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古い都の南、朽ちた楼門の袂で、男は笛を吹いていた。笛を吹いてさえいれば、男は幸せだった。ある春の夜、笛を吹く男の前に、黒い大きな影が立っていた。鬼だ。笛の音を気に入った鬼は、男に絶世の美女を与え、百日の間は絶対に触れてはならぬと告げるが……(「鬼の笛」)。人ならざるものを描くことで浮き上がる、人間の業や感情。民話や伝承をベースに紡がれた六編を収録した短編集。
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Posted by ブクログ
飾り立てない柔らかで分かりやすい古文調の文体なのに、切なさがとても伝わる作品。収録された中では「ムジナ和尚」と「天つ姫」が特に好きである。 2作とも端的に言えば、妖と人間が異なるいきものであるということが書かれている。理が違い、掟が違い、共に長く生きることはできない。けれども心を通わせあうことは...続きを読むできる。奇しくも「涙」が要となるこの2話が2つの世界の狭間で揺れるいきものの感情を最も丁寧に書いていたと思う。
短編6作。 書き出しからの纏わりつくような妖しい美しさ、戸惑うまでもなくすっと惹き込まれるあやかしの世界。 切ない描写は身を切るほどに痛々しく、哀しみで満たされてしまう。 どの作品も読後に鮮烈な色が残る。
儚くて、切なくて、愛おしい「あやかし」の集まりでした。 幻想的で神秘的な雰囲気の「あやかし草子」は、千早さんだからこそ描けるのではなかろうか。
俺はこういう昔話、まんが日本昔話(古っ)的な展開が好きなんだなぁと思った。いや。違う。改めてこの作家の持つ不思議な力に、自然に惹き込まれていくんだなぁと一晩明けて気づいた。 まったく時代の古さは感じず、あたかもいま日本のどこかで起きているような新鮮な感じすらする(ンなことはないか)。あやかし、の持つ...続きを読むなんとも言えない、ゾクっとする感じが心地よし。間違っても朝の通勤電車
ひとと、ひとならざるものとのかかわりの短篇集。個人的には「ムジナ和尚」「真向きの龍」が好き。 舞台は現代ではないが、どこかかなしかったり、おそれを抱かされたりと、『異なる』ものに目を向かせられた、ように感じた。
『真向きの龍』、白石晃士監督の『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ!FILE-02【暗黒奇譚!蛇女の怪】』って作品を彷彿とさせる…
千早作品は最初に「魚神」を読んで以来、現代物ばかり読んでたので久しぶりの時代物。 京極夏彦や恒川光太郎の様な雰囲気があってとても好み。 作者独特の世界観と言うか何とも言えない温かさがある。 藤沢周平の短編のような、どれだけ読んでも飽きさせない筆力を感じる。 改めて作者との相性の良さを感じた作品。
面白かったです。 千早さんの、今度は日本の妖をモチーフにした短編集でした。 こちらも妖しく暗くて良かったです。 情景や色彩を鮮やかに感じました。夜の闇、竹林の緑、夕日のままの国の赤。映像的です。 お話は、天狗と姫の間にあった気持ちが切ない「天つ姫」と、アルビノの座敷わらしが子どもを夕日の国に閉じ込め...続きを読むる「機尋」が好きでした。 妖…畏怖する存在ですが、どこか物悲しくて惹かれます。
このひとの幻想作品には中毒性がある、猛烈な筆力でぐいぐいひきこまれるおもしろさ…胸をえぐる切なさ、おどろおどろしさと妙なる美しさ…。あやかしたちと、それに近い種類の人間が、いわゆる普通の人間たちの業やみにくさをかなしさを外側からあぶり出して見せてくれる。世界の不思議さと美しさを見極め、そのうえで己が...続きを読む選択する運命、この世のすべてを受け入れコミットして生きていこうとする力を描く。…じいんとゆさぶられてしまうのだ、ついつい。
タイトルと表紙から、ちょっと恐い話かも…(゜゜;)と思って読み始めたけれど、あやかしが人と関わり、人の感情を持っていくさまに切なさや、哀しさを感じた(T-T)特に最後の「機尋」が良かった(*´-`)人とは違う時を過ごす あやかし にとって感情を持つ事は幸せなのかな?(--;)
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