読み始めた途端、あまりに面白くてマズイ!と思った。
早く先を読みたい。でも読みたくない。だって読んだら読み終わるじゃない。
この恍惚の時間を手放したくない。だから日に日に読むペースが落ちる始末。結局読み終えるまで3ヶ月を要しました。(馬鹿)
筆者はニホンザルやアイアイ研究の第一人者です。
さ
...続きを読むすが研究者。観察が細かい。よくぞここまで書き留めた。いや書き留め続けた。なんと0歳から6歳までの膨大な記録と、そして考察です。
「モリスの言うような無条件に『かわいい信号』があって、『幼児はその信号を備えているからかわいいのだ』というような動物行動学はエセである。」
「イヌは命令―服従型だが、サルは命令―欺瞞型だと思うようになった(中略)禁止で赤ん坊が育つことはない(中略)人間はサルの仲間だから、禁止されると裏をかく方法を探す」
「食卓のふちを伝い歩きしながら『あー』と赤ん坊が言う。新聞を読んでいた母親は、ほとんど無意識の様子で『あー』と答えた。聞いている私は驚く。それは、ニホンザルでは『鳴き交わし』と呼ばれている声のやりとりとそっくりだった。」
「孫娘は坐り込んで、紙をばらばらと扱いながら、『うらうらうらうら』と何事か話し始めている。『意識化だ』と私はとっさに思う。」
日常の些細な一コマが研究者の理性の目で輝き出す。
でも理性だけではありません。
「心は花のように開き」、「子どもは遊びを食べて育つ」。
「ふくらむ心が始め出す表情を笑いと呼ぶのだろう。笑いをこらえるとき、体の中にはふくらむものが必ずある。」
「なんと! 人は日々、自分を超えようとする動物なのだ。」
「未来はすでにここに、孫たちとしてあるのだから。」
研究者としての理性と祖父として深い愛情の見事な融合。
決して人間の子育てを動物と比較した書ではない。命の物語を記した愛の書だ。
読んでいるうちに孫が本当に欲しくなる。(自分の息子(2歳)は?)
育児に悩み解決は大切だ。便利も自分時間も大切だ。でもそんなこと些細なことジャマイカ。何をさておいても子どもと関わりたくなる。育児書かくあるべし。