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東京に出張した僕は、新聞記事で、大学時代を過ごした高円寺のアパートの大家の雪子さんが、熱中症でひとり亡くなったことを知った。20年ぶりにアパートを訪ねようと向かう道で、僕は、当時の日々を思い出していく。
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Posted by ブクログ
木村紅美(くみ)さん、初読みです。「雪子さんの足音」、2018.2発行。一息に読み終えました。20年前に住んでいた月光壮の大家である川島雪子さん(90歳)死去のニュースを知り、20年前のことを回顧する湯佐薫。とても親切でお節介な雪子さん(70歳)、大学3年の薫、高卒のOLで同い年の小野田さん。この3...続きを読む人の奇妙な人間関係が描かれています。度の過ぎた世話焼きの雪子さん、愛情を寄せる小野田さん、潔癖で不器用な薫。人間関係が噛み合わない切なさを描いた秀作だと思います。
雪子さんの不安、薫のもどかしい思い、小野田さんの抱える闇、それらを月光荘というアパートが包みこんでいる。未来に希望を見つけられないまま生きていく、そんな人たちを切り取ったお話だった。
淡々としているけど、伝わってくるものがある。 雪子さんの求めていたこと、それに応えて寄り添う子、疎ましく思いながらも甘えてしまう青年。 どの人の気持ちも違和感なく受け入れて読むことができた。
薫(男性)は、大学生のころに暮らしたアパートの大家・雪子さんが亡くなったことを知る。 当時の雪子さんは70歳ほど。 薫を孫のように可愛がり、お小遣いを渡したり食事の世話をしたりと、徐々に生活の中にも入り込んできた。 同じアパートに住む小野田さんも、薫に好意を持ち近づいてきた。 2人が侵食してくる。 ...続きを読むスパッと切り捨てたつもりで、グズグズ悩む薫。 雪子さんと小野田さん、只者ではない。と、読者の私は思った。 不穏な空気を醸し出す、こういう話、好きだ。
小さなアパートで始まる疑似家族。 親切が過ぎて煩わしくなったり、こじれて縁を切ってみたり、勝手に頼ってみたり。 それぞれ少し壊れた人たちが居場所と姿を探す。
40年前に住んでいた中野の下宿のおばあさんと重ね合わせて読ませていただき、すごい郷愁を感じた。食事の招待は無かったけど、部屋の掃除はよくしてもらったな。 昨年、その下宿を引き払って以来、初めて訪れたがおばあさんはおろか築年数の経つアパートが建っていた。すごく寂しかったな。
読んでいて戸惑った。タイトル、装丁からはとうてい想像できないストーリーだったのだ。 とある大家さんの訃報から話ははじまっている。それを耳にした主人公は中年の男性だが、かつてはその大家である雪子さんのアパート・月光荘に下宿していた大学生だった。 高円寺にあるそのアパートは今どうなっているのかと足を運び...続きを読むつつ過去を思い出していく、という回想部分がメインになっています。 踏み込みすぎた親切。お節介。過干渉。絶望的に雲行きがあやしくてゾッとさせられるのだが、罪悪感と申し訳なさもごっちゃになる。なぜって、雪子さんのそれはどこまでも純粋な善意だからだ。悪意は一切ない。多少の下心はあれど、でも善意なのだ。 見返りを求めない優しさは素晴らしいものであるはずなのに、人はどうしてかそれに怯えてしまう。得体の知れないものに対する恐怖だろうか? 雪子さんに対するそんな恐怖と、行き場のない怒りや憤り、煩わしさや鬱陶しさを薫とまったくシームレスに私も感じていた。 小野田さんという女性住民の存在もまたこの不協和音をいっそう響かせている。 彼女らとどう付き合うべきだったんだろうか?正解はみつからず、やるせなさだけが残る。 ホラー小説と紙一重。 綿で首を絞められているような、どんどん空気が薄くなっていくような物語のはこびがとてもよかった。 8月の埃っぽい風。後味は悪い。が、あたたかみもあるのだ。なんともいえないこの感じ好きです。
主人公の薫が学生時代に過ごした下宿「月光荘」での回想。管理人の雪子さんは異常なほどお節介。同じ下宿先の小野田さんは行き遅れの独り住まい。薫は雪子さんの世話をうっとおしく感じながらもただ飯やお小遣い欲しさに小説家志望を演じ利用する。冷めた関係性を保ちながら自己の利益のみに固執する主人公の様は異質で現実...続きを読む味が薄く乾いた物語といった印象を受けました。
公務員の薫は新聞記事で、学生時代の下宿先の家主・雪子さんが熱中症で孤独死していた、と知り二十年ぶりに下宿先の月光荘を訪ねてみる。 過剰なまでに下宿人をもてなす雪子さん。自分の都合良く利用する薫。薫に思いを寄せながら、受け入れてもらえない小野田さん。 なんだかとても昭和な感じなのだが、たぶん平成。そ...続きを読むこに自分がいたら、たぶんとってもめんどくさい。雪子さんの思いが、少しずつづれている事が切なかった。
アパートの大家さんと店子のお話。青春時代を描いているには違いないはずなのだが、どうにも鬱々した空気が拭えない。どこにも明るさが見えないけれど、暗いだけというわけでもない。皆が少しずつ考えが違って、気遣いながらも不協和音が生まれていく感じがする。 2021/2/12
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