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永田町の地下鉄駅の階段を上がると、そこは30年前の風景。ワンマンな父に反発し自殺した兄が現れた。さらに満州に出征する父を目撃し、また戦後闇市で精力的に商いに励む父に出会う。だが封印された“過去”に行ったため……。思わず涙がこぼれ落ちる感動の浅田ワールド。吉川英治文学新人賞に輝く名作。
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Posted by ブクログ
地下鉄とその出入口で時空の歪みを通してなされるタイムトラベルが、本作の主軸をなしている。突拍子もない設定ではあるが、そこで展開される謎めいた出来事が、ある事実に向けて収斂していく。発端は立志出世の父と、3人兄弟の長男が激しく言い争った後、長男は家を飛び出し事故にあって亡くなる。本作の主人公である次男...続きを読むは、この兄の命日に、地下鉄の出入口で不思議な経験をする。そこから過去へ過去へと因果を紐解くように遡っていく。この過去へのタイムスリップを通して、主人公は兄の死の真相を知り、非情と思っていた父の過去を知ることになり、この異様な様々な体験を共有する相手とともに深く謎めいた過去へと誘われていく。どんな結末が待ち受けているのか、不透明な予感を抱きながら、現実離れした体験を自然に受け入れていく。導かれるかのような時空の彷徨いの先に、やりきれない驚きの結末がある。
一代で国際的な大企業を築き上げた父。しかし、家庭では母を蔑ろにし暴力的であったため反発した兄は家を飛び出し、自殺。次男である主人公も、その時からはっきりと反発心が芽生え、家を出る。後に母も家を出て次男と暮らすようになる。結局、三男である弟が家業を継ぐ流れになっているが、妻は子どもを置いて実家に帰って...続きを読むしまい苦労している。 主人公、真次は地下鉄の駅から時間を遡って、戦後の闇市で商才を発揮している父、戦時中のソ連軍の攻撃から逃れる父、徴兵され入営する父、祖父の借金の為に必死に働いてる父…自分の知らないいろんな父の姿を見ることになる。そして、兄の自殺の本当の理由も知ることになる。 また、自分の不倫相手が、異母兄妹であったことが判明、、悲しいお別れもあります。 自分が生まれる前の親の姿は意外なものかもしれません。 ただ、それを知って今の親のことを深く理解できても、許せるかといえばそれはまた別の話ですね。無理して許すことはないと私も思います。
主人公が複雑な想いを持つ地下鉄が、時空を超え父親の生い立ち等家族の過去に繋がる出口を持つ、たが、決してファンタジーではない物語。 バックトゥザフューチャーのデロリアンとも、ドラえもんのタイムマシーンとも違う。このメトロは読後に切ない想いを残す。 最初からどこに向かっているのかわからない展開に夢中...続きを読むになる。読み進めるとそれぞれの人物の位置関係がなんとなく判明してくるが、それでも最後までエンディングは読めない。結末がわかった今だからもう一度丁寧に読みたくなる。 最後に出てくるルビーの指輪。 これから読む人には是非意識するようにお薦めしたい。 選書ありがとう。
真次は地下鉄の通路でタイムスリップを繰り返すうち、徐々に家族の真実を知ることになる。そして、制御できない残酷な現実が明らかになっていく
町に地下鉄がやってきたその日、真次は不思議な錯覚に捉われる。ホームに立ちつくす自分を、もうひとりの自分が地下鉄の窓の中から見つめているのだ…。愛と冒険の傑作ファンタジー。
おそらく約20年ぶりに再読。最近文庫になった新作を読む前に、私にとって浅田さんの作品の原点ともいえる本作品をもう一度味わおうと思って手に取りました。もちろん「ぽっぽや」「蒼穹の昴」を初め浅田さんの作品はほぼ読んでいるはずです。ただ、「メトロに乗って」は私が浅田さんの作品を読むきっかけになった本。 ...続きを読む同じ浅田さんの作品を、それも20年以上前の作品と最近の作品を読み比べてみると自分がどう感じるだろう?浅田さんの文章・ストーリー展開等に変化はないだろうか?と半ば期待のようなものにワクワクしながら「メトロに乗って」を読み始めたのだけれど、残念ながら過去に感動したことだけは覚えていて再読したはずなのに、読み始めから初めて読むのと同じような感覚。全くと言っていいほど覚えていない。浅田さんの作品の過去と現在の違いを感じる以前の問題として、自分の脳の衰えを自覚せざるを得ない。20年という年月は長いものだ、と何だか哀しくなってしまったのでした。 やはり、題名通り地下鉄が作品全体の背骨の様な役割を持っている。主人公は地下鉄をタイムマシンのように使いながら、自分の家族や父親の真実を思い知らされていく。愛人とほぼ同時に。しかし、決して過去の事実を変えることはできない。最後に一点だけ自分のこれからの人生を愛人と共に変えていこうとした矢先に、自分と愛人との間にある真実に翻弄されてしまう。どうしようもない流れの中に身を置いているということが切ない。この最期の展開に至る途中で、その内容が予想できた。予想だと思っていたのだけれど、最期まで読んだところで、それは予想ではなく脳の奥底に眠っていた自分の記憶が蘇ってきていた事であることがわかった。 本作を読みながら、東京の地下鉄のことが自分自身の経験と重なってしまいました。私が知っているのは1980年代からではありますが。 狭くて、時折車内の蛍光灯が消えて真っ暗になったかと思うとオレンジ色の補助灯が点灯する丸ノ内線が懐かしい。初めて乗った時は「故障ではないか」と思ったものだ。 神田のJRと地下鉄を繋ぐ地下道、階段部分の二方向のトンネル。身を屈める様に通った狭さや低さが懐かしい。 霞ヶ関・赤坂見附あたりの地下の接続道の迷路のような暗い長い道も不安になりながら、「標識の駅が接続しており乗り換え可能」というサインは信じてはいけないという事実。 おそらく、20年前に読んだ時も同じように感じたはずだ。しかし今回は初読のように感じられた。ただ一点だけ、最期の「現在の人間が存在しなくなる」出来事だけは読んでいる途中からストーリーが予測できた、というか思い出していた。やはり、一部分だけは記憶に残っているものですね。 やはり良い作品でした。最近乗っていない地下鉄の路線や歩いていない通路等を久しぶりに訪れてみたいと思います。
自分が見ているその人は、自分が見ているだけの一部でしかない。 昭和初期から戦争、戦後の激動の時代を生き抜いた父親の知らない一面をタイムトラベルで垣間見る。 他者は自分の思い通りにはいかない、自分の思い通りに歴史は変えられない。 とても力強く、切ない物語でした。
●主人公がある日、突然タイムスリップして、家族の過去と向き合う物語。●彼は父親の慈悲ない態度に愛想をつかせ家を出ます。そして、タイムスリップし、青春時代の父親と交流します。交流の中で、父親が仲間を大切にする、とても情に厚い人だったと知る・・・。 ●この本はファンタジックな手法を用いて、読者を惹き付け...続きを読むています。私は、親子愛にとどまらず思った事があります。人はともすると、思い込みや噂に惑わされ、真実を見失い勝ちです。反省してやみません。
作者は地下鉄ラブなのだろう。就職した頃は車内の照明が消えたり、ランプのようなものが点灯したりする地下鉄がまだ普通に走ってた。いつから無くなったのだろうか。それにしてもみち子がかわいそうなお話しだったなぁ。補助的な登場人物かと思ったが、そうではなかったね。 父の若かりし日を見てみたい、その頃の父と語り...続きを読むたいと思える作品でした。
父と息子の話 強い昭和臭 いろいろな人間関係の設定は、何となく予想がついてしまう。 でも、そんなことに関係なく、面白い。 筆者の時代ごとの街や心情の描写力に引き込む力がある。一気読みでボロ泣き。 混沌とした時代を、しぶとく生き抜くアムールが魅力的だった。 東京のはりめぐされた地下道(鉄?)が、...続きを読むファンタジーの入口なことも面白い。 ただ、タイムスリップして主人公が頑張っても、兄貴は元に戻らないし、みち子は亡き者になってしまうし。生ぬるいかもしれないけれど、全方位ハッピーエンドが良かったなぁ。
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浅田次郎
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