新潮文庫作品一覧

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  • 異人たちとの夏(新潮文庫)
    4.0
    妻子と別れ、孤独な日々を送るシナリオ・ライターは、幼い頃死別した父母とそっくりな夫婦に出逢った。こみあげてくる懐かしさ。心安らぐ不思議な団欒。しかし、年若い恋人は「もう決して彼らと逢わないで」と懇願した……。静かすぎる都会のひと夏、異界の人々との交渉を、ファンタスティックに、鬼気迫る筆で描き出す、名脚本家山田太一の独自の小説世界。第一回山本周五郎賞受賞作品!(解説・田辺聖子)
  • 羅城門に啼く(新潮文庫)
    4.0
    平安の都は荒れ果てていた。親に名前もつけてもらえず、一生消えぬ傷痕を背負ったイチにとって、盗みも人を殺(あや)めるのも生き延びる手段だった。そこに聞える空也上人の念仏。反発しながらも上人に従うイチは、ある時瀕死の遊女(あそびめ)を救う。初めて感じる人のぬくもり、娘との平穏な時。だがそこに現れたのは……。悪夢、慟哭、人生の再生。地べたに生きる人々を描く著者の傑作。京都文学賞受賞作。(解説・細谷正充)
  • 人間そっくり(新潮文庫)
    4.2
    《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところに、火星人と自称する男がやってくる。はたしてたんなる気違いなのか、それとも火星人そっくりの人間なのか、あるいは人間そっくりの火星人なのか? 火星の土地を斡旋したり、男をモデルにした小説を書けとすすめたり、変転する男の弁舌にふりまわされ、脚本家はしだいに自分が何かわからなくなってゆく……。異色のSF長編。(解説・福島正実)
  • 飢餓同盟(新潮文庫)
    3.5
    眠った魚のように山あいに沈む町花園。この雪にとざされた小地方都市で、疎外されたよそ者たちは、革命のための秘密結社“飢餓同盟”のもとに団結し、権力への夢を地熱発電の開発に託すが、彼らの計画は町長やボスたちにすっかり横取りされてしまう。それ自体一つの巨大な病棟のような町で、渦巻き、もろくも崩壊していった彼らの野望を追いながら滑稽なまでの生の狂気を描く。(解説・佐々木基一)
  • 空が青いから白をえらんだのです―奈良少年刑務所詩集―(新潮文庫)
    4.3
    受刑者たちが、そっと心の奥にしまっていた葛藤、悔恨、優しさ……。童話作家に導かれ、彼らの閉ざされた思いが「言葉」となって溢れ出た時、奇跡のような詩が生まれた。美しい煉瓦建築の奈良少年刑務所の中で、受刑者が魔法にかかったように変わって行く。彼らは、一度も耕されたことのない荒地だった――「刑務所の教室」で受刑者に寄り添い続ける作家が選んだ、感動の57編。
  • 九十歳のラブレター(新潮文庫)
    5.0
    ぼくたちが出会ったのは単なる偶然ではない。奇跡だ。小学校の同級生だったあなたと結婚して六十余年。アメリカでの新婚生活、京都での家造り、世界中への旅。自由気ままに勤務先を転々とするぼくに「好きなようにしたら。あたしついてくから」とニコニコ笑っていたあなた。つい昨日まであんなに仲良くしていたのに、もうあなたはどこにもいない――。老碩学が静かに綴る最後のラブレター。
  • 旅のつばくろ(新潮文庫) 電子オリジナル版
    3.8
    つばめのように自由に、気ままにこの日本を歩いてみたい――。世界を歩き尽くしてきた著者の、はじめての旅は16歳の時、行き先は東北だった。それから歳も経験も重ねた今、同じ土地を歩き、変わりゆくこの国のかたちを見て何を思ったか。本州「北の端」龍飛崎、太宰治の生家を訪ねた五所川原、宮沢賢治の足跡を追った花巻、美景広がる軽井沢や兼六園などを歩いて綴った、追憶の旅エッセイ。〈電子オリジナル版〉は沢木耕太郎撮影の写真が収録されています。
  • 子どもの貧困連鎖(新潮文庫)
    4.4
    公衆トイレで寝泊まりする女子高生。朝食を求め保健室に列をなす小学生。車上生活を送る保育園児……。日本の子どもの6人に1人が貧困状態にある。親に経済力が無ければ子の人生はスタートラインから差が付く。蟻地獄のように抜け出せない貧困の連鎖。苦しみの中、脳裏によぎる死の一文字――。現代社会に隠された真実を暴く衝撃のノンフィクション。『ルポ 子どもの貧困連鎖』改題。(解説・津村記久子)
  • 母影(新潮文庫)
    3.9
    小学校で独りぼっちの「私」の居場所は、母が勤めるマッサージ店だった。「ここ、あるんでしょ?」「ありますよ」電気を消し、隣のベッドで客の探し物を手伝う母。カーテン越しに揺れる影は、いつも苦し気だ。母は、ご飯を作る手で、帰り道につなぐ手で、私の体を洗う手で、何か変なことをしている――。少女の純然たる目で母の秘密と世界の歪(いびつ)を鋭く見つめる、鮮烈な中編。芥川賞候補作品。(解説・又吉直樹)
  • 地の糧(新潮文庫)
    3.6
    君はすっかり読んでしまったら、この本を捨ててくれ給え。そして外へ出給え――。語り手は、青年ナタナエルに語りかける。「善か悪か懸念せずに愛すること」「賢者とはよろずのことに驚嘆する人を言う」「未来のうちに過去を再現しようと努めてはならぬ」。二十代のジッドが綴った本書は、欲望を肯定し情熱的に生きることを賛美する言葉の宝庫である。若者らの魂を揺さぶり続ける青春の書。
  • 首里の馬(新潮文庫)
    3.9
    問読者(トイヨミ)――それが未名子の仕事だ。沖縄の古びた郷土資料館で資料整理を手伝う傍ら、世界の果ての孤独な業務従事者に向けてオンラインで問題を読み上げる。未名子は、この仕事が好きだった。台風の夜に、迷い込んだ宮古馬(ナークー)。ひとりきりの宇宙ステーション、極地の深海、紛争地のシェルター……孤独な人々の記憶と、この島の記録が、クイズを通してつながってゆく。第163回芥川賞受賞作。(解説・大森望)
  • 継体天皇―分断された王朝―(新潮文庫)
    4.0
    謎に包まれた大王・継体天皇。応神天皇の五世の孫(五世代目の孫)とした日本書紀は真実を語っているのか。ヤマトから遠く離れた越(福井県)から継体が連れて来られたのは何故なのか。二十年間、ヤマトに入らずに淀川周辺を彷徨っていた理由は。そして、本当に王朝交替はあったのか? 大胆な考証で古代史最大の謎・継体天皇の正体を明らかにし、分断された王朝の謎に迫る刺激的書下ろし論考。
  • 中原中也詩集(新潮文庫)
    4.2
    愛する者よ、無垢なる日々よ――。生と死のあわいを漂いながら、失われて二度とかえらぬものへの、あふれる惜別の想いを、ノスタルジックにうたい続けた、夭折の天才詩人、中也。哀切で甘美なことばが、胸をうつ調べとなって響きあい、はかない余韻が心に沁みる2冊の詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』に、詩集として編まれなかった作品も併せた140篇の詩篇を収録。(解説・吉田凞生)
  • かたみ歌(新潮文庫)
    3.9
    不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。殺人事件が起きたラーメン屋の様子を窺っていた若い男。その正体とは……「紫陽花のころ」。古本に挟んだ栞にメッセージを託した邦子の恋が、時空を超えた結末を迎える「栞の恋」など、昭和という時代が残した“かたみ”の歌が、慎ましやかな人生を優しく包む。7つの奇蹟を描いた連作短編集。(解説・諸田玲子)
  • 闇の奥(新潮文庫)
    3.7
    19世紀末。アフリカ大陸の中央部に派遣された船乗りマーロウは、奥地出張所にいるという象牙貿易で業績を上げた社員、クルツの噂を聞く。鬱蒼たる大密林を横目に河を遡航するマーロウの蒸気船は、原住民の襲撃に見舞われながらも最奥に辿り着く。そこで目にしたクルツの信じがたい姿とは――。著者の実体験をもとにし、大自然の魔性と植民地主義の闇を凝視した、世界文学史に異彩を放つ傑作。
  • 道行きや(新潮文庫)
    3.5
    カリフォルニアで夫を看取り、二十数年ぶりに日本へ愛犬と帰国。“老婆の浦島”は、週の四日は熊本で犬と河原を歩き、植物を愛でる。残りは早稲田大学で、魚類の卵のように大勢の若者と対話する。移動の日々で財布を忘れ、メガネをなくし、鍵をなくし、犬もなくしかけた……思えば家族を、あらゆるものを失って、ここに辿り着いたのだった。過ぎ去りし日を噛みしめ、果てなき漂泊人生を綴る。(解説・ブレイディみかこ)
  • アガワ家の危ない食卓(新潮文庫)
    3.9
    亡き父、弘之の口癖は「一回たりとも不味いものは食いたくない」であった。朝食をとりながら夕食のメニューを訊ねて周囲をゲンナリさせ、気にくわない食事に出くわせば「一回損した!」と本気で憤怒する。そんなワガママで怒りん坊の父に振り回されても母は家族のために台所に立ち続け、娘サワコは冷蔵庫から干からびた食材を発掘しては、危ない料理をせっせと作る。爆笑必至の食エッセイ。
  • ここから世界が始まる―トルーマン・カポーティ初期短篇集―(新潮文庫)
    4.1
    差別の激しい土地に生まれ、同性愛者として長じ、「八歳で作家になった」と豪語したという天才はデビュー前から天才だった。ニューヨーク公共図書館が秘蔵する貴重な未刊行作品を厳選した14篇。ホームレス、老女、淋しい子どもなど、社会の外縁にいる者に共感し、仄暗い祝祭へと昇華させるさまは、作家自身の波乱の生涯を予感させる。明晰な声によって物語を彫琢する手腕の原点を堪能できる選集。(解説・村上春樹)
  • 未来をつくる言葉―わかりあえなさをつなぐために―(新潮文庫)
    4.2
    哲学、デザイン、アート、情報学と、自由に越境してきた気鋭の研究者が、娘の出産に立ち会った。そのとき自分の死が「予祝」された気がした。この感覚は一体何なのか。その瞬間、豊かな思索が広がっていく。わたしたちは生まれ落ちたあと、世界とどのように関係をむすぶのだろう――。東京発、フランスを経由してモンゴルへ、人工知能から糠床まで。未知なる土地を旅するように思考した軌跡。
  • 桃色トワイライト(新潮文庫)
    4.1
    生まれて初めての合コンで『新選組!』を語る、クリスマスイブに実家でイモの天ぷらを食す、非常にモテる男友だちの失恋話に相槌を打つ――思わず自分でツッコミを入れてしまう微妙さに懊悩しつつ、それでもなぜか追求してしまう残念な感じ。異様にキャラ立ちした家族や友人に囲まれ、若き作家は今日もいろいろ常軌を逸脱中。爆笑と共感がこみ上げる、大人気エッセイシリーズ!(解説・岸本佐知子)
  • 乙女なげやり(新潮文庫)
    3.8
    ひとはいつまで乙女を自称しても許されるものなのか。そんな疑問を胸に抱きつつも、「なげやり」にふさわしいのは、やっぱり乙女。熱愛する漫画の世界に耽溺し、ツボをはずさぬ映画を観ては、気の合う友と妄想世界を語り合う。気の合わない母との確執も弟とのバトルも、日常の愉楽。どんな悩みも爽快に忘れられる「人生相談」も収録して、威勢よく脱力できる、痛快ヘタレ日常エッセイ。
  • 夢のような幸福(新潮文庫)
    3.8
    欲望の発露する瞬間を考察し、友人と特異な「萌えポイント」について語り合う。伝説の名作漫画『愛と誠』再読でその不可解な魅力を再検証。世界の名作『嵐が丘』を読み乙女のテイストを堪能し、女同士でバクチクライブ旅。独自の見所発見の映画評、旅先の古書店の謎を探索。物語の萌芽にも似て脳内妄想はふくらむばかり――小説とはひと味違う濃厚テイストのエッセイをご賞味あれ!(解説・林望)
  • 私が語りはじめた彼は(新潮文庫)
    3.6
    私は、彼の何を知っているというのか? 彼は私に何を求めていたのだろう? 大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘――それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか……。「私」は、彼の中に何を見ていたのか。迷える男女の人恋しい孤独をみつめて、恋愛関係、家族関係の危うさをあぶりだす、著者会心の連作長編。(解説・金原瑞人)
  • 人生激場(新潮文庫)
    4.0
    気鋭作家の身辺雑記、だけに終わらぬ面白さ! プレーンな日常を「非日常」に変えてしまう冴えた嗅覚。世間お騒がせの事件もサッカー選手の容貌も、なぜかシュールに読み取ってしまう、しをん的視線。「幸せになりたいとも、幸せだとも思わないまま、しかし幸せとはなんだろうと考えることだけはやめられない」。美しい男を論じ、日本の未来を憂えて乙女心の複雑さ全開のエッセイ。
  • チュベローズで待ってる AGE22(新潮文庫)
    完結
    4.0
    全2巻605~737円 (税込)
    就職活動に挫折した22歳の光太は、カリスマホストの雫にスカウトされ、歌舞伎町のホストクラブ「チュベローズ」で働きはじめた。夜の世界の苛烈な洗礼を浴び戸惑う光太だが、客としてやってきた女性、美津子が憧れのゲーム会社に勤めていることを知り、彼女を誘惑して自らの夢に近づくために利用しようとする――。野心と策略が渦を巻く、最も危険なノワール・エンタテインメント、開幕編。
  • あの夏の正解(新潮文庫)
    3.9
    2020年、新型コロナ感染拡大により春のセンバツに続いて夏の甲子園も中止。愛媛県の済美と石川県の星稜、強豪2校に密着した元高校球児の作家は、選手と指導者に向き合い、“甲子園のない夏”の意味を問い続けた。退部の意思を打ち明けた3年生、迷いを吐露する監督。彼らは何を思い、どう行動したのか。パンデミックに翻弄され、日常を奪われたすべての人に送る希望のノンフィクション。(解説・山本憲太郎)
  • 短歌と俳句の五十番勝負(新潮文庫)
    3.8
    荒木経惟、北村薫、谷川俊太郎、壇蜜、又吉直樹、中江有里、柳家喬太郎……。作家、詩人はもちろん、写真家、女優、タレント、芸人から、出版社社長、編集者、書店員、牧師、小学生まで。様々な職業の五十人から寄せられたお題で、歌人穂村弘と俳人堀本裕樹が真っ向勝負! 気鋭の二人は多彩なお題をどう詠むか。それぞれの短歌と俳句を自由に読み解く愉しみを綴るエッセイを各編に収録。(解説・壇蜜)
  • 家守綺譚(新潮文庫)
    4.4
    庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多……本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。――綿貫征四郎の随筆「烏蘞苺記(やぶがらしのき)」を巻末に収録。
  • りかさん(新潮文庫)
    3.9
    リカちゃんが欲しいと頼んだようこに、おばあちゃんから贈られたのは黒髪の市松人形で、名前がりか。こんなはずじゃ。確かに。だってこの人形、人と心を通わせる術を持っていたのだ。りかさんに導かれたようこが、古い人形たちの心を見つめ、かつての持ち主たちの思いに触れた時――。成長したようことその仲間たちの、愛と憎しみと「母性」をめぐる書下ろし「ミケルの庭」併録。
  • 鷹姫さま―お鳥見女房―(新潮文庫)
    4.2
    女だてらに鷹狩りに行きたがり「鷹姫さま」と呼ばれる気性の烈しい娘と嫡男久太郎との縁談、次女君江のひそやかな恋。子らの成長と行く末を、珠世は情愛深く見守る。また、鷹狩りを司り、幕府隠密の任務もあるお鳥見役の主も、過酷な勤めを終えて帰ってきた。妻として深い痛みを抱えた夫を気づかう――珠世の才智に心温まる、シリーズ文庫第三弾。
  • 蛍の行方―お鳥見女房―(新潮文庫)
    4.2
    密命を帯び、お鳥見役の主が消息を絶って一年余り。留守を預かる女房珠世に心休まる日はない。身近かに暮らす子供らの人知れぬ悩みを知って心くだき、その成長を見守り、隠居となった父の寂寥を慰め、組屋敷に転がり込んだ男女と幼子らの行く末を案じる……。人生の哀歓を江戸郊外の四季の移ろいとともに描く連作短編。珠世の情愛と機転に、心がじんわり熱くなる――お鳥見一家の清爽人情話、シリーズ第二弾。
  • 子子家庭の身代金(新潮文庫)
    4.0
    パパは会社の罪をかぶって逃亡中。なんとママも同じ日に恋人と駆け落ちしてしまった! 両親に「家出」された律子と和哉の小学生姉弟は力を合わせて暮らすけれど、トラブルは次々と襲いかかる……。明日のごはんもない我が家なのに和哉が誘拐された? 弟を救うため、姉が謎解きに挑むが、犯人はあまりに意外な人物だった──。表題作はじめ、驚きの結末の連打が魅せる短編全8編。
  • 木(新潮文庫)
    4.0
    樹木を愛でるは心の養い、何よりの財産。父露伴のそんな思いから著者は樹木を感じる大人へと成長した。その木の来し方、行く末に思いを馳せる著者の透徹した眼は、木々の存在の向こうに、人間の業や生死の淵源まで見通す。倒木に着床発芽するえぞ松の倒木更新、娘に買ってやらなかった鉢植えの藤、様相を一変させる縄紋杉の風格……。北は北海道、南は屋久島まで、生命の手触りを写す名随筆。(解説・佐伯一麦)
  • おとうと(新潮文庫)
    3.9
    1巻605円 (税込)
    高名な作家で、自分の仕事に没頭している父、悪意はないが冷たい継母、夫婦仲もよくはなく、経済状態もよくない。そんな家庭の中で十七歳のげんは三つ違いの弟に、母親のようないたわりをしめしているが、弟はまもなくくずれた毎日をおくるようになり、結核にかかってしまう。事実をふまえて、不良少年とよばれ若くして亡くなった弟への深い愛惜の情をこめた看病と終焉の記録。(解説・篠田一士)
  • 流れる(新潮文庫)
    4.0
    1巻605円 (税込)
    梨花は寮母、掃除婦、犬屋の女中まで経験してきた四十すぎの未亡人だが、教養もあり、気性もしっかりしている。没落しかかった芸者置屋に女中として住みこんだ彼女は、花柳界の風習や芸者たちの生態を台所の裏側からこまかく観察し、そこに起る事件に驚きの目を見張る……。華やかな生活の裏に流れる哀しさやはかなさ、浮き沈みの激しさを、繊細な感覚でとらえ、詩情豊かに描く。(解説・高橋義孝)
  • 一晩置いたカレーはなぜおいしいのか―食材と料理のサイエンス―(新潮文庫)
    3.8
    一晩置いたカレーはなぜおいしいのか? 子どもたちはどうしてピーマンが嫌いなのか? ワサビがツーンとする理由は? 味、食感、香り、栄養素……すべての謎を解くカギは、食材が生きていたときの姿にあった! 数々のベストセラーを送り出してきた研究者が鋭く考察。料理や食事が楽しくなる「おいしさの秘密」をご賞味あれ。ジャガイモを煮崩れさせない方法など、調理の裏ワザも多数紹介。
  • じじばばのるつぼ(新潮文庫)
    3.3
    人間だれしも、気づけばあっという間にじじとばば。人生の先輩たちに学ぶべく観察した、その生態とは。レジで世間話をはじめる迷惑なばば、ラブホにしけこむお盛んなじじ。ばばのキテレツなファッション、じじの洒落にならない危険運転。店員に上から目線のじじに、若者に時代錯誤な小言をたれるばば……もしかしたらあなたも、こんなじじばば予備軍かも!? 爆笑&ドッキリの痛快エッセイ集。
  • もうすぐいなくなります―絶滅の生物学―(新潮文庫)
    3.3
    生命誕生からおよそ38億年。地球上ではおびただしい数の生物種が出現と絶滅を繰り返してきた。現在でも、例えばトキやニホンオオカミはとうに滅び、イリオモテヤマネコ、ゾウ、マナティー、シロナガスクジラなどが絶え果てる寸前である。そしてこの先、人類も地球上から消えていなくなるのだろうか――。絶滅と生存を分ける原因は何か。絶滅から生命の進化を読み解く新しい生物学の教科書。
  • 現代語訳 とわずがたり(新潮文庫)
    3.3
    幼少の頃から後深草院のもとで養育された二条は、十四歳の春に院の寵愛を得る。二条は院の愛人となってからも、あまたの貴人や高僧たちと交渉を重ねるが、かねてからの出離の思いが高じ、ついには尼となって諸国遍歴の旅に出る。――波瀾にみちた性の体験を大胆に告白し、愛欲の世界を脱して、宗教に浄化されていく過程を描いた女流日記文学の傑作を、艶麗な筆に甦らせた名訳。
  • 生き抜くためのドストエフスキー入門―「五大長編」集中講義―(新潮文庫)
    3.6
    なぜドストエフスキーの作品は百五十年の時を越えて読まれ続けるのか? ソ連崩壊と冷戦終結、中国の台頭、そしてコロナ禍。時代が激しく変わり続ける今なお、ロシア文学最大の作家による長編には現代人が生き延びるための知恵が込められているからにほかならない。人は国家に抗えるのか、どうすれば自己実現できるのか。最高の水先案内人による超入門、ドストエフスキーを読む前に読む本。
  • はるか(新潮文庫)
    3.8
    賢人は小さな頃、海岸で一人の少女と出会い恋に落ちる。彼女の名は、はるか。大人になり偶然再会した二人は結婚するが、幸せな生活は突如終わりを告げた。それから月日は経ち、賢人は人工知能の研究者として画期的なAIを発明。「HAL‐CA」と名付けられたそのAIは、世界を一新する可能性を秘めていた――。『ルビンの壺が割れた』で大反響を呼んだ著者による、更なる衝撃が待つ第二作。
  • そうか、もう君はいないのか(新潮文庫)
    4.3
    彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分に襲われる――。気骨ある男たちを主人公に、数多くの経済小説、歴史小説を生みだしてきた作家が、最後に書き綴っていたのは、亡き妻とのふかい絆の記録だった。終戦から間もない若き日の出会い、大学講師をしながら作家を志す夫とそれを見守る妻がともに家庭を築く日々、そして病いによる別れ……。没後に発見された感動、感涙の手記。(解説・児玉清)
  • エリザベスの友達(新潮文庫)
    4.1
    戦後、命からがら娘と日本に引き揚げた初音さんは今年九七歳になる。もう今では長女の顔もわからない。病が魂を次々と剥いでゆくとき、現れたのは天津租界でのまばゆい記憶だ。ドレスに宝石、ミンクを纏い、ある日はイギリス租界の競馬場へ、またある日はフランス租界のパーマネントに出かけ、女性たちは自由だった――時空を行き来しながら人生の終焉を迎える人々を、あたたかく照らす物語。(解説・岸本佐知子)
  • 変見自在 習近平は日本語で脅す(新潮文庫)
    5.0
    暇さえあれば日本人を罵倒し、平然と歴史を歪曲し、軍事力の強化に狂奔する中国。ところが中国語の70%以上は、日本から輸入した言葉なのだ。尖閣の領有権を主張し、日本をも乗っ取ろうとしている「赤い皇帝」の演説も、ほぼ日本語。他に日本の新聞なのに反日を売りにし事実をねじ曲げ恬として恥じない朝日新聞や、世界中で悪行の限りを尽くす米国など。巷の嘘とデタラメを一刀両断する。(解説・百田尚樹)
  • 歴史をかえた誤訳(新潮文庫)
    3.7
    原爆投下は、たった一語の誤訳が原因だった――。突き付けられたポツダム宣言に対し、熟慮の末に鈴木貫太郎首相が会見で発した「黙殺」という言葉。この日本語は、はたして何と英訳されたのか。ignore(無視する)、それともreject(拒否する)だったのか? 佐藤・ニクソン会談での「善処します」や、中曽根「不沈空母」発言など。世界の歴史をかえてしまった誤訳の真相に迫る!
  • さよならは仮のことば―谷川俊太郎詩集―(新潮文庫)
    3.8
    「僕はやっぱり歩いてゆくだろう……すべての新しいことを知るために/そして/すべての僕の質問に自ら答えるために」(「ネロ」)。19歳でデビュー以来、70年にわたって言葉の可能性を追求し続けてきた国民的詩人。国語教科書の定番「朝のリレー」「春に」、東日本大震災で話題となった「生きる」等、豊饒かつ多彩な作品群から代表作を含め独自に編集。その軌跡をたどり、珠玉を味わう決定版詩集。(解説・小津夜景)
  • 鏡じかけの夢(新潮文庫)
    4.1
    その鏡は、磨く者の願いを叶えるという。会いたい、羨ましい、妬ましい、もっと欲しい、憎い……。願えば願うほど、心に秘めた黒い欲望は醜く膨れ上がり、全てを呑み込む。看護婦の羨望。鏡研ぎ師の嫉妬。踊り子と富豪の禁忌の愛。戦争孤児と奇術師の絆。ヴェネツィアの双子姉妹の過ち――。鏡に魅入られた人々が陥る、束の間の甘美な愉悦と残酷な結末を描いた、五つの物語。(解説・飯豊まりえ)
  • 吃音―伝えられないもどかしさ―(新潮文庫)
    4.1
    店で注文ができない。電話に出るのが怖い。喋ろうとしてどもってしまい、変な人だと思われたくない……話したい言葉がはっきりあるのに、その通りに声が出てこない「吃音」。目に見えず理解されにくいことが当事者を孤独にし、時に自殺に追い込むほど苦しめる。自らも悩んだ著者が、当事者をはじめ家族や同僚、研究者、支援団体に取材を続け、問題に正面から向き合った魂のノンフィクション。(解説・重松清)
  • いっぽん桜(新潮文庫)
    3.8
    仕事ひと筋で、娘に構ってやれずにきた。せめて嫁ぐまでの数年、娘と存分に花見がしたい。ひそかな願いを込めて庭に植えた一本の桜はしかし、毎年咲く桜ではなかった。そこへ突然訪れた、早すぎる「定年」……。陽春の光そそぐ桜、土佐湾の風に揺れる萩、立春のいまだ冷たい空気に佇むすいかずら、まっすぐな真夏の光のもとで咲き誇るあさがお。花にあふれる人情を託した四つの物語。(解説・川村湊)
  • 流転の海 読本(新潮文庫)
    4.0
    宮本輝畢生の大作「流転の海」は実に37年の歳月をかけて全九巻で完結した。松坂熊吾、房江、伸仁、三人の戦後20年間を描いたこの大河小説には、実に1500人を超える人物が登場する。この物語の世界に調査の達人・堀井憲一郎が果敢に挑む。熊吾・房江両家の系図、それぞれの前史、舞台の地図、各巻あらすじ、主要人物370人の紹介、人物相関図等……。未曾有の文学的感動のお供に必携の一冊。
  • 物語を忘れた外国語(新潮文庫)
    3.6
    大学で言語学やロシア語を教え、時にはチェコ語で講演もする。スラブ諸語を研究する言語学者が何より愛するのは小説である。『犬神家の一族』を英語版で楽しみ、『細雪』のロシア人一家についてあれこれ推理。スウェーデン語に胸をときめかせ、物語に描かれる大学教授の人望のなさに溜息をつく。文庫版書下ろしエッセイ「長い長い外国語の話」も収録。言葉はきっとあなたの世界を広げる翼になる。(解説・林巧)
  • 生きるとか死ぬとか父親とか(新潮文庫)
    4.0
    母を亡くして約二十年。私にとって七十代の父はただ一人の肉親だ。だが私は父のことを何も知らない。そこで私は、父について書こうと決めた。母との馴れ初め、戦時中の体験、事業の成功と失敗。人たらしの父に振り回されつつ、見えてきた父という人、呼び起される記憶。そして私は目を背けてきた事実に向き合うーー。誰もが家族を思い浮かべずにはいられない、愛憎混じる、父と娘の本当の物語。(解説・中江有里)
  • 騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編(上)―(新潮文庫)
    完結
    3.7
    全4巻605~825円 (税込)
    一枚の絵が、秘密の扉を開ける――妻と別離し、小田原の海を望む小暗い森の山荘に暮らす36歳の孤独な画家。緑濃い谷の向かいに住む謎めいた白髪の紳士が現れ、主人公に奇妙な出来事が起こり始める。雑木林の中の祠、不思議な鈴の音、古いレコードそして「騎士団長」……想像力と暗喩が織りなす村上春樹の世界へ!
  • 高校生ワーキングプア―「見えない貧困」の真実―(新潮文庫)
    4.2
    「弟や妹には、普通の暮らしをさせたいんです」「もう嫌や。金、降ってこーい」スマホを持つ一見普通の高校生が、親に代わって毎日家事をこなす。家計を支えるためにダブルワークをする。進学費用として奨学金という借金を背負う。彼らのSOSはなぜ見過ごされてしまうのか? 働かなければ学べない高校生の声を集め、この国の隠れた貧困層の実態を浮かび上がらせた切実なルポルタージュ。(解説・荻上チキ)
  • 猫を拾いに(新潮文庫)
    4.0
    誕生日の夜、プレーリードッグや地球外生物が集い、老婦人は可愛い息子の将来を案じた日々を懐かしむ。年寄りだらけになった日本では誰もが贈り物のアイデアに心悩ませ、愛を語る掌サイズのおじさんの頭上に蝉しぐれが降りそそぐ。不思議な人々と気になる恋。不機嫌上機嫌の風にあおられながら、それでも手に手をとって、つるつるごつごつ恋の悪路に素足でふみこむ女たちを慈しむ21篇。
  • パスタマシーンの幽霊(新潮文庫)
    4.1
    恋をしたとき、女の準備は千差万別。海の穴に住む女は、男をすりつぶす丈夫な奥歯を磨き、OLの誠子さんは、コロボックルの山口さんを隠すせんべいの空き箱を用意する。おかまの修三ちゃんに叱られ通しのだめなアン子は、不実な男の誘いの電話にうっかり喜ばない強い心を忘れぬように。掌小説集『ざらざら』からさらに。女たちが足をとられた恋の深みの居心地を描く22の情景。
  • 樽とタタン(新潮文庫)
    3.7
    今から三十年以上前、小学校帰りに通った喫茶店。店の隅にはコーヒー豆の大樽があり、そこがわたしの特等席だった。常連客は、樽に座るわたしに「タタン」とあだ名を付けた老小説家、歌舞伎役者の卵、謎の生物学者に無口な学生とクセ者揃い。学校が苦手で友達もいなかった少女時代、大人に混ざって聞いた話には沢山の“本当”と“噓”があって……懐かしさと温かな驚きに包まれる喫茶店物語。(解説・平松洋子)
  • 変見自在 トランプ、ウソつかない(新潮文庫)
    -
    移民大国を気取っていたはずなのに、白人優越主義を唱えるトランプを大統領に選んだ米国人。彼の言動を「暴言」「口先だけ」と思ったら大間違い。そこには米国人の黒い本音が潜んでいる――。民主主義の仮面を被り、単なる復讐を「正義の報復」として暴力沙汰に走ってきた米国の悪の歴史から「フェイクニュース」をお家芸とする朝日新聞まで。世に蔓延るウソを見極め真実の見方を知る一冊。(解説・金美齢)
  • ちぎれた夜の奥底で(新潮文庫)
    4.0
    1巻605円 (税込)
    業績悪化に苦しむ損保代理店課長の田口(42)は、法人契約をまとめた部下の千咲(32)と寝てしまう。彼女には社内結婚した年下の夫がいた。危ういダブル不倫は爛れてゆく。深夜のオフィスや屋上での交接、ウリセンボーイとの乱交。その度に千咲の知的な美貌は羞恥に歪んだ。刹那の快楽こそが救いだった。だが快感に溺れ切った田口の心は、やがてちぎれていく……。官能ノワール長編。
  • 幽霊たち(新潮文庫)
    4.0
    私立探偵ブルーは奇妙な依頼を受けた。変装した男ホワイトから、ブラックを見張るように、と。真向いの部屋から、ブルーは見張り続ける。だが、ブラックの日常に何の変化もない。彼は、ただ毎日何かを書き、読んでいるだけなのだ。ブルーは空想の世界に彷徨う。ブラックの正体やホワイトの目的を推理して。次第に、不安と焦燥と疑惑に駆られるブルー……。'80年代アメリカ文学の代表的作品!(解説・伊井直行/三浦雅士)
  • 村上ラヂオ(新潮文庫)
    4.0
    公園のベンチで食べる熱々のコロッケパン。冬のゴルフコースをスキーで走る楽しさ――。オーバーの中に子犬を抱いているような、ほのぼのとした気持ちで毎日をすごしたいあなたに、ちょっと変わった50のエッセイを贈ります。柿ピーの諸問題、楽しいレストランでの大惨事(?)から、きんぴら作りに最適なBGM、そして理想的な体重計の考察まで、小さなドラマが一杯!
  • ただしくないひと、桜井さん(新潮文庫)
    3.6
    悪いと思いながら少女は母を蹴る。性欲のまま早熟な体を安売りする。死病に冒された女は夫ではない男に身を任せ、夫は当てつけのように女を買う。貞淑な祖母は孫を見捨て、清らかなはずの女は「一番愛している」からと悦楽に溺れていく。口には出せないたくさんの秘密。それは他人の痛みに手を差し伸べる“桜井さん”の中にもあった。R-18文学賞読者賞作を含む、日常への裏切りに満ちた連作集。(解説・彩瀬まる)
  • 人とつき合う法(新潮文庫)
    3.5
    誰しも苦手な人がいる。酒癖の悪い人もいる。一方で、ウマの合う人がいる。社会で生きるということは、様々な人たちと、時には自分を殺して、時には少し遠ざけて、上手にやっていくことかも知れない。博覧強記の教養人河盛好蔵が古今東西の偉人先賢先哲の名言やエピソードとともに人づき合いの極意を開陳した本書は人生のバイブルとして昭和の大ベストセラーとなった。待望の注釈付新装復刊。(解説・岸見一郎)
  • 変見自在 朝日は今日も腹黒い(新潮文庫)
    -
    下山事件では古畑鑑定を鵜呑み、全日空羽田沖墜落事故では山名説を盲信し、日露戦争を曲解する。「地上の楽園」キャンペーンに、美濃部都政の無策には頬被り、自作自演の落書き珊瑚。慰安婦の捏造報道、福島作業員脱走の虚報。嘘がばれても御用学者で固めた第三者委員会で躱(かわ)し、東大と白人に靡(なび)き、歴史を直視せず、国益毀損を励行する。そんな大新聞への熱いエールに満ちた人気コラム集。(解説・藤岡信勝)
  • 「大乱の都」京都争奪―古代史謎解き紀行―(新潮文庫)
    -
    なぜ荒地で水害が多く人が住みにくい京都に、桓武天皇は都を築いたのか? 平安京の誕生には、いくつもの謎が隠されている。旧体制の名門豪族と新興の藤原氏の対立、賀茂氏と秦氏の暗躍……。源平擾乱、応仁の乱、本能寺の変と常に争乱の中心であり、「日本と日本の王の形」を決めた平安京遷都には、ヤマト建国から続く因縁と恩讐の歴史があった。古代史の常識に挑む「紀行シリーズ」完結編。
  • 時の名残り(新潮文庫)
    4.0
    作家として立つために夫・吉村昭とともに必死で小説を書き続けた若い頃。戦時中の青春。長崎、三陸、北海道、湯沢、日暮里、吉祥寺など、仕事以外には旅をしない夫の取材に連れ立った思い出の地と、移り住んだ土地。「戦艦武蔵」「星への旅」「海鳴」「流星雨」など、それぞれが生み出した作品の創作秘話。そして、故郷・福井への思い。昭和三年生れの著者が人生の軌跡を綴った珠玉の随筆五十三篇。(解説・松田哲夫)
  • ハンニバル・ライジング(上)(新潮文庫)
    3.5
    1941年、リトアニア。ナチスは乾坤一擲のバルバロッサ作戦を開始し、レクター一家も居城から狩猟ロッジへと避難する。彼らは3年半生き延びたものの、優勢に転じたソ連軍とドイツ軍の戦闘に巻き込まれて両親は死亡。残された12歳のハンニバルと妹ミーシャの哀しみも癒えぬその夜、ロッジを襲ったのは飢えた対独協力者の一味だった……。ついに明かされる、稀代の怪物の生成過程!
  • 絶滅危惧職、講談師を生きる(新潮文庫)
    4.4
    かつて落語を凌ぐ人気を誇った講談は、戦後存続を危ぶまれるほど演者が減った。しかしここに、新たな光が射している。風雲児の名は、神田松之丞。確かな話術と創意工夫で高座に新風を吹き込み、二ツ目ながら連日満席の講談会や寄席に新客を呼び続けている。真打昇進と同時に六代目神田伯山を襲名する彼は、なぜ講談に生きる覚悟を固め、何処を目指してゆくのか。自ら語った革命的芸道論。(解説・長井好弘)
  • えどさがし(新潮文庫)
    4.0
    1巻605円 (税込)
    時は流れて江戸から明治へ。夜の銀座で、とんびを羽織った男が人捜しをしていた。男の名は、仁吉。今は京橋と名乗っている。そして捜しているのは、若だんな!? 手がかりを求めて訪ねた新聞社で突如鳴り響く銃声! 事件に巻き込まれた仁吉の運命は――表題作「えどさがし」のほか、お馴染みの登場人物が大活躍する全五編。「しゃばけ」シリーズ初の外伝。
  • ひりつく夜の音(新潮文庫)
    3.8
    46歳の下田保幸は、プロのジャズクラリネット奏者。演奏に全てを捧げた若い日の情熱は潮が引くように褪せ、いまは音楽教室講師の僅かな収入で過ごす。そんな暮らしがギタリストの青年・音矢との出会いで動き出す。どうしても困ったら下田を頼るよう、亡き母に言われたという音矢の名字は佐久間。下田が昔愛した女性と同じだった……。人生の折返し点で迷う大人たちの心をはげます感動作。(解説・北上次郎)
  • 劇場(新潮文庫)
    3.9
    高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった――。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。
  • 源氏姉妹(新潮文庫)
    4.0
    源氏物語、それは高貴さに美貌と知性を兼ね備えた主人公、光源氏と肉体関係を結んだ女性たちが織りなす、「姉妹(シスターズ)」のお話。天性の床上手だった夕顔、体の相性ばっちりのセフレ朧月夜、幼女の頃にさらわれた紫上、義理の母なのに関係を持った藤壺……。エロティックな濡れ場や姉妹の心情を肉付けし、源氏のセックス依存と背徳を浮き彫りに。古典を現代的に再構成した刺激たっぷりのエッセイ。(解説・高橋源一郎)
  • リア家の人々(新潮文庫)
    3.5
    1巻605円 (税込)
    帝大出の文部官僚である砺波文三は、妻との間に3人の娘をもうけた。敗戦後、文三は公職追放の憂き目に逢うが、復職の歓びもつかの間、妻はがんで逝く。やがて姉たちは次々に嫁ぎ、無口な老父と二人暮らしとなった年の離れた末娘の静は、高度成長の喧噪をよそに自分の幸せを探し始めていた。平凡な家族の歳月を、「リア王」の孤独と日本の近代史に重ね、「昭和」の姿を映す傑作長編。
  • 兵士に聞け 最終章(新潮文庫)
    -
    頻発する中国の領空侵犯にスクランブル発進を繰り返し、常態化する領海侵犯に24時間態勢で哨戒活動を行なう自衛隊。そして国内の災害派遣では最も過酷な現場へと向かう。激しさを増す任務の中で隊員たちは何を思うのか。取材開始から24年、これまでインタビューした自衛隊員は1000人超。自衛隊の実像を追い、最前線の声を聞き続けたノンフィクションの金字塔、「兵士シリーズ」ついに完結。(解説・関川夏央)
  • 濡れ衣の女―大江戸人情見立て帖―(新潮文庫)
    -
    刀の目利きと研ぎで生計を助け、腕が立つが出世には無関心の下級旗本・関口平九郎。世間の噂に敏感な、お調子者の質屋の若旦那・万寿屋卯之吉。世間を冷めた眼で見る、はぐれ狼の同心・深尾左門。同じ常磐津の師匠のもとに通う、身分や生い立ち、暮らしも違う三人の男が、それぞれの立場、特技を生かし、江戸の市井で起こる事件を人情味あふれる方法で解決する、書き下ろし連作時代小説四編。
  • アルファ・ケンタウリからの客(新潮文庫)
    -
    極悪非道の養父からやっとのことで逃げ出した佳代は、それまでの不幸を帳消しにしてくれるようなすばらしい恋人とめぐりあった。作曲家を志し、今まさに才能が認められようとしている青年・悠介。夢に見た幸せまではあと一歩だ。けれどもその佳代を、はるか天空からじっと見つめ続ける知的生命体たちがいた……。広大な宇宙を背景に、甘く、優しく、暖かく描かれた、小さな愛の物語。
  • 介護殺人―追いつめられた家族の告白―(新潮文庫)
    4.0
    全国の要介護認定者数656万人。「夫婦だから」「親子だから当然」と始めた家庭での介護が長期化し、困難を極め、やがて悲劇が起こる。――今、全国で続出する介護を苦にした殺人事件。なぜ最愛の母親を手にかけてしまったのか。家族の絆がなぜ悪夢に変わったのか、当事者の悲痛な叫びに耳を傾けた記者たちが目の当たりにしたのは、在宅介護の切なすぎる現実だった。慟哭と衝撃の最前線ドキュメント。(解説・重松清)
  • 幻の料亭「百川」ものがたり―絢爛の江戸料理―(新潮文庫)
    3.7
    旬の鱸(すずき)や真鯛は煎酒で食すのが粋。夏は砕いた氷を入れた霰酒(あられざけ)を嗜む。採れたての松茸は丸ごと焼いて、昆布の味噌漬けを土産に。化政文化が花開いた頃、贅を尽くした料理と風流なもてなしで頭角を現し、文人墨客にも愛された日本橋の料亭「百川」。幕末には黒船一行を迎える饗宴を任された名店の運命とは。古今東西の食に通じた著者が解き明かす、江戸料理の真髄! 『幻の料亭・日本橋「百川」』改題。(解説・檀ふみ)
  • 決算! 忠臣蔵(新潮文庫)
    3.6
    時は元禄、御家御取潰しは現代ならば会社倒産。松の大廊下の刃傷沙汰で、主君は切腹、藩は解散。「いくさや!」と赤穂牢人が意気込もうとも、先立つものはお金。退職金、御家再興の運動費に、墓代? 吉良家に討ち入るなら武器だって必要だし……家老の大石内蔵助は減りゆくばかりの予算をいかにやりくりし、主君の敵(かたき)を討ったのか? 一級史料をもとに生れた同名映画を監督自身が小説化!
  • 数学する人生(新潮文庫)
    4.2
    日本が誇る世界的数学者にして、畑仕事と研究だけに没頭した孤高の人――。数学の枠にとどまらない、その思想エッセンスを余すところなく一冊に凝縮。「人は本来、物質的自然の中に住んでいるのではなくて、魚が水の中に住んでいるように、心の中に住んでいます」と語る哲学的にして詩的な世界観を、小林秀雄賞を最年少で受賞し、岡に私淑する俊英の編集により完全再現した驚異的選集。(解説・角川祐司)
  • モンスターマザー―長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い―(新潮文庫)
    4.1
    不登校の男子高校生が久々の登校を目前にして自殺する事件が発生した。かねてから学校の責任を異常ともいえる執念で追及していた母親は、校長を殺人罪で刑事告訴する。弁護士、県会議員、マスコミも加わっての執拗な攻勢を前に、崩壊寸前まで追い込まれる高校側。だが教師たちは真実を求め、反撃に転じる。そして裁判で次々明らかになる驚愕の事実。恐怖の隣人を描いた戦慄のノンフィクション。
  • ニセモノの妻(新潮文庫)
    3.5
    「もしかして、私、ニセモノなんじゃない?」妻と思ってきた女の衝撃的な一言で始まったホンモノの妻捜し。けれど僕はいったい誰を愛してきたのだろう(「ニセモノの妻」)。ある日、仲睦まじい夫婦の妻だけが時間のひずみに囚われてしまった。共に明日を迎えられない彼女のために夫がとった行動は――(「断層」)。その他、非日常に巻き込まれた4組の夫婦の、不思議で時に切なく温かな短編集。(解説・中江有里)
  • 朗読者(新潮文庫)
    4.2
    15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」――ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。
  • レプリカたちの夜(新潮文庫)
    3.6
    動物レプリカ工場に勤める往本がシロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。絶滅したはずの本物か、産業スパイか。「シロクマを殺せ」と工場長に命じられた往本は、混沌と不条理の世界に迷い込む。卓越したユーモアと圧倒的筆力で描き出すデヴィッド・リンチ的世界観。選考会を騒然とさせた新潮ミステリー大賞受賞作。「わかりませんよ。何があってもおかしくはない世の中ですから」。(解説・佐々木敦)
  • 半席(新潮文庫)
    3.7
    御家人から旗本に出世すべく、仕事に励む若き徒目付の片岡直人。だが上役から振られたのは、不可解な事件にひそむ「真の動機」を探り当てる御用だった。職務に精勤してきた老侍が、なぜ刃傷沙汰を起こしたのか。歴とした家筋の侍が堪えきれなかった思いとは。人生を支えていた名前とは。意外な真相が浮上するとき、人知れずもがきながら生きる男たちの姿が照らし出される。珠玉の武家小説。(解説・川出正樹)
  • 工場(新潮文庫)
    3.4
    大河が南北を隔てる巨大工場は、ひとつの街に匹敵する規模をもち、環境に順応した固有動物さえ生息する。ここで牛山佳子は書類廃棄に励み、佳子の兄は雑多な書類に赤字を施し、古笛青年は屋上緑化に相応しいコケを探す。しかし、精励するほどに謎はきざす。この仕事はなぜ必要なのか……。緻密に描き出される職場に、夢想のような日常が浮かぶ表題作ほか2作。新潮新人賞、織田作之助賞受賞。(解説・金井美恵子)
  • 遺体―震災、津波の果てに―(新潮文庫)
    4.4
    あの日、3月11日。三陸の港町釜石は海の底に沈んだ。安置所に運び込まれる多くの遺体。遺された者たちは懸命に身元確認作業にのぞむ。幼い我が子が眼前で津波にのまれた母親。冷たくなった友人……。悲しみの底に引きずり込まれそうになりながらも、犠牲者を家族のもとへ帰したい一心で現実を直視し、死者の尊厳を守り抜く。知られざる震災の真実を描いた渾身のルポルタージュ。
  • 心に龍をちりばめて(新潮文庫)
    3.6
    小柳美帆はエリート記者の黒川丈二との結婚を目前に、故郷の福岡で同級生の仲間優司と再会する。中学時代「俺は、お前のためならいつでも死んでやる」と唐突に謎の言葉を口走った優司。今その背中に大きな龍の刺青と計り知れぬ過去を背負っていた。時間や理屈を超え、二人の心に働く不思議な引力の正体とは――恋より底深いつながりの核心に迫り、運命の相手の存在を確信させる傑作。
  • あやまちは夜にしか起こらないから(新潮文庫)
    5.0
    1巻605円 (税込)
    私の二番目の恋人(セカンダリー)になってください――自由な校風の私立学園の新任教師・佐竹は妖艶な音楽教師・万輝と一夜の関係を持つが、彼女の一言で運命が狂っていく。癒し系の家庭科教師・雪乃の性戯を愉しみながらも、万輝が忘れられない佐竹。やがてその学園にはポリアモリーという性愛が横行することが判明。その渦に巻き込まれていくが、快楽の極みは悲劇の幕開けだった。官能ロマンの衝撃作!
  • アメリカ最後の実験(新潮文庫)
    3.8
    音楽家の父を探すため、アメリカの難関音楽学校を受験した脩。癖のある受験生や型破りな試験に対峙する中、会場で「アメリカ最初の実験」と謎のメッセージが残された殺人事件が発生。やがて第二、第三と全米へ連鎖していくその事件に巻き込まれた脩は、かつて父と仲間が音楽によって果たそうとした夢こそが事件に深く関わっていたと知る。気鋭の作家が描く全く新しい音楽小説、ここに誕生!(解説・吉田隆一)
  • れもん、よむもん!(新潮文庫)
    4.1
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 読んできた本を語ることは、自分の内面をさらけ出すことだった!宝塚とK-POPを愛する漫画家が軽い気持ちで描き始めた読書遍歴は、予期せぬ展開に。父に禁じられた『キス・キス』、絶望の淵へ突き落とされた『ココの詩(うた)』、そして、謎めいた級友・はるなちゃんに借りた『放課後の音符(キイノート)』。彼女と愛読書を共有しながら新しい扉が次々と開き……。本と友との最高の出会いに満ちたコミック・エッセイ。(解説・山田詠美
  • キッチン・ブルー(新潮文庫)
    3.6
    つまんない子、いつもそう言われてきた――。灯(とも)は飲み会も女子会もNG、とにかく他人と食事を共にすることができない「会食不全症候群」。この性分のせいで職を変え、恋にも無縁。けれど仕事で知り合った蝦名(えびな)から夕食に誘われて……。食べることは生きること。「食」に憂鬱を抱えた6人が、ユニークでタフな方法で、悩みに立ち向かってゆく。つい頑張ってしまう人に贈る、幸せごはん小説!(解説・乾ルカ)
  • 咲見庵三姉妹の失恋(新潮文庫)
    3.5
    蔵の町、川越。くず餅が人気の和カフェ・咲見庵を営む美人の長女、花緒。ボーイッシュで夢見がちな次女、六花。そして、二人の姉とは母親の違う十六歳の三女、若葉。そんな高咲三姉妹が暮らす家に、父を亡くした少年、薫が居候することに。姉たちはそれぞれに恋の甘さと苦しみを味わい、同い年の若葉と薫は次第に心を通わせていくが――。めぐる季節の中、姉妹が織りなす優しく切ない恋愛模様。(解説・吉田伸子)
  • 本当はエロかった昔の日本(新潮文庫)
    4.0
    兄と妹の近親姦から国作りが始まる『古事記』、義母を犯して子を産ませた光源氏が、結局、妻を寝取られるという「不倫の恋」満載の『源氏物語』、セックス相手によって人生が変わる「あげまん・さげまん」神話、男色カップル弥次喜多の駆け落ち旅『東海道中膝栗毛』など、古典文学の主要テーマ「下半身」に着目し、性愛あふれ情欲に満ちた日本人の本当の姿を明らかにする、目から鱗の一冊!(特別対談・まんしゅうきつこ×大塚ひかり)
  • 決定版 快読シェイクスピア(新潮文庫)
    3.9
    シェイクスピアが「ロミオとジュリエット」の下敷きとなった物語に加えた、ふたつの重要なアレンジとは。ハムレットって実は体育会系? その根拠は。リチャード三世はアドラー理論を体現したような人物である――。ひとの心を深く知る心理学者と、女性初のシェイクスピア全作品訳に挑む翻訳家による、洞察力とユーモア溢れる11のセッション。幻の「タイタス・アンドロニカス」論を初収録。
  • 愛のひだりがわ(新潮文庫)
    3.9
    幼いとき犬にかまれ、左腕が不自由な小学六年生の少女・月岡愛。母を亡くして居場所を失った彼女は、仲良しの大型犬デンを連れて行方不明の父を探す旅に出た。暴力が支配する無法の世界で次々と事件に巻き込まれながら、不思議なご隠居さんや出会った仲間に助けられて危機を乗り越えていく愛。近未来の日本を舞台に、勇気と希望を失わずに生きる少女の成長を描く傑作ジュヴナイル。
  • 夢の木坂分岐点(新潮文庫)
    3.8
    夢の木坂駅で乗り換えて西に向かうと、サラリーマンの小畑重則が住み、東へ向かうと、文学賞を受賞して会社を辞めたばかりの大村常賢が住む。乗り換えないでそのまま行くと、専業作家・大村常昭が住み、改札を出て路面電車に乗り、商店街を抜けると……。夢と虚構と現実を自在に流転し、一人の人間に与えられた、ありうべき幾つもの生を深層心理に遡って描く谷崎潤一郎賞受賞作。
  • 老後破産―長寿という悪夢―(新潮文庫)
    3.8
    「預金が尽きる前に、死んでしまいたい」「こんなはずじゃなかった……」年金だけでは暮らせない。金が無いので病院にも行けない。食費は1日100円……。ごく普通の人生を送り、ある程度の預貯金もある。それでも、病気や怪我などの些細なきっかけで、老後の生活は崩壊してしまう。超高齢化社会を迎えた日本で、急増する「老後破産」の過酷な現実を、克明に描いた衝撃のノンフィクション。
  • 葬送の仕事師たち(新潮文庫)
    4.0
    誰にでも、いつかは必ずやってくる人生の終わり。旅立ちの手助けを生業とする人たちがいる。葬儀社社員、湯灌師、納棺師、復元師、エンバーマー、火葬場職員……。なぜこの職業を選んだのか。どんな思いを抱いて働いているのか。忘れられない経験とは。著者は、「死」と向き合うプロたちの言葉に耳を傾け、葬送の現場を見て歩く。光があたることのなかった仕事を描破した感動のルポルタージュ。
  • GHQと戦った女 沢田美喜(新潮文庫)
    3.7
    昭和23年、進駐軍兵士と日本人女性との混血孤児を救うため、GHQと対峙し、児童養護施設エリザベス・サンダース・ホームを創設した沢田美喜。三菱財閥・岩崎家の令嬢は、なぜ養う子供のミルク代にも事欠く生活に人生を捧げたのか。その決意に秘められた「贖罪」の思いとは何か……。恐れず怯まず進駐軍と戦い、たった一人で「戦争の後始末」に立ち向かった女性の愛と情熱の生涯を描く! ※当電子版には、新潮文庫版に掲載の写真の一部は収録しておりません。ご了承ください。

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