Posted by ブクログ
2015年02月07日
大阪の一奉公人から身を起こし、世界に冠たる洋酒メーカー「サントリー」を創り上げた男、鳥井信治郎。食卓に西洋の文化をと生まれた赤玉ポートワイン。スコッチに負けないウイスキーをという執念が生んだサントリー・オールド。次々と銘酒を世に送り出し、その優れた経営感覚と新しいアイディアで、常に時代をリードして来...続きを読むた男の姿を、伝記文学の第一人者が浮き彫りにする。(親本は1983年、1986年文庫化。旧版)
・第一章 やってみなはれ(ワイン編)
・第二章 舶来を要せず(ウイスキー編)
・第三章 時代をみつめた男
・あとがき
・美酒二代(対談)杉森久英・佐治敬三
・鳥井信治郎年譜
本書は、朝の連続小説「マッサン」の登場人物、鴨居大将のモデルであり、サントリーの創業者である鳥井信治郎の伝記小説である。以前、購入して積読だったものを、今回読んでみた。
鳥井は、薬種問屋に丁稚奉公したことから、洋酒に興味を持つことになる。(当時、ワインが薬として飲まれていたことや、ブレンドして作られていたことが背景にある。奉公中にブレンダーとしての力が磨かれた。)やがて独立した鳥井は、赤玉ポートワインにより財を成し、ウイスキーの生産を目指す。
広告に力を入れたことなどが面白いが、本書を読むと、奇をてらったわけではなく、製品の品質あっての広告という考え方であったことがわかる。
技師として竹鶴政孝を迎え、山崎に蒸留所を構え、ウイスキーを仕込むが、品質も悪く、なかなか物にはならない。(本書ではビートを炊きすぎていた事や酵母の品質が悪かったことを指摘している)
鳥井は、京都帝大の片桐博士や技術者を招き、品質の向上につとめる。(この過程で、竹鶴は会社を去ることとなる)
戦時中は、海軍の庇護を受ける。本社や工場が被災するも、山崎蒸留所は無傷で残ったこと(原酒が温存された)が戦後の躍進へと繋がる。
最後の大阪商人といわれた男の豪快な人生を知ることが出来て面白かった。