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被災・疎開の極限状況から敗戦という未曽有の経験の中で、我が身を燃焼させつつ書きのこした後期作品16編。太宰最後の境地をかいま見させる未完の絶筆「グッド・バイ」をはじめ、時代の転換に触発された痛切なる告白「苦悩の年鑑」「十五年間」、戦前戦中と毫も変らない戦後の現実、どうにもならぬ日本人への絶望を吐露した2戯曲「冬の花火」「春の枯葉」ほか「饗応夫人」「眉山」など。(解説・奥野健男)
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Posted by ブクログ
坂口安吾、織田作之助との対談で乞食女と恋愛したいと言っていたが、グッドバイはそれを表現したのではないかと思う。続きが読みたいなあ。
タイトルからは想像できない、ポップな作品。 主人公の田島は過去の愛人との関係を清算するために、絶世の美女に仮面夫婦となってもらう話。 未完なのが惜しまれる。完成していたらコメディ映画として作品化されていただろうなと思う。太宰作品としては考えずに読める作品。
続きが読みたい!となる作品です。 愛人と入水自殺した太宰の最後の作品であり、「愛人との別れ方!」をテーマに描かれた作品ですが、暗い感じはなく、とてもリアルで、作品が未完に終わったことがとても残念です。
戦中、戦後を生きた人々の苦悩が伝わってきた。全体的に、否定的で、ニヒルな雰囲気が漂っており、読んでいてブルーな気分になったけれど、独特のユーモアと描写の巧みさのお陰で、本をめくる手が止まらなかった。人間の本質を描くことに、臆することなく向き合い、現代にも通ずる価値観を提示している作品達だった。
戦時中から戦後に移って、変わったかと思えばそうではない、そんな自分の中の期待の裏切りを登場人物の赤裸々な感情を通して描いているような作品。人のあり方が大人らしく、自分もいずれそんな世の中をそんなふうに過ごしていくのかなぁと少し悲しくもなった。
この作品を読んで初めて、太宰治はラブコメのライトノベル作家だと思った。 未完であることが残念でならないけれど、先の展開や結末を想像するのも楽しい。大好きな作品。
すげぇな よくも人間の根底を表す美しくて、醜い文章を書けるな 薄明 苦悩の年鑑 十五年間 たずねびと 男女同権 冬の花火 春の枯葉 メリイクリスマス フォスフォレッセンス 朝 饗応夫人 美男子と煙草 眉山 女類 渡り鳥 グッド・バイ
「薄明」 現実主義でポジティブ志向 そういう人であるがゆえに周りからはいつも 「本気か冗談かわからない」 などと言われてしまう それでひそかに傷ついたとしてもポジティブ その明るさが滅びの姿であろうか 「苦悩の年鑑」 軽薄なポーズでくそ真面目 そういう人であるがゆえに周りからはいつも 「本気か冗談...続きを読むかわからない」 などと言われてしまうんだろう それで世をひねて、純粋なものに憧れる 実際、本気か冗談かわからない 「十五年間」 彼はサロン文化を軽蔑していた そこでは誰もが空気に敏感であった 異物を探してこれを叩き、連帯感を強めていた 挙句が開戦論である しかしそれはそれとして、彼は戦争に乗った 親を見捨てることのできない子供のような心境だった 子供よりも親が大事 恐ろしいことに、これを読んだあとでは 三島なぞより太宰のほうが ずっとまっとうな愛国者と思えてしまうのだった 「たずねびと」 他人からの好意に対して感じる屈辱は 一種の幼児性であるらしい そんな、居直った乞食みたいな性根丸出しで 純粋な若き乙女を引っかけようとする 「男女同権」 戦争が終わって、男女同権ということになった それはむしろ女性解放の意味合いでそう言われたのだったが 世の中には、女にいじめられてばかりの男というのもいて ここぞとばかりに積年の恨みをぶちまけはじめた その後どうなったかはわからない 「冬の花火」 戦争で夫を失った未亡人のなかには 生きるために貞節を捨てなければならない者もあった そのやりきれなさから逃れるためには 旧時代の偶像を否定しなければならなかった 「春の枯葉」 戦争の終わりにともない、個人主義が復権しつつあった 旧時代にとらわれた人々を傷つけることで 自己確立しようとする者もあった 「メリイクリスマス」 終戦から一年すぎて帰ってきた東京は普通だった しかしふいに、昔の女が疎開先で死んだと聞かされて しんみりしちゃったりした 死んだ女の娘を誘って屋台に入ると 先客のおじさんが通りすがりのアメリカ兵に おのぼりさんみたいな態度をとって 呆れられていた 「フォスフォレッスセンス」 現実の世界と、睡眠中に見る夢の世界は 異なる世界でありながら、確実な繋がりをもっている 彼はそういう信念、あるいは錯覚でもって 夢のなかの願望を現実化させていく こういった考え方はやがて「シュレーディンガーの猫」のように 生と死の区別を曖昧化させるだろう 本気か冗談かわからないけれど 作者の精神バランスが崩れていってるようでもある 「朝」 男と女が舞台に上がったとき 必ず愛し合わなければならないというきまりはないが 舞台が暗転した瞬間、そこでなにが行われるかは わかったもんじゃないんだ 彼はそれを恐れている 永遠の暗闇となれば、真実が露呈することもないけれど 「饗応夫人」 戦争で夫を失くした未亡人が 友人たちにたかられて 屋敷をほとんど占拠されたあげくに 身体を壊してしまうのだけど それでも「饗応」をやめようとしない 戦後、そんなふうに滅びてゆくことを選んだ人も いたのかもしれない 「美男子と煙草」 戦争を生き延びた無責任な文士たちの代表とさせられ 上野の浮浪児を取材する太宰治 浮浪者となりはてた自らの姿を想像して戦慄するも 実際の浮浪児たちには明るいエールを送り また同行した記者たちに対しては どうしてもおどけたポーズをとってしまう 「眉山」 いるときは嫌なやつと思っていても いなくなったら良いやつだったように印象が変わってしまう それを知ってて自殺未遂を繰り返していたふしが 太宰にはあった 「女類」 太宰治が強烈なミソジニーを抱えていたことは 「男女同権」なんか読んでもなんとなく察せられるのだけど 一方ではやはり女好きであり 女の前で良い人ぶりたい気持ちが強くあった この二面性、この二人の太宰が共犯となり 完全犯罪を作り上げたようにも思える 「渡り鳥」 葱しょった鴨を探して夜の街を歩く 羽毛みたいに心は軽いが、空なんて飛べやしない 空虚が重くてゲップも出る 千の嫌悪が己を作り上げるとしても そのなかにひとつ混じった自己嫌悪のおかげで台無しだ つまりそれが平等な世の中なんだろう 「グッド・バイ」 十人近くもの愛人たちと関係を精算すべく 昔なじみの猛烈女を「女房」役にして 街中の巡礼を計画する なぜそんなことをするのかといえば 結局はかっこつけなんだ なりふり構わず降伏勧告を受け入れた日本で まだかっこつける余裕 それが彼の命取りかもしれない 作者が死んで未完に終わった作品である
愛人との別れのセリフが「グッド・バイ」だってぇ。キザなやつ!!!!そんな色男気取ったいけ好かない男が主人公のこの作品。ちょっと今までの太宰作品とは毛色が違う。私は音読して読んでいるのだが、太宰史上一番読みやすかった。そして青空文庫で読んだのでこの作品が未完なのを知らなかったのだ。さあこれから!と興が...続きを読む乗ってきたところでブッツリ終了。息を吸ったまましばし呆然。文章もセリフもテンポが良く、主人公のキャラもヒロイン?のキャラもぶっ飛んでいてとても面白かったのに。あああ残念。
戯曲もおもしろかった 現代でもおもしろい、表現や着地がすごい グッド•バイも完結してほしかった あの時代で書くことへの執念がすごい
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