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その島では多くのものが徐々に消滅していき、一緒に人々の心も衰弱していった。 鳥、香水、ラムネ、左足。記憶狩りによって、静かに消滅が進んでいく島で、わたしは小説家として言葉を紡いでいた。少しずつ空洞が増え、心が薄くなっていくことを意識しながらも、消滅を阻止する方法もなく、新しい日常に慣れていく日々。しかしある日、「小説」までもが消滅してしまった。 有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。
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Posted by ブクログ
「わたし」が暮らしている島では、ある日突然に物事が消滅する現象が起こっていた。 玩具、貴金属、本などの物的な物だけではなく、言葉、記憶、そして人体までもが消滅の可能性がある社会なのだ。 「わたし」は父親を早く亡くし、母親と二人で暮らしていたのだが、母親は消滅現象が起こっても記憶を消失しない能力があ...続きを読むったために秘密警察に連行されてしまう。 それ以降、「わたし」は小説を書いて一人で暮らしている。 「わたし」には二人の大切な人がいる。 一人は「わたし」の両親のもとで色々と働いてくれていたお爺さんで、常に「わたし」の側に立って助けてくれていた。 もう一人の大切な人は編集者のR氏で、「わたし」の小説を常にサポートしてくれている。 R氏は「わたし」の母親同様に、記憶を消失しない能力を擁していたため、秘密警察に連行されてしまう可能性があった。 そこで「わたし」はお爺さんと相談して、「わたし」の自宅に秘密の部屋を作り、そこにR氏を匿うことにした。 それ以来、R氏は狭い隠し部屋が人生の全ての時間を過ごす場所となる。 この物語を読み進むにつれ、私はアンネ・フランクの境遇を思い浮かべた。 自分の意思とは裏腹に、社会が見えない何者かによって左右される人生だ。 読みながら、自分が抱いている理想の社会と現実とのギャップを考えざるを得なかった。 そんな考えに至ったのは、今回の不和雷同とも云える衆議院選挙後だったことも影響したのだろう。 記憶に関しても、幼少の頃の出来事を鮮明に覚えているにもかかわらず、ついさっきの事を安易に記憶から削除してしまうことも多いことから、脳の中身は自分の意思とは異なり、もっと有機的な働きがあるのではとも思う。 自分の意思、想い出は、意識して結晶の如く大切にしまっておかなくてはならないものだと、小川洋子さんの『 密やかな結晶 』で教えてもらった気がする。
恥ずかしながら、これまで小川洋子さんの作品を読んだことがなかった。 そして本作『密やかな結晶』が、25年も前に刊行された作品だということにも驚かされた。 これほど時代を超えて読み継がれている理由は、読み終えた今ならよくわかる。 物語の舞台となる島では、ある日を境に、人々の記憶から「もの」や「概念...続きを読む」が、ひとつずつ消えていく。 島の人々は戸惑いながらも、その消滅を受け入れ、忘れるべきものとして手放していく。 そこには秘密警察の存在があり、記憶を失わない者は連行されてしまうという恐怖が、常に影を落としている。 この構図は、読みながら何度も、 ナチス・ドイツ下で迫害を受けたユダヤ人の歴史を思い起こさせた。 暴力や強制だけでなく、 「従うことが安全だ」と思わされる空気そのものが、人を無抵抗にしていく怖さが描かれているように感じた。 読み進めている最中、正直に言えば、 意味がうまく掴めない場面も多かった。 なぜこの描写が必要なのか、なぜこんなにも静かに物語が進むのか、戸惑いながらページをめくっていた。 しかし、読み終えたあと、それまで点だった出来事や感情が、静かにつながっていく感覚があった。 理解は読書中ではなく、読後にゆっくり訪れる。 この作品は、そういう読み方を要求してくる物語なのだと思う。 この物語が突きつけてくる恐怖は、記憶が奪われることそのものではない。 奪われているのに、それを「仕方のないこと」として受け入れてしまう人間の姿にある。 大切なものは、ある日突然奪われるのではなく、静かに、穏やかに、もっともらしい理由とともに消えていく。 そして気づいたときには、失ったことに対する感覚そのものを失っている。 コロナ禍を経て、私たちは自由や日常、当たり前だと思っていたものを、驚くほど無抵抗に手放してきたのではないだろうか。 そのことに対して、強い違和感を抱かない自分自身の姿と、この物語の世界が重なって見えた。 それでも、物語の中には、静かに、しかし確かに抵抗し続ける人たちがいる。 声高に主張するわけでもなく、 劇的な勝利が描かれるわけでもない。 ただ「大切なものを大切だと思い続ける」ことを、やめない人がいる。 その結末が救いなのかどうかは、正直、わからない。読後に残るのは、希望よりも切なさに近い感情だった。 けれど、読み終えた今、この物語は過去の寓話ではなく、今も続いている現実の写し絵なのだと思わずにはいられない。 意味がわからなかったはずの物語が、あとから静かに深く染み込んでくる。 名作と呼ばれる理由は、その読後の余韻にあるのだと思う。
すきな温度と湿度。 たいせつなものが消滅してしまうのは、いや。 わすれてしまうから、へいき? どんどん箱が小さくなって、透明。 消えても、消えないことが、 わたしたちの心をささえているのに。
ある小さな島では物が次第に消滅されてしまう。そして完全に記憶から消されていく。貴重な絆、思い出が容赦なく破壊される。しかし逆に忘れない人も存在している。決して従わない。秘密警察がどんなに怖くも、自分の尊厳を失わない。 つまり誰にも奪われはしないものはまさに密やかな結晶である。
記憶が少しずつ消滅していく島の話。 読み終わった後には何とも言えないような、心の深い空洞に身を包まれたような喪失感に浸ってしまう。「消滅」の物語によって「消滅できないもの」の物語を描く。人々の中にひっそりとある声に出せないおもいを掬いとる、私たちの中にあるそんなおもいを改めてこの物語はすくいとって肯...続きを読む定してくれるものだと思った。「消滅」という失う物語の静かでその確かなことばの数々に作者の筆の虜にならないはずがない。
あらゆるものが失われていく世界だからこそ、誰にも触れられない確かなものの重要性、美しさをまざまざと感じるお話だった。 「消滅」とは姿かたちがそのまま消えていくことだけではなくそれに付随した記憶や思い出まで消えてしまうこと。物質の消滅に伴い主人公たちも徐々に人間味を失っていく様子が印象的だった。 ま...続きを読むた、例え形がなくなっても記憶として覚えておけばそこに存在することだってできるのだと主張しているようにも思えた。 心の奥底の誰にも触れられないところに閉じ込めておく確かな思いが、消滅のしない"密やかな結晶"なのであろう。
記憶が少しずつ消滅していく島 何かがなくなって それらを処分して 適応していく 秘密警察が記憶が消滅しない人々を 連行していく 次第に自由が奪われているはずなのに なんの疑問も持たずに生きる人々 すべて もう初めからなかったかのように 記憶がなくなっていくのだから 疑問をもつわけもない 何か独裁者...続きを読むが徐々に 自由を奪っていくような感じかもしれない かつての戦時中の日本もこんな感じだろうか 今もどこかでこんな思いをしている人々が いるのだろうか と、思ってしまう 小説家である主人公が小説を奪われてからは さらに衝撃的に状況が進んでいく 最後に書いた小説がまた 物語を彩っていく せつない中にも いくつもの希望が見え隠れする そんな 透明感溢れ、儚いお話でした
次々と何かが消失していく架空の島、という設定に小川先生の美しい文体が合わさってまさに大人ファンタジー。記憶を持った人々が秘密警察に迫害される様はアンネの日記のオマージュらしい。消失を描くことによりこの世に存在する物の美しさが際立つ画期的な小説。
絶対に文庫で読んでほしい。解説があったから救われた。 とても恐ろしい話だった。 ミステリーではなく、作者からの警告文である。 人に流され、世に流され、大切なことも手放してしまうならば、どんな結末が待っているだろうか、というファンタジーだ。 どんどん大切なものが失われていく物語の展開を、どう受け止め...続きを読むたらいいかわからない。 少し変わった話やを世間を批判したような物語を読みたいときにすすめたい。
消失が当たり前に起こる世界の中で、記憶を失くさない人と、唯一奪えなかったものの話。 秘密警察たちが奪えなかったものは、きっと「愛情」なのだと思った。
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小川洋子
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