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その島では多くのものが徐々に消滅していき、一緒に人々の心も衰弱していった。 鳥、香水、ラムネ、左足。記憶狩りによって、静かに消滅が進んでいく島で、わたしは小説家として言葉を紡いでいた。少しずつ空洞が増え、心が薄くなっていくことを意識しながらも、消滅を阻止する方法もなく、新しい日常に慣れていく日々。しかしある日、「小説」までもが消滅してしまった。 有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。
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Posted by ブクログ
すきな温度と湿度。 たいせつなものが消滅してしまうのは、いや。 わすれてしまうから、へいき? どんどん箱が小さくなって、透明。 消えても、消えないことが、 わたしたちの心をささえているのに。
ある小さな島では物が次第に消滅されてしまう。そして完全に記憶から消されていく。貴重な絆、思い出が容赦なく破壊される。しかし逆に忘れない人も存在している。決して従わない。秘密警察がどんなに怖くも、自分の尊厳を失わない。 つまり誰にも奪われはしないものはまさに密やかな結晶である。
記憶が少しずつ消滅していく島の話。 読み終わった後には何とも言えないような、心の深い空洞に身を包まれたような喪失感に浸ってしまう。「消滅」の物語によって「消滅できないもの」の物語を描く。人々の中にひっそりとある声に出せないおもいを掬いとる、私たちの中にあるそんなおもいを改めてこの物語はすくいとって肯...続きを読む定してくれるものだと思った。「消滅」という失う物語の静かでその確かなことばの数々に作者の筆の虜にならないはずがない。
あらゆるものが失われていく世界だからこそ、誰にも触れられない確かなものの重要性、美しさをまざまざと感じるお話だった。 「消滅」とは姿かたちがそのまま消えていくことだけではなくそれに付随した記憶や思い出まで消えてしまうこと。物質の消滅に伴い主人公たちも徐々に人間味を失っていく様子が印象的だった。 ま...続きを読むた、例え形がなくなっても記憶として覚えておけばそこに存在することだってできるのだと主張しているようにも思えた。 心の奥底の誰にも触れられないところに閉じ込めておく確かな思いが、消滅のしない"密やかな結晶"なのであろう。
記憶が少しずつ消滅していく島 何かがなくなって それらを処分して 適応していく 秘密警察が記憶が消滅しない人々を 連行していく 次第に自由が奪われているはずなのに なんの疑問も持たずに生きる人々 すべて もう初めからなかったかのように 記憶がなくなっていくのだから 疑問をもつわけもない 何か独裁者...続きを読むが徐々に 自由を奪っていくような感じかもしれない かつての戦時中の日本もこんな感じだろうか 今もどこかでこんな思いをしている人々が いるのだろうか と、思ってしまう 小説家である主人公が小説を奪われてからは さらに衝撃的に状況が進んでいく 最後に書いた小説がまた 物語を彩っていく せつない中にも いくつもの希望が見え隠れする そんな 透明感溢れ、儚いお話でした
もっと早く出会えたらと思った作品。名作と言われるのも納得。自分にとっての結晶は何か?考えさせられますね。おじいさん、好きです笑。小川先生の作品をもっと読まねば。
小川洋子さんで記憶の消滅といえば『博士の愛した数式』が有名だが、本書は個人的な消失にとどまらない。島の人々の記憶から森羅万象が徐々になくなっていく、というとんでもない話である。 何かを失うということは人間にとってどういうことなのか。人を人として成立させているものは何だろうか、ということを考えさせら...続きを読むれる。
新幹線のおともに。ワールドがすごい。 みんなで失えば、忘れれば、痛くない? 抗うことはとても大変。 これは売れない。時間をおいて再読したい。
心の中のものを一つずつ失くしていく話 その島では鳥、バラの花、写真、 消滅が少しずつ進む 止めることはできず、島の人たちは受け入れていく 消滅すると記憶からも消え、心の空洞が増えていく 秘密警察が記憶狩りをし、記憶を持ち続ける人を連行していく 記憶を持ち続けるR氏をかくまう小説を書くわたし、やがて...続きを読む小説も消え、体も心も消滅していく 物が消え記憶さえもなくせばそれに順応していってしまう やがて実体のある体の消滅にまで危機が及んでるのに疑問もなく受け入れてしまうのが怖い 希望という記憶を持つであろうR氏、希望がなんなのかさえわからないわたし、ふたりの道が二手に分かれることになるのが悲しい 記憶というもので人は生きていける 物に愛着し、思い出したり愛でたり、人と交流して楽しかったり だけど 人生は喜びだけでない 憂いや、痛みや、苦しみが心をかき乱す そんなものでも心に留めて記憶しているほうがいい 暗闇を失くしてしまったら光がわからない それがあるからこそ光や希望を目指して生きていけるんじゃないかと思った 消えてほしいと思ったものでも消滅して記憶がなくなるのは困る 一つ消えればそれはやがて私の存在さえも薄らいでいくものになる この夏の、心の1ページに刻まれる物語だった
最後まで「この物語はどんな終わりを迎えるんだろう」と言う疑問を抱きながら進んだ。不思議な世界のお話。
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