Posted by ブクログ
2016年11月17日
内容(「BOOK」データベースより)
東北のとある寒村。母親ヒデと二人暮らしの小学三年生の心平は、川で魚を捕ことと絵を描くことにしか興味がない。そんな心平には心の通い合う少女小百合がいた。心平の絵が国際的な児童画展に入選し祝賀会の夜、母親は雪の中で死亡した―。十年後、十八歳になった心平は村に帰ってき...続きを読むた。小百合の家の造り酒屋に勤めるが、小百合に縁談が起きて…。幼なじみの透明な心を謳い上げた清冽な初恋小説。
切ない、心平が明るくて楽しそうに絵を書いて、大好きな人達が居るので見ていてほんわかはするものの、父が死に、自分のお祝いの日に母が死に、引き取った祖父母も間をおかず死去。18歳にして誰もいないあばら家に戻ってきて天涯孤独。かなり悲惨な状態なのだけれども、馬鹿にされても、軽んじられても魚を追い、絵を書いていれば幸せという心平の姿に救われます。
耳の聞こえない幼馴染の小百合との淡い恋というか、それを通り越えておさないころから培った絆がさらに切なさを増す。大人の世界に通用しないが人間の根源に有る愛情。これを覆すには彼らはあまりに幼い。小百合に恋する同じ幼馴染の英蔵は心平に嫉妬の炎を燃やし、幼いころから何度も諍いを起こすが、どの瞬間も英蔵は葛藤しながらも男の中の男という決断を下していく。こいつは本物の男だ。血の涙を流すような思いをしながら小百合の幸せを誰よりも祈っているのであった。最後は英蔵を応援している自分が居たなあ。かっこいい。