あらすじ
善と正の違いは何か。権利と義務の関係とは――。本書は、倫理学の基礎からはじめて、法、政治、経済、宗教と倫理を関連づけながらその意義を再考する。アリストテレスやカントらによる5つの主要理論を平易に概説。さらに、グローバル経済、戦争、移民、安楽死、環境破壊、人工知能など現代社会の直面する難題について倫理学の観点から考察する。社会契約論や功利主義にかんする10の図解と26名の思想家のコラム付き。
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Posted by ブクログ
アリストテレスから生殖技術、AIまで、という副題の通り、紀元前の哲学者の話から現代の科学技術の倫理的な話が書かれています。
かなり、丁寧に説明された本でした。
最後に、異星人と世界の首脳らの会談の説話は、星新一のショートショートを彷彿とするもので、とても面白かったです。
Posted by ブクログ
・2回通読。倫理規範のグルーピング、代表的な倫理理論がとてもわかりやすく整理されていて良かった
・後半の応用倫理の話は、どこかしらで耳にしたことのある議論が多かったので前半に比べると退屈したが、未来への責任、土地理論などは頭の中で色々と発展して楽しめた
・メタ倫理学の話はあまり書かれていないので別文献を参照することにする
・再読時(2026/01/04)メモ。初読時退屈した後半を興味深く読めた。色んな人文系の著作を読み、規範倫理学の理解が深まってくると、応用の場の話が面白く感じるということ。著者も研究対象としているヨナスに興味を持った
以下メモ
道徳は行為規範の体系、倫理は生き方の選択
規範遵守の生き方を道徳的、矜持ある生き方を倫理的
普遍妥当性欲求、同条件なら同じ判断が当てはまる
倫理学は、理由を巡る論争、葛藤に判定を下す和解の場
規範倫理学、記述倫理学(倫理思想史)、メタ倫理学
履行すると賞賛される不完全義務
履行しないと非難される完全義務。権利に対応。妨げない義務、または援助する義務
倫理規範グルーピング
完全義務に関連する規範。権利、正義、平等(結果の平等、分配過程の平等)
不完全義務に関連する規範。善、慈愛
力の不均衡な者同士の規範。責任、ケア
法制定における正当性の論拠として、倫理的観点が必要
運用コストの観点で、倫理が法を補完する
パワー・ポリティクス、政治は国内外の力関係で決定される
政治家は、より多くの人間の支持を得るために、より多くの人間のためになると思わせることができる政策を提示する必要があり、結果的に倫理的な装いを帯びる
政治は力関係だけでなく言説によって動く。国民は言説を手段として主権を擁する
政治は、人々による倫理の追求を可能にする仕組み
経済は、人々が善の構想を追求するために必要なものが生産交換配分されていく仕組み
宗教は、倫理を超越者に対する信仰に基づいて説明する
倫理は信仰なしで成り立つ
黄金律、隣人愛、慈悲、仁に共感できても、正統性には疑問を呈する
社会契約論
ホッブズ(ピューリタン革命の頃)
自然状態では、能力の平等から希望の平等が生まれるが資源は有限であり、襲われることへの恐れとむざむざ襲われないという誇り、推論能力としての理性をもつのみ
自然権、各人は自分を存続させるためにはいかなる手段もとれる
万人の万人に対する戦い
自然法、各人は自分を存続させうる最適手段をとるべし
互いの自然権の行使を控える契約
力は統治者に託され、契約違反者は罰せられる
かくして社会状態が成立する
契約遵守が正となる
ロック(名誉革命の頃)
自然は共有財産で、人間同士は平等であるという自然法
労働により、所有権が発生する
各人が、自然法執行者として、略奪者を裁いても良いが、反撃や誤解の可能性もある
契約を交わして、司法や国防を制度化
抵抗権、徴税の拒否権
ルソー(フランス革命の前)
自己愛と他への憐れみで自立自由な自然状態
共同生活による自尊心発生、農耕冶金による格差拡大
無頼化する貧者へ所有権を保障する正義と平和を提案
私有と不平等の永続的な固定化
共同体の保存と全体の複利を望む一般意志を遂行するかぎりで正統性を保つ真の社会契約
人々は主権者であり被治者でもある
個々の特殊意志や寄せ集めの全体意志は時に一般意志を歪ませる可能性があり、継続的な集会と意志表明が求められる
ロールズ
リベラリズム、原初状態、無知のヴェール、平等な自由の原理、公正な機会均等の原理、格差原理
ノージック
リバタリアニズム、獲得原理、移転原理、匡正原理
義務倫理学
カント
理論理性のもとで人間を考えると、自然法則に支配される身体と傾向性に支配される意志となり、人間の自由が証明できない
人間は格率を自ら採択して生きている
格率がいかなる他者の格率とも矛盾しない、つまり道徳法則に一致する場合、傾向性を克服し自律できている
人間を目的実現の為の手段、物件として扱うべきでない、それは人間の尊厳の蹂躙である
ハーバーマス
コミュニケーション共同体により全員が合意する道徳を討議する討議倫理学
合意の正統性を保証するために、討議は論理的で、誠実で、オープンであるべきで、いかなる抑圧も許されない
功利主義
ベンサム、最大多数の最大幸福、質は問わない、自分が不遇でも全体の幸福のためには甘受する
ミル、パターナリズムを否定し、各個人が自由に生き方をは選び個性を発揮することは社会全体の幸福に繋がる。ただし他者危害原則に則り公共の福祉と兼ねる
シンガー、個人の権利より優先すべき事項もあり得る。可処分権より餓死を防ぐことが優先される
ヘア、平時は規則功利主義、非常時は行為功利主義
共感理論
ヒューム、義憤讃嘆からも自己中心じゃない感情はあり、共感能力は万人に備わっている。しかし強度はまちまち。当事者の立場に身を置いて理性を働かせて共感を高める
徳倫理学
アリストテレスや儒教など
様々な状況において適切な対処ができる、倫理的に優れた性格を徳と呼ぶ
勇気、節制、矜持、温和など中庸な性質
徳のある人を見習って実践し経験を積む
まっとうな人ならどうするか。そうする人はどういう人かを考える
法を一律に適用するのではなく個々の事情に適切な対処をする衡平性が求められる
文化と伝統の継承という性質上、共同体主義及び相対主義と親和性が高い
ヨナス、責任という原理
ギリガン、ケアの倫理
ひととひと
修養の評価は相対的に低まる。人の交換可能が加速
自然での死は他生物の糧になるが、市場から放逐された人間は市場構成員から見て無価値
ESG投資、格差を動力として進展する経済成長がいずれ自滅に陥る予覚も含まれていよう
補償検討には、所得と富に限らずケイパビリティも材料
育児、看護、介護などケアする人へのケア
納税額や社会貢献度の多寡に関わらず万人が扶助される権利を持つ。人を自他にとっての有用性で評価することは、人間の尊厳を毀損している
ルクセンブルク国民の抵抗。ノイエンガンメ収容所
戦争被害(侵略や強制労働等)の補償は、政府間で話がついていたとしても、被害者に届いてないケースがある
生まれる前の負の遺産についても、公共サービスはじめとして自国ならではのメリットを享受しているのであれば、負うべきという考えもある
ひととその体
ヒポクラテスの誓い、医学知識を他言しない、患者への善意と無危害
ベルナールの実験医学序説(19世紀)、治療や手術から知見を得ることは実験そのものであり、人体実験も許される。患者の害になる時のみ実験してはいけない
ニュルンベルク網領(20世紀)、被験者の自発的同意、軍事目的でなく社会的目的、科学的成果より被験者の利益を尊重
インフォームド・コンセント、世界医師会のヘルシンキ宣言、説明を受けた上での同意、実験のみならず治療にも適用、生命倫理学へ
安楽死の意志と認知症と自己同一性と
クローンとして生まれた人間も、その他の人と変わらず尊厳を有する。とはいえクローニング技術そのものは人間を手段として扱っているので許されない
レヴィナス、他者でありつつも自分であるような異邦人
アーレント、労働、制作、言論
未来倫理学、原初状態やコミュニケーション共同体の構成員として未来世代も含まれ、また、現在世代が一方的な加害者になり得ることから責任という原理が生じる
ひととひとではないもの
功利主義の動物倫理学、苦を感じるものを苦しめない
レオポルドの土地理論、生態系まるごと保持する
ストーンの問題提起、自然物は原告になりうる
スチュワードシップの環境倫理、ヨナスも類似意見
徳倫理学における環境倫理、自然への驚嘆、感謝、畏敬
過失責任と無過失責任
審級、自分とは異なる者の考え方に耳を傾け応答する場
Posted by ブクログ
タイトル通り倫理学の入門書。時系列というよりかは、ジャンルごとの思想家・哲学家がピックアップされているから、思想の関連性やどのように影響されたのかといったストーリー性があって読みやすい。
現代社会や実生活の文脈も踏まえていることから、哲学がすごく身近に、そして具体的なものに感じる。抽象的な議論を日常生活レベルにも落とし込むことができるようになりたい。
Posted by ブクログ
思い返せばコロナ禍が始まったあたりから、なんとなく内省する時間も増え、内省の質自体が変わってきたような気がする。果たしてそれがコロナ禍という時代によるものなのか、40代も後半に入ったという個人的な状況のせいなのかは不明だけど。
変化した内省の質、何がどう変化したかというと、「あの時の自分の行動に対する内省」ではなく「自分にとって善い行いとは」みたいな抽象度の高い問いをぐるぐる考える時間が増えた。
そこで目に入ったこちらの新書、「倫理学入門」
入門って書いてあるし、そもそも道徳と倫理の違いとかもよくわかってないし、いっちょ読んでみるか!と手に取った。
端的に感想を言うなら、
めっちゃ難しい…。
特に第二章の倫理理論はほとんどわからなかった。そして、この倫理理論をもとに三章以降も続いていくので、文字を目で追うのに精一杯で、私にとってはかなりちんぷんかんぷんだった。
ところが、通常なら分からない文章を読むのは辛いはずだが、この本はところどころに面白いワードやエピソードが潜んでおり、倫理学の全体像は掴めないし、頁によっては目が滑る文章にも関わらず気がつけば通読してしまっていた。
資本主義における倫理観、生殖技術や安楽死について、AI搭載ロボット兵士、はたまた未来世代への責任…などなど、現在進行形の社会問題をリアルな事象、思考実験、両端から紐解いていく内容はスリリングで、考えるそばから問いに対するじぶんなりの答えが瓦解していく。
そして第六章、倫理的な観点はどこからくるのかを読みながら、葬送のフリーレンに出てくる「勇者ヒンメルならそうする」という言葉を思い出した。
矛盾するが、ちんぷんかんぷんだった第三章以降が私にとってべらぼうに面白く興味深くて最高だった。
これを読んで、抽象的な問いに対するぐるぐるが整えられたとか答えが見えたとか、理解が捗ったとかは全くない。
むしろ余計に混乱している。
でもこれ、もう一度読み返して自分の中で考えを発酵させたい。
もしかしたらぐるぐる考える時間も悪くないのでは?と思わせてくれる良い読書になった。
Posted by ブクログ
倫理という分野の歴史を見ながら、答えが出ないながらも、正しさとはなんであるかを見出そうとしている様がわかる。
そしてその活動が法を改定しながら、私たちがいま当たり前に享受しているものに結びついていることを知る。
事実命題から規範命題は導けないというが、実際のところはなるべく納得ができて矛盾が起こらないようにたくさんの理由で支えている。
現在の社会(つまり法)は功利主義的なものだと思っていたが、功利主義であれば所得をまったく同じにしないといけないのかもしれない。そしてそれをしてしまうと人々は努力をしなくなる。
どの主義にも一貫性があって説得力がある。しかし、どれかの主義だけを採用してしまうとそれはそれでどこかしらで直観が拒否をする。
法はそれらの主義をよい塩梅で採択しているのであろう。
倫理規範の行き着くところは、結局のところ我々が不利益にならないように決まっているように見えた。歴史的には徳倫理学→社会契約論→共感理論→義務倫理学→功利主義という順番だが完全にそれまでの考え方を捨てるというわけではなさそう。近代社会ではあらたな問題が出てきて、既存の考え方では対応するできず、新しい考え方が出てきている。正確にいうと既存の主義では「悪」として扱われないが「悪」として扱ってもらわないと我々が困るパターンが出てきている。例えば環境の破壊などである。新しく出てきたものとしては生命倫理学や未来倫理学や環境倫理理論などがそれである。
我々の大半は法は作らないが、ルールや規範を作ることがある。そのうえで倫理の知識はあったほうがよさそう。
「数学・幾何学・論理学……」なんかは前提となるとりきめと論理規則だけでその真偽が決まり、「科学・物理学・心理学……」なんかは事実から事実を導いているが絶対的な心理ではない、「倫理学」なんかは価値判断が介入する。
疑問が出てきたのは、「お前のものは俺のもの」というジャイアニズムは相互性がない(相手にも同じ倫理規範を適用しない)が、それは倫理といえるのだろうか。それらしい文節があったが、おそらくこれは矛盾しているゆえに倫理ではないのだろう。
平等という概念も種々の主義があり、機会の平等もあれば、ロールズの「正義論」では平等な自由の原理として、結果に対しては不平等にしなければならないとしている(つまりよく働いてよい価値を提供できた人にはそうでない人より報酬を高くすべきという考え)。ソ連の社会主義を思い起こさせる。
生まれたときの不平等は平等にすべきという考え方を取り入れている主義は多そう。努力に対する不平等を取り入れている主義も多そう。しかし、毒親に育てられたような人に対する処遇についてはどうあるべきなのか。
Posted by ブクログ
昔の大学では「三理(倫理、論理、心理)一哲(哲学)」が文系学問の必須科目だったが、そんなことはもうとっくの昔になくなってしまったように思う。実際、自分も大学時代にこれらの科目は履修した記憶がない。しかし、あらためてこれらの学問分野の重要性に気がつき、少しでも勉強しておこうと思った次第。
この本は倫理学入門とあるように、倫理学が何を問題とする学問か(第1章)、これまでの倫理学にはどういったものがあるのか(第2章)、そして実際に倫理学は問題にどう対処しているのか(第3章以下)というオーソドックスな構成を取っている。その意味ではまさに入門書の体をなしているといって良いだろう。
第1章、第2章はやや退屈だったが、第3章以降は俄然面白くなってくる。ひととひととの問題、ひととその体の問題、そしてひととひとでないものの問題へと読者を引っ張っていく筆致は巧である。普通、倫理は「人倫」とも言うようにひととひととの関係のあり方を言うが、「体」や「ひとでないもの」にも話が及ぶのはまさに副題の「アリストテレスから生殖技術、AIまで」に合致している。
蛇足:p.231に大きな校正ミスあり。重版あれば直していただきたい。
Posted by ブクログ
未来の人類、人類以外の生物に対する、現在の私の責任をちょこっと考えるきっかけになった。
何を目指し、どう生計をたて、何を食べようか…自分の人生を善くするためにどう考えるかの入門書のように思う。
第5章宇宙人との対話は、それまでの論調から一変してユーモアがあるので、かなり笑えた。
Posted by ブクログ
倫理学の入門書。学問を学ぶ中で、どうも基盤が定まらないと感じていたところ、高校で未履修であった倫理学にヒントがあるのではないかと気付く機会があり購入した本書。
新書サイズでありながら、副題の通り、古代のアリストテレスから現代〜近未来の生殖技術、AIまでを網羅的に取り扱っており、入門書として最適であった。
理論の説明を踏まえた上で、現実の具体的な問題に踏み込んで理論を展開していく流れのお陰で、より我がこととして考えることができた。予想通り、多くのヒントを得ることができた。
Posted by ブクログ
これは書いてある情報量が多くて、何回も読み直さないと理解が深まらない本だなと思った。正直に言うと難しかった笑。だけど、興味もあるし、読んでいると学びが得られるので理解したい。
Posted by ブクログ
「入門」ということですが、第1章の倫理学の説明が私にはかなり難解でした。第2章でルソーとかベンタム(ベンサム)などの著名な思想家の思想がコンパクトに解説され(カントはやはり難解)、第3〜5章で現代社会における倫理的な問題が取り上げられています。こちらの方がまだ読みやすい内容でした。倫理学が現代及び未来の諸問題に深く関わることがよくわかりました。宇宙人との対話は大変面白かったです。
Posted by ブクログ
品川哲彦(1957年~)氏は、京大文学部哲学科卒、京大大学院文学研究科博士課程単位取得退学、和歌山県立医大講師、広島大学総合科学部助教授、関西大学文学部助教授等を経て、同教授。京都大学博士(文学)。専門は哲学、倫理学。
本書は、前半で倫理学とは何かについて概説した上で、後半で、我々が現在直面している様々な問題について、倫理学の観点からどのように考えられるのかを解説したものである。
章立ては以下の通り。
第1章:倫理とは何か。倫理学とはどういう学問か。 1.倫理と倫理学 2.法・政治・経済・宗教と倫理
第2章:代表的な倫理理論 1.倫理を作る~社会契約論 2.人間の尊厳~義務倫理学 3.社会全体の幸福の増大~功利主義 4.他者への共感~共感理論 5.善きひとになるための修養~徳倫理学 6.付論。責任やケアにもとづく倫理理論
第3章:ひととひと 1.市場 2.国家 3.戦争
第4章:ひととその体 1.私の体は私である 2.私の体は私のものか 3.科学技術による子への操作 4.これから生まれてくるひとのために
第5章:ひととひとではないもの 1.人間の外なる自然 2.ひとが造ったもの 3.星界からの客人との対話
第6章:倫理的な観点はどこからくるのか
私は日頃から、資本主義、気候問題、環境問題、生命科学、AIに関わる問題等、数年~数十年というスパンで人類の未来に大きな影響を与えるといわれている問題に高い関心を持っているが、それらの問題の多くには、まさに倫理的にどう考えるべきかという論点があり、それらを整理する一助として本書を手に取った。
一通り読んだ感想としては、前半の倫理学の概説については、予想以上に専門的な説明になっており、一部消化不良のところもあった。また、後半については、グローバリゼーション、再分配、ベーシック・インカム、移民、戦争の責任、インフォームド・コンセント、安楽死、遺伝的条件による子どもの選別、クローニング技術、環境と自然、生態系、AIの発達等、興味深いテーマが多数取り上げられており、参考にはなったが、其々のテーマがそもそも数頁で語るにはあまりに大きく、物足りなさが残った。
新書としてはややスコープが広過ぎると思われるが、倫理学の概要、現代社会のどんなテーマが倫理学上の問題を抱えているのかを知る上では、意味のある一冊と言えるだろう。
(2022年1月了)
Posted by ブクログ
倫理学の中核的な問題と、応用倫理学的な側面の両方について解説をおこなっている入門書です。
著者はすでに『倫理学の話』(2015年、ナカニシヤ出版)という入門書を刊行しており、そちらでは本書よりも倫理学の中心問題についてていねいな解説がなされているような印象があります。それに対して本書では、応用倫理学や倫理学と他の隣接する学問との関係についても目配りをおこないながら、あらためて倫理学に固有の問題がどこにあるのかということを規定しなおすことに焦点があてられているといえるように思います。
倫理学について学びはじめたばかりの読者にとって、どちらがより容易に倫理学の世界に入っていくことができるかと考えると、当然読者によって好みが分かれるとは思いますが、個人的には前著『倫理学の話』のほうが親しみやすいと感じました。ただし、倫理学になにができるのかという問題に対する著者のスタンスは共通しているので、応用倫理学的な側面についても多くの議論が含まれている本書を併せ読むことで、いっそう倫理学という学問の意義について学ぶことができるように思います。