ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
2pt
カトリック神学生の工藤、日本最初のヨーロッパ留学生である十七世紀の荒木トマス、仏文学者の田中の三人を主人公とした『ルーアンの夏』『留学生』『爾も、また』の三章から成る。時代は違っても、三人の留学生の悩みは共通であり、それぞれにヨーロッパ文明の壁に挑んで懸命に生きるが、宗教や文化その他の精神風土の絶対的な相違によって空しく挫折してゆく姿を描く力作。
ブラウザ試し読み
アプリ試し読みはこちら
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
海外で出会う外国人との考え方や感じ方の違いに、戸惑ったり誤解したりされること。伝わらなくてまあいっかって説明するのを途中で諦めたりすること。共感する人が多いと思う。 異国でつるむ日本人のコミュニティも、けっこう複雑な心理がからんでいて、そこもうまく表現されている。わかるー。 日本に来ている外国人...続きを読む旅行客を見て、戸惑いを感じたり孤独に感じたりしていないか、ちゃんと旅行を楽しんでるのかなといつも考えてしまう。 それは、この作品に出てくる登場人物と同じように過去に自分が留学で孤独を感じた経験があるからだ。病気まではしなかったけど。 見ていると日本にいる外人はすごく楽しんでそうに見えて安心する。 時代が違うから今ならスマホで調べたらわかるし、昔に比べてそこまで戸惑うことが少ないかもしれない。 遠藤さんの作品において特徴的な日本人的キリスト教も散りばめられていて、癒された。
留学の苦しみ。理想と現実との葛藤。 向坂の以下の発言が胸に刺さる。 「ぼくら留学生はすぐに長い世紀に亙るヨーロッパの大河の中に立たされてしまうんだ。ぼくは多くの日本人留学生のように、河の一部分だけをコソ泥のように盗んでそれを自分の才能で模倣する建築家になりたくなかっただけなんです。河そのものの本質...続きを読むと日本人の自分とを対決させなければ、この国に来た意味がなくなってしまうと思ったんだ。田中さん。あんたはどうします。河を無視して帰国しますか。」
三章仕立てですが、前半部を工藤と荒木トマスの類似、後半部を田中とサド侯爵の対比として読みました。 作中人物たちの葛藤が解消不可能であるだけに、バッドエンドであろうとわかっていながら、それでも救われてほしいという願いを込め、頁をめくりつづけました。「虚無に祈るような」と形容すれば良いのでしょうか...続きを読む、読者にこうした姿勢をとらせるのは、遠藤周作の作品に特徴的であるように思えます。 さらにいえば、この姿勢に、作中人物、あるいは作者自身が異教ーつまりはキリスト教、あえてここでは「異教」と記しますがーの洗礼を受けながら、自らの信仰と対峙しており、自分自身が祈る先には、偽りを隠せない信仰の前には、何者も存在しないのだということを半ば悟りながら、それでも何かはわからない、地に足のつかないものに救いを求め、いつまでたっても誰からも「よそ者」となってしまう姿が、オーバーラップしているようにも思えます。 「留学」と聞けば、一般的に華やかなイメージが想起されます。実際、作中人物も「留学」を目の当たりににするまで、それにあらゆる希望を見出していました。しかし、現実はどうでしょうか。作者は実体験を下地に、その偽らざる姿を描き、また問います。留学とは、かくも人を疲労の底へ、ゆっくりと、しかし確実に引きずり落とすのだと。それは一体いかなる理由からでしょうか。 工藤、荒木トマス、田中は、一見するところ、いずれも西洋に留学をしたという共通点以外は無縁といえます。生きる時代も、留学をした年齢も、留学目的も異なる。けれども、彼らは同じ結論に至っています。それはつまり、西洋と彼らの間にはいかなる紐帯もないということ。そこに影を落とすのは、永遠の暗闇であり、救いの光が照らすことはないのです。 彼らが根無し草であるのは、その土地やその文化に対してというだけでなく、彼ら自身の信条に対しても同様であり、意図してか意図せずしてか、ある種宿命的に、異教信仰や外国文学研究が今や彼らの自己同一性を担保する重大要素であるがために、この疎外感は尚一層深刻なのであり、そのために彼らの身は削られていくのです。(「宿命」は、作者の作品を解釈するキーワードとなりそうです。) この作品は絶対的なバッドエンドのようにも思えますが、田中は大体このようなこともいいます。日本人がサドを研究する必然性はなくとも、サド所縁の地に赴けば、その地を舐めまわしたい衝動に駆られる。これだけは確かであり、またサドの屋敷に残る赤色の塗料をみて、こうも思うのです。 「しかし、俺に、この消すことのできぬ朱色はあるだろうか。決して亡びることのない朱の一点がほしい」。 彼は絶望しながら、やはりこうして希望するのです。 サドの城を前にして、男がひとり。降りしきる真っ白な雪の一点を溶かす、真っ赤な血。トロカデロをまわる向坂の横顔とともに、非常に印象に残った情景です。 (向坂は、「我々は別の血液型の人から血はもらえない」といっています。田中が日本に残した息子を恋しく思っても、妻のことを忘れてしまうように、「血」もまた、作者の中心課題であるようです。) 理解というのは、理解可能なことを理解するという意味ではないはずです。それはもう理解されたものであり、理解の対象とはなりません。まったく異質なもの、理解不可能なものを理解してこそ、理解となるならば、読者もまた、作者とともに祈るでしょう。彼らがどんなに無様であっても、その血が「朱の一点」であったら、と。
経験しているからなのかな、人の葛藤を描くのが上手いなあと思いました。昇進に悩む社会人とか勉学に励む学生とか、共感できる方は多いのではないかと思った。
自分も留学している身だが、共感することが非常に多い。留学考えている人はネットにある留学体験談じゃなくてこの本を読んだ方が良い。
短編集と知らずに読んでしまい、一章と二章の繋がりを何とか探そうとしてしまった。。 三章で独立した短編とわかり読み続けたけど、三章長い!!! とはいえ、遠藤さんらしい男の暗くイジイジした表現が素晴らしいです(笑 さいごの『爾もまた』の一言。。 綺麗な締めです
フランスに留学した人物を主人公とした作品三編で構成されています。 第一章は、キリスト教文学について学ぶためにフランスにやってきた工藤という青年が主人公の短編です。彼は、日本でのキリスト教布教の希望を疑うことがなく、日本についての想像力を欠いた善意を示すフランスの敬虔な信者たちに、理解されることのな...続きを読むい徒労を感じます。 第二章は、17世紀にヨーロッパにわたり、日本での布教活動を託された荒木トマスという人物をめぐる短編です。著者は、信仰を捨て去ったことでキリスト教の立場においては顧みられることのなかったこの人物にスポット・ライトをあてて、日本に帰国した彼がいったいどのような悩みに直面したのかということについて想像力を働かせています。 第三章は、サドの研究のためにパリにやってきた、大学講師の田中が主人公の長編小説です。彼は、サドの研究者であるルビイから、「なぜ東洋人のあんたが、サドを勉強するのかわからん」という問いを投げかけられ、研究者にとって外国文学がいったいどのような意味をもつのだろうかという悩みにとりつかれます。さらに、後輩の研究者である菅沼が彼を追ってフランスにやってきたことで、みずからの出世の道が閉ざされたことを知り、パリの日本人仲間たちとのかかわりを避けつづけたことで、彼の運命はますます暗い方向へと向かっていくことになります。 キリスト教を中心とするヨーロッパ文化を学ぶ日本人が、彼我の文化のちがいに直面して思い悩むようすが一貫してえがかれており、このテーマについての著者の持続的な関心のありかがうかがえるように思います。
当時の留学の苦悩と孤独感が苦しく、重い。 この救いの無さ、読後虚脱感の最高峰は『侍』だと思うが、他の名作の影に隠れた良い作品だと思う。
重く長い。 工藤も田中も遠藤周作自身なのだなと思った。 彼らの中には必ず劣等感があり、その部分こそが私たちを同じ人間なのだと狂わせる。 誰も同じなわけないのに。 我々はいつどこの場所に生きても、思い悩み、一点の消えない朱色を追い求めるんだ、と思った。
三部作。最後の話やたら長い。本作も他の作品と同じく西洋文化キリスト教と日本の文化との対峙、本質的な相違について描かれている。 主人公はもちろん遠藤周作ご本人がモデルなんだけど、しかし苦しい。なんでこんなに苦しまなあかんのか。時代ゆえなんか、芸術とか文学を志す者ゆえなんか、とにかく苦しい。文学者として...続きを読む、日本人して、クリスチャンとして、男として、人間としてと、いろんな、○○としての自分がのしかかってきて、押しつぶされている。重い。今時「私らしく」とかいう一言で済まされそうなもんなのに。重い重い。でもそんなものに縛られて必死に逃れようとしてまた何かに引っかかりけつまずき、劣等感を抱いたりプライドを傷つけられたり卑屈になったり、苦しんで苦しんで葛藤して、まさに「身を切り肉を切り」言葉を生み出して何かを伝えてきたのが日本の文士(この言い方は出てこないんやけど)なのかなと思える。私はサドよりそっちをベロベロ舐めたいわ。 サドのことは全然知らんが、主人公が記したサドに関する考察はおもしろかった。しかし、サドの本が読みたいとはあんまり思わん。
レビューをもっと見る
新刊やセール情報をお知らせします。
留学
新刊情報をお知らせします。
遠藤周作
フォロー機能について
「新潮文庫」の最新刊一覧へ
「小説」無料一覧へ
「小説」ランキングの一覧へ
深い河 新装版
海と毒薬(新潮文庫)
反逆(上)
沈黙
試し読み
哀歌
愛情セミナー
愛と人生をめぐる断想
愛の砂漠
「遠藤周作」のこれもおすすめ一覧へ
一覧 >>
▲留学 ページトップヘ