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Posted by ブクログ
最近は一冊を一気に読み通すことがあんまり出来なくて、それはまあ、一冊を読み切ることにあまり重きを置いていないから良いのだけれど、そんななかでもこれは買った翌日に一気読みしていた。小説も物語もとても良かったから。不気味で不穏で一筋縄ではいかない技巧も盛りまくった「怪奇」な怪奇小説。もちろんしっかり怖がれた。
九つある章のなかの一つに「ささやかな推理小説論がふくまれている」ものがあるのだけれど、その論にも納得というか共感していて。
「ぼくが怪奇小説の連載をひきうけたのは、合理的に解決される推理小説ってものに、疑問を持ちだしたからなんだぜ。推理小説というやつは、合理的に解決されるとたんに、なんだかむなしくなってしょうがないんだ。
書いてても、読んでても——解決がなかったら、すばらしい小説になるのにな、と思う
ことがある」
「でも、推理小説は現実を映すものじゃないでしょう?現実はつじつまのあわないこでとだらけ、論理の通用しない世界だから、推理小説が読みたくなるんじゃない?そういう意味では、老年むき、中年むきの小説よ。若いうちは、つじつまがあわなくても、論理が通用しなくても、感覚ではねかえすことができるし、闘いをいどむこともできる。
でも、中年、老年になると、あきらめて、推理小説あたりに慰めを見いだすのね」
わたしもいつも解決がない物語が読みたいと思っているからね。とはいえ、わたしももう中年だから、推理小説にあるような現実を反映しない架空の解決に慰めを見出している、といえなくもない。この本が一気読み出来たのも、これが怪奇小説だとはいえ、謎の解明、解決に向かって進んでいく推理小説仕立の物語の推進力があったからかもしれない。終盤に描かれる謎の解明は本質的には解決とは言えいないのだけれど、それはつまりは解決しない怪奇小説の魅力でもあって……ということはどういうことかと言えば、これもわたしが相反するような二つの面からも読みたかった小説で物語なのだった。それは一気読みもするよね。
——
この本を買った帰り道、何気なく道尾秀介さんの「解説」から読んでみたら、これは「解説」というだけでなく、この小説を¥100の古本で買うことで人生も買った、という彼の「物語」でもあってめちゃくちゃ良かった。こういうその人にしか書けない本の話は大好きだ。自分もそんな「物語」れる体験が出来るかもしれない、と思わせてくれるから。わたしも¥132でこの古本を買うと同時に、人生とは言わないけれど、何か別のものも買った気になってみたい。と、読む前に思っていたけれど、たしかに、なにか、別のものも手に入れた気になっている、かもしれない。とりあえず、今度は「道尾」というペンネームの苗字は「道夫」の音から来ているらしい彼の小説も読んでみようと思っている。
Posted by ブクログ
【本の内容】
「第一章では、私はなにを書くか、迷いに迷って、題名もつけられない」―長篇怪奇小説の執筆依頼を受けた作家だったが、原稿は遅々として進まない。
あれこれとプロットを案じながら街をさまようが、そこで見かけたのは30年前に死んだ従姉にそっくりの女だった。
謎めいた女の正体を追ううちに、作家は悪夢のような迷宮世界へと入り込んでいく…。
奇想にあふれた怪奇小説の傑作が現代に蘇る。
[ 目次 ]
[ POP ]
道尾秀介さんの直木賞決定直後に復刊した文庫である。
帯には〈「この作品のおかげで、僕は作家になれました」道尾秀介〉。
タイムリーだ。
道尾さんが、都筑さんの名を知ったのはデビュー4年前。
営業の仕事をさぼって寄った古本屋で、〈*第一章では、私はなにを書くか、迷いに迷って、題名もつけられない〉という珍奇な書き出しの本書を、思わず買ったという。
道尾さんは文庫解説に記す。
〈売値を見てみると一〇〇円。これくらいの金額ならまあ失敗してもいいだろう〉。
早速、営業車の中で読み始めると〈“渾沌”がそこにいた〉。
作品に衝撃を受けたその日のうちに都筑道夫の名前を拝借し、「道尾秀介」をペンネームに。
小説をがんがん書くようになった。
〈いまにして思えば、僕は十二年前、一〇〇円で人生を買ったようなものだ〉
作品は、書くこと、読むことの面白さと怖さが混然一体となった虚々実々の怪奇譚。
奇妙な味の傑作だが、これを読めば誰でも作家になれるかは「?」。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
解説で道尾秀介さんが言われている通り、まさに「渾沌」の書である。
タイトルからして人を喰っており「怪しげ」であるが、その中身はもっともっと「怪奇」そのものである。
どこへ連れていかれるのかわからない。
どこへ向かっているのかもわからない。
そして今、どこにいるかもわからない。
いわゆる「先が見えない」とはまた違った、この不安定でぼんやりとした読み心地をなんと言おう。
暗闇の中、手探りで進んで行くよりも、もっと曖昧としたこの気持ち。真っ暗ならば見えないのは当たり前。しかし、この小説は全くの暗闇を書いているのとも、また違うのだ。
明るいのかわからない、暗いのかわからない。例えるならば、そんな感じだろうか。
最後のオチには「そ、そうなるのか……」と、残念とも呆然ともつかない、やっぱりどこかよくわからないものだった。
しかし、この「よくわからなさ」が、この本の魅力でありこの本そのものなのだと、私も思う。
道尾秀介さんの解説がとてもよかったです。
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小説・文芸
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