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物語 フィンランドの歴史 北欧先進国「バルト海の乙女」の800年
古来よりスウェーデン王国下にあったフィンランド。19世紀にロシア帝国下、「大公国」となり広範囲な自治を獲得。ロシア革命、大規模な内戦を経て独立する。第2次世界大戦では、ソ連に侵略され領土割譲。その後ナチ・ドイツに接近し、近親民族の「解放」を唱えソ連に侵攻するが敗退。戦後は巨大な隣国を意識した中立政策を採りつつ、教育、福祉、デザイン、IT産業などで、特異な先進国となった。本書は、「森と湖の国」の苦闘と成功を描く。 目次 序章 フィンランド人の起源―「アジア系」という神話 第1章 スウェーデン王国の辺境―13世紀~19世紀初頭 第2章 ロシア帝国下の「大公国」―19世紀~第一次世界大戦 第3章 揺れる独立国家フィンランド―内戦~1930年代 第4章 二度の対ソ連戦争―第二次世界大戦下、揺れる小国 第5章 苦境下の「中立国」という選択―休戦~東西冷戦期 第6章 西ヨーロッパへの「接近」―ソ連崩壊~21世紀 終章 21世紀、フィンランドという価値 -
チョコレートの世界史 近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石
カカオは原産地の中米では飲み物であると同時に薬品であり、貨幣にもなった。ヨーロッパに到来したときも、この珍貴な実の食用について激論が交わされたが、一九世紀にはココアパウダーや固形チョコレートが発明・改良され、爆発的に普及する。イギリスの小さな食料品店だったロウントリー家もまた、近代的なチョコレート工場を作り、キットカットを開発、世界に販路を拡大するが…。ヨーロッパ近代を支えたお菓子の通史。 -
カラー版イタリア・ロマネスクへの旅
華やかなルネサンスの舞台として語られることの多いイタリアは、豊饒なロマネスクの地でもある。白い大理石に包まれたピサやルッカ、黄金のモザイクが輝くムラーノ、ローマ帝国と中世のバシリカが重層するミラノなど、どの都市もロマネスク芸術と共に生き、その歴史を重ねてきた。イタリアの各地方に残る、二四の個性豊かなロマネスク教会を巡る。 -
知的好奇心 改版
人は報酬や罰がなければ学ばない存在なのか――。 本書は、この通説に心理学から異を唱え、人間には知的好奇心が備わっていることを明らかにする。 多くの実験から、人の持つ知的好奇心がどのように学習や問題解決を促すのかを解説。 画一的な教育や報酬に依存した学習の限界を指摘する。 子どもを豊かにする教育のあり方から、大人の知的活動まで、人間の学ぶ意欲の本質を探究した名著を改版。 毎日出版文化賞受賞。 はしがき 第一章 怠けものの心理学 動機づけとは何か 動機づけの伝統的理論 ミラーの実験 怠けものを活動させるには 人間の動機づけの特殊性 人間観の重要性 第二章 情報への飢え 安楽は楽ならず 情報への飢え サルも情報を求める 無気力と思考の混乱 ホスピタリズム 多様な刺激の重要性 情報は好奇心の「栄養」 第三章 探索と回避 見慣れない物に対する怖れ 「不可解」な事物は怖れをひきおこす 新しい物への反感と保守主義 新しい怠けもの説への疑問 新奇な事物の探索 質問による情報収集 応答性と愛着の形成 第四章 知的好奇心と向上心 二つの知的好奇心 楽しい経験としての学習 好奇心と向上心 社会的相互交渉 第五章 未成熟の効用 遊びの機能 留巣性と離巣性 いちばんたよりない人間の赤ちゃん 生まれつきの行動のしくみ 遺伝的なしくみにかわる好奇心・向上心 向社会的動機づけと好奇心・向上心 第六章 幼児の知的教育 遊びと勉強は対立するか 幼児における旺盛な好奇心 トーキング・タイプライターによる学習 楽しい学習に必要な条件 第七章 知的好奇心を生かす授業 学習に内在する喜び 観察への興味を高める 知的好奇心をひきおこすには 知的好奇心を充足させるには 第八章 学習者中心の教育 授業のイメージ・チェンジ 学習者のイニシャティブの尊重を 学習者間の能動的相互交渉を 「参加者中心」のセミナー 教育改革をすすめる視点 第九章 「怠けもの」の社会的基盤 怠けものの心理学の基盤 疎外された労働 職人気質 疎外された教育 怠けものの心理学の弊害 第十章 擬似的内発性 疎外の進行と管理社会 「ものわかりのよい」管理者 生産性か人間らしさか 人間的個別化 人名解説/文献案内 -
小栗上野介 「逆賊」とされた開明派幕臣
電子版は本文中の写真を多数カラー写真に差し替えて掲載。 江戸幕府の末期を中枢で支えた幕臣、小栗上野介忠順。 日米修好通商条約の批准書交換のため渡米し、最新知識を貪欲に吸収した。 外国奉行、勘定奉行ほか要職を歴任し、行財政改革に辣腕を振るう。陸海軍の洋式化や横須賀製鉄所創設をはじめとする産業振興により、その後の近代化の礎を築いた。 戊辰戦争では薩長への徹底抗戦を唱えたが退けられ、上州の領地に隠退。新政府軍に捕縛され、斬首された。 幕府の命運に殉じた42年の生涯。 ■目次 はじめに 序章 旗本小栗家 旗本と役方・番方/安祥譜代の旗本/代々受け継がれる「又一」と「信国」/小栗家の知行地と墓所/祖父中川忠英/父小栗忠高/嘉永二年の鹿狩/近世・幕末の新潟/新潟の総人口の推移/新潟奉行小栗忠高 第一章 家督相続まで 小栗の誕生/小栗の武芸/結城啓之助の影響/安積塾と小栗家/安積艮斎の『洋外紀略』/蛮社の獄と安積艮斎/安積塾の門下生たち/播磨国林田藩主の娘と結婚/ペリー再来航とプチャーチン来日 第二章 万延遣米使節団 ハリスの来日と条約勅許問題/領事裁判権と協定関税制の事実/最恵国待遇・居留地・遊歩区域/使節団派遣の経緯/小栗の従者たち/使節団の出発と随行艦咸臨丸/井伊大老暗殺とアメリカの報道/サンフランシスコへ/メア・アイランドでの咸臨丸の修理/パナマ経由でワシントンへ/通貨問題の交渉/条約批准書交換後の通貨問題/ニューヨークへ/使節団の帰国/柴田剛中と使節団員の関わり/帰国後の小栗が取り組んだ政策/小栗愛用のアラビア馬/ヒュースケン暗殺事件 第三章 ロシア軍艦対馬占拠事件 対馬事件とは/亀田丸の沿海州調査/イギリス軍艦による対馬測量/長崎奉行所の対応/江戸でのイギリス船対応策/イギリスとロシアの思惑/小栗による「見廻」/英露と日本の外交戦の結末 第四章 文久・元治の政局 シーボルトと小栗/第一次東禅寺事件と小栗/第二次東善寺事件と御殿山の焼き討ち/生麦事件の処置に当たる/江戸南町奉行/小栗糾弾される/栗本鋤雲と小栗/幕府洋式陸軍と小栗/関口製造所・滝野川反射炉・火薬製造所を設立/フランス式を導入した小栗農兵 第五章 幕府洋式海軍の整備 幕府海軍と長崎製鉄所/文久の幕政改革と海軍/小栗による海軍改革/横浜製鉄所とその周辺機能/横浜での海軍伝習/横須賀製鉄所設立の背景/使節団のフランス派遣を決定/横須賀製鉄所のスチームハンマー/横須賀製鉄所のドック/慶応の改革と小栗 第六章 戊辰戦争と小栗の死 武州世直し一揆と小栗/江戸薩摩藩邸の焼き討ち事件/主戦か恭順か/小栗、幕府から離れる/小栗騒動と暴徒の鎮圧/平穏な暮らし/江戸無血開城を知る/幕府陸海軍による嘆願/迫りくる東征軍/罪なくして斬られる/斬首後の届と小栗の首級/小栗夫人ら会津へ逃れる/荒川家に伝わる小栗家のこと/現在残る「小栗日記」 第七章 日本の近代化の礎 豪商高井鴻山/日本初の株式会社、兵庫商社/築地ホテル館/その他の近代化構想/富岡製糸場の建設/小栗を顕彰した人たち/蝦夷地開拓計画 終章 小栗が遺したもの あとがき 主要参考文献 小栗上野介略年譜 -
日本語の書き言葉はどう変わってきたか せめぎ合う漢字・ひらがな・カタカナ
「お値打ちセール20%OFF!」 日本語では漢字・ひらがな・カタカナ、それにローマ字まで同じ文に共存しているが、これほど複雑な文字体系は世界に類を見ない。 漢字からひらがなやカタカナが生まれたが、それらは独自に発展してきた。 やがて藤原定家がひらがな文に漢字を所々に混ぜ、仏教説話で漢字カタカナ交じり文が生まれた。 今ではひらがな文が圧倒的に優勢となった。 文字が生んだ多様で高度な文化社会の変遷を辿る。 ■□■目次■□■ はじめに 第一章 漢文と漢字 第一節 無文字社会からの離脱 五世紀の『宋書』「倭国伝」/五世紀日本の文字資料/倭王武(雄略天皇)/文字による支配権力の誇示/仏教と倭人の読み書き能力の向上 第二節 律令国家と公文書行政 文字依存社会への急激な移行/戸籍と計帳による住民の掌握/はじめての日本語記載/難波宮跡万葉仮名木簡/ウタを記載する 第二章 漢字を使った日本語転記 第一節 和歌と宣命――日本語を記すということ 和歌資料の重要性/国家的要請から生まれた宣命 第二節 祝詞と宣命の先後関係 祝詞の古さについて/律令宣命の新しさ 第三節 万葉仮名の森からの解放 万葉集儀礼歌の行く末/万葉仮名の森を抜ける 第三章 ひらがなのあゆみ 第一節 ひらがな文と文芸 ひらがなの成立/平安時代の古写本の体裁/古今和歌集 第二節 藤原定家の表記改革 読めなくなった王朝文芸/定家による歌文の表記改革/古典文芸の表記の変遷 第三節 平安末期の日本語の歴史的変化 古代語の音変化/古代語の文法変化 第四節 定家本『土佐日記』の漢字使用 『土佐日記』の特異性/定家写本の新たな資料価値 第五節 貫之自筆本と定家本の和歌の漢字使用の違い 定家本に注目しよう/読書習慣の変化 第六節 和漢混淆文に吸収されたひらがな文 和漢混淆文とは何か/文芸ジャンル「和漢混淆文」の成立 第四章 近世ひらがな文の展開 第一節 戦国時代分国法の文体 中世東国の公文書/伊達家「塵芥集」の文体 第二節 江戸時代の出版文化と書き言葉 十七世紀の識字層の拡大/契沖の上代研究と歴史的仮名遣い/仮名遣いを呼び込んだ江戸時代のひらがな文 第三節 明治普通文と言文一致運動の葛藤 近代国家にふさわしい文体とは何か/東京語の成立 第四節 言文一致体の矛盾 近代社会を揺るがせた仮名遣い改定問題/政治問題化した仮名遣い 第五章 カタカナのあゆみ 第一節 漢文訓読とカタカナ 平安時代を拓いたひらがなとカタカナ/カタカナの起源 第二節 カタカナの成立とカタカナ文 漢文訓読の開始/漢字に付着したカタカナ/王朝文語で書かれたカタカナ交じり文/漢字カタカナ交じり文出現の理由/漢字カタカナ交じり文の資源としての漢文訓読語/説話文学のカタカナ交じり文 第三節 室町時代のカタカナ交じり文 口語体の漢字カタカナ交じり文/近世古典注釈のカタカナ口語文 第六章 実用的カタカナ文の展開 第一節 近世の実用的カタカナ文――明治普通文への資源的準備 漢字カタカナ交じり文の性格/知的実用文としての展開/近代公文書書式への準備 第二節 明治政府の公文書書式――明治普通文 五箇条の御誓文/カタカナ交じりの公文書 第三節 カタカナ・ひらがな・漢字・ローマ字の共存――大量消費社会と自然科学 同じ文脈での異種文字の共存/ひらがな文の拡大/ワープロ等の書き言葉への影響 終章 日本語の書き言葉の不思議 日本語の無文字体質/ひらがなの消極性/漢字の補助字体としてのカタカナ/カタカナ文成立の契機/明治普通文の有用性/言文一致運動/仮名遣い改定問題/知的文体におけるひらがな文の優位性/慎ましい文字・ひらがなの勝利 -
日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較
国や地域別の幸福度ランキングが、しばしば注目を集める。だが、そもそも幸せの基準は文化によって異なる事実を文化心理学が実証した。一例として幸福感は、欧米では個人的な達成感、日本では対人関係と関連する。本書は国際比較を通し、日本社会における幸せの特徴を探る。また、個人の一時的な感情にとどまらず、地域コミュニティ、職場、学校などの現場における持続的な幸福(ウェルビーイング)についても考える。 目 次 第1章 文化心理学とは何か 文化とは何か/文化心理学とは/「当たり前」を疑う/心理学における認知革命/人類学の知見/比較するということ/文化的自己観/選択をめぐる文化差/文化的自己観と自己認識/認知と文化/分析的思考と包括的思考/文化学習が起こるプロセス/教育やメディアが与える影響 第2章 幸福の国際比較 幸せの統計学/幸福というあいまいな概念を測定する方法/ヘドニアとユーダイモニア/幸福の国際比較/平均値の比較、ランクづけの問題点/幸福の意味の歴史的変遷/獲得的幸福と協調的幸福/「幸せすぎると怖い」?/幸福を長続きさせる戦略 第3章 対人関係、集団意識、自己 スモールワールド現象とは何か/個人を超えた集団レベルの資源/結束型と橋渡し型/つながりが多ければ多いほど良いのか?/友達とはどのような存在か/友達を選ぶ国・アメリカ/人付き合いの日米比較/評価懸念と同調圧力/言葉遣いは自己意識にどう影響するか/どんなサポートが幸福感を高めるか/他者理解にひそむ文化差 第4章 主観的なウェルビーイングをどう測定するか そもそもウェルビーイングとは/経済指標中心の限界/幸福・生活満足・生活の質/協調的幸福/主観的ウェルビーイングをどう用いるか/比較文化的視点から見た課題/測定テクノロジーの進化/国際的な調査・政策枠組みに見る指標/国内の政府機関の調査/指標活用の展望/場のウェルビーイングを動的に把握する時代へ 第5章 幸福をはぐくむ地域コミュニティ 個人の幸福と制度の関係/場のウェルビーイングとは何か/地域コミュニティのウェルビーイング/場所の影響か、個人の影響か/集合活動と相互調整/地域の社会関係資本/地域の幸福感を測定するプロジェクト/自殺率の高い町、低い町/愛着感から開放性へ/幸福、信頼、向社会性の循環/社会的ネットワークの分析から見えること/アートの島が住民にもたらしたもの 第6章 働く人が幸福な職場とは職場のウェルビーイング/企業の組織風土の4類型/職場の協調性の効果/「保険」としての協調性/2階建てモデルで日本社会を読み解く/組織の設計/日本で求められるリーダーシップ像とは/雇用の流動性が社員に与える影響/採用文化の日本的な特徴/なぜ日本の職場は関係性づくりに消極的なのか/自然とつながりが生まれる「場」をつくるには 第7章 教育現場のウェルビーイング ウェルビーイングは新たなキーワードなのか/これまでの活動に新たな意味づけを/多様なルートをつくり出す/PISAによる国際比較/第4期教育振興基本計画がめざすもの/全国学力・学習状況調査の結果から/教員のウェルビーイング/ハブとしての社会教育主事 第8章 これからの時代のウェルビーイング 価値観はどのように生まれ、受け継がれるのか/グローバル化による価値観の変化/日本は個人主義化しているのか/日米それぞれの個人主義観/ひきこもりが増えた理由/自己肯定感の低さは何をもたらすか/「場の正義」から脱出する/「裸の王様」に見る多元的無知/どのように主体性をはぐくむか/開かれた協調性を -
大田昌秀―沖縄の苦悶を体現した学者政治家
沖縄戦で鉄血勤皇隊として死線を彷徨い、戦後は早稲田大学、米国に留学、琉球大学で沖縄戦・沖縄学の教鞭を執った大田昌秀。米統治下から論壇で活躍し、1990年、知事当選後は米軍基地問題と対峙する。 冷戦終結後の新たな日米関係が求められる中、米兵による少女暴行事件が勃発。高揚する民意と日本政府との間で解決を模索するが、3度目の知事選で敗北する。 100冊以上の自著で沖縄の苦悩を記し、沖縄現代史と共に歩んだ生涯。 はじめに 第1章 沖縄戦という原点 1 久米島の秀才 2 沖縄師範学校への進学 3 鉄血勤皇隊としての戦争体験 第2章 本土、米国への留学――1950〜56年 1 収容所から沖縄文教学校へ 2 早稲田大学での「日留」 本土の解放感 3 「米留」の2年間 強烈な民主主義体験 第3章 日本復帰論高揚のなかで――琉球大学時代① 1 沖縄人意識の探究 「事大主義」問題 2 日本国憲法下への復帰支持 3 復帰論の思想的位置 「反復帰論」、進歩派との距離 第4章 復帰後、沖縄学の批判的継承――琉球大学時代② 1 アイデンティティの模索 復帰直後の課題 2 戦後の沖縄学 沖縄戦・占領史の追究 3 「積極的平和」への共鳴 第5章 沖縄県知事の第一期――1990〜93年 1 出馬の決断と勝利 少数与党の議会運営 2 軍用地強制使用問題と三次振計 3 平和行政の展開 戦後50周年への拠点づくり 第6章 沖縄からの異議申し立て――1994〜96年 1 戦後五〇年目の「転換」を目指して 2 少女暴行事件と代理署名拒否 3 日本政府との攻防 基地返還の具体化構想 4 普天間飛行場の返還合意と苦渋の決断 第7章 大田県政の挫折――1996〜98年 1 橋本首相との関係 官邸主導の経済振興へ 2 失速する県政 吉元副知事の再任否決 3 普天間移設問題の迷走 4 橋本首相との断絶、知事選敗北 第8章 晩年と死 1 再び研究活動へ 2 参議院議員時代 問い続けた「沖縄とは何か」 3 沖縄独立論への傾斜 おわりに あとがき/主要参考文献 大田昌秀 略年譜 -
安田講堂1968-1969
一九六九年一月、全共闘と機動隊との間で東大安田講堂の攻防戦が繰り広げられた。その記憶はいまもなお鮮烈である。青年たちはなぜ戦ったのだろうか。必至の敗北とその後の人生における不利益を覚悟して、なぜ彼らは最後まで安田講堂に留まったのか。何を求め、伝え、残そうとしたのか。本書は「本郷学生隊長」として安田講堂に立てこもった当事者によって、三七年を経て、はじめて語られる証言である。 -
カラー版 トレッキングinヒマラヤ
「定年記念にヒマラヤのトレッキングに行こうよ」。妻のひとことがきっかけで、かつてヒマラヤ登山を夢みた夫婦はネパールへと向かう。数々の名峰を眺めながら歩む「エベレスト街道」をはじめ、アンナプルナやダウラギリを望む峠や谷など、特色あるトレッキング・コースを旅する。そこでは、花々の群落やチベット仏教との出あい、ヒマラヤ山中の人たちとの交流が待っていた。 -
カラー版 地中海都市周遊
散策が楽しい路地の迷宮、居心地のよいカフェ。地上の楽園を再現したパティオ、人びとの情熱を今に伝えるモスクやカテドラル。地中海都市は共通する魅力を持つ。キリスト教文化とイスラムが出会うこの地では、古来、双方が交わり、歴史に醸造された懐の深い文化が花開いた。イタリア、スペイン、モロッコ、シリアの美しい町々へ、この地を愛してやまない二人が誘う。 -
古文書返却の旅 改版 戦後史学史の一齣
日本には現在もなお、無尽蔵と言える古文書が未発見・未調査のまま眠っている。 戦後の混乱期に、漁村文書を収集・整理し、資料館設立を夢見る壮大な計画があった。 全国から大量の文書が借用されたものの、しかし、事業は打ち切りとなってしまう。 後始末を託された著者は、四〇年の歳月をかけ、調査・返却を果たすが、その過程で、自らの民衆観・歴史観に大きな変更を迫られる。 戦後歴史学を牽引した泰斗による史学史の貴重な一齣。 1999年刊行の名著を改版。 目次 まえがき 第一章 挫折した壮大な夢 第二章 朝鮮半島の近さと遠さ――対馬 第三章 海夫と湖の世界――霞ケ浦・北浦 第四章 海の領主――二神家と二神島 第五章 奥能登と時国家の調査 第六章 奥能登と時国家から学び得たこと 第七章 阪神大震災で消えた小山家文書――紀州 第八章 陸前への旅――気仙沼・唐桑 第九章 阿部善雄氏の足跡 第十章 佐渡と若狭の海村文書 第十一章 禍が転じて福に――備中真鍋島 第十二章 返却の旅の終わり――出雲・徳島・中央水産研究所 あとがき -
ローマ帝国とアフリカ カルタゴ滅亡からイスラーム台頭までの800年史
電子版は本文中の写真をすべてカラー写真に差し替えて掲載。 北アフリカを本拠とした強国カルタゴは、イタリア半島を統一した新興国ローマと争い、敗れて滅亡した。 アフリカは属州とされたが、拡大する帝国の片隅で埋没したわけではない。穀倉地帯として経済的繁栄を遂げ、政治的影響力を強めて元老院議員を輩出した。二世紀末には初のアフリカ出身皇帝セプティミウス・セウェルスが登場する。 「辺境」はローマ本国をどう変えたのか。地中海を挟む対岸から見た、新しいローマ帝国像。 ■本書の目次 はしがき 序章 カルタゴの滅亡と北アフリカの人々 ポエニ戦争とカルタゴの滅亡/カルタゴ滅亡とその伝説化/現在のカルタゴ/北アフリカの人々/歴史は勝者によって書かれる、のか? 第一章 共和政期の属州アフリカ ローマ支配の始まり/共和政期の「ローマ帝国」/ガイウス・グラックスとカルタゴ再建の試み/前一一一年の農地法/「ローマではすべてが金で買える」/ユグルタ戦争とマリウスの軍制改革/サルスティウスの歴史の書き方/ヌミディア王とローマ/ユグルタ戦争後のヌミディアとマウレタニア/ヌミディア王ユバ一世とカエサル/「ウティカのカトー」/カエサルによる戦後処理 第二章 カルタゴ再建とマウレタニア王国の興亡 オクタウィアヌスの登場/元首政の成立と退役兵問題/カルタゴ再建/帝室解放奴隷の活躍/ビュルサの丘の祭壇/カルタゴ植民市の周辺領域/入植者と先住民との土地分割/トゥッガにおける先住民と入植者/タクファリナスの反乱/戦争か、盗賊か?/『年代記』の史料的特色/マウレタニア王国のヘレニズム文化/プトレマイオス朝の末裔として/後継者プトレマイオス王とその死/マウレタニアの属州化 第三章 属州民の見たローマ帝国 ローマ支配の拡大/穀倉としての北アフリカ/大土地所有の拡大とネロの蛮行/転換期としてのフラウィウス朝?/「ローマ化」とは何か/トラヤヌス帝の都市建設/アフリカ属州総督の不正/「人類が最も幸福だった時代」の属州社会/シミットゥスの橋/ハドリアヌス帝のアフリカ巡幸/ハドリアヌス帝の演説にみる兵士たち/皇帝領の運営規定/皇帝領の小作人たち/ウティナのモザイクにみる人々の暮らし/マルクス・アウレリウス帝とローマ市民権 第四章 アフリカ系皇帝の時代 セプティミウス・セウェルス帝の登場/北アフリカのローマ化と元老院の変容/パルティア遠征と凱旋門/カルタゴ都市領域の再編/カルタゴのローマ人たち/レプティス・マグナへの帰郷/支配の南方への拡大/皇帝の死とエチオピア人/「記憶の断罪」/アントニヌス勅法/騎士身分皇帝マクリヌス/二三八年のアフリカ反乱/ローマへの愛/テュスドゥルス・モザイクにみるローマとアフリカ/三世紀は危機だったのか? 第五章 アフリカ教会とラテン語のキリスト教 キリスト教のアフリカ伝来/キリスト教とラテン語/テルトゥリアヌスからキュプリアヌスへ/デキウス帝とウァレリアヌス帝の迫害/アルノビウスとサトゥルヌス信仰/ディオクレティアヌス治世の迫害とラクタンティウス/ドナトゥス派問題/キルクムケリオーネスと四世紀の農村社会/アウグスティヌスの『告白』/アウグスティヌスとアフリカ教会/アフリカ人の誕生とローマ帝国 第六章 古代末期のローマ人たち ヴァンダル人の侵入と古代の終わり?/宮廷の権力争いと北アフリカ/ギルドの反乱と食糧供給/北アフリカにおけるローマ支配の自壊/ヴァンダル王国の成立と「西ローマ帝国」の滅亡/ヴァンダル王国支配下のアフリカ農村/アリウス派とカトリック教会/東から来たローマ人/マウリ人とローマ人/ビザンツ支配下のアフリカ諸都市/カルタゴとコンスタンティノープル/イスラーム支配の拡大 終章 アフリカから見たローマ帝国 あとがき 邦語参考文献 写真出典 -
カナダ―資源・ハイテク・移民が拓く未来の「準超大国」
留学・移住先として日本での人気は高いが、実情は知られていないカナダ。 食糧やエネルギー豊かな資源大国、ノーベル賞学者を育んだAIや量子技術の開発国、地球温暖化対策の先進国、そして移民立国など多様な側面を持つ国の光と影を紹介。 「アメリカの51番目の州」との揶揄もあるが、自由・民主主義・人権重視をわが国と共有する外交パートナーとして存在感を高めている。 未来の「準超大国」の可能性と課題とは? はじめに――知られざる未来の「準超大国」の実力 序 章 カナダ――50年余の歩み 第一章 資源大国の実力―食料からエネルギー︑鉱物まで 1自給率230%を誇る世界の食料庫 2エネルギー――国家存続の核心 3重要鉱物―温暖化と地政学の交差点 コラム① 恐竜と石炭と古生物と 第二章 知られざるハイテク先進国―AIから量子まで 1AI国家戦略 2量子を制する者が世界を制す 3最先端技術をビジネスへ コラム② シルク・ドゥ・ソレイユ 第三章 移民立国の理想と現実 1移民国家カナダの誕生と発展 2現在の移民制度の概要 3「過剰な移民」という世論をめぐって コラム③ 柔道とカナダ 第四章 地球温暖化対策への挑戦と苦悩 1トルドー政権の取り組み 2グリーン・エコノミー最前線 3地球温暖化対策をめぐる国内の難題 コラム④ ジョニ・ミッチェルの音楽的冒険と予言 第五章 ミドルパワー外交の地平 1カナダ外交を読み解く3つの視点 2南の巨象・アメリカ合衆国 3インド太平洋戦略 コラム⑤ メープル・シロップ 終章 日加関係の「新しい時代」へ -
カラスはどれほど賢いか 都市鳥の適応能力
電子版は本文中の写真を多数カラー写真に差し替えて掲載。 都市の発展により多くの野生鳥が姿を消したが、一方では環境に適応することによって、積極的に都市に進出する鳥群が観察される。 その頂点に君臨するのがカラス軍団であり、いま都市にあってはカラスとヒトの知恵比べが、熾烈に進行中なのである。 本書は都市鳥研究会にあって長年、野鳥を観察研究してきた著者が、その成果を克明に報告するとともに、カラスに対する人間の愛憎半ばする感情をさまざまな文献に探る、カラス百科である。 ■□■目次■□■ 序章 野鳥にとって都市とは何か 第1章 銀座のカラスはカァーと鳴く 第2章 ヒートアイランドの夜 第3章 カラスを追跡する 第4章 都会派カラスの子育て法 第5章 街中のスカベンジャー 第6章 カラスの知恵袋 第7章 カラスの遊戯 第8章 カラスと人の交友 第9章 カラスと人の知恵比べ 第10章 カラスの博物学 -
サンゴとサンゴ礁のはなし 南の海のふしぎな生態系
多くの生物がそこに住み、互いに助け合って生きるサンゴの森。 エビ、ウニ、ナマコなど、さまざまな種類の生物が密接な協力関係のもとに暮らしている。 しかし多様性と共生がキー・ワードであったサンゴ礁が、危機に瀕している。 地球温暖化によって海水温が上昇し、共生を保てなくなったサンゴが死滅しつつあるのだ。 本書は、生物たちの絶妙な関係を紹介し、海を守るサンゴ礁のこれからを考える「自然の教室」である。 ■□■目次■□■ 第I部 教えて! サンゴ礁 1 サンゴに関するQ&A 2 サンゴ礁に関するQ&A) 第II部 もっと! サンゴ礁 1 褐虫藻との共生 2 褐虫藻をもつさまざまな生物 3 サンゴの進化 4 サンゴを棲家とする動物たち 5 魚たちの共生 6 危機のサンゴ礁 7 サンゴ礁の保全 -
漱石が見た物理学
漱石の生きた半世紀(1867-1916)は、X線、電子が発見され、量子論が誕生し、特殊相対性理論が発表されるなど、古典物理学から現代物理学へと移行する激動の時代であった。 理科が得意で、自らも建築家志望であった漱石は、寺田寅彦と科学談義を楽しみ、作品にも最新の話題が登場している。 本書は文学者漱石の旺盛な好奇心に従って、熱、光、量子、時間と空間について物理学発展のあとを辿り、乖離する文科と理科の交流を目指す。 ■□■目次■□■ 序章 漱石と物理学―文科と理科の交流 1章 古典物理学の完成―激動の嵐の前 2章 新しい自然観の台頭―19世紀から20世紀への転換 3章 量子仮説の提唱―人間からの離脱 4章 量子力学の誕生―極微の世界に向けて 5章 相対性理論の誕生―時空概念の変革 終章 再び漱石と物理学―文学の中の“自然法則” -
軍神 近代日本が生んだ「英雄」たちの軌跡
かつて「軍神」と呼ばれる存在があった。彼らは軍国主義的思潮の権化として意図的に生み出されたわけではない。日露戦争における廣瀬武夫少佐の例をみればわかる通り、戦争によって強まった日本人の一体感の中から、期せずして生み出されたのである。だが、昭和に入ると、日本人が共感できる軍神像は変化し、それは特攻作戦を精神的に支えるものとなる。本書は、軍神を鏡として戦前の日本社会の意識を照射する試みである。