた赤松に、週刊誌記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。(講談社文庫)
  • スパイの妻
    3.8
    選ぶべきは愛か、大儀か――。 第二次大戦時、混沌する運命に翻弄される男女の愛憎を描く、 究極の歴史サスペンス! 1940年、太平洋戦争前夜の神戸。満州事変以降、国内外で不穏な空気が漂う最中、福原聡子は仕事で満州へ赴いた貿易商の夫・優作の帰国を待ちわびていた。しかし、帰国後の優作は人が変わったようで、憲兵隊からも目をつけられ始める。満州で何があったのか、夫は何を隠しているのか。優作と家庭の幸福を守るため、夫の秘密を探る聡子が目にした驚愕の真実とは――? 演出・黒沢清、作・濱口竜介、野原位、黒沢清による、蒼井優、高橋一生出演のNHK BS8Kドラマ「スパイの妻」(2020年6月放送予定)、渾身の小説版。
  • エオンタ/自然の子供 金井美恵子自選短篇集
    -
    過去と現在。記憶と現実。存在と不在。 自己と他者。周到に仕組まれた言葉の奔流が、確かと信じられている輪郭をことごとく溶かし、境界を混じりあわせ、めまいにも似た乱反射を読む者に引き起こす。「読むことが、私の生きている証し」老練な読者たる著者が、最初期二作品を含む初期作品群から、現在の眼で選んだ短篇集、第三弾。
  • 爆笑大問題
    値引きあり
    -
    1~2巻885~1,100円 (税込)
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 待望の最新・時事問題漫才集――天下無敵の超辛口、切り捨て御免で無責任! 怖いものなしで言いたい放題、世紀末日本をメッタ斬りにする笑いのテロリズム!! 第1講 どーなるどーする日本の政治!? 第2講 どーなるどーするクリントン!? 第3講 立ち直るのか、日本の経済!? 第4講 これでいいのか、日本の休日!? 第5講 どーなるどーする日本の夫婦!? 第6講 もうすぐ行けるぞ宇宙旅行!? 第7講 おかしくないか、日本の音楽!? 第8講 どーなるどーする環境ホルモン!?
  • 銀行狐
    3.4
    「正義? ある程度までいくと、政治力でねじ曲がるやつのことか?」 金と人情にまつわる傑作人間ドラマ五編。2004年講談社文庫刊『銀行狐』の新装版。 銀行には金と秘密と謎がある。いや時には、「狐」から頭取宛てに恐ろしい脅迫状が届いたり、金庫室から老婆の頭部が見つかることも――怨みを買うことは日常茶飯事、となれば犯人像もまた多岐にわたる。動機は金の怨みか、憎しみか、悲しみか。日常に亀裂が走り、平凡な人間に魔が差すときを描いたミステリー短編集全五編。
  • アベラシオン 完全版
    -
    1巻1,980円 (税込)
    冬のヴェネツィア。華やかなパーティのさなかに起きた殺人事件。目撃者の藍川芹は、事件関係者の招待で、北イタリアの山中にそびえる〈聖天使宮〉を訪れる。その正五角形の宮殿で凄惨な殺人事件が……。「建築探偵桜井京介の事件簿シリーズ」にもリンクする、ミステリの大伽藍。デジタル完全版!
  • ハ-ド・ラック・ウ-マン
    4.0
    シンこと石森信たちのロックバンド「ナイトメア」のグルーピーが殺された。誰も彼女の本名を知らない。メンバーにも疑いがかかるが……。待望の長編ロック小説。(講談社文庫)
  • 地下鉄に乗って 新装版
    3.6
    永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは30年前の風景。ワンマンな父に反発し自殺した兄が現れた。さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で精力的に商いに励む父に出会う。だが封印された“過去”に行ったため……。思わず涙がこぼれ落ちる感動の浅田ワールド。吉川英治文学新人賞に輝く名作。
  • オリンピックにふれる
    3.3
    1巻1,463円 (税込)
    香港、上海、ソウル、そして東京――分断された世界に、希望は生き残れるか?小説だから見えてくる、光と翳のオリンピック。 変貌をとげるアジアの街で、人生の岐路に揺れる若者たち。コロナ下の東京に、オリンピックの幕が上がる。 2021年夏、東京オリンピックと同時進行で新聞連載された話題作「オリンピックにふれる」をふくむ注目の最新小説集! 「香港林檎」 「この香港のどこかを、もう一人の自分が歩き回っているような気がして仕方ないんだ」 ボート選手枠で入社して10年、タイムが低迷する偉良はコーチから思わぬ宣告を受ける。 「上海蜜柑」 「私たち、上海に住んでるのよ。欲しいものは欲しいって、今、世界で一番言える街に」 ケガで体操選手を諦め、臨時体育教師になった阿青。結婚目前の恋人には初めてのチャンスが訪れていた。 「ストロベリーソウル」 「がんばるって、約束したじゃないか」  ソウルのスケート場で働くクァンドンは、三回転ジャンプに挑む赤い練習着の少女に心惹かれるが……。 「東京花火」 「誰も悪くない。なのに、誰も幸せじゃないのはなぜだ?」 東京五輪が始まった。開会式を前に失踪した部下を探す白瀬は、国立競技場の前に立つ。2021年東京オリンピックと同時進行で新聞連載された話題作。
  • 三日月邸花図鑑 花の城のアリス
    4.0
    『後宮の烏』の著者が描く和風アリスファンタジー!「早くわたしを見つけて」禁忌の庭に住む少女と、優しすぎる探偵が解く、切ない秘密。「庭には誰も立ち入らないこと」――光一の亡父が遺した言葉だ。広大な大名庭園『望城園』を敷地内に持つ、江戸時代に藩主の別邸として使われた三日月邸。光一はそこで探偵事務所を開業した。ある日、事務所を訪れた不思議な少女・咲は『半分この約束』の謎を解いてほしいと依頼する。彼女に連れられ庭に踏み入った光一は、植物の名を冠した人々と、存在するはずのない城を見る。
  • 天翔る
    4.2
    札幌に住む看護婦の貴子は、学校に行けなくなった11歳の少女、まりもと知り合う。自分が通う牧場(ランチ)にまりもを誘うが、そこで待っていたのは、風変わりな牧場主と、エンデュランスという乗馬耐久競技だった。馬をいたわりながら、野山にめぐらされたルートをたどり、長距離を翔けぬける。競技に魅せられた者たちだけが見ることのできる世界とは? それぞれに喪失感を抱えた男女たちが生きることに向き合っていく感動作。
  • 風のマジム
    4.4
    ほんとうにあった夢物語契約社員から女社長に――実話を基に描いたサクセス・ストーリー。琉球アイコム沖縄支店総務部勤務、28歳。純沖縄産のラム酒を造るという夢は叶うか!風の酒を造りたい!まじむの事業計画は南大東島のサトウキビを使って、島の中でアグリコール・ラムを造るというものだ。持ち前の体当たり精神で島に渡り、工場には飛行場の跡地を借り受け、伝説の醸造家を口説き落として――。
  • 密やかな結晶 新装版
    4.2
    その島では多くのものが徐々に消滅していき、一緒に人々の心も衰弱していった。 鳥、香水、ラムネ、左足。記憶狩りによって、静かに消滅が進んでいく島で、わたしは小説家として言葉を紡いでいた。少しずつ空洞が増え、心が薄くなっていくことを意識しながらも、消滅を阻止する方法もなく、新しい日常に慣れていく日々。しかしある日、「小説」までもが消滅してしまった。 有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。
  • 戸隠伝説
    4.3
    作家・水戸宗衛の助手・井上は、偶然にも、謎の美女・ユミと知り合う。彼女は、戸隠の神につながる家系の娘だった。ふたりは恋人同士になり、同時に、井上自身の感覚には奇妙なものが漂いはじめる。やがて彼は、信州に戻っているというユミからの誘いで、戸隠山へ出かけた。彼を待ちうけていたのは、古代の神々の激闘だった。壮大なる伝奇ロマンの名作!
  • 好かれようとしない
    3.8
    デートの経験もある。男と寝たこともある、一度きりだけど。二十五歳の二宮風吹(にのみやふぶき)は「必死」が苦手。恋に餓えた顔を晒(さら)すぐらいなら地味で結構。そんな私が一目惚れするなんて。鍵屋の若旦那を想う気怠(けだる)く、もどかしい日々。攻め手が分からない。そんなときアパートの大家が言った――「好かれようとしないことよ」。
  • くもの糸・杜子春 (新装版) 芥川龍之介短編集
    3.3
    「くもの糸」 大どろぼうの迥国ノ多(かんだた)は、死後地獄で苦しんでいた。お釈迦様は、昔迥国ノ多がくもを助けたのを思い出し、極楽からくもの糸をたらした。それにすがって、迥国ノ多は極楽をめざしてのぼっていくが……!? 「杜子春」 仙人のおしえで、2度まで一夜にして都でいちばんの大金持ちになった杜子春(とししゅん)は、世の中のむなしさから、仙人になろうとする!? 芥川龍之介の名作11編を収録!
  • 砂の粒/孤独な場所で 金井美恵子自選短篇集
    2.0
    一筆ずつ塗り重ねられる精緻な絵画のように、あるいは一針ずつ施される絢爛たる詩集のように――一語一語選び抜かれた言葉は、思わぬつながりを持つ次の言葉を連れてきて、夢中でそれらを追ううちに思いもよらない地平に連れ去られていく。時空間も記憶も等質な粒子となって混じり合い、拡散し、迷宮のような読書体験をもたらす、著者初の自選短篇集。
  • 老害の人
    3.7
    1巻1,672円 (税込)
    『終わった人』『すぐ死ぬんだから』『今度生まれたら』に続く「高齢者小説」第4弾! 定年、終活、人生のあとしまつ……。 自分のこと、親のこと、いずれは誰もが直面する「老後」。 「最近の若い人は……」というぼやきが今や「これだから『老害』は」となってしまった時代。 内館節でさらなる深部に切り込む!
  • 八月からの手紙
    4.1
    一九四六年、戦後間もない東京で野球の力を信じた男がいた。復興への期待を胸に、「日本リーグ」を立ち上げようと走り出す日系2世の元ピッチャー矢尾。戦時中、カリフォルニアの収容所で絶望の日々を送る彼を支えたのは、ニグロリーグのスター選手ギブソンとの友情だった。構想10年、渾身の感動作! (講談社文庫)
  • 光と風と夢 わが西遊記
    4.0
    喀血に襲われ、世紀末の頽廃を逃れ、サモアに移り住んだ『宝島』の作者スティヴンスン。彼の晩年の生と死を書簡をもとに日記体で再生させた「光と風と夢」。『西遊記』に取材し、思索する悟浄に自己の不安を重ね〈わが西遊記〉と題した「悟浄出世」「悟浄歎異」。──昭和17年、宿痾の喘息に苦しみながら、惜しまれつつ逝った作家中島敦の珠玉の名篇3篇を収録。
  • 野

    5.0
    著者の故郷を舞台にそこに住む人々とその暮らしを描く。厳しい自然と対峙する強靱な生命力のしたたかさ。優しく哀しくユーモア滲む短篇の名手・三浦哲郎の瑞々しき豊饒の世界。「金色の朝」「がたくり馬車」「沈丁花」ほか〈故郷〉の匂い染み込む作品群16篇。新境地を拓いた著者ならではの短篇集。
  • 天狗と狐、父になる
    4.7
    1~2巻759~792円 (税込)
    世と関わるのも、子を育てるのも、難しいものだ。 大天狗と九尾の狐は犬猿の仲。 そんな二人がタッグを組んだ初のプロジェクトは……子育て!? 心温まるあやかしとこどもの話。
  • 神様ドライブ
    4.1
    1巻1,562円 (税込)
    就職活動がうまくいかない休学中の大学生・みつるは、亡き父親そっくりの男・紡に声をかけられ、全国の神社を巡る旅に出る。途中で出逢った看護師ほのかも加わり、旅はいよいよ賑やかに。旅を続けるうち、紡が神社を巡るとした驚くべき理由を聞かされる。神社は全国に8万以上あり、コンビニより多い。全国の神社は何のために、どんな神を祀っているのか? お参りの仕方から鳥居の由来まで、神社のことが好きになります。
  • 愛されなくても別に
    4.3
    第42回吉川英治文学新人賞受賞作! 祝デビュー10周年! 時間も金も、家族も友人も贅沢品だ。 息詰まる「現代」に風穴を開ける、「響け! ユーフォニアム」シリーズ著者の代表作! 遊ぶ時間? そんなのない。遊ぶ金? そんなの、もっとない。学費のため、家に月8万を入れるため、日夜バイトに明け暮れる大学生・宮田陽彩。浪費家の母を抱え、友達もおらず、ただひたすら精神をすり減らす――そんな宮田の日常は、傍若無人な同級生・江永雅と出会ったことで一変する!
  • 小説 仮面ライダー鎧武
    4.8
    鎧武とバロンの最終決戦が行われたのち、終末思想を信奉する秘密結社「黒の菩提樹」が暗躍を始める。そして、異空間をさまよう謎の男・狗道供界。謎のロックシードが沢芽市にばらまかれ、ふたたび混乱が訪れる。狗道供界と「黒の菩提樹」を倒すため、呉島貴虎、光実たちが立ち上がる!
  • アルプス誘拐ルート
    5.0
    アルプスを望む列車で誘拐犯と十津川が対決! ――実業家の愛娘が、学校から、迎えの外車とともに消えた。そして数時間後、父親に、1億円の身代金を要求する電話が来る。やはり、巧妙な誘拐事件だった! 翌朝、現金を持った父親は、犯人の指示通り、新宿駅から急行「アルプス号」に乗り、十津川警部らもひそかに後を追うが、展開は意外や……。旅情推理の白眉。
  • 暗夜行路
    -
    不義の子として生まれ、父に冷遇され、祖父の家で育てられた主人公・時任謙作が、暗い運命に創作をもって立ち向かう自我発展の経過を、美しい自然描写とともに、明晰な文体で表現。祖父の妾で20も年上の女に恋する謙作の出生の秘密とは? 現代日本文学の記念碑とも称すべき名作長編。17年間を要した著者唯一の長編小説である。
  • お天気おじさんへの道
    -
    R45世代へ贈る、中年受験ライフのススメ――エーロゾル、はなこさん、コリオリ力(りょく)……この気象用語の意味がわかりますか? 天気予報好きが高じて、人気コラムニストが「合格率4.1%」の国家試験に挑んだ! 2年近くにおよぶ「五十の手習い」な日々を克明に描きつつ、受験のコツや天気の知識も身に付く、お役立ちエッセイ。気象予報士・泉麻人、誕生?
  • 小説 仮面ライダーゴースト ~未来への記憶~
    4.0
    本作は、シリーズ脚本家の福田卓郎氏の完全書き下ろしストーリーで、テレビシリーズ&劇場映画の補完と、Vシネマ「ゴースト RE:BIRTH 仮面ライダースペクター」の後日譚となります。また、巻末には「仮面ライダーゴースト」のストーリー世界の全史を解説した『仮面ライダーゴースト 魂の記憶』も掲載。。
  • 花曝れ首
    4.8
    地獄が恐うおすのんか? 修羅がそんなに恐ろしおすか? 好いた男と見る修羅や。おちる地獄や。おちとみやす――夏の北嵯峨、陽ざらしの化野に立ちあらわれた妖かしの影、秋童・春之助二人の色子が物語る、はかない栄耀のはての無惨な性……。表題作のほか「恋怨に候て」「影の風神」など4篇、魔に憑かれた魂の官能美の極致、妖かしの陶酔境を描ききった伝奇ロマン。身性の毒が、人を花に変える!(作品集「熱帯雨林の客」改題)
  • ピクニック、その他の短篇
    4.3
    感覚的、幻想的イメージ、風刺と暗喩の交錯する詩的文体。時間と空間を否定した特異の作品世界を築き、「桃の園」に描かれる記憶の不明をはじめ、作品の底に澱のように淀む家族の影は、現実の不安を描出する。表題作「ピクニック」のほか、「競争者」「窓」「木の箱」「月」「既視の街」「くずれる水」「豚」「鎮静剤」「家族アルバム」「あかるい部屋のなかで」の12篇を収める短篇集。
  • 浅水湾の月
    3.0
    玩弄物として貧民窟から拾われた、欧亜混血美女・ロレッタ崔。彼女はいま、捨てられようとしている。リパルスベイに昇った十四夜の月が、かすかにその手の中のものを光らせた――。返還を目前にした香港を舞台に、あたかもゆるやかな死を迎えるごとく、頽廃を生きる人々の絶望的な愛・性・死を描く、魅惑の連作。
  • ぼくと未来屋の夏
    3.5
    山村風太の奇妙な夏休みは、1学期最後の日、「未来を知りたくないかい?」というひとことから始まった。風太と「未来屋」猫柳健之介のひと夏の冒険!  夏休みのワクワクとドキドキが、たっぷりつまった、夏休みの読書にぴったりの作品です。
  • 盤上に散る
    3.6
    唯一の家族だった母を亡くした明日香は、遺品の中から一通の出されなかった手紙を見つける。宛名は「林鋭生様」。それが将棋の真剣師の名だと知り、明日香は林を捜すことに。ある対局の後、忽然と姿を消したという男と、母との関係は。昭和を生きた男女の切なさと強さを描いた傑作長編。
  • かわいい結婚
    3.6
    「かわいい結婚」…「結婚ってなんなんだ?」という疑問から生まれた作品。結婚して仕事をやめ、専業主婦になった29歳のひかり。しかし、家事能力はゼロ。当然、部屋は散らかり放題。もちろん食事も作れない。夫とは仲良しだけど、こんなに家事が延々と続くなんて……。 騙された!わたし騙された!騙されてた! 結婚生活のリアルをコミカル&ブラックに描く。ほか「悪夢じゃなかった?」「お嬢さんたち気をつけて」二篇収録。
  • 風の歌を聴け
    4.1
    「あらゆるものは通り過ぎる。誰にもそれを捉えることはできない。僕たちはそんな風に生きている」1970年8月、帰省した海辺の街。大学生の〈僕〉は、行きつけのバーで地元の友人〈鼠〉と語り明かし、女の子と知り合い、そして夏の終わりを迎える。過ぎ去りつつある青春の残照を鋭敏にとらえ群像新人賞を受賞した、村上春樹のデビュー作にして「初期三部作」第一作。
  • 失楽園のイヴ
    4.5
    イヴの異称を名前に持つ女、上田絵羽。絵羽はある野望をもち、日本国内の超進学校に潜り込む。そこには数学の天才児・上杉和典が在籍していた。絵羽は己の目的を達成するために、自分が目を付けた優秀な人間に扇情的な言葉を投げかける。絵羽からの荒唐無稽な要望に強い拒絶感を感じる一方で、強く惹かれる和典。しかしその裏に見え隠れする、得体の知れない闇に危険を感じ、それが何なのかを探り始める。
  • さくら、さくら おとなが恋して<新装版>
    3.0
    結婚しない人は恋をすればいい。水曜日の食事だけを男に与えられ、自分の恋に思いを馳せる女。冴えない男だったのに、いつの間にか心惹かれていることに気づく女。不倫と割り切る寂しさ、恋を恋する喜び。男と女の綾なす恋模様を、円熟味あふれる筆致で描く、大人のための12編の小説集。
  • 東京棄民
    3.3
    これは、日本の未来に対する警告である。 感染者、重症者、死者、最多更新。最凶の新型コロナウイルス・東京株が蔓延した未来。政府は東京を見捨てる決意をした! 令和4年。新型コロナは再び変異を起こし、東京固有の株が猛威を振るっていた。大量の感染者。死者。なすすべがなくなった政府はいよいよ、「東京逆ロックダウン」、すなわち感染者を残し、東京都民を全国に分配し、東京をロックダウンすることを決意する。しかしろくな学歴もなく、正社員の立場も失い、漫画喫茶に寝泊まりしている主人公のイサムは政府の避難指示を受け取ることができず、東京に取り残されることになってしまった。 山本周五郎賞候補、大藪春彦賞受賞、業界最注目作家、初の文庫書下ろし。
  • 新装版 風の遺産
    4.0
    偶然がもたらした伊村と蓉子との邂逅。乾徳山、鷹取山、丹沢……。二人は共通の趣味、登山を通して深く関わりあっていった。蓉子は夫から疑惑の目を向けられつつも伊村と冬の谷川岳に挑む。猛吹雪で七日間閉じ込められた彼らを待ち受ける残酷な現実とは? 精緻な心理描写が光る異色山岳小説。
  • イトウの恋
    3.8
    維新後間もない日本の奥地を旅する英国女性を通訳として導いた青年イトウは、諍いを繰り返しながらも親子ほど年上の彼女に惹かれていく――。イトウの手記を発見し、文学的背景もかけ離れた二人の恋の行末を見届けたい新米教師の久保耕平と、イトウの孫の娘にあたる劇画原作者の田中シゲルの思いは……。
  • 猫のエルは
    4.1
    数多くの猫たちと共に暮らし、作家の眼と深い愛情とで彼らを見つめ続けてきた町田康さんだからこそ書けた、五つの猫の物語。作中の愛すべきユニークな猫たちをヒグチユウコさんがイラストに描き起こした、猫を愛するすべての人に贈る珠玉の作品集。猫の眼で、世界はこんなふうに見えています。〈収録作品〉諧和会議/猫とねずみのともぐらし/ココア/猫のエルは/とりあえずこのままいこう(全5編) 数多くの猫たちと共に暮らし、作家の眼と深い愛情とで彼らを見つめ続けてきた町田康さんだからこそ書けた、五つの猫の物語。 作中の愛すべきユニークな猫たちをヒグチユウコさんがイラストに描き起こした、猫を愛するすべての人に贈る珠玉の作品集。 猫の眼で、世界はこんなふうに見えています。 〈収録作品〉 諧和会議 猫とねずみのともぐらし ココア 猫のエルは とりあえずこのままいこう (全5編)
  • マウス
    3.9
    私は内気な女子です――無言でそう訴えながら新しい教室へ入っていく。早く同じような風貌の「大人しい」友だちを見つけなくては。小学五年の律(りつ)は目立たないことで居場所を守ってきた。しかしクラス替えで一緒になったのは友人もいず協調性もない「浮いた」存在の塚本瀬里奈。彼女が臆病な律を変えていく。(講談社文庫)
  • ヘヴン
    4.0
    「苛められ、暴力をふるわれ、なぜ僕はそれに従うことしかできないのだろう」 善悪の根源を問う、著者初の長編小説。
  • 斗南先生・南島譚
    3.0
    漢学の家に育ち、幼時から深い素養を身につけ、該博細緻な知識の世界を生きて非凡な才を評価されながら夭折した中島敦。古代中国や南洋に材をとる作品のほか、苦悩の青春を綴る身辺小説など珠玉の傑作短篇集。伯父を描いた大学時代の創作「斗南先生」を始め、「過去帳」(「かめれおん日記」「狼疾記」)、「古譚」(「狐憑」「木乃伊」「山月記」「文字禍」)、「南島譚」、「環礁」を収録。
  • アイスクリン強し
    3.5
    西洋菓子は開化の夢――。 明治の築地居留地近く、甘い香り漂う風琴屋(ふうきんや)。今日もまた、お菓子目当ての若様たちが集って嵐が巻き起こる! お江戸が東京へと変わり、ビスキット、アイスクリン、チヨコレイトなど西洋菓子が次々お目見え。築地の居留地で孤児として育った皆川真次郎は、念願の西洋菓子屋・風琴屋を開いた。今日もまた、甘いお菓子目当てに元幕臣の警官たち「若様組」がやってきて、あれやこれやの騒動が……。キュートな文明開化(スイーツ)物語。
  • もう生まれたくない
    3.4
    マンモス大学の診療室に勤める春菜、シングルマザーの美里、二人の謎めいた友人の神子。震災の年の夏、「偶然の訃報」でつながった彼女たちの運命が動き始める――。 新聞に載る死。テレビで騒がれる死。どこかでひっそり終わった死。有名人の死。身近な人の死。名も知らぬ遠い国の誰かの死。 そのどれもが身近で、私たちの人生と隣り合わせにある。死を描くことで今を生きることの意味を見出す、著者新境地。
  • 最高の任務
    3.0
    第162回芥川賞候補作の表題作と、傑作中篇「生き方の問題」を収録。 「手紙」と「日記」を通して、「書く」という行為の意味を問う――。 野間文芸新人賞受賞の気鋭による青春小説集!  「最高の任務」 大学の卒業式を前にした私は、あるきっかけで、亡き叔母にもらって書き始めた、小学生の頃の日記帳をひもとく。日記を通して語られていく、叔母との記憶……。 「生き方の問題」 僕は、2歳年上の従姉に長い手紙を書き送る。幼い頃からの思慕と、一年前の久しぶりの再会について……。
  • 竜が最後に帰る場所
    3.9
    しんと静まった真夜中を旅する怪しい集団。降りしきる雪の中、その集団に加わったぼくは、過去と現在を取り換えることになった――(「夜行(やぎょう)の冬」)。古く湿った漁村から大都市の片隅、古代の南の島へと予想外の展開を繰り広げながら飛翔する五つの物語。日常と幻想の境界を往還し続ける鬼才による最重要短編集。 (講談社文庫)
  • アフターダーク
    3.8
    「エリは今、眠っているのよ」とマリは打ち明けるように言う。「とても深く」「みんなもう眠ってるよ、今の時間は」「そうじゃなくて」とマリは言う。「あの人は目を覚まそうとしないの」真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。4人の男女はそれぞれの場所で、夜の闇のいちばん深い部分をくぐり抜ける。村上春樹の転換点を示す長編小説。
  • 嫌な奴
    4.1
    学生時代に杉本の「親友」だった、粗暴で自己中的な男、三浦。病に臥せる三浦を、杉本は十二年ぶりに病院に見舞う。そこから再び始まった二人の奇妙な関係は、不本意な同居生活まで発展する。これはいったい、友情か、愛情か、執着 か……。傑作BL『箱の中』の作者が、執拗かつ理不尽な同性同士の愛を描く。 カバーイラスト:丹地陽子
  • 貝に続く場所にて
    3.0
    芥川賞受賞の鮮烈デビュー作、待望の文庫化。 あの日行方不明となった彼が、ドイツの私の元を現れる。 忘却に抗う言語芸術の傑作にして、鮮烈なるデビュー小説。 第165回芥川賞受賞作 第64回群像新人文学賞受賞作 ドイツの学術都市ゲッティンゲンに暮らす私の元に、東日本大震災で行方不明になった彼が現れる。 陽に透けないほどの存在感を持つその訪問者に私は安堵するが、死者との邂逅はその街と人の様相を重層的な記憶を掘り起こすように変容させてゆく。 群像新人文学賞と芥川賞をダブル受賞した著者のデビュー作。 解説=松永美穂(ドイツ文学者、翻訳家)
  • 風の中のマリア
    3.9
    命はわずか三十日。ここはオオスズメバチの帝国だ。晩夏、隆盛を極めた帝国に生まれた戦士、マリア。幼い妹たちと「偉大なる母」のため、恋もせず、子も産まず、命を燃やして戦い続ける。ある日出逢ったオスバチから告げられた自らの宿命。永遠に続くと思われた帝国に影が射し始める。著者の新たな代表作。 私たちはただ務めを果たすだけ。ある日、突然やってくる終わりの日まで。 ワーカー(ハタラキバチ)は、現代で働く女性のように。女王バチは、仕事と子育てに追われる母のように。この物語は、「たかがハチ」と切り捨てられない何かを持っている。「世界が広がるはずですよ」(養老孟司―解説より―)
  • 盤上のアルファ
    3.9
    「おまえは嫌われてる」。神戸新報県警担当記者・秋葉隼介は、たった一言で文化部に左遷され、将棋担当を命じられる。そんな秋葉の家に、突然転がり込んだのは、やけ酒の席で大喧嘩をした同い年の不遜な男・真田信繁だった。背水の陣でプロ棋士を志す男が巻き起こす熱い感動の物語。小説現代長編新人賞受賞作
  • いいわけ劇場
    3.4
    言い訳しながら様々な方法で心のスキ間をうめようとする世間の人たち……。もう「コレ」なしじゃ、生きていけない! ――いいわけしながらやめられない、「だって、コレがないと生きていけないんだもん」。生きていれば、誰にでもあるよね、つらいこと、悲しいこと。だから、わかるよ、その気持ち。何かに依存するあまり、どこか本末転倒なおかしな人たちが次々登場。著者ならではの筆が冴えわたる、哀しくもおもしろい短編小説集。
  • やがて哀しき外国語
    3.8
    F・スコット・フィッツジェラルドの母校プリンストン大学に招かれ、アメリカでの暮らしが始まった。独自の大学村スノビズム、スティーブン・キング的アメリカ郊外事情、本場でジャズについて思うこと、フェミニズムをめぐる考察、海外で深く悩まされる床屋問題――。『国境の南、太陽の西』と『ねじまき鳥クロニクル』を執筆した二年あまりをつづった、十六通のプリンストン便り。
  • 雪子さんの足音
    3.6
    1巻1,353円 (税込)
    東京に出張した僕は、新聞記事で、大学時代を過ごした高円寺のアパートの大家の雪子さんが、熱中症でひとり亡くなったことを知った。20年ぶりにアパートを訪ねようと向かう道で、僕は、当時の日々を思い出していく。
  • 営業零課接待班
    3.8
    苦手な営業に異動となり、ついにリストラ勧告まで受けたマジオこと真島等(まじまひとし)は、接待専門の「営業零課」で再起を図ることに。落ちこぼれ社会人のマジオと仲間たちは修羅場を乗り越え、年間売上50億という無謀な目標を達成できるのか!? 涙も笑いも挫折も成功も、「働くこと」のすべてが詰まった感動の営業小説。(講談社文庫)
  • 純情可憐殺人事件
    5.0
    私情がからめば、ルール違反も平気。迷警部・大貫と井上刑事の珍コンビ、お騒がせ大捜査! ――歯科医が殺された。亭主殺しの犯人は必らず妻、を捜査の信条とする大貫迷警部は、井上刑事を連れ、歯科医夫人の逮捕に向かう。ところが、その夫人は、大貫の初恋の人! 当然、大貫は「この人だけは例外!」と叫んで、別の犯人さがしへ……。はたして、真犯人はみつかるのか? ユニークな刑事コンビが、おさわがせの珍捜査を展開する、傑作シリーズの第5弾。
  • テント劇場
    -
    作者の得意とする大阪は河内を舞台に広げる男女の恋愛絵巻。どさ回りの一座がテント劇場にやってきて、大入り満員に。大学中退の演出家に惚れる、座長の娘二人。しかも姉の方は、看板スターの妻なのに……。複雑な三角関係を中心に、様々な男と女の関係を描いた作品。今村昌平監督の初監督作品「盗まれた欲情」の原作にもなった傑作。
  • 道化師の蝶
    4.0
    無活用ラテン語で書かれた小説『猫の下で読むに限る』で道化師と名指された実業家のエイブラムス氏。その作者である友幸友幸は、エイブラムス氏の潤沢な資金と人員を投入した追跡をよそに転居を繰り返し、現地の言葉で書かれた原稿を残してゆく。幾重にも織り上げられた言語をめぐる物語。〈芥川賞受賞作〉
  • 密やかな喪服
    3.3
    「ああ、そうだわ――喪服を用意しておかないと……」ふと目醒めた枕上の暗闇で、妻が口にした一言が、夫の胸に暗い疑惑を棲みつかせ、恐怖の波紋をまき起こした。妻は一体、誰の死に備えようというのか? そして死は確実に準備されて……という表題作はじめ、平凡な日常の仮面の下に隠された、戦慄の人間ドラマ7篇を収めた推理傑作集。人間心理の闇を鮮やかにえぐる戦慄の意欲作!
  • 微熱
    4.4
    偶然? それとも……。平穏な一家に恐怖の影を落とすのは、17年前のあの事件か? 過去の事件が複数の謎を結びつける! ――新婚旅行先のオーストラリアで、田川は、7人の老人たちが断崖から次々と飛び下りるのを目撃してしまった……。それから17年。中古マンションに引越した田川家の周辺に、奇妙な事件が続発。娘・裕果の部屋に、洋服ダンスから現われる不思議な少女は、誰なのか。17年前の事件がチラつくのは、何故か。真相は? ホラー・ファンタジーの傑作。
  • ぼくらの世界
    4.0
    栄光のホームズ賞授賞式会場で起きた殺人事件。薫クンの推理は? ――ぼく、栗本薫。ぼくが書いた「ぼくらの時代」という推理小説が、かの有名なシャーロック・ホームズ賞をもらうことになったんだ。ところが、こともあろうにその授賞式の会場で、薫クンの担当編集者が殺された。トイレのドアに残されたのは「XY」の文字……。ユ-モア感覚にあふれた、待望の長編青春ミステリー。〈「ぼくらの時代」PART3〉
  • 娘の中の娘
    -
    父親を裏切り、男と失踪した長女に、複雑な気持を抱いている父親は、次女の桂子にすべての夢をかける。だが、その桂子も父親の意見をきかずに、OLになってしまう。未知の世界は、桂子に新たな目を開かせるのだが……。愛と友情に悩む乙女心と、父親の哀歓を鮮かに描いた傑作長編。
  • 蛇 愛の陰画
    4.0
    午睡中、大蛇が口から入りこみ、腹中に居すわられてしまった男。彼を<被害者>に見たて、運動に利用しようとする組織。卓抜な発想と辛辣な批評精神で、当時の世相を切りとった「蛇」。性と悪の問題に真正面から挑んだ「蠍たち」――。1960年、「パルタイ」で衝撃的なデビューを果たした著者の、その後の5年間の初期作品7篇を精選。イメージの氾濫する<反リアリズム>の鮮やかさを示す1冊。
  • ブラックボックス
    3.8
    第166回芥川賞受賞作。 ずっと遠くに行きたかった。 今も行きたいと思っている。 自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。 自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。 昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。(本書より) 気鋭の実力派作家、新境地の傑作。
  • 小説 パーフェクトワールド 君といる奇跡
    4.0
    この世界は不完全。君がいなければ。二十代のつぐみは、偶然初恋の人・樹に再会する。樹は車イスに乗り、もう恋愛はしないと言うが。
  • 女館
    -
    生まれながらに霊感を与えられた美少女・妙子と、女ざかりの独身女、妙子に仕えて上品な物腰の、女の魅力を持ち続ける老女――「女館」に棲む3人の女と、影の如くつきまとう奇怪な風体の髭の男をめぐって、さまざまな事件が展開する。妙子の霊感で、動かなかった機械が動くようになり、新しい流行色のファッションが作られるようになり、政治家や実業家が、「女館」に日参するようになる頃、妙子は初めての恋に、女として目覚めてゆく。現代の愛と欲望のゆくえを、流麗な筆で捉えた異色長篇小説。
  • 蒼氷
    -
    蒼氷に覆われる厳冬期、富士山気象測候所に勤務する主人公と同僚たちの生活に入り込んでくる、男たちを翻弄する美女との入り組んだ関係を軸に、厳寒の山の凄さ、颱風の凄さなど荒ぶる自然の前に無力な人間を描いた、傑作長編。
  • ジェントルマン
    3.9
    眉目秀麗、文武両道にして完璧な優しさを持つ青年、漱太郎。しかしある嵐の日、同級生の夢生はその悪魔のような本性を垣間見る――。天性のエゴイストの善悪も弁えぬ振る舞いに魅入られた夢生は、漱太郎の罪を知るただ一人の存在として、彼を愛し守り抜くと誓う。切なくも残酷な究極のピカレスク恋愛小説。
  • 懐中時計
    4.3
    大寺の家に、心得顔に1匹の黒と白の猫が出入りする。胸が悪く出歩かぬ妻、2人の娘、まずは平穏な生活。大寺と同じ学校のドイツ語教師、先輩の飲み友達、米村。病身の妻を抱え愚痴1つ言わぬ"偉い"将棋仲間。米村の妻が死に、大寺も妻を失う。日常に死が入り込む微妙な時間を描く「黒と白の猫」、更に精妙飄逸な語りで読売文学賞を受賞した「懐中時計」収録。
  • 暗夜遍歴
    -
    月子の父親が陥れられることによって登場した小田村大助。奪われるようにして小田村と結ばれた月子。政治と実業の世界の鬼であった小田村は、また、奔放な性を生き、女性遍歴を重ねていく。運命にもてあそばれた月子は、短歌に道を見出すことで、傷を癒し、自らを支えようとする。――息子・由雄の眼を通し、母・月子、父・大助の愛憎の劇を冷徹に描いた自伝的作品。亡き母への痛切なる鎮魂歌。
  • 寂兮寥兮
    3.4
    幼なじみの万有子と泊は、ごっこ遊びの延長の如き微妙な愛情関係にあったが、それぞれの夫と妻の裏切りの死を契機に……。ふたりを軸に三世代の織りなす人間模様は、過去と今、夢とうつつが混じり合い、愛も性もアモラルな自他の境なき幽明に帰してゆく。デビュー以来、西欧への違和を表現してきた著者が親炙する老子の思想に触発され、生と性の不可解さを前衛的手法で描いた谷崎潤一郎賞受賞作。
  • 湖畔 ハムレット 久生十蘭作品集
    4.2
    女装、泥酔、放火――、模範少年はなぜ一見、脈絡のない事件を起こしたのか? 少年の心理を過去現在の交錯する戦後空間に追い、母と息子の残酷極まりない愛の悲劇に至る傑作「母子像」(世界短編小説コンクール第一席)、黒田騒動に材を採り破滅に傾斜する人間像を描破した「鈴木主水」(直木賞)等、凝りに凝った小説技巧、変幻自在なストーリーテリングで「小説の魔術師」と評される十蘭の先駆性を示す代表的7篇。
  • 西海原子力発電所/輸送
    -
    原子力発電所をかかえる閉鎖的な地域社会のなかで起きた一件の不審火。原発の危険性と経済的依存との葛藤を劇的に描きつつ、〈原爆文学〉と〈原発文学〉とを深く結びつけた記念碑的労作「西海原子力発電所」。チェルノブイリ原発事故を受け、核廃棄物輸送事故による被爆と避難生活がもたらした生活の破壊と人間の崩壊を予言した「輸送」。3・11でフクシマ原発事故を経験した現在から、先駆的〈核〉文学はいかに読み解かれるか。
  • 壺坂幻想
    -
    盲目で死んだ祖母への鎮魂に、作家は壺坂寺に詣でた。山道を辿ると、みかん水を売って祖母を大切にした叔父の悲運、生きている母の姿など、親族の誰彼もの不幸が思い浮かんでくるのであった……。『雁の寺』『越前竹人形』『飢餓海峡』の著者が、作家生活20年にして初めて、書かずにはいられないテーマに突き当たった。水上文学晩年の陰翳に満ちた豊かな文学世界の到来を約束する、家族を巡る追想の連作短篇集。生きるとは、私とは、何か?
  • 不意の声
    4.3
    孤独な内奥の世界を追究。読売文学賞受賞の名篇――「チチキトク」の電報を受け取った時、女は父の幻影を見た。父の死後に結婚した夫とは、諍が絶えず、しばしば現われる父の霊に励まされながら、陰惨な殺人を重ねる。意識の底からつき上る、不気味な想念。愛憎渦巻く夫婦生活を背景に、現実と非現実の交錯する、妖しく孤独な内奥の世界を苛烈に描く衝撃作。読売文学賞受賞作品。
  • 骨の肉・最後の時・砂の檻
    5.0
    生の深奥を抉る明晰な衝撃。河野文学の中期秀作群――初期作品「美少女」「幼児狩り」、芥川賞受賞作「蟹」から、話題の『みらい採り猟奇譚』まで、著者の誠実な文学的展開の中で、中期と呼ぶべき中・短篇群。特に世評高い名篇「骨の肉」ほか、女流文学賞受賞の「最後の時」、更に「砂の檻」ほか4篇収録。男と女の関係、特に子供のいない女・妻と男・夫の関係を描き、抉り出されてくる生の深奥の類例のない明晰な衝撃。
  • 無縁の生活・人生の一日
    4.3
    日常の深底に澱む不透明で苛酷な世界。人生の悲哀を呑みこんだ苦いユーモアと豊かな情感とに支えられる阿部昭の小説空間。「自転車」「猫」「窓」「散歩」「手紙」「童話」「道」ほかの短篇で繋ぐ『無縁の生活』、「人生の一日」「水のほとりで」「天使がみたもの」などを収める芸術選奨新人賞受賞『人生の一日』。2つの作品集から20篇を収録。
  • 眼の皮膚・遊園地にて
    5.0
    なにげない夫婦と子どもの、幸せな光景の背後に忍び寄る、得体の知れぬ不安と戦きを衝いた、短篇小説「眼の皮膚」。ふと外へ歩き出した団地住まいの妻が、サーカスを見ての帰り、若者に誘われた、白昼夢的な現実「象のいないサーカス」。日常誰もが心の裡に抱え込んでしまった、平凡な現代人を理由もなく突発的に襲う、空虚感や精神の崩れを描いて、先駆的都市小説となった、著書の60年代の代表作6篇。
  • サウスバウンド
    4.1
    父は国家権力が大嫌い。どうやらその筋では有名な元過激派で、学校なんて行くなと言ったり、担任の先生にからんだり、とにかくムチャクチャだ。そんな父が突然、沖縄・西表島(いりおもてじま)に移住すると言い出し、その先でも大騒動に。父はやっぱり変人なのか? それとも勇者? 家族の絆、仲間の絆をユーモラスに描いた傑作長編。
  • 白いメリーさん
    3.7
    まっ白な帽子に白いスーツ、白いストッキングに白いハイヒール。髪もまっ白という「白いメリーさん」。誰を殺してもいいという年に一度の「日の出通り商店街 いきいきデー」――など、怖すぎて、おもしろすぎる9編を集めた珠玉の短編集。ナニワの奇才・中島らものユニークな世界に思わず引き込まれる一冊!
  • ラットトラップ
    3.6
    1969年、ウッドストック・フェスティバル。 音楽の祝祭から、少女が消えた。 私立探偵ジョー・スナイダーは彼女を救えるのか。
  • A2Z
    3.8
    文芸編集者・夏美は、年下の郵便局員・成生と恋に落ちた。同業者の夫・一浩は恋人の存在を打ち明ける。恋と結婚、仕事への情熱。あるべき男女関係をぶち壊しているように思われるかもしれないが、今の私たちには、これが形――。AからZまでの二十六文字にこめられた、大人の恋のすべて。読売文学賞受賞作。
  • 焼跡のイエス 善財
    3.3
    敗戦直後、上野のガード下の闇市で、主人公の「わたし」が、浮浪児がキリストに変身する一瞬を目にする「焼跡のイエス」。少女の身に聖なる刻印が現われる「処女懐胎」。戦後無頼派と称された石川淳の超俗的な美学が結晶した代表作のほかに「山桜」「マルスの歌」「かよい小町」「善財」を収録し、戦前、戦中、そして戦後へ。徹底した虚構性に新たな幻想的光景を現出させた、精神の鮮やかな働きを示す佳作6篇。
  • 子どものための哲学対話
    3.9
    人間は遊ぶために生きている! 学校なんか行かなくたっていい。うそをついてもいい。クジラは魚だ。地球は丸くない。……ぼくの家の猫のペネトレは、そんな普通じゃないことばかり言う。でも考えてみると、ペネトレの言うことの方が正しいんじゃないかって気がしてくる……。子どもも大人も考え方が変わる、ペネトレとぼくの40の対話。 ※本書は1997年7月、小社より単行本として刊行されました。
  • 黄金の夢の歌
    4.0
    口承によってうたい継がれてきた中央アジア・キルギスの英雄マナスは、永遠に年をとらない、とても元気な男の子。その「夢の歌」を聞きたいと旅をする「あなた」。氷河によって削られたジャイロの美しい牧地に心奪われ、その地を駆けめぐった多くの騎馬、狩猟民族の興亡に思いを馳せる。(講談社文庫)
  • 男の城
    -
    マイホームができてみると、設計図の書斎は子供部屋に化けていた。桐原は怒った。妻や義母から逃避する書斎こそ、夢にまで見た男の城ではないか。そしてやっと手に入れた書斎は廊下脇の貧相な部屋。それでも桐原の心のなかでは大書斎なのだ――。女臭ふんぷんたる当世マイホームの中で、けなげに生きる男たちを絶妙な語り口で描く傑作集。
  • 苺をつぶしながら
    4.2
    35歳の乃里子。剛との結婚解消とともに中谷財閥からも解放されて、仕事も昔の友情も取り戻した。1人暮らし以上の幸せって、ないんじゃない? しかし自分の将来の姿もなぞらえていた女友達に悲しい出来事が。そのとき手を差し伸べてくれたのは……。「誰か」がいるから、1人でも生きていける。
  • スイート・マイホーム
    3.8
    冬は雪で覆われる長野で、妻と娘と3人で暮らしていたスポーツインストラクターの賢治は、「まほうの家」に心を奪われる。 なんと、たった1台のエアコンで家中を暖めることができるらしい。 今住んでいる家は、寒い。意を決して家を購入するも、引っ越し直後から次々に奇妙なことが起こり始める。 新居に招いた友人の子供は何かに怯えて二度と来てくれることはなくなり、赤ん坊の瞳には何やら人影が映る。 さらに、エアコンがある地下室に入り込んだ娘は何かに捕まり泣き叫ぶ。 そこに、恐怖を上乗せするかのように、関係者の一人が不審死を遂げる。 この家には、何かがいる――。
  • ちいさな幸福 All Small Things
    3.7
    恋人と過ごした、どんな時間が1番心に残ってる? デートといってもひとそれぞれ。中学生だった頃の帰り道、地味なパートナーとの淡々としたひととき、年上の女性を追っていったギリシャ旅行……ていねいに紡ぎ出された12の恋模様。読者100人のアンケートによる「最も好きなデート」の実態も収録した短篇集。
  • 新装版 ジャパン・プライド
    3.0
    百年に一度と言われた金融危機リーマン・ショック。長引く低金利と経済のグローバル化で傷ついたメガバンク。銀行マンたちも懸命にそれぞれの道を模索していた。超富裕層のオーダーに応えてみせるプライベート・バンキングの旗手・高梨勝。子育てに奮闘しながらも顧客から逃げない新宿西支店のフィナンシャル・アドバイザー南野治子。この国に誇りを取り戻すため、金融動乱に立ち向うバンカーたちの奮闘を描く白熱のビジネス小説! TBS日曜劇場「集団左遷!!」原作で話題の江波戸哲夫が新時代の銀行マンたちを描く!
  • レペゼン母
    4.1
    1巻1,463円 (税込)
    マイクを握れ、わが子と戦え! 山間の町で穏やかに暮らす深見明子。 女手一つで育て上げた一人息子の雄大は、二度の離婚に借金まみれ。 そんな時、偶然にも雄大がラップバトルの大会に出場することを知った明子。 「きっとこれが、人生最後のチャンスだ」 明子はマイクを握り立ち上がる――! 『晴れ、時々くらげを呼ぶ』『檸檬先生』などで最注目の新人賞から、今年も文芸界のニュースターが誕生! 第16回小説現代長編新人賞受賞作。 ーーーーーー 選考委員も激賞! こんなにスカッと面白い作品が新人賞なら、いっそ清々しいじゃないか!(中略)おかんのラップが響く今宵、この余韻! ――朝井まかて 「親との戦い」ではなく、親の側から「子との戦い」を力強く描いた、大人の小説であると感じさせられた。 ――宮内悠介
  • 犬婿入り
    3.9
    多摩川べりのありふれた町の学習塾は“キタナラ塾”の愛称で子供たちに人気だ。北村みつこ先生が「犬婿入り」の話をしていたら本当に〈犬男〉の太郎さんが押しかけてきて奇妙な2人の生活が始まった。都市の中に隠された民話的世界を新しい視点でとらえた芥川賞受賞の表題作と「ペルソナ」の2編を収録。(講談社文庫)
  • 旧友再会
    4.0
    どしゃぶりのあとには 虹だって出るさ。 人生は、ままならないことばかり。 優しさとほろ苦さが沁みる「中年共感小説」。 難問だらけの家庭と仕事に、葛藤、奮闘、四苦八苦しているうちに、気がつけば「老い」のとば口に差しかかった男たち。 その戸惑いと寂しさを分かち合えるのが旧友なのか、旧友だからこそ、すれ違ってしまうのか……。 「もう若くはないんだから」が口癖になった人と、なりつつある人にエールを贈る5篇を収録。
  • 今度生まれたら
    3.7
    70代では人生やり直せない? 人間に年齢は関係ない、なんてウソ。 人生100年はキレイごと。 「今度生まれたら、この人とは結婚しない」70歳の主婦、佐川夏江は自分がやり直しのきかない年齢になっていることにショックを受ける。人生を振り返ると、あの時別の道を選んだらどうなっていたかと思うことばかり。進学は、仕事は、結婚は。少しでも人生をやり直すため、夏江はやりたいことを始めようとあがく。 大好評の著者「高齢者小説」シリーズ。 「元気をもらいました」「自分のことのように読みました」「もっと早く読みたかった」 など読者の声多数のベストセラー!

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