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誰にも言っちゃ、だめだよ。ふたりだけの秘密……高校教師の桃井銀平は、教え子の久子と密かに愛し合うようになる。だが、二人の幸福は長く続かなかった――。湖畔で暮らしていた初恋の従姉、蛍狩りに訪れた少女など、銀平が思いを寄せた女性たちの面影や情景が、中世の連歌のように連想されていく。作家の中村真一郎が「戦後の日本小説の最も注目すべき見事な達成」と評した衝撃的問題作。(解説・中村真一郎、角田光代)
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Posted by ブクログ
銀平は一途のように見えて、気の多すぎるところが信用ならないし、久子の卒業式の日に恩田に対して髪の話をした時など 気持ち悪くてゾッとした。 赤ちゃん事件も、不誠実で女の私からすると銀平は どうしようもなくキモくて嫌な奴だった。 個人的には宮子と過ごしている老人の方が私は好きだ。
主人公(もしかして川端自身?)の異様な性癖とも言える行動を追体験できる面白さもありつつ、現実と空想が入り交じる世界観の不思議さもあり読んでいて複雑な心持になる作品であった。 とりわけ、主人公の醜さと女性の美しさの対比を面白く読むことができた。
現実の世界に唐突にはさまれる主人公の見る幻、無意識の世界は、彼が危うい世界に片足、いや、ほとんど両足を突っ込んでいるのを感じさせる。発表当時でも嫌悪を示す読者がいたようだが、今の若い世代はどうだろうか。
湿り気、夢、女 解説にもあるけど意識の流れ(水の流れ) 「どなたです。」 「お客さまですから、お母さま、あげないでちょうだい。」 「先生です。」と久子は小さいが張りのある声できっぱりと言った。そのとたんに銀平は狂わしい幸福の火を浴びたように、びんと立った。ピストルでも持っていたら、うしろから久子を...続きを読むうったかもしれない。玉は久子の胸を貫いて、扉の向うの母 にあたった。久子は銀平の方へ倒れ母は向うへ倒れた。久子と母は扉をへだてて向 い合っているから、二人ともうしろへのけざまに倒れたわけだ。しかし久子は倒れながらなにかきれいに身をまわして向きかわると、銀平の脛に抱きついた。久子の傷口から噴き出す血がその胚を伝わり流れて、銀平の足の甲をぬらすと、そこのくろずんだ厚い皮はすうっと薔薇の花びらのように美しくなり、土ふまずの皺はのびて桜貝のようになめらかとなり、彼の指みたいに長くて、節立って、まがって、しなびた足もやがて久子の温い血に洗われて、マネキン人形の指のように形よくなった。ふと、久子の血がそんなにあるはずはないという気がすると、銀平自身の血から流れ落ちていることに気がついた。銀平は来迎仏の乗った五色の雲につつまれたように気が遠くなった。この幸福の狂想もしかし一瞬であった。 「久子がな、学校へ持って行きよった、水虫の塗り薬には、娘の血がまざっとるん ですがな。」 あとは蛍のイメージから光が流線型(わずかに水)に移って、最後に上野の居酒屋のぼんやりとした光が点滅してラスト灯のない暗い路地に渡るのが上手だなあと思った オチ自体が微妙なのは道中の夢(人生最後の燈の瞬間)(走馬灯)を描きたかったからで、要は衰の始まりで終わる(描く必要がない)で描くことが夢の終わりとしてちょうど良いんだなと考えると納得のいく構成ではある。
冒頭からしばらくは状況・登場人物の把握に時間がかかった 後半にかけての伏線回収が素晴らしく、震えた 幻と現実の境を感じた
酒を飲んで寝た日の、あんまり嬉しくない夢みたいな一冊。 銀平は足にコンプレックスを抱えたストーカー。しかもロリコン。川端康成の文章が美しく読みやすいからこそ、活字の中で存在することを許された男である。 「夢幻の少女を求めるためにこの現実の女と飲んでいるような気もした」 アイドルのご尊顔を拝むために...続きを読む労働に勤しむ私みたい。一緒にしたくないけど。 谷崎潤一郎も川端康成も、足が好きなのね。
川端康成55歳の作品。 少女少女少女。見目麗しい少女や娘に異常に執着し、つけ回す。安定の川端康成だと思っていたら、赤ん坊が出てくるあたりで怪しくなりました。土手の中を這い回る赤ん坊は明らかに人外のもの。これまでの物語りもすべて銀平の幻想だったかも知れません。もう一回吟味しながら読む必要がありそうです...続きを読む。 以下、思ったことを徒然に。 冒頭は硬質のクライム小説を思わせる書き出しでおやっと思いましたが、湯女を相手に語りだすと直ぐにキモいオッサンに変わりました。銀平の女慣れしていないキョドった態度と口調、流石です。 つけられる女のほうにも快感が生じると言う考えは観念としては妖しく魅惑的だけれど、現実的には気持ち悪いですね。 川端康成(や同時代)の小説を読んで思う事のひとつは「日本は階級社会だったんだな」と言うこと。今回はその象徴として、普段は人目に触れることのない「足の指の醜さ」に執着する点が面白い。 1章のラスト、蜘蛛の巣の幻と母の村のみずうみに映る夜火事が時系列的なラスト。巣にかかったメジロに腹を食い破られそうで、蜘蛛がじっとしてるのは判るけど、メジロ(娘)達はとっとと羽ばたいて何処かへ行っちゃうと思うけどなぁ。都合の良い幻想ですね。
川端康成の文庫本としては、「山の音」「眠れる美女」に続いて3冊目になる。主人公の桃井銀平、回想の中で回想をしていることが多いので、ものすごく不思議な感じだった。少女の黒目がみずうみに見える、その黒い瞳のみずうみのなかで泳ぎたい、という描写がものすごく印象に残っている。
美しい少女の後を追ってしまうという性癖を持つ主人公銀平。 トルコ風呂(今は使われない言葉となったが)のシーンから始まる。そ、そんな赤裸々な〜と焦りながらもぐいぐい読まされた。 そして銀平は、犯罪スレスレで今なら完全アウトの言動の数々。 ヤバい。教職も解かれ、無敵の人になりつつある。 自らの醜い足に対...続きを読むするコンプレックスや不幸な生い立ちが彼をそうさせているのか。 生きづらそうだ。 故郷のみずうみや過去の女性達の思い出が時々蘇る。現実と幻が交錯し、最後の蛍狩りの夜ではわからなくなってしまう。狂っていきそうで正気に戻りそうで銀平がどうなっていくのか…。不思議な小説。読後、ずっとモヤモヤ感をかみしめている。
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