志賀直哉の一覧
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ユーザーレビュー
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“人を喜ばす事は悪い事ではない。自分は当然、ある喜びを感じていいわけだ。ところが、どうだろう、この変に淋しい、いやな気持は。何故だろう。何から来るのだろう。丁度それは人知れず悪い事をした後の気持に似通っている。”(p.16)
“両方とも今とその時と人間は別に変りはしないが、何しろ関係が充分でない
...続きを読むと、いい人同士でもお互に悪く思うし、それが充分だといい加減悪い人間でも憎めなくなる。”(p.172)
Posted by ブクログ
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角川とてぬぐい店"かまわぬ"のコラボの和柄ブックカバーシリーズ。
私はてぬぐいコレクターでして家に100枚くらいあるのですが、これと同じ柄も持ってます。
さて。
志賀直哉は授業として習ったものと、「暗夜行路」しか読んだことはありませんでした。
改めて読んでみると実に素晴らしい文章。ただ何ということ
...続きを読むもない情景が、実直で淀みない言葉で語られる。小説の神様なんて言われるだけある。
『母の死と新しい母』
著者の実体験エッセイ。
妊娠中の実の母が悪阻が酷く寝込みそのまま他界した。
やがて父に後添いの話が来る。実母が亡くなったときに泣き暮らした著者だが、実母の死と新しい母が来るということは、徐々に事実として受け入れていった。
『清兵衛と瓢箪』
瓢箪が好きで小遣いを瓢箪に注ぎ込み暇さえあれば磨いている12歳の清兵衛。
そんな清兵衛と瓢箪との縁が断れて、その熱中を新たに絵を描くことに注ぐまで。
『正義派』
電車に轢き殺された幼い少女。
目撃した工夫は証言を申し出る。だが雇われ人である彼らも強いことはできない。
帰りに事故現場を通った。やりきれない、ああただやりきれない。
『小僧の神様』
秤屋で奉公する仙吉は、番頭たちの寿司話を聞いて自分も食べてみたくてたまらない。
使いの帰りに屋台の寿司屋に入るが、彼のなけなしの銭では一貫分にも足りなかった。
過ごすごと屋台を出るその様子をAという客が見ていた。Aは、この小僧にあまり目立たずに寿司を食べさせてやりたいなあと思うのだった。
『城の崎にて』
怪我の療養で城の崎を訪れた著者。
蜂、鼠、蜥蜴のような小動物の死を目の当たりにする。
普段は小動物を殺すことのあるし気にも止めないのだが、今はなんだか淋しい嫌な気持ちになってしまう。彼ら橋に自分が生きていることを感謝しなければすまないような気持ちだ。「自分が希っている静かさの前に、ああいう苦しみのあることは恐ろしいことだ、死後の静寂に親しみを待つにしろ、死に到達するまでにああいう動騒は恐ろしいと思った(P53)」
だから滞在を早めて東京に帰ってきたのだ。
『好人物の夫婦』
秋の夜、夫婦の会話。
夫が気ままに旅行に出るということで浮気を心配する妻。
翌日妻は親族の病床に呼び出されて二ヶ月の留守をする。
家にいた夫は、若い女中の妊娠に気がつく。
妻も気がついたのだろうか、その場合自分が疑われるのだろうか…。
『雨蛙』
文学趣味の賛次郎は、妻のせきと行く予定だった知人の講演会に行けなくなり妻だけを送り出す。
せきは美しく健康的だが、溌剌とした光を持たない自己を持たない女だった。
翌朝宿にせきを迎えに行った賛次郎は、妻は別の宿に他の男女と泊まっていると聞き驚く。
せきに聞くべきか、聞いたら多分正直に答えるだろう。
そして賛次郎は、正直に答えたそのせきを愛おしく思うのだった。
===「暗夜行路」に別の結果を与えてみた、というかんじ。
『焚火』
山小屋での会話。
雪道を歩きながら眠りそうになっていた自分を母が「呼んでいる」と迎えを寄越したという話。
『真鶴』
少年は幼い弟と下駄を買いに来た。だが海兵に憧れる少年は小遣いを海兵帽に使ってしまい、さらに旅芸人の女に惹かれて跡を着いて行く。どうしようもなく兄に手を引かれて歩く弟。
遅くなり家に帰った母を見たときに、弟は本来の幼さを取り戻した。
『山科の記憶』
「Aという女がある。良妻賢母である。しかしこの女の一生でただ一度、はっきりとは意識せぬ恋を感じ、心をときめかしたことがある。それを良人だけがカンジダ、それと相手の男だけが感じた。しかし何事もなく、そういう機会もなく、そのままにそれは葬られた。Aという女も今はそのことを忘れている、Bという女がある、この女にも同じことがあった。しかしBという女はそのことを自ら意識さえしなかった」この場合、Bが妻だった。(P122)
『痴情』
女と分かれるように妻に言われた。
女がいても妻への気持ちは減らないと言っても納得しなかった。
女と別れて、最終の電車で家に帰った。
『些事』
京都まで仕事だといったが、本当は会いたい女がいたんだ。
===夫婦のちょっとした浮気心テーマが続くんだが、志賀直哉夫妻なにかあったのかな。
『堀端の住まい』
著者が山陰松山に住んだ時のことを書いたエッセイのようなもの。
隣の家の雌鳥が猫に殺され、罠にハマったその猫を殺すという出来事について少し考える著者。
『転生』
あるところに気の利かない妻を持つ男があった。男は常に妻への不満を持っていたが、だがそれなりに彼ら夫婦は仲良く二世を誓いあった。次の世では、夫婦仲の良い狐になるか、それとも鴛鴦(おしどり)になるか。やはり鴛鴦になって仲睦まじく暮らそうと誓う。
先に死んだ夫は鴛鴦になり妻を待った。しかし妻は、自分は狐になるべきか、鴛鴦になるべきかを忘れてしまっていたのだった。
===笑っていいの?いいよね(笑)
『プラトニック・ラブ』
私は昔通っていた芸者がいた。旧友にかけたはずの電話に出たのは彼女だったのだ。
今更名乗るわけにもゆかず切ったが、なぜ彼女に電話をかけてしまったのか?この十五年ぶりのプラトニックラブに笑ってしまう。次に彼女と触れ合うのはまた十五年後だろうか。
Posted by ブクログ
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心に生まれる、言葉で割り切れぬ感情が、言葉で表現されている。
すごい。
特に印象に残ったのは
『正義派』『清兵衛と瓢箪』『范の犯罪』
『正義派』では、正しいことをしたいけれど、組織の中で生きるしかない男たちの哀しさを。
『清兵衛と瓢箪』では、子供ながら瓢箪にハマり、その趣味が周りの大人に全く理解
...続きを読むされない辛さを。
『范の犯罪』では、自分の犯した罪が、故意なのか過失なのか、自分自身でもわからない。そういうもんじゃないかという人間のわからなさを。
Posted by ブクログ
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柔らかくて澄んだ日本語を味わえる。とても読み心地が良い11の短篇。大正時代の日常は現代の非日常であり、新鮮味がある。「小僧の神様」は無性に鮨を食べたくなる。「赤西蠣太」は元ネタを知らなくても楽しめた。「好人物の夫婦」の奥さんは可愛い。「焚火」の静かさと優雅さはヨーロッパ的だなと思った。暗夜行路や大津
...続きを読む順吉など、他作品も読んでみたい。
Posted by ブクログ
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久し振りに志賀直哉を読んだ。やっぱすげえ。
Kさんは勢よく燃え残りの薪を湖水へ遠く抛った。薪は赤い火の粉を散らしながら飛んで行った。それが、水に映って、水の中でも赤い火の粉を散らした薪が飛んで行く。上と下と、同じ弧を描いて水面で結びつくと同時に、ジュッと消えてしまう。(『焚火』)
なんとまあ美し
...続きを読むい描写であることよ。
Posted by ブクログ
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