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Posted by ブクログ
湿り気、夢、女
解説にもあるけど意識の流れ(水の流れ)
「どなたです。」
「お客さまですから、お母さま、あげないでちょうだい。」
「先生です。」と久子は小さいが張りのある声できっぱりと言った。そのとたんに銀平は狂わしい幸福の火を浴びたように、びんと立った。ピストルでも持っていたら、うしろから久子をうったかもしれない。玉は久子の胸を貫いて、扉の向うの母 にあたった。久子は銀平の方へ倒れ母は向うへ倒れた。久子と母は扉をへだてて向 い合っているから、二人ともうしろへのけざまに倒れたわけだ。しかし久子は倒れながらなにかきれいに身をまわして向きかわると、銀平の脛に抱きついた。久子の傷口から噴き出す血がその胚を伝わり流れて、銀平の足の甲をぬらすと、そこのくろずんだ厚い皮はすうっと薔薇の花びらのように美しくなり、土ふまずの皺はのびて桜貝のようになめらかとなり、彼の指みたいに長くて、節立って、まがって、しなびた足もやがて久子の温い血に洗われて、マネキン人形の指のように形よくなった。ふと、久子の血がそんなにあるはずはないという気がすると、銀平自身の血から流れ落ちていることに気がついた。銀平は来迎仏の乗った五色の雲につつまれたように気が遠くなった。この幸福の狂想もしかし一瞬であった。 「久子がな、学校へ持って行きよった、水虫の塗り薬には、娘の血がまざっとるん ですがな。」
あとは蛍のイメージから光が流線型(わずかに水)に移って、最後に上野の居酒屋のぼんやりとした光が点滅してラスト灯のない暗い路地に渡るのが上手だなあと思った
オチ自体が微妙なのは道中の夢(人生最後の燈の瞬間)(走馬灯)を描きたかったからで、要は衰の始まりで終わる(描く必要がない)で描くことが夢の終わりとしてちょうど良いんだなと考えると納得のいく構成ではある。
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