・2回通読。倫理規範のグルーピング、代表的な倫理理論がとてもわかりやすく整理されていて良かった
・後半の応用倫理の話は、どこかしらで耳にしたことのある議論が多かったので前半に比べると退屈したが、未来への責任、土地理論などは頭の中で色々と発展して楽しめた
・メタ倫理学の話はあまり書かれていないので別文献を参照することにする
・再読時(2026/01/04)メモ。初読時退屈した後半を興味深く読めた。色んな人文系の著作を読み、規範倫理学の理解が深まってくると、応用の場の話が面白く感じるということ。著者も研究対象としているヨナスに興味を持った
以下メモ
道徳は行為規範の体系、倫理は生き方の選択
規範遵守の生き方を道徳的、矜持ある生き方を倫理的
普遍妥当性欲求、同条件なら同じ判断が当てはまる
倫理学は、理由を巡る論争、葛藤に判定を下す和解の場
規範倫理学、記述倫理学(倫理思想史)、メタ倫理学
履行すると賞賛される不完全義務
履行しないと非難される完全義務。権利に対応。妨げない義務、または援助する義務
倫理規範グルーピング
完全義務に関連する規範。権利、正義、平等(結果の平等、分配過程の平等)
不完全義務に関連する規範。善、慈愛
力の不均衡な者同士の規範。責任、ケア
法制定における正当性の論拠として、倫理的観点が必要
運用コストの観点で、倫理が法を補完する
パワー・ポリティクス、政治は国内外の力関係で決定される
政治家は、より多くの人間の支持を得るために、より多くの人間のためになると思わせることができる政策を提示する必要があり、結果的に倫理的な装いを帯びる
政治は力関係だけでなく言説によって動く。国民は言説を手段として主権を擁する
政治は、人々による倫理の追求を可能にする仕組み
経済は、人々が善の構想を追求するために必要なものが生産交換配分されていく仕組み
宗教は、倫理を超越者に対する信仰に基づいて説明する
倫理は信仰なしで成り立つ
黄金律、隣人愛、慈悲、仁に共感できても、正統性には疑問を呈する
社会契約論
ホッブズ(ピューリタン革命の頃)
自然状態では、能力の平等から希望の平等が生まれるが資源は有限であり、襲われることへの恐れとむざむざ襲われないという誇り、推論能力としての理性をもつのみ
自然権、各人は自分を存続させるためにはいかなる手段もとれる
万人の万人に対する戦い
自然法、各人は自分を存続させうる最適手段をとるべし
互いの自然権の行使を控える契約
力は統治者に託され、契約違反者は罰せられる
かくして社会状態が成立する
契約遵守が正となる
ロック(名誉革命の頃)
自然は共有財産で、人間同士は平等であるという自然法
労働により、所有権が発生する
各人が、自然法執行者として、略奪者を裁いても良いが、反撃や誤解の可能性もある
契約を交わして、司法や国防を制度化
抵抗権、徴税の拒否権
ルソー(フランス革命の前)
自己愛と他への憐れみで自立自由な自然状態
共同生活による自尊心発生、農耕冶金による格差拡大
無頼化する貧者へ所有権を保障する正義と平和を提案
私有と不平等の永続的な固定化
共同体の保存と全体の複利を望む一般意志を遂行するかぎりで正統性を保つ真の社会契約
人々は主権者であり被治者でもある
個々の特殊意志や寄せ集めの全体意志は時に一般意志を歪ませる可能性があり、継続的な集会と意志表明が求められる
ロールズ
リベラリズム、原初状態、無知のヴェール、平等な自由の原理、公正な機会均等の原理、格差原理
ノージック
リバタリアニズム、獲得原理、移転原理、匡正原理
義務倫理学
カント
理論理性のもとで人間を考えると、自然法則に支配される身体と傾向性に支配される意志となり、人間の自由が証明できない
人間は格率を自ら採択して生きている
格率がいかなる他者の格率とも矛盾しない、つまり道徳法則に一致する場合、傾向性を克服し自律できている
人間を目的実現の為の手段、物件として扱うべきでない、それは人間の尊厳の蹂躙である
ハーバーマス
コミュニケーション共同体により全員が合意する道徳を討議する討議倫理学
合意の正統性を保証するために、討議は論理的で、誠実で、オープンであるべきで、いかなる抑圧も許されない
功利主義
ベンサム、最大多数の最大幸福、質は問わない、自分が不遇でも全体の幸福のためには甘受する
ミル、パターナリズムを否定し、各個人が自由に生き方をは選び個性を発揮することは社会全体の幸福に繋がる。ただし他者危害原則に則り公共の福祉と兼ねる
シンガー、個人の権利より優先すべき事項もあり得る。可処分権より餓死を防ぐことが優先される
ヘア、平時は規則功利主義、非常時は行為功利主義
共感理論
ヒューム、義憤讃嘆からも自己中心じゃない感情はあり、共感能力は万人に備わっている。しかし強度はまちまち。当事者の立場に身を置いて理性を働かせて共感を高める
徳倫理学
アリストテレスや儒教など
様々な状況において適切な対処ができる、倫理的に優れた性格を徳と呼ぶ
勇気、節制、矜持、温和など中庸な性質
徳のある人を見習って実践し経験を積む
まっとうな人ならどうするか。そうする人はどういう人かを考える
法を一律に適用するのではなく個々の事情に適切な対処をする衡平性が求められる
文化と伝統の継承という性質上、共同体主義及び相対主義と親和性が高い
ヨナス、責任という原理
ギリガン、ケアの倫理
ひととひと
修養の評価は相対的に低まる。人の交換可能が加速
自然での死は他生物の糧になるが、市場から放逐された人間は市場構成員から見て無価値
ESG投資、格差を動力として進展する経済成長がいずれ自滅に陥る予覚も含まれていよう
補償検討には、所得と富に限らずケイパビリティも材料
育児、看護、介護などケアする人へのケア
納税額や社会貢献度の多寡に関わらず万人が扶助される権利を持つ。人を自他にとっての有用性で評価することは、人間の尊厳を毀損している
ルクセンブルク国民の抵抗。ノイエンガンメ収容所
戦争被害(侵略や強制労働等)の補償は、政府間で話がついていたとしても、被害者に届いてないケースがある
生まれる前の負の遺産についても、公共サービスはじめとして自国ならではのメリットを享受しているのであれば、負うべきという考えもある
ひととその体
ヒポクラテスの誓い、医学知識を他言しない、患者への善意と無危害
ベルナールの実験医学序説(19世紀)、治療や手術から知見を得ることは実験そのものであり、人体実験も許される。患者の害になる時のみ実験してはいけない
ニュルンベルク網領(20世紀)、被験者の自発的同意、軍事目的でなく社会的目的、科学的成果より被験者の利益を尊重
インフォームド・コンセント、世界医師会のヘルシンキ宣言、説明を受けた上での同意、実験のみならず治療にも適用、生命倫理学へ
安楽死の意志と認知症と自己同一性と
クローンとして生まれた人間も、その他の人と変わらず尊厳を有する。とはいえクローニング技術そのものは人間を手段として扱っているので許されない
レヴィナス、他者でありつつも自分であるような異邦人
アーレント、労働、制作、言論
未来倫理学、原初状態やコミュニケーション共同体の構成員として未来世代も含まれ、また、現在世代が一方的な加害者になり得ることから責任という原理が生じる
ひととひとではないもの
功利主義の動物倫理学、苦を感じるものを苦しめない
レオポルドの土地理論、生態系まるごと保持する
ストーンの問題提起、自然物は原告になりうる
スチュワードシップの環境倫理、ヨナスも類似意見
徳倫理学における環境倫理、自然への驚嘆、感謝、畏敬
過失責任と無過失責任
審級、自分とは異なる者の考え方に耳を傾け応答する場