小説 - 集英社文庫作品一覧

  • あなたへの日々
    3.5
    曜子、23歳。スイミングスクールのインストラクター。学生時代からの友人・徹也に求婚されるが、気持ちは固まらない。徹也のことは好きだけど、恋してはいない。そんなとき造形作家・久住のモデルをつとめ、激しく惹かれてゆく。だが彼は女性関係に奔放で束縛を嫌うタイプ――。愛してくれる優しい男と、不安で仕方がないのに愛してしまう男と。ふたりの男の間で揺れ惑う曜子の心模様。
  • あの角を曲がって
    5.0
    19歳の女子大生の涼子はエリートサラリーマン・内島と不倫の関係にあったが、その関係が彼の妻・通江にばれてしまう。涼子は「必ず彼を奪ってみせる」と心の中で決意する。涼子を慕うが想いを告げられぬ田辺は同級生の彰子に苛立ちをぶつける。一方涼子の妹・淑子は田辺に恋している。錯綜する愛の行方を描くラブロマンス。
  • 逢はなくもあやし
    3.8
    旅に出たまま戻らない恋人を探すため、OL・香乃は彼の故郷である奈良・橿原を訪ねる。しかし彼の母親から彼は既に亡くなったと告げられる。「すぐ戻るから待ってろよ」と言ったのに、なぜ…。時が止まったような町で答えを探す香乃は、考古学者から亡き夫の復活を待ち続けた女帝・持統天皇の逸話を聞かされる。「待つ」ことの意味とは――。時を超え、男女の想いが交錯する。カンヌ映画祭出品『朱花の月』原案小説。
  • あひる飛びなさい
    -
    “商法の法は魔法の法や”と闇市から身を起こし、一大観光事業をめざす横田大造元兵曹──。“日本人の手で、日本の空を”を合い言葉に、国産飛行機誕生に一生を賭ける加茂井元技術中尉──。戦後の混乱期を舞台に、独自の道を歩む2人の男の奇妙な友情を、軽快かつユーモラスに描く感動作。
  • 天城峠
    4.0
    修善寺から下田行のバスに乗り、季節はずれで客もない温泉場をいくつも抜け、湯が島を越す……。若い頃、放埒がもとで妻子と別れた、芝居の裏方の録太郎は、若い役者啓三と一泊旅行。病弱の録太郎に若者のような明日はない。来し方行く末に想いを馳せながら、録太郎は最後の煙草に火をつけた……。表題作ほか池波文学の原点ともいうべき気迫に満ちた初期短編6編。
  • 雨の日には車をみがいて
    4.0
    ビートルズが東京へやって来た日、放送作家の卵だったぼくは、1台のオンボロ車、シムカ1000を手に入れたが、その代償のように1人の女友達を失う(第1話「たそがれ色のシムカ」)。アルファ・ロメオ、ボルボ122S、BMW2000CS、ポルシェ911S……。それぞれの車に素敵な女性との出逢いと別れをからめて、リリカルに描く青春恋愛小説の名作。
  • 雨の降る日は学校に行かない
    3.6
    保健室登校をしているナツとサエ。二人の平和な楽園は、サエが“自分のクラスに戻る”と言い出したことで、不意に終焉を迎える――(「ねぇ、卵の殻が付いている」)。学校生活に息苦しさを感じている女子中学生の憂鬱と、かすかな希望を描き出す6つの物語。現役の中高生たちへ、必ずしも輝かしい青春を送って来なかった大人たちへ。あなたは一人きりじゃない、そう心に寄り添う連作短編集。
  • 雨鱒の川
    3.7
    東北のとある寒村。母親・ヒデと二人暮らしの小学三年生の心平は、川で魚を捕ることと絵を描くことにしか興味がない。そんな心平には心の通い合う少女・小百合がいた。心平の絵が国際的な児童画展に入選し、祝賀会の夜に母親は雪の中で死亡した――。十年後、十八歳になった心平は村に帰ってきた。小百合の家の造り酒屋に勤めるが、小百合に縁談が起きて…。幼なじみの透明な心を謳い上げた清冽な初恋小説。
  • あやかし草子
    3.8
    古い都の南、朽ちた楼門の袂で、男は笛を吹いていた。笛を吹いてさえいれば、男は幸せだった。ある春の夜、笛を吹く男の前に、黒い大きな影が立っていた。鬼だ。笛の音を気に入った鬼は、男に絶世の美女を与え、百日の間は絶対に触れてはならぬと告げるが……(「鬼の笛」)。人ならざるものを描くことで浮き上がる、人間の業や感情。民話や伝承をベースに紡がれた六編を収録した短編集。
  • あやし うらめし あな かなし
    4.0
    子供の頃、伯母から聞かされた恐怖譚――。月のない夜、奥多摩の霊山に建つ神官たちの屋敷を男女の客が訪れた。思いつめた二人は、神主の説得の甲斐もなく屋敷内で心中を図ったという。だが女は死に切れず、事切れた男の隣で苦しみながら生き続け……。著者の母方の生家に伝わる話を元にした「赤い絆」「お狐様の話」など、怖ろしくも美しい全7編。短編の名手が紡ぐ、味わい深き幽玄の世界。
  • ある八重子物語
    -
    「水谷八重子は、それまで我が国になかった『女優』という新しい職業の確立をめざした、時代の先駆けの一人です」……神田川が隅田川に流れ込む手前の柳橋。古橋医院に集う人びとは皆、舞台の名台詞をもじって話すほどの新派好き。戦前・戦中・戦後。八重子を、そして日本語を愛してやまない庶民の口を借りて、名女優の一生が浮かび上がる……。ひさし版“昭和と女優”。
  • あれは幻の旗だったのか
    4.5
    「もう檻の中の運動会はやめだ」――全共闘高揚期、茶番劇に飽きた四人の男たちが本物の銃と弾丸を用意して立ち上がった。活動家たちに、いささかヒステリックなジャーナリズムに、そして運動会そのものに“一杯食わせて”やるために……。遊びでもなく、気晴らしでもなく、本物の戦いに命をかけた男たちの鮮烈な思いを描く衝撃のネオ・ハードボイルド。
  • アンダースタディ
    3.7
    父が急死して21歳のOL、内海奈美の人生は大きく変わった。3歳の時に別れた母と双子の姉、美幸と暮らすことになって、姉の(代役)生活が始まった。身代わりデートをしたり、姉の愛人らしい大学生、安田から「連絡くれなきゃ死ぬ」って電話を受けたり、代役もなかなか大変なのだ。不穏なことは次々起きる。安田の自殺、叔父の心中事件、旧い友人の死。奇妙な糸に結ばれて意外な真相が暴かれる長編。
  • 家日和
    3.8
    会社が突然倒産し、いきなり主夫になってしまったサラリーマン。内職先の若い担当を意識し始めた途端、変な夢を見るようになった主婦。急にロハスに凝り始めた妻と隣人たちに困惑する作家などなど。日々の暮らしの中、ちょっとした瞬間に、少しだけ心を揺るがす「明るい隙間」を感じた人たちは……。今そこに、あなたのそばにある、現代の家族の肖像をやさしくあったかい筆致で描く傑作短編集。
  • 生きてるうちに、さよならを
    3.6
    「あなたが天国へ行った瞬間を知ってたわ。だって真夜中にきたわよね、私の部屋に。ごめんねって泣きながら…」「兄弟、おれに黙って、なぜ先に逝った。バカヤロー!」親友の葬式で、勝手に死者との絆を強調する自己陶酔型の弔辞に嫌気がさした会社社長の本宮は、自分自身の生前葬を企画する。だが彼は知らなかった。妻の涼子が重い病に冒されて、余命幾ばくもないのを隠していることを……。
  • 石の蝶
    -
    昭和初年、飢饉と恐慌のふき荒れた時代に、吉原で若い生命をすり減らしていった遊女・さよ。貧困から品物のように売買され、閉ざされた世界から一歩も外へは出られず、一年中一日の休みもなく客をとらされた遊女さよ。傷つきやすい魂と肉体を備えた一人の少女の屈辱と絶望の半生をヒューマンなタッチで描く長編野心作。
  • いじめへの反旗
    3.0
    アメリカで生まれ育ったユーこと小野田雄一郎。父親の仕事の都合で帰国、地域で有名な進学校の中学二年に転入した。二重国籍者として日米の教育の違いに戸惑う日々がつづく。ある日、仲良くなった級友が校舎の屋上から転落死した。学校側は自殺を隠蔽しようとするばかり。いじめによる自殺に違いないと見抜き、ただ独り正義の闘いを開始する。社会派サスペンスの旗手がいじめ問題に挑んだ迫真作。
  • 伊豆の踊子
    3.7
    孤独な生い立ちの20歳の主人公は、伊豆の峠で旅芸人の一行と出会った。花のように笑い、無邪気に自分を慕う踊子の薫や素朴な人々と旅するうち、彼の心はやわらかくほぐれていくのだった。淡く、清冽な初恋を描いた名作「伊豆の踊子」、「十六歳の日記」など初期の短篇5編を収録。
  • 伊勢・志摩に消えた女(十津川警部シリーズ)
    2.5
    一人娘の女子大生、亜矢子が伊勢・志摩に旅行に出たまま戻らない。事件に巻き込まれたのか。元国務大臣で製薬会社社長の平山は十津川警部に相談した。元刑事だった橋本に調査を依頼すると、亜矢子は偽名をつかって伊勢市内の旅館に投宿していることを突き止める。しかしその夜、旅館の女将と女子従業員が何者かに殺されてしまう。単なる失踪と思われた事件が複雑になっていく。近鉄特急を舞台に、十津川警部の推理が冴える。
  • 偉大なる、しゅららぼん
    4.1
    高校入学を機に、琵琶湖畔の街・石走にある日出本家にやって来た日出涼介。本家の跡継ぎとしてお城の本丸御殿に住まう淡十郎の“ナチュラルボーン殿様”な言動にふりまわされる日々が始まった。実は、日出家は琵琶湖から特殊な力を授かった一族。日出家のライバルで、同様に特殊な「力」をもつ棗家の長男・棗広海と、涼介、淡十郎が同じクラスになった時、力で力を洗う戦いの幕が上がる……!
  • いちご同盟
    3.9
    中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美を知る。徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手になって彼女を慰める。ある日、直美が突然良一に言った。「あたしと、心中しない?」ガラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。
  • 1ポンドの悲しみ
    3.6
    数百キロ離れて暮らすカップル。久しぶりに再会したふたりは、お互いの存在を確かめ合うように幸せな時間を過ごす。しかしその後には、胸の奥をえぐり取られるような悲しみが待っていた――(表題作)。16歳の年の差に悩む夫婦、禁断の恋に揺れる女性、自分が幸せになれないウエディングプランナー……。迷い、傷つきながらも恋に生きる女性たちを描いた、10のショートストーリー。
  • 一滴の夏
    -
    故郷を捨てた二十歳の青年が、1年の放浪の後、洪水でめちゃめちゃになった故郷へ帰ってくる。荒廃した町を憑かれたように徘徊する彼の内部に、荒涼としたものに立ち向かう青春の意志が芽生える…。鬱屈した青春の煩悶を生き生きと描いた『一滴の夏』ほか『恋人』『隣人』『冬の皇帝』など、全7編を収録した秀作集。
  • いつか白球は海へ
    3.2
    六大学野球で活躍した海藤敏は、プロ野球界入りを諦め、社会人チーム“間島水産”に入団。オーナーの熱心な勧誘と、全国制覇を遂げた名門チームへの憧れが心を動かしたのだ。だが、入団早々、オーナーが急死し、チーム存続の危機が明らかになる。勝利にこだわるルーキーの熱い思いは、他の選手達を…。野球を愛する男達の闘いを描く気鋭のスポーツ小説。ひたむきな昭和のフィールド・オブ・ドリームス。
  • 凍蝶
    -
    恋も諦め自己を捨て、ひたすら生き甲斐にしてきた弟の再婚が大恋愛の末と知り、打ちのめされたような虚無感に襲われる秋代(「凍蝶」)。旅先で思いがけなく再会した男の誘いを無視できず、同行の友人をまいてまでホテルで待つ男に電話する人妻菊子(「水仙」)。日常の中の非日常な出来事を、こまやかな洞察としなやかな筆致で描く珠玉の短編集。表題作他8編を収録。
  • いねむり先生
    3.9
    最愛の妻である女優と死別し、ボクは酒とギャンブルに溺れる日々にあった。そんな折、友人のKさんが、初めて人を逢わせたいと言った。とてもチャーミングな人で、ギャンブルの神様として有名な作家、色川武大(阿佐田哲也)その人だった。先生に誘われ、旅打ちに一緒に出かけるようになる。先生の不思議な温もりに包まれるうち、絶望の淵から抜け出す糸口を見出していく。自伝的長編小説の最高峰。
  • イノセントブルー 記憶の旅人
    3.4
    ペンションを経営する森川は、海岸で倒れていた美青年を助ける。才谷と名乗る彼は、「前世の記憶」を見せることができるのだという。彼の訪れをきっかけにするように、ペンションには心に悲しみを抱えた人々が集まってくる。彼らの前世の記憶と現世での縁が絡み合って起こる、息をつかせぬスリリングな展開は、やがて、やさしい癒しと明日への希望につながってゆく。静かな再生の物語。
  • 祈りの朝
    3.0
    高校教師の安優海は、臨月を迎え産休中。大学研究職の夫が寝言で女性の名前をつぶやき、浮気を疑い始める。研究室の女性ではと疑心暗鬼になり、定期健診の後、夫の職場に向かおうとするが……。同僚教師の傷害事件を知らされたり、卒業生と偶然再会したり、予測不可能な事態が次々に起こり……。東日本大震災からの再生と家族の希望を描く。心揺さぶる衝撃の問題作。
  • 神鳥(イビス)
    3.9
    夭逝した明治の日本画家・河野珠枝の「朱鷺飛来図」。死の直前に描かれたこの幻想画の、妖しい魅力に魅せられた女性イラストレーターとバイオレンス作家の男女コンビ。画に隠された謎を探りだそうと珠枝の足跡を追って佐渡から奥多摩へ。そして、ふたりが山中で遭遇したのは時空を超えた異形の恐怖世界だった。異色のホラー長編小説。
  • いびつな贈り物
    4.0
    幼なじみの敏子と偶然再会した大学講師の堀田は、彼女の不遇に同情するうちに、いつしか情事にのめり込んでいった。彼のイギリス留学でふたりの仲は終りを告げるが、その機会に堀田はある決意を固めた…。表題作「いびつな贈り物」など切れ味するどい男と女のミステリー6篇。
  • イブの憂鬱
    3.7
    29歳を迎えた真緒の日々は、ブルー一色。年下の男との恋は遊びに終わり、結婚に逃げ道を求め見合いをしても見事に失敗。その上、会社ではリストラの対象にされて。恋も仕事も、すべてが中途半端。そんな真緒の背中を押すのが3度の離婚を乗り越え今また新たな恋に燃える母と、シングルマザーの道を選ぶ大学時代の友人さつき。30の大台を目前に、自分の足で一歩を踏み出そうとする真緒の一年。
  • インコは戻ってきたか
    3.8
    “究極のハイクラス・リゾート東地中海の真珠キプロス島”女性誌の編集部員響子の海外取材は、このキャッチコピーのようにいくはずだった。だが実際は限られた予算と日程をやりくりする、カメラマンとの二人旅。そして風光明媚で文化遺産に恵まれた島は、民族と文化が複雑に交錯する紛争の地でもあった。39歳、夫も子供もいる女に訪れた、束の間の恋。圧倒的なリアリティをもって迫る長編小説。
  • インターセックス
    3.9
    「神の手」と評判の若き院長、岸川に請われてサンビーチ病院に転勤した秋野翔子。そこでは性同一障害者への性転換手術や、性染色体の異常で性器が男でも女でもない、「インターセックス」と呼ばれる人たちへの治療が行なわれていた。「人は男女である前に人間だ」と主張し、患者のために奔走する翔子。やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気づき…。命の尊厳を問う、医学サスペンス。
  • インディゴの夜
    3.6
    1~7巻506~715円 (税込)
    「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれる」渋谷のホストクラブ、〈club indigo〉。カジュアルな雰囲気と個性派揃いのホストたちがウケて人気は上々だが、たびたび事件に巻き込まれ、オーナーの晶はホストたちと共に解決に奔走することに……。書き下ろしショートストーリーや特典もたっぷり収録した、大人気ミステリー「インディゴの夜」シリーズ!
  • イヴが死んだ夜
    -
    氷雨の浅草寺境内で、若い女性の全裸死体が発見された。太ももには、上品な顔立ちとは不釣り合いな“バラの刺青”が彫られていた。「被害者は岐阜市内の旧家の長女では…」という連絡で、現地へとんだ十津川警部は首尾木家の当主・大造に死体の確認を要請するが、拒否された。家出した良家の娘がなぜイヴと呼ばれ、殺されることになったのか? 空白の3年間の謎を追う、迫真の長篇サスペンス。
  • WILL
    4.0
    11年前に両親を事故で亡くし、家業の葬儀店を継いだ森野。29歳になった現在も、寂れた商店街の片隅で店を続けている。葬儀の直後に届けられた死者のメッセージ。自分を喪主に葬儀のやり直しを要求する女。老女のもとに通う、夫の生まれ変わりだという少年――死者たちは何を語ろうとし、残された者は何を思うのか。ベストセラー『MOMENT』から7年、やわらかな感動に包まれる連作集。
  • ウェディングドレスはお待ちかね(南条姉妹シリーズ)
    4.0
    「その結婚はおやめなさい。ハネムーンの帰り道、棺で戻ってくるつもり?!」 双子姉妹の姉・麗子の挙式直前、正体不明の女が謎の忠告。名門・南条家はパニックに陥った。一計を案じた母は、妹で暗黒通りの女ボスと呼ばれる美知に助けを求める。純情可憐のんびり姉と、ケンカなら負けない妹という、対照的なお嬢様姉妹がまき起こす恋と冒険のユーモアミステリー。好評の南条家姉妹シリーズ。
  • ウエンカムイの爪
    3.3
    【第10回小説すばる新人賞受賞作】――殺られる! 死んだふりをしても無駄だ。食われてしまう……。北海道で撮影旅行中の動物写真家・吉本はある日、巨大なヒグマに襲われ、九死に一生を得る。彼を救ったのは、クマを自在に操る不思議な能力を持つ謎の女だった。その女を捜し求める吉本が見たものとは? 野性と人間の壮絶な闘いを通して、生命の尊厳と自立を描いた傑作。
  • 浮雲心霊奇譚 赤眼の理
    3.6
    1~7巻572~781円 (税込)
    時は江戸末期。絵師を目指す青年・八十八は、夜道で幽霊に出くわして以来、奇妙な行動を取るようになった姉を救うため、憑きもの落としの名人に会いに行く。肌が異様に白く、両眼を覆うように赤い布を巻いた男。名を、浮雲という。布の下に隠した赤い両眼で死者の魂が見えるという破天荒な浮雲と行動を共にするうち、八十八の前には新たな世界が見えてきた――。幕末ミステリー、堂々開幕!
  • 失われた町
    4.3
    ある日、突然にひとつの町から住人が消失した――三十年ごとに起きるといわれる、町の「消失」。不可解なこの現象は、悲しみを察知してさらにその範囲を広げていく。そのため、人々は悲しむことを禁じられ、失われた町の痕跡は国家によって抹消されていった……。残された者たちは何を想って「今」を生きるのか。消滅という理不尽な悲劇の中でも、決して失われることのない希望を描く傑作長編。
  • 薄墨の桜
    5.0
    樹齢1200年、幹の回り11メートル余、万朶に咲いた薄墨の桜は、天空に広がりみごとというより他なかった。20年ぶりに蘇った名木は波瀾の人生を歩んだ料亭の女将と、美貌の養女とその恋人との複雑な人間模様を、妖しくも美しく浮き彫りにした。格調高い文章で綴った著者会心の作「薄墨の桜」。他に「八重山の雪」収録。
  • 宇宙のウインブルドン
    3.2
    杉本宇宙、17歳。身長188センチ、体重78キロ。彼には大きな野望がある。サーブ1本だけでウインブルドンで優勝すること。そのために毎日毎日サーブの練習だけをしている。確かにサーブはものすごい。ジャパンオープンでも対戦相手がひっくり返るほどの圧倒的なサーブで勝ち上がり、とうとうウインブルドンに出場する。世界の強豪たちを相手に果たしてサーブのみで制覇できるのか!? 抱腹絶倒の超青春小説。
  • 海色の午後
    3.4
    唯川恵、幻のデビュー作! 海の見える部屋に暮らす遙子は、システムエンジニアの仕事をもち、医大生の恋人もいて、それなりに満ち足りた生活を送っている。だが、有力者の父から見合いの話が持ち込まれたことで平穏な日々にさざ波がたってゆく。恋愛、仕事、結婚、親子関係、様々なしがらみの中で揺れ動く20代の女性の心模様を描く。コバルト・ノベル大賞を受賞した著者のデビュー作。巻末にエッセイを収録。第3回コバルト・ノベル大賞受賞作。
  • 海を見に行こう
    3.6
    同棲していた彼氏とケンカして、家出した茜。民宿を経営する叔父夫婦のもとに転がり込むが、そこはラブホテルに替わっていて……(「海風」)。結婚して10年。ずっとうまくいっていた妻との間に、大きな悩みを抱えてしまった航。久しぶりに戻った故郷で、昔傷つけてしまった女性と再会し――(表題作)。海辺の街を舞台に、人生に迷い立ち止まる6人の男女の再生を描く、ほろ苦くも心温まる小説集。
  • 麗しき白骨
    -
    【渡辺淳一文学賞創設記念電子化!】T大医学部整形外科・藤本教授の定年退官の時期が迫っていた。絶大な権力を持つそのポストに、次に座るのは誰か――。有力候補の一人である東都大の可知教授は、実績作りのために、骨移植研究グループを発足させた。異種骨移植が上手くいけば、学会の注目を集めること必定である。動物実験もそこそこに、人体実験が開始されたが……。
  • エアエイジ
    -
    高校時代は女の子と遊んでばかりだった昌志。大学入学を機に「夢中になれるもの」を求め、サークルの勧誘を冷やかす中で、航空部の展示に行き会う。真っ白なグライダーと、横にたたずむ美少女。その光景に一目で心奪われた昌志だったが、美少女は「グライダーは呪い」という謎の言葉を残して去ってしまう。彼女との再会のため、昌志は航空部に入部することにするのだが…。空にかける青春!
  • 永遠の1/2
    3.5
    田村宏、27歳。“失業したとたんツキがまわってきた”とはいうものの競輪の儲けで暮らす失業者……。競輪場でやけに脚のきれいな元人妻・良子と知り合うが、その頃から宏そっくりの男が街に出没、次々に奇妙な事件にまき込まれていく。青春の日の陰りと明るさを日常感覚のリズミカルな言葉でとらえる長編小説。第7回すばる文学賞受賞作にして鮮烈なデビュー作。
  • 永遠の放課後
    3.6
    大学生の「ぼく」は、中学の頃から親友の恋人・紗英に想いを寄せていた。しかし、親友を傷つけたくなくて、気持ちを告げることができない。そんな中、プロの歌手だった父譲りの才能を買われ、活動休止中の人気バンドのボーカルにスカウトされる。そして、ライブに紗英を招待した夜、恋は思わぬ方向へと動き始めた――。友情と恋。「ぼく」が最後に選んだものは? 胸を打つ青春小説。
  • エデンの旅人たち
    -
    卒業して1年。学生時代の仲間と再会した茗子。久美はあいかわらずの女王様。留衣の引っ込み思案も変わらない。そして茗子の恋人タクは卒業に失敗してまだ学生。久しぶりに会う彼に、少々気後れを覚える茗子――。みんな変わっていない、いいや、やっぱり変わった。誰もが青春の終わりに駆け抜ける楽園エデン。輝く若さに包まれた7人の男女が過ごした祝祭の日々と、旅立ちの時を描いた長編小説。
  • L change the WorLd(デスノート特別小説版)
    3.9
    1巻660円 (税込)
    L、最期の23日間。劇場版『デスノート』から、スピンオフ「L」登場。究極の選択をしたのち、Lに降りかかった最後の事件を描く完全オリジナルストーリー。映画原案に参加した謎の人気作家Mが小説版を書き下ろし。スクリーンでは見られないLの言葉、Lの想いがここに。大人気コミック『DEATH NOTE』のアナザーストーリー。
  • 冤罪(鶴見京介弁護士シリーズ)
    3.6
    河川敷の車から、男の死体が発見される。練炭自殺かと思われたが、不審な点があり、男と関係のあった銀座ホステス美奈子に容疑がかかる。弁護人の鶴見が調査を開始すると、彼女の周りで数名の男が死んでいる事が判明した。疑惑をもつ鶴見だったが、ある団体と美奈子の繋がりが浮かび……。悪女か、聖女か? 魔性に翻弄されながらも真実を求めて闘う弁護士。長編ミステリー。渾身の書き下ろし。
  • エンジェル
    3.4
    投資会社のオーナー掛井純一は、何者かに殺され、幽霊となって甦った。死の直前の二年分の記憶を失っていた彼は、真相を探るため、ある新作映画への不可解な金の流れを追い始める。映画界の巨匠と敏腕プロデューサー、彼らを裏で操る男たち。そして、ひと目で魅せられた女優との意外な過去。複雑に交錯する線が一本につながった時、死者の「生」を賭けた、究極の選択が待っていた――。
  • エンブリオ 上
    3.8
    1~2巻440~550円 (税込)
    エンブリオ――それは受精後八週までの胎児。天才産婦人科医・岸川は、人為的に流産させたエンブリオを培養し臓器移植をするという、異常な「医療行為」に手を染めていた。優しい院長として患者に慕われる裏で、彼は法の盲点をつき、倫理を無視した試みを重ねる。彼が次に挑むのは、男性の妊娠実験…。神の領域に踏み込んだ先端医療はどこへ向うのか。生命の尊厳を揺るがす衝撃の問題作。
  • A.B.O.AB
    3.3
    血液型にとらわれて「男女交際」なんてダサイ……などと考えてはいけません。血液型を信じましょう。A、B、O、AB、それぞれの血液型の男女が8人いて、恋愛のドラマが始まる。切ない擦れ違いや、ドライな別れがあって、でも詰まるところ収まるように収まる。それって、やっぱり運命だったのかも。新しい物語の世界がある血液型恋愛シミュレーション小説。
  • 王様の結婚
    3.0
    「これまでにいくつか恋をして、いくつか恋を失って、そのたびに3日で立ち直ってきたじゃないか。しっかりしろ!」ジョン・レノンが死んだ日にふられた男の消すに消せない恋の記憶……。以来、すっかり落ち込んだ日常と輝やかしい甘美な過去を交錯させて、男に再び訪れた新しい恋の季節を、ホロ苦いユーモアで描く青春小説。
  • 王妃の館 上
    3.8
    1~2巻605円 (税込)
    パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、ルイ十四世が寵姫のために建てたという「王妃の館」。今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて……。ぶっちぎりの笑いと涙満載の傑作人情巨編。
  • 大きくなる日
    4.0
    グーパーじゃんけんで人数の少ない方がコート整備をする。それが中学一年の太二が所属するテニス部のルール。ある日、太二は同級生の武藤にパーを出そうと持ち掛けられ、その結果、末永一人が負けてしまう。心にモヤモヤを抱えたまま、太二は翌日を迎えて……。(「四本のラケット」)子供も親も先生も、互いに誰かを育てている。四人家族の横山家の歩みを中心に、心の成長を描いた感動の家族小説。
  • 危険なふたり(大塚綾子の人生相談シリーズ)
    4.0
    「あ、そう。ぼくが出張中に彼女とデートしていたのね。じゃ、二度とそんな真似できないようにしてあげましょ!」新入社員の星野豪太は緑川剛編集長の声に震え上がった。人気出版社に中途採用された喜びもつかのま、なんと男の上司から惚れられた。婚約者の桃子にその悩みを打ち明けられずにいるうちに、なぜか豪太は、自分も彼を愛し始めていることに気がついた……。
  • 沖縄コンフィデンシャル 交錯捜査
    3.3
    1~4巻693~781円 (税込)
    那覇市内の高級ホテルで男女の遺体が発見された。沖縄県警捜査一課の若手刑事・反町は、叩き上げのベテラン・具志堅とともに事件捜査に当たる。当初、ただの無理心中と思われたが、準キャリアで同期の赤堀が追う米軍用地をめぐる土地取引事件との関連性が急浮上。二つの事件の背後には、日本の表と裏の“権力”による壮大な陰謀の影が……。著者会心にして渾身の長編警察小説。
  • 屋上で縁結び
    3.0
    1~3巻528~605円 (税込)
    勤め先が倒産し、再就職活動中の苑子。生来の地味さゆえか連敗中のある日、面接会場の窓から遠くのビルの屋上に建つ神社を見つけ、神頼みをする。数日後、採用が決まったのは、なんとその神社があるビルの受付だった。初出勤日の昼休み、何気なく屋上に上がった苑子はモッズコート姿で掃除をする神主の幹人と知り合い、弁当を分け合うことになり…。すこし不思議で心温まるお仕事ミステリー。
  • おしまいのデート
    3.7
    中学三年生の彗子は両親の離婚後、月に一度、父の代わりに祖父と会っていた。公園でソフトクリームを食べ、海の見える岬まで軽トラを走らせるのがお決まりのコース。そんな一風変わったデートを楽しむ二人だったが、母の再婚を機に会うことをやめることになり……。表題作のほか、元不良と教師、バツイチOLと大学生、園児と保育士など、暖かくも切ない5つのデートを瑞々しく描いた短編集。
  • おじさんはなぜ時代小説が好きか
    4.2
    時代小説とは何か? 司馬遼太郎、藤沢周平ら多くの作家が活躍し、名作が書かれた昭和。作品が舞台とする江戸時代。高度経済成長期の「会社」生活に一喜一憂した昭和のサラリーマン達が自らを仮託した下級武士達と、経済成長なきユートピアとしての「藩」。それぞれの時代と社会を詳細に読み解き、日本人にとって時代小説が持つ意味をわかりやすく語る。おじさんも歴女も目からウロコが落ちる必読書。
  • オズの世界
    3.9
    配属先はローカル遊園地!? ディズニーランドで働く夢に破れ、二度と遊園地には行かないと心に決めた久瑠美。失意のうちにホテルへの入社を決めた彼女が命じられたのは、グループ傘下にあたる九州の遊園地での勤務だった。理想と現実のギャップに不満だらけの久瑠美、しかしそこでは更なる試練が待ち受けていた――。遊園地の知られざる裏側と不慣れな地で奮闘する新米社員を描くお仕事小説。
  • おだやかな部屋
    -
    男との愛に生きながら、確かな世俗の絆を求めようともしない孤独な女の心は、日常の些細な出来事も部屋から見下す街のながめも、謎めいたものに変えてしまう。ひとり居の女心のゆらめきに微かな性の芳香を漂わせながら、一組の男と女の微妙な愛のかたちを描いて生の不思議な深淵にせまる力作長編。
  • 墜ちていく僕たち
    3.6
    ある日突然、男が女に、女が男に変わったら……? 神出鬼没の摩訶不思議なインスタント・ラーメンが巻き起こすミステリアスな5つの物語。生まれてからずっと男でいつづけるのも、女で一生終わるのも、人間ってけっこう楽じゃない。性に悩めるあなたも、悩んだことなんて全然ないあなたも、さあ、そんな綱渡りのような固定観念を捨てて、性差の呪縛ものりこえて、新しい自由な世界へようこそ。
  • しのびよる月(御茶ノ水警察シリーズ)
    3.6
    1~6巻594~715円 (税込)
    御茶ノ水署・生活安全課保安二係は斉木斉と梢田威だけの小世帯だった。小学校の同級生が御茶ノ水署で再会する。がき大将だった梢田が斉木をいじめた過去があった。それがいまでは斉木警部補と梢田平刑事。復讐に燃える斉木は、ことごとく梢田の出世を妨害し、日常業務に文句をつける。口論しながら推理も続け、神田お茶の水界隈の難事件迷事件を解決していく。ユーモア・ポリス・ストーリー。
  • 夫の火遊び
    3.5
    『桜ハウス』と名づけた家でハウスシェアをしていた女たち。蝶子36歳・遠望子31歳・綾音26歳・真咲21歳。あれから十数年の月日が経ち……。今明かされる真咲の離婚の真相。婚約破棄を繰り返していた綾音が、選んだ男。遠望子のもとを訪れた女の目的は? そして、蝶子に新しい男が!? 一生懸命に生きるからこそ、どこかコミカルになってしまう30~40代の女たち4人を小気味よく描く傑作連作集。
  • オテル モル
    4.0
    「悪夢は悪魔」の合言葉のもと運営される会員制地下ホテルで働きはじめた希里。「最高の眠りと最良の夢」を提供すべく「誘眠顔」である彼女の奮闘が続く。リハビリ施設に入院中の双子の妹に代わり、小学生の姪と、かつて恋人であった義理の弟とともに暮らす希里が働き始めたのをきっかけに、彼ら三人にも変化がみえてきたころ、妹の沙衣の退院が決まる。直後、事件は起きてしまう――。
  • お父さんのバックドロップ
    3.9
    下田くんのお父さんは有名な悪役プロレスラーの牛之助。頭は金髪、顔は赤白の隈取り、リングでみどり色の霧を吹く。そんな父親が下田くんはイヤでたまらない。今度は黒人の空手家「クマ殺しのカーマン」と対戦することになったのだ。父を思う小学生の胸の内をユーモラスに描く表題作。ロックンローラー、落語家、究極のペットを探す動物園園長と魚河岸の大将。子供より子供っぽいヘンテコお父さんたちの物語。
  • 男あそび
    4.0
    ひどく謎めいた女に成熟した順子には、自分が必要とする時に男を呼び寄せ、意のままに操ることができる奇妙な力があった。順子はそれを〈浮気の超能力〉と呼んで、思うまま人生を愉しんでいたが、ふと、どこか虚しい気持ちに陥るようになって……。表題作「男あそび」他7編を収録。軽妙に描く大人の女と男の物語。
  • 男は敵、女はもっと敵
    3.6
    映画好きが高じてフリーの宣伝マンをする藍子36歳。仕事は順調だが、W不倫の果てにフッた男が仕事場に現れ復縁をせまり……(『敵の女』)。22歳の真紀はデザイン会社で働く。今は仕事よりも来月入籍するバツイチのカレが大事。だが、その元妻と仕事をすることになり!?(『Aクラスの女』)。など、恋と仕事にまっすぐ生きる女たちをリアルに描いた連作短編集。
  • おとしばなし集
    -
    江戸戯作の深い造詣にささえられた、石川淳の軽妙な話体による“おとしばなし”と、世界名作のパロディ。おとしばなし堯舜・李白・和唐内・清盛・業平ほか。小公子・蜜蜂の冒険・乞食王子・家なき子ほか。小説の約束事に拘束されない、自由で楽しい小説集。
  • 鬼に喰われた女 今昔千年物語
    4.0
    時は平安。京に上った東国の長者が妻と荒れ果てた邸宅に宿を取った。数日たった夕方、男が縁にいると妻の叫び声が聞こえる。驚いた男が部屋に飛び込むと、暗闇から伸びた太い二本の腕が妻をつかんで奥の間に引きずりこむところだった。妻は鬼につかまっていたのだ……(「鬼に喰われた女」)。表題作ほか今昔物語からインスピレーションをえて人間に巣食う「闇」と「エロス」を大胆に描いた短編集。
  • 鬼の棲む家
    3.5
    新婚まもない華子は、古びた借家で夫の亮介を電動工具で殺害した! 華子は弁護士に「あの家には鬼がいたの」と語り、事件の背景には壮絶なDVがあったことを示唆する。それを知った華子の父は、夫こそ加害者で、娘は被害者だと訴え、罪の軽減に奔走する。だが、やがて父親は「鬼」の真の正体を知り愕然となる! 家族から殺人者を出した一家の崩壊する心理を描く、戦慄の新感覚ミステリー!
  • お縫い子テルミー
    3.8
    依頼主の家に住み込み、服を仕立てる「流しのお縫い子」として生きる、テルミーこと照美。生まれ育った島をあとにして歌舞伎町を目指したのは十五歳のとき。彼女はそこで、女装の歌手・シナイちゃんに恋をする――。叶わぬ恋とともに生きる、自由な魂を描いた第129回芥川龍之介賞候補の表題作。アルバイトをして「ひと夏の経験」を買う小学五年生、小松君のとぼけた夏休みをつづる『ABARE・DAICO』収録。
  • おはなしの日
    3.0
    なぜ私は母に疎まれるのだろうか。どうすれば愛されるのだろう――。親からの虐待を受けて、傷つく少女。その痛みと孤独を共有できたのは同じ境遇にある少年だけだった……。ひとりで生きるには幼すぎたあの頃。大人の理不尽な暴力に悲しみをつのらせ、未来は果てしなく遠かった。〈家庭〉という最も危険な場所で生きる少女たちの世界を静謐な文体で描き、心を深く衝く作品集。
  • オムライスはお好き?
    -
    窓際族とさげすまれ、女房、子供にいびられる中年男は卵料理に生きがいを見いだした。シブチンでええ格好しいの妻、親爺を煙たがる子供らに囲まれて、孤独で寡黙なお父さんの胸の中の呟きが、おかしくて哀しい表題作。やっと建てたマイホームを女房一族に占領され、挙句の果てに転勤命令。愛家家の悲哀を描く「かたつむり」他、男権弱化の世の中で夕暮れを迎えた男女の甘くも苦い極めつきの7編。
  • 汚名
    -
    関東電工のエリート折原章一は、元上司から新会社設立への参加を求められた。身体障害者救済のためのコンピューターソフト会社だという。折原は芹沢涼子を知るが、涼子は脳性マヒで車椅子生活をしている息子をコンピューター技術者にしたいという。そんな時、産業用ロボットが人を殺してしまった。ショッキングな事件を背景に、身体障害者の本当の自立の意味を問いかけるミステリー長編小説。
  • 思い出のとき修理します
    4.1
    1~4巻506~660円 (税込)
    仕事にも恋にも疲れ、都会を離れた美容師の明里。引っ越し先の、子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街で奇妙なプレートを飾った店を見つける。実は時計店だったそこを営む青年と知り合い、商店街で起こるちょっぴり不思議な事件に巻き込まれるうち、彼に惹かれてゆくが、明里は、ある秘密を抱えていて……。どこか懐かしい商店街が舞台の、心を癒やす連作短編集。
  • 思い出は満たされないまま
    3.5
    東京・多摩地区在住のフリーター・甲田には認知症の母がいる。母の介護を口実に仕事を辞めたのに団地の自治会役員を押し付けられてしまう。住民の自分勝手なクレームに翻弄される毎日。遂に近くに住み着いたホームレスの男性を追い出せと言われ……(「団地の孤児」)。マンモス団地に住み暮らす人々の日常と街の様相を描いた7つの連作短編集。この一冊には理屈を超えて、感情を揺さぶるパワーがある。
  • 檻

    4.0
    やくざな世界から足を洗って、今は小さなスーパーを経営している滝野和也。そのスーパーの買収工作をめぐるいざこざから、滝野の野生の血が再び噴き出す。結局は“檻”の中にとどまれず、修羅場に戻ってゆく男の滅びの美学を、鮮烈な叙情で謳いあげた北方ハードボイルドの最高傑作!
  • オリガ・モリソヴナの反語法
    4.5
    1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に入った志摩は、舞踊教師オリガ・モリソヴナに魅了された。老女だが踊りは天才的。彼女が濁声で「美の極致!」と叫んだら、それは強烈な罵倒。だが、その行動には謎も多かった。あれから30数年、翻訳者となった志摩はモスクワに赴きオリガの半生を辿る。苛酷なスターリン時代を、伝説の踊子はどう生き抜いたのか。感動の長編小説。第13回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作。
  • オレゴン夢十夜
    -
    「私」は日本人の女に絶望する。そして女を女たらしめている男にも絶望する。いたたまれず、憑かれたように飛行機に飛び乗り、はるかオレゴンの深い森に降り立つ。さあ、ここからなにが始まるか? 少女以来見続けてきた夢の実現か。あるいは、愛によって生きる人間らしい生き方の確認だろうか――。奔放に飛翔し、漂う自由な精神を力強く描く長編。
  • おれたちの青空
    3.8
    1~4巻495~528円 (税込)
    父が横領罪で捕まって一家離散、陽介が札幌の養護施設“魴ぼう舎(ほうぼうしゃ)”に移って二年が経つ。中学三年の陽介と施設の仲間たちは高校進学を前に、将来を見据えてそれぞれの選択を下すことになり――(「おれたちの青空」)。表題作のほか、魴ぼう舎を運営する恵子おばさんの若かりし日を描いた「あたしのいい人」、陽介の相方でスポーツ万能の卓也目線で語られる「小石のように」の二作品を収録。話題の青春小説。
  • おれのおばさん
    3.8
    ある日突然、父の逮捕を知らされた陽介。父が横領した金を返済するため、陽介は都内の名門中学を退学し、母の姉が運営する札幌の児童養護施設、魴ぼう舎(ほうぼうしゃ)に入ることになる。急激な暮しの変化に当惑しながらも、パワフルなおばさんと個性豊かな仲間に囲まれて、陽介は“生きる”ことの本質を学んでゆく。ときに繊細で、たくましい少年たちの成長を描いた青春小説。第26回坪田譲治文学賞受賞作。 【ナツイチ2013対象作品】
  • 女

    2.0
    “女”は可愛く、愛らしい。が時として底意地が悪く、また嫉妬深い――。かつて妻子ある教師と心中未遂事件を起こした東尋坊にいま、亡母の墓参りに夫と訪れた。何も知らない夫のひたむきな労りに心やすまるが、この安らぎもいつ崩れるか知れない。男と女の脆い結びつきを描く「蟹の爪」ほか、短篇五篇を収録。
  • 女三人のシベリア鉄道
    3.7
    与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子。明治末から昭和初めの動乱期に、シベリア鉄道で大陸を横断した逞しい女性作家たちの足跡を辿り、著者もウラジオストクから鉄道で旅に出た。愛と理想に生きた三人に思いを馳せながら、パリを目指す。車中での食事、乗客とのふれあい、歴史の爪跡が残る街…世界で最も長い鉄道旅をめぐるエピソードの数々。三人と著者の旅が、時を超えて交錯する評伝紀行。
  • 女たち
    -
    六十路をむかえてなお恋の炎を燃やす女将。キャバレーのボーイに熱をあげるハイティーンの歌手。大学図書館の勤めをやめて不倫の愛に生きる女…など。奔放な情熱のおもむくままに生きる「女たち」のさまざまな愛と性にひそむ微妙な心の翳りと官能のうごめきを、多彩な人生模様に描く連作小説。
  • 女たちのジハード
    4.1
    【第117回直木賞受賞作】中堅保険会社に勤める5人のOL。条件のよい結婚に策略を巡らす美人のリサ。家事能力ゼロで結婚に失敗する紀子。有能なOLでありながら会社を辞めざるをえなくなったみどり。自分の城を持つことに邁進するいきおくれの康子。そして得意の英語で自立をめざす紗織。男性優位社会の中で、踏まれても虐げられても逞しく人生を切り開いていこうとする女たち。それぞれの選択と闘いを描く痛快長編。
  • 女たちは泥棒
    -
    フランス料理店“リトリート”のオーナーは、堂島といういぶし銀のようなシブーイ男。本業は貴金属商で、都内にいくつも店を持ち、業界ではかなりの大物だった。その彼のもとに、若くてハンサムな谷本修一が、時折ふらりと現れるが、いつも心憎いほどイイ女が寄り添っていた。……なにやらいわくありそうな彼等こそ盗みのプロフェッショナル。それもケタ外れの泥棒たちだった。彼等の華麗な冒険を描く痛快ピカレスクロマン。
  • 女と味噌汁
    4.0
    東京は新宿に近い花柳界・弁天池。主人公の芸者てまりは底ぬけに明るいお人好し。そのうえ男まさりのしっかり者で、だれの世話にもならず、自分で汗を流して働ける商売をと、芸者稼業のかたわら、ライトバンを改造して味噌汁屋を始めた。花柳界でけなげに生きるてまりとそれをとりまく下積みの人々との心のふれ合い。それは人情の機微を写すに得意な著者独自の世界でもある。
  • 女の足音
    -
    前家元夫人の姑、明日香流に君臨する夫、舞踊の世界に身を置いて、裏方と忍従をしいられる木綿子。寂寥の日々にふとしのびよる若いパイロット小松雅志のおもかげに、木綿子の心はみだれる。人妻ゆえに、真実の愛を知っても、はぐくむすべなく身を灼く木綿子。因襲の世界にすむ女の愛の苦悩を流麗にくりひろげる平岩文学の傑作。
  • 女の海
    -
    夫と子供を捨てて竜平との恋に走った弓子。母の出奔後グレて事故死した息子や母の知人に夢中になる娘。この子供らにとって私は何であったのか? 愛の歓びにひたりながら、弓子の心の奥底に罪の意識がゆらめく。ひとりの女のラブ・アフェアが子供や愛人の運命に投げかける陰影を通して女の愛といのちの哀しみをくりひろげる。
  • 陰陽師暗殺
    4.0
    金閣寺北方の総合病院・第7病棟に、キツネ憑きの発作を起こす老女が入院してきた。それは陰陽師・安倍晴明の伝説に基づく芝居なのか、それとも本物の心霊現象か。一方、一条戻橋の下で現代の陰陽師土御門泰山が殺害! 額には五芒星の形に輝く五本の蝋燭。さらに殺人の連鎖は止まらない。いったい誰が、何のために? ついに親友まで事件に巻き込まれ、英光大学の村野杏美は、魔界都市・京都へ!
  • オー・マイ・ガアッ!
    3.9
    物語の舞台はアメリカン・ドリームの都・ラスベガス。友人に裏切られすべてを失ったお気楽中年男・大前剛、キャリアウーマンから娼婦に「転職」した梶野理沙、そしてベトナム戦争の英雄なのに落ちぶれたジョン・キングスレイ。人生くすぶりまくりのそんな三人が一台のスロットマシンで史上最高の大当たり5400万ドルを叩き出した! 笑って泣いて夢を見る、エンタテインメント大傑作。
  • 解

    3.8
    バブル経済絶頂期、大学生の大江波流と鷹西仁は、政治家と小説家になる夢を語り合う親友同士。代議士の息子の大江は、大蔵省へ入省。鷹西は、社会勉強と文章修業のため新聞記者になった。目標実現のためにキャリアを積む二人だったが、大江の父親が急逝したことで忌まわしい殺人事件が……。めまぐるしく転変する彼らの人生を辿りながら、“平成”という時代を抉り出す骨太の長編社会派ミステリー。
  • 秘密への跳躍 怪異名所巡り5
    -
    弱小「すずめバス」のバスガイド・町田藍は、霊感が強く幽霊と話せるという特技がある。これを売りにした「幽霊ツアー」は、常連の女子高生・真由美をはじめ、変わり者のお客たちに大人気。夜な夜な赤子を抱いた女教師の霊が出るという高校の池を訪ねた一行。そこで真由美が奇妙な霧に包まれ妊娠してしまい!? (「生まれなかった子の子守歌」)など6編を収録した、大人気シリーズ第5弾!
  • 怪奇小説という題名の怪奇小説
    3.6
    「第一章では、私はなにを書くか、迷いに迷って、題名もつけられない」――長編怪奇小説の執筆依頼を受けた作家だったが、原稿は遅々として進まない。あれこれとプロットを案じながら街をさまようが、そこで見かけたのは30年前に死んだ従姉にそっくりの女だった。謎めいた女の正体を追ううちに、作家は悪夢のような迷宮世界へと入り込んでいく…。奇想にあふれた怪奇小説の傑作が現代に蘇る。
  • 回想電車
    3.9
    深夜の電車に乗った男が遇った昔の恋人、同僚、かつて一期一会の出会いをした親子。一夜のうちに過去と未来が交錯して、その翌朝は……。不思議な時間軸で描かれた表題作ほか、孤独と愛と死、そして希望が見え隠れする、全9篇を収録。さまざまな人生の断片をたくみに映し出す、優しさとほのかな怖さを秘めた傑作短篇集。
  • 怪談
    3.5
    大切な人の突然の死。魂だけでもいつも傍にいて欲しいと願う気持ちが、見えない何かを引き寄せるのかもしれない。二十年前、男友達が自死した。彼の想いを素直に受け入れられなかった若い自分。そして今、恋愛に失敗し、仕事にも行き詰まった私は、様々な思いを抱え彼が最後に泊まった岬のペンションを訪れる――(「岬へ」)。生と死のあわいに漂う不確かな存在を、妖しく描き出す幻想怪奇小説集。

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