『自分の不完全で不恰好なピースを寄せ集めて、それが奇跡的にかちっとはまって、逆転してかっこいいモノができるのがヒップホップだと思ってる』
いや〜最高。爽快で痛快なヒップホップ小説。
主人公・明子は60代の梅農家。夫に先立たれたあと、自分で経営するしかなくなり、アルバイトを雇って30年間切り盛りして
...続きを読むきた。
バイトのメンバーも個性豊かで面白かった。春馬、ジョーさん、さなえ、引きこもりの息子がいる円、明子の義理の娘・沙羅。みんなそれぞれの物語がある。
多少、強引でご都合主義的な物語展開もあったが、なんせテンポが良いので全く気にならない。
明子とポンコツ息子で3年間失踪中の雄大がステージで邂逅するのは最高で胸熱の展開だけど、まさかの心理的な揺らぎにより、あんな形になるとは。明子の壮大な子離れの物語とも言える。
なんでうちの子は言うこと聞かへんねやろ?
そう悩みぬいた明子の答えがとても印象に残った。
———紹介(公式より)———
マイクを握れ、わが子と戦え!
山間の町で穏やかに暮らす深見明子。
女手一つで育て上げた一人息子の雄大は、二度の離婚に借金まみれ。
そんな時、偶然にも雄大がラップバトルの大会に出場することを知った明子。
「きっとこれが、人生最後のチャンスだ」
明子はマイクを握り立ち上がる――!
『晴れ、時々くらげを呼ぶ』『檸檬先生』などで最注目の新人賞から、今年も文芸界のニュースターが誕生!
第16回小説現代長編新人賞受賞作。