【感想・ネタバレ】小僧の神様 他十篇のレビュー

あらすじ

志賀直哉(1883-1971)は、他人の文章を褒める時「目に見えるようだ」と表したという。作者が見た、屋台のすし屋に小僧が入って来て1度持ったすしを価をいわれまた置いて出て行った、という情景から生まれた「小僧の神様」をはじめ、すべて「目にみえるよう」に書かれた短篇11篇を収めた作者自選短篇集。(解説=紅野敏郎)

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とてもサラサラと流れるような書き方なのに、全く同じ感情や考えになると錯覚してしまう、志賀直哉のファンになってしまった。
清兵衛と瓢箪、くすっと笑って親には分からない大切な大切なことを思い出したお気に入りの一編。

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2025年02月23日

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素朴ながら心地よく、簡潔ながら余韻の残る文章。いくつか学生時代に国語の科目で読んで、問われれば問われるほど、深みにはまっていくような気がしたことを、いまだ覚えている。

小僧の神様、小僧さんが出鱈目の住所を訪ねていったのをあえて書かないと決めた、とあえて語り手の視点を入れる物語構成、新しい母の子供の数を淡々と数え上げた後の最後のたった一文で流れた歳月を示してしまう効果、城崎にての死を書くことにより浮かび上がる生(書かないもの)の生々しさ。

ほんとうに偉大な作家だと思う。いつまでも読み継がれていってほしい。

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2023年07月17日

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“人を喜ばす事は悪い事ではない。自分は当然、ある喜びを感じていいわけだ。ところが、どうだろう、この変に淋しい、いやな気持は。何故だろう。何から来るのだろう。丁度それは人知れず悪い事をした後の気持に似通っている。”(p.16)


“両方とも今とその時と人間は別に変りはしないが、何しろ関係が充分でないと、いい人同士でもお互に悪く思うし、それが充分だといい加減悪い人間でも憎めなくなる。”(p.172)

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2021年03月26日

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心に生まれる、言葉で割り切れぬ感情が、言葉で表現されている。
すごい。

特に印象に残ったのは
『正義派』『清兵衛と瓢箪』『范の犯罪』

『正義派』では、正しいことをしたいけれど、組織の中で生きるしかない男たちの哀しさを。
『清兵衛と瓢箪』では、子供ながら瓢箪にハマり、その趣味が周りの大人に全く理解されない辛さを。
『范の犯罪』では、自分の犯した罪が、故意なのか過失なのか、自分自身でもわからない。そういうもんじゃないかという人間のわからなさを。

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2019年09月14日

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柔らかくて澄んだ日本語を味わえる。とても読み心地が良い11の短篇。大正時代の日常は現代の非日常であり、新鮮味がある。「小僧の神様」は無性に鮨を食べたくなる。「赤西蠣太」は元ネタを知らなくても楽しめた。「好人物の夫婦」の奥さんは可愛い。「焚火」の静かさと優雅さはヨーロッパ的だなと思った。暗夜行路や大津順吉など、他作品も読んでみたい。

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2014年02月10日

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久し振りに志賀直哉を読んだ。やっぱすげえ。

Kさんは勢よく燃え残りの薪を湖水へ遠く抛った。薪は赤い火の粉を散らしながら飛んで行った。それが、水に映って、水の中でも赤い火の粉を散らした薪が飛んで行く。上と下と、同じ弧を描いて水面で結びつくと同時に、ジュッと消えてしまう。(『焚火』)

なんとまあ美しい描写であることよ。

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2013年10月12日

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いいことをしたはずなのになぜか後ろめたいという、不思議な感覚を上手く描いた表題作他の短編集。最後の方は小説というより私信エッセイのような感じで何ともはやと思ったが、「正義派」はSNSが広まって無責任に声を出したくなる昨今にどこか通じる感じがあるなと思いました。

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2025年05月12日

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城の崎にて目当てに購入。小僧の神様、范の犯罪、真鶴、好人物の夫婦も良かった。人物の感情描写を書くのが上手いなと思った。

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2024年10月01日

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ネタバレ

志賀直哉が気になって読みました。
「小僧の神様」ですごくファンタジーな作風なのかなと思ったら、「正義派」や「母の死と新しい母」、「城の崎にて」では死の儚さや人間の残酷さが描かれていて、幅広く書いていた人だと思いました。
正義派で、他人のことについては正義を振りかざすが、いざ自分の身になれば、正義感を持って考えることはできなくなる。城の崎にてで、死は悲しいけど、生きていることが幸せなのかは疑問である。と言うように、人間を正直に描くスタイルが気に入りました。

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2024年07月17日

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この短編集は志賀直哉の観察眼、それをそのまま文章化する繊細な言語選択力が遺憾なく発揮されていると感じた
本を開くと全く別の世界に脳内旅行するのはよくあるが、この本は極めてリアルな体験ができる
表題作「小僧の神様」は小僧の純粋な感性を、「正義派」は身を犠牲にして正義を果たしても次第に現実が忍び寄ってくる後味の悪さを、「母の死と新しい母」は死の無情さと新しい母との生活の対比を、見たまましっかり描写している
言うは易し行うは難し、見たまま書くのがどれだけ難しいか…
「城の崎にて」は事故をきっかけに、今まで漠然と考えていた「死」を身近に感じ、それでも生きようともがき続ける苦しみ、そして私は事故で偶然に生き残り、誰かは今偶然に死んでいる、という思考を3つの死に重ね合わせているのが素晴らしかった
高校の授業でも読んだが、その時より味わい深く感じた
「流行感冒」では前半はコロナウイルスでもあるような、異常なほどに気を使う主人と同居人や周囲の人々とのギャップが描写され、共感を覚えた
後半では人の内面の二面性にフォーカスを当て、完全な善人、完全な悪人はおらず、見る角度によってそれは異なり、決めつけてしまう事への愚かさを知らされた
読んでいて心地よく、違和感なく身体に沁みてくる文章
まさに、「目に見えるよう」な文章でした
他の作品も読んでみます!

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2024年05月21日

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小説の神様と言われた志賀直哉の短編集。読みやすいし、堪能しやすい。一行目から話に没頭できるし、くどくど説明しなくても登場人物の心情や背景が伝わってくるのは、文章がとても綺麗で必要かつ最小限の単語で描かれているからか。小説の神様と言われる所以を感じる一冊。

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2021年12月18日

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志賀直哉の短編11偏が収録された短編集。
志賀直哉で長編というと、長年かけて完成させた"暗夜行路"くらいしかなく、また、暗夜行路は結構読みにくいため志賀直哉といえば短編というイメージがあります。
無駄の無い簡潔でわかりやすい文体は短編にこそ映えるもので、尚且つ、本作の収録されている作品は名著と呼ばれるものをほぼ抑えてあって志賀直哉を知るには十分な良書だと思います。

・小僧の神様 ...
志賀直哉の代表作。
本作をもじって、志賀直哉は"小説の神様"と呼ばれることがあります。白樺にて発表。
秤屋で奉公をしている小僧の仙吉が、番頭たちの噂で聞いていた立ち食い寿司に憧れる。
彼を偶然見かけた男が、小僧に寿司を奢るが、番頭たちが憧れた立ち食い寿司に連れていった男が神秘の存在に思えられ、小僧には神様であるかのように思われるという、その時代の寓話めいた展開はあまりにも有名ですね。
志賀直哉を象徴するような、流れるような無駄の無い文章で、読み手の印象に深く残る作品です。

・正義派 ...
志賀直哉初期の短編。
5歳ほどの女児が犠牲になった列車事故で、運転手がブレーキを掛け誤った決定的瞬間を目撃した3人の工夫が、熱に浮かされて証言台に立つが、時間が経つにつれ自分たちの行動に不快感を感じるようになる。
正義派を気どった彼らの行動は、女児の母親、鉄道会社、運転手、また彼ら自身の家族にとって良い事なのか。
初期の作品と思えないほど深いテーマ性のある作品でした。
あまり有名では無いですが、名著だと思います。

・赤西蠣太 ...
いわゆる伊達騒動を下敷きにした作品で、本作は映画化、ドラマ化をしています。
志賀直哉にしては少し難し目の内容でした。
ある不器量な密偵と、美しい腰元の恋物語なのですが、下敷きにした伊達騒動に詳しくないためか、密偵のポジションがよく分からなかったです。
ただ、その密偵(赤西蠣太)の複雑な心情描写は見事で、そこは色鮮やかだったように思いました。

・母の死と新しい母 ...
志賀直哉の私小説といえる作品。
幼少期、母を妊娠悪阻により亡くし、新しい母を迎えた、タイトルの通りの体験を綴った内容です。
本作は"正義派"よりさらに前に書かれています。
主人公の心理描写が客観的でありながら克明で、ため息の出る内容でした。
また、志賀直哉は同年父と不仲になり東京を離れますが、そういった経緯を知るにも貴重な作品だと思います。

・清兵衛と瓢箪 ...
"小僧の神様"と並び、志賀直哉の代表的な短編。
清兵衛という瓢箪の大好きな少年から、ものの価値の分からない大人に一方的に瓢箪を取り上げられる。
教訓のあるおとぎ話のようなストーリーです。
志賀直哉はアンデルセンを愛読していた時期があり、影響を受けたのかもしれないなと思いました。
また、父への不満が執筆の同期と語っており、直哉と父の関係が垣間見える一作でもあります。

・范の犯罪 ...
"白樺"掲載の短編小説。
奇術師の范が、ナイフ投げの舞台で妻の頸動脈を傷つけて殺してしまう。
これは故意か過失か、裁判官は周囲や本人の供述から解き明かそうとするが、という展開。
一種のミステリーのような要素があり、同年"清兵衛と瓢箪"を執筆したと思うと、やはり素晴らしく才能のある作家だったんだなと感じました。
この判決は、是非読んで確かめて欲しいです。

・城の崎にて ...
本作も志賀直哉の代表作として有名な一遍。
電車にはねられ重症を負うも入院し助かったが、後療養のため訪れた城崎温泉での出来事を描いた私小説で、日本における私小説の代表的な作品としても有名です。
そこで目にした生き物たちの死と、今運良く生きている自分について思いをめぐらせる内容で、生と死は偶然のいたずらでうっかりそうなるレベルのものであるということを非常の短い短編で納得できる文面になっています。
文体の素晴らしさもそうですが、テーマについても考えさせられる内容です。

・好人物の夫婦 ...
他の作品に比較するとそれほど有名では無いと思います。
タイトルの通り好人物の夫婦がいて、夫はプレイボーイなのですが、ある日妻が実家に帰る必要ができ、その間に女中が妊娠してしまう。
夫を信じていながらも不貞を疑いきれない妻と、気まずい夫のストーリー。
特に深い教訓的なものも感じられず、普通に読んで面白い作品でした。

・流行感冒 ...
第一子を病気で亡くした夫婦が、必要以上に健康に気を使うことになり、流行性の感冒が流行ったことで夫は暴君めいた対応となる。
日本でも流行ったスペイン風邪を下敷きにして書かれた作品で、外出自粛やクラスタ感染防止など、新型コロナ対策に近しい対応を行っているところが興味深いです。
なお、内容は石という女中がメインで、病気は舞台設定程度です。
"スペイン風邪"について書かれた話ではないので、ご注意を。

・焚火 ...
赤城山の宿の主が体験した不思議な話について書かれた作品。
本作もあまり有名ではないですね。
短編ですが、内容も印象に残りづらく、サラッと読める作品だと思います。

・真鶴 ...
伊豆半島の真鶴町の漁師の息子が主人公。
短いストーリーでありながら主人公の心情変化が激しく、読み応えのある作品です。
短く文章に無駄がないということは、一言一句大切にされているということで、本作は一読では理解ができなかったです。
少年が大人になる展開で、心理描写が直接ではないまでも感ぜられる書き方となっています。

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2020年06月07日

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窓越しに雨を眺める。
少しだけ陰鬱な空気のなかで読むのも良いかな の小説。

小説が生まれてから約100年。
読み継がれる文学。

行間に空気や息遣いが見えてくる。

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2019年09月24日

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わしの「本統の生活」ってなんでしょうねぇ…
教材として読んでみたけど、案外読みやすくて良いな志賀直哉

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2018年10月23日

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ああ『小僧の神様』の、この感覚。
本名を明かさない。店から足が遠のく。気が小さいという。
自分にもあるちょっと後ろめたいような、モヤリとした部分。
「寂しい」と表現に、そういう面もあるのかもと思いが巡る。
最後のわざわざ書き残された作者としての迷いには、文豪とも言われる方ながら近しいものを感じてしまった。
祠で終わらなくてよかった。

そして『真鶴』
幼いと若々しいとの間くらいの心持ち、かな。
町で見かけた大人の女性に、弟の手を引きつつも気持ちをすっと持っていかれる様子が、なんとも甘酸っぱい。
弟君の我慢強さもほほえましかった。

その他、どの作品も情緒があった。時が過ぎたらまた読み返したくなりそうである。

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2018年10月26日

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『スミスの本棚』で紹介されていた、『小僧の神様』遠い昔に読んだことがあったような…。

職人の卵の少年と彼らを支える大人の交流、私の好きな世界だった。
大人のほうの、控え目な態度がいい。
少年は「彼に恥ずかしくない」仕事をしようと、思うのだろうな。

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2014年08月05日

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教科書で「城の崎にて」を読んだ当時は、なんて退屈な作品なんだと思った。
「清兵衛と瓢箪」 もしこの作品から出会っていたら志賀直哉に対するイメージはガラリと変わっていたはずだ。
まあ何事も第一印象は大事。
この文庫は本棚にずっとしまっておきたい。

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2013年12月28日

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ネタバレ

「ところが、どうだろう、この変に寂しい、いやな気持ちは。」

評判通り、文章が非常に綺麗だった。

小僧の神様では、善行の後に残る不快感をみごとに表現している。
赤西蠣太では、ふと芽生えた愛情に揺れる男が描かれている。
清兵衛と瓢箪は、昔読んだ懐かしい作品だった。
范の犯罪では、妻から強く逃げられない男の弱さがうかがえる。
流行感冒では、人間的にできていない”石”が悪くも、良くも活躍する。

清兵衛と瓢箪は、小学校の授業か何かで読んだ作品で、最後の瓢箪を売られる場面を今でも覚えていました。その作品に再び会えたことに驚き、また、よいものを小さいころから読ませられていたんだなと、改めて思いました。

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2013年11月18日

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志賀 直哉の文章は、やはり今でも読みやすいと思う。
とても物語もはっきりしているし、リアリティーがあって、ぐっと引き込まれる部分が多数あり、読んでいてとても楽しい。
自分の体験談に即していたり、聞いた話をもとにしているからかもしれないが、とても面白い話ばかりだった。

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2012年04月12日

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赤西蠣太、懐かしい。教科書に出てきた。赤西蠣太と銀鮫鱒二郎‥このように主人公が短い名前で相棒が長い名前のものって多い気がする。メロスとセリヌンティウスとかジョバンニとカムパネルラとかルドルフとイッパイアッテナとかチモンとプンパアとか。単にリズムがいいってこと?
トムとジェリー、ピーターとベンジャミンバニー、ハリーとトント、アトムとコバルト‥ああ、なんかずれていく。

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2014年02月11日

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ネタバレ

表紙は城の崎にての沢蟹か。
小僧の神様と清兵衛の瓢箪はいつか読んだことがあった。知っていた小説だからかこの二つの小説は際立って優れたものであるように感じた。ひいき目すぎるか。
小僧の神様は二つの視点から進んでいく話を神の視点から把握することができるのが面白い。片方のみだとこの情緒は生まれないだろうなんてありきたりなことを考えた。小僧の無知さから生まれる勘違いが可愛らしい。
母の死と新しい母は志賀直哉の私小説らしい。たしかに主人公=志賀直哉自身の心情が素直に描かれているなと感じた。母の死に心を痛めるも新たな美しい母にも素直に心を開いていく様子が淡々とした状態の文章ながらもやさしく述べられている。
城の崎にても実体験らしい。読んでみるとなるほど城崎に行ってみたくなる。城崎にて静養中に見たものが述べられていくだけだがどこかに情緒を感じる。寂しさに魅力があるのだろうか、主人公の思索がただ述べられていて会話が無いことがこの小説の静けさを生み出している?友人と怪我の程度についての会話をした回想はあるが。考えなしな行動でイモリを殺してしまう残酷な場面にはぎょっとした。ふいに命は失われるのだ。突然石が降ってきたイモリともてあそばれて苦しむネズミ。電車にはねられた私は、紙一重で生きているが死んでいても脊椎リウマチになっていても全くおかしくなかった。

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2025年10月21日

Posted by ブクログ

 志賀直哉の小説は初めて読んだ。文豪の作品となると「難しい」という先入観が先に立つが、一編が10から20ページ程度の短さでとっつき易かったし、尚且つ読み易いのに深みを感じさせる文体が美しかった。
 中学や高校の国語便覧の作者紹介で代表作として挙げられていた「小僧の神様」「清兵衛と瓢箪」「城の崎にて」を、1冊で網羅出来たのがなんだか嬉しい。憧れの人にようやく会えたような不思議な感覚である。
 善いことをしたはずなのになんだかもやもやした後味になったり、信じたいのに心のどこかでは疑ってしまっている自分を自己嫌悪したり、命の儚さに想いを馳せたり、身近な心理に材を取っていて共感を覚えた。

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2025年07月07日

Posted by ブクログ

あまり日本の古典文学を読んだことがないことに気づき、ちゃんと読もうと思ってまずは短編から…と手に取った。
清兵衛と瓢箪はおそらく中学生の時に予備校のテキストで読まされた本、なんとも懐かしく、また当時は気づけなかった大人の思い込みが起こす悲劇を目の当たりにした。
他の短編も人の本質を見ているというか、こういうところは自分にもあって良くない…と思ってしまうところが多く、なるほど小説を読むことで人は成長するというのを一冊で納得させれた
何よりも細かな描写が素晴らしい一冊

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2023年11月27日

Posted by ブクログ

分厚さも薄いし短編集なので肩ひじ張らずに読める。
表題作でもある「小僧の神様」は文学史でも、志賀直哉=小僧の神様 的に学んだのでワクワクして読んだが、オチ…。最初にこの話が来たので始終こんな話かと思ったらそうではなかった。多分この著者は大恋愛を創作するタイプではなく、身近なこととか日常はそのままにその捉え方を工夫して話にするタイプなのかと感じた。多くの話は一見地味なようだが心のどこかがじんわり(話によってはひんやり)するような、そんな感じである。瓢箪はまた違うテイストだが。変なお涙頂戴だとか娼婦との一時の恋だとか、そんなのが出てこないので個人的には安心して読むことができた。

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2019年12月12日

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文体の上でもそうだが、ストーリーテリングの上でも非常に簡潔で丁寧。誇張するところは無いが隠しておいてくれるところもまた無い。道徳の教材みたいというか...。芸術において、過不足ない、ということは既に過剰なのでは?と思うのは私の勉強不足だろうか。

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2018年11月04日

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評判通り、簡潔で読みやすく、無駄を排したさらりとした読み心地。
作品によって印象が変わるので、一概に評価しづらいところがあるが、「城の埼にて」はたいへん良かった。
これほど短く、なんの誇張も装飾もなく淡々としていながら、深さのある名文があったとは。

ただ他の作品については、好みから少しずれていたせいか、それほど感銘は受けなかった。
「范の犯罪」の切迫感などは面白かったが……
〆の文章に物足りなさを感じることもあった。
個人的にはもうすこし情緒的な文章が好きかな。

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2017年05月30日

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清兵衛と瓢箪は何がいいたかつたのかは分からないが初っぱなから笑いをとってくれた。城崎にては残酷…。ねずみの描写が強烈すぎて、ほかのはかない命はつい、ほったらかし。。。

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2016年12月08日

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ネタバレ

志賀直哉さんの作品、腰をすえて読むのは今回が始めてだ。

確か中学か高校のときに国語の試験(塾の模試だったか)で
「城の崎にて」を読んで生き物の儚さというか、
変な気持ちを抱いたような記憶がある。

短編は僕の苦手とするところなんだが、この小僧の神様とその他10篇の中でも
特に印象的だったのが、「清兵衛と瓢箪」だ。

前にも書いたが、教育の成功とは生徒が自分のやりたいこと、
熱中できるものを見つけることだと僕は思っている。
この清兵衛にとって瓢箪とは彼が熱中できるものだった。
友人と遊ぶことを忘れてまで熱中できるというのはなんという素晴らしいことか。
それを教師によって清兵衛の瓢箪好きを否定され、
彼の持っている大切な何かが失われた。

教育の最大の失敗は先生や両親によって子供の興味、
創造性が破壊されてしまうことだ。
志賀直哉さんの時代からこういう事が行われており、
未だに僕はこういう慣習が似たりよったり残っていると思っている。
21世紀は20世紀の始めに比べ時代や社会のあり方が異なっているのにも関わらず、
教育のあり方というものは当時とほとんど変わっていない。

日本でi phoneやfacebookのような革新的なものが生まれない一つの原因に、
子供の興味や創造性、その他もてる無限大のエネルギーが
幼いときに破壊されてしまっていることではないかと僕は思っている。
ではどうすれば防げるか?

一つは親や教育をする者が子供の可能性を理解してあげることではないか。
子供の持つ無限大の可能性を信じ、暖かくそして忍耐強く見守ってあげること、
子供の興味を示す機会や場所を与えてあげること。
そのためには親や教師が成熟した大人でないといけない。
文中の先生や清兵衛の親は僕から見れば未成熟の大人だ。

瓢箪を取り上げられた清兵衛が次に絵画に夢中になろうとしているのに
また余計な小言が入ろうとしているから、本当に恐ろしい。

What can I do to education?
I do not know what to do but just try whatever I can do!

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2012年11月12日

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近頃昔教科書で読んだ文学作品を再読するというのがマイブームで「城の崎にて」を目当てに読みました。
どういう話だったのかほとんど忘れていました。「トカゲは好きだ、ヤモリは嫌いだ」というくだりしか覚えてなかったのですが(なぜかそこだけ覚えてた)今読むとかなり味わい深かったです。静と動、生と死の対比が淡々と描かれていて、静かな城之崎の情景が目に浮かぶようでした。好きだなこれ。読み返してよかった。城之崎に行ってみたくなりました。
他には「小僧の神様」「正義派」も好きです。
でも私小説(城の崎にて除く)はあんまり面白いと思わなかった。回りくどい文章が「城の崎にて」の雰囲気には合ってるんですが、他のは読んでいて少し疲れた。とはいえ文学作品といわれるものの中ではかなり読みやすい部類に入ると思います。

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2012年06月16日

Posted by ブクログ

描写は生き生きとしていて、そこそこ楽しめる短編集。だが、一言で言ってしまうと、なんというか・・・・・まさに「中産階級が書いた本」だと思った。

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2011年08月23日

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